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第11話 ハトウの人々



僕らは街での雑多な用事を済ました後乗り合い馬車の主人が手配してくれた宿へ向かった。


ご主人は有言実行をするお方のようで、このハトウで一番大きな宿屋であった。


受付に行き、シリュウと名乗ると、受付の若い女性から「お伺いしております。ご案内しますのでこちらへどうぞ」と言われたのでビーチェと共について行った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ちなみに街での雑多な用事は薙刀の返却とユージの実家の商家への挨拶だった。


薙刀を武器屋の主人に返却しようとすると「あん?返品か?金は返さねぇぞ」とすごまれたが、勘違いである。


どうやら駐屯所で薙刀はお買い上げになったそうで、わざわざ返却の必要はないとのこと。


ハーグさんからは「シリュウ殿がお持ちくだされ」と言われたが、流石に薙刀を持ち歩いては旅はしづらい。


「お代はいいので、返却させてください」というと「そんな価値もないってか!」とまた主人を誤解させてしまう。違う違うそうじゃない。


ビーチェは一連のやり取りを後ろで「くっくっくっ…」を笑いを押し殺しながら見ている。


助けてくれよ。


何とか誤解を解き、「全額は無理だが、7割5分は返してやる。こちらも金を渡さねぇわけにはいかんよ」と着地点を見出せた。


こちらとしては返金は本当に不要なんだけども、いただいたお金は駐屯所に返すことにしよう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さらにユージの実家の商家に挨拶に行く。


しかしユージの親父さんはどうやら出払っているらしく会えなかった。


なのでサトリの爺さんから貰った証文を対応してくれた職員に渡して、証文の現金化をしようとしたところ、現金だけではなくまた別の証文をもらった。


ちなみに貰った現金は金貨50枚である。


「…あの?これは?」


「これはサザンガルドのソウキュウ商会に渡してください。こちらの証文はサトリ様と当商家の為替証文ですが、我が商家だけでなく、ソウキュウ商会にも債務…シリュウ様からしたら債権がございますので」


「???」


僕が全然理解できないでいると、ビーチェが後ろからずいっと割り込んできて証文を取った。


「どれ、見せてみよ…ふむふむ…なるほど」


「ビーチェわかるの?」


「これくらいはの…なるほど。要するにシリュウが持ち込んだ魔獣の素材の溢れた分をサザンガルドのソウキュウ商会に持ち込んだわけじゃな。ゆえにここでこの商家、えーっとなんじゃっけ」


「ハトウリッツ商家です」


職員が答える。


「そう、ハトウリッツ商家がシリュウに払うべきお金と、ソウキュウ商会がシリュウに払うべきお金があると。でこの証文はハトウリッツ商家がソウキュウ商会へ確かに魔獣の素材を卸した証明書にもなっているわけじゃな。この証文をサザンガルドのソウキュウ商会に渡せば、残額をシリュウが受け取れると」


「その通りでございます。長年サトリ様が交渉の窓口で、シリュウ様が倒した魔獣の素材を当商家にて引き取らせていただきました。ただ引き取る魔獣の素材について、当商会で捌ききれなかったため、当商会と縁のあるサザンガルドのソウキュウ商会に融通させていただきました。その際にサトリ様は引き取り代金を現金で受け取らず、債権という形で積み立てていらしたのです。シリュウ様が将来旅立たれる時の資金になればと」


サトリの爺さん……本当に旅立ってもお世話になってしまうなんて


「はぇー、田舎に住んでる爺さんの割には、とても気が利く聡い人よのう」


「サトリの爺さんは凄いよ、僕はあの人ほど知識があって、聡い人を知らない」


「…シリュウがそこまで言うならばただならぬ御仁のようじゃの…」


「まぁこれでサザンガルドまでの旅費もできたし、サザンガルドに着いてからもしばらくは大丈夫そうなお金がありそうだ」


「…………しばらくどころか1年は遊んで暮らせそうな金額じゃったがの……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そんなこんなで宿に来た僕ら、案内された部屋は1部屋でありながら中でさらに部屋が分かれている部屋だった。


居間があり寝室が2室、いずれもシングルベットがおかれている。


……まぁこれなら許容範囲か……


「ふぃ~今日も疲れたのぅ~…この宿は浴場があるらしいぞ?後で一緒に入るかの?」


ビーチェが相変わらず僕の純情を弄んでくる。


「………もういっそのこと一回一緒に入ってやろうかな…いつ入る?今?」


「ちょっ……!!//冗談じゃ!冗談!わかるじゃろうて…//」


出会って2日目にしてビーチェの対処方法が少しわかった。

なるほど、攻めるけど、攻められるのに弱いのか。


夕食を宿の食堂で一緒に食べ、湯浴みは時間をずらして別々に行って、明日の準備もそこそこに僕らはそれぞれの寝室に入ろうとした。


「おやすみビーチェ」


寝室に入る前にビーチェに声をかけた。


「うむ、おやすみ、シリュウ。明日はついにサザンガルドに着くのう。楽しみにしてくりゃれ」


ビーチェも朗らかに答える。


どこで手に入れたかわからないけど今は冒険者風の恰好ではなく、少し薄着の寝巻のような恰好をしている。


僕は目のやり場に困るが、ビーチェの顔を見据えて答える。


「楽しみさ、まぁビーチェとの旅はなんでも楽しいけどね」


「………またそのようなこと…//…明日は早いぞ!寝坊するでないぞ!」


「それビーチェの方でしょ?」


「妾はいいのじゃ!それじゃあの!」


少し乱暴に扉を閉めながらビーチェは寝室に入った。


僕も寝室に入り、ベッドで横になる。


まだ旅立ってから2日しか経っていないのに、刺激的なことばかりだ。


今日は朝から自由に動き回るビーチェの面倒を見つつ、樹海を抜けた。


ハトウに着いてからは、駐屯所でビーチェの本名を知った。


ハーグさんの依頼で、橋の魔獣を蹴散らして、乗り合い馬車の主人に感謝され、ユージの実家で証文と金貨を手に入れた。


明日はどんな一日だろう。


僕は明日に思いを馳せるが、思い浮かぶのは金色の髪をしている快活な女性の笑顔だけだった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!


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