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第26話 ノースガルドに至る道①~逃走経路

更新再開します!1週間ほどすみませんでした。

今日から頑張りますのでよろしくお願いいたします!

烈歴98年6月15日 10時24分 帝都シュバルツシュタット シュバルツ城 第8会議室 


帝国の第二皇子であるヴィルヘルム皇子が、20万もの大軍で僕達が滞在しているこの帝都シュバルツスタットを急襲する報せを受けて、僕達外交使節団はサンディ中将の手紙の指示通りに、『門都』ノースガルドを目指して撤退することにした。


そしてパオっちとリアナさん、リクソン・ベタンクール都督はハンブルグに滞在している海軍兵士とハンブルグに先行して向かったジョルジュ大佐の部隊にこの事態を伝えるため、一足早くこの会議室から発った。


ビーチェは緊急で行軍するためにこの城に残っている海軍兵士と皇軍兵士を帝城の広場に集合させるために会議室を出た。


サルトリオ侯爵も同様に外交使節団の外交省の役人たちを集合させるため、会議室から出ている。


今ここにいるのは、リタさんとアウレリオ准将、ヒルデガルドとバルター将軍、そして僕の5人だ。


残された僕らはこれからどういう経路でノースガルドに帰還するか話し合うつもりだ。


今はバルター将軍が部下にノースガルドまでの詳細な地図を取りに行かせており、その地図の到着を待っていた。


「……何度も言うようだが、本当に申し訳ない…!このような身内の諍いに他国の要人を巻き込むとは帝国の恥だ…!」


バルター将軍が悔しそうに、そして唇を噛みながら頭を下げる。


その様子からは帝国でも指折りの武術師の気迫と帝国軍の軍を預かる司令官の威厳はなかった。


「……ふぅ…あなたに言っても仕方がないのだけどもね?それにしてもこんな寡兵な帝都を大軍で攻められるなんて、やられすぎじゃない?『黒狼』のバルターって言ったら、皇国でも軍略と武術に優れた烈国士で名高いわよ」


リタさんが嫌味でもなく率直な疑問としてバルター将軍に問う。


するとバルター将軍はもう吹っ切れたのか、その理由を話した。


「このような事態に巻き込まれたのだ。もう隠す必要もないし、其方らには知る権利があろう。もちろんこの事態を私は全く予期していなかったわけではない。むしろ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でヴィルヘルム皇子が仕掛けてくるとは予想していた。なので皇国の使節団が滞在中に襲撃されぬようシュバルツスタットの西…ヴィルヘルム皇子の領地側に兵を厚くするようハインリヒ皇子に進言していたのだ」


「そこまで読んでおきがら、なぜ帝都がこのように寡兵なのだ?」


アウレリオ准将がバルター将軍に問う。


「ハインリヒ皇子が受け入れなかったからだ。なぜならシュバルツスタットの北部に位置するズィーベンを攻めるという流言を真に受けてしまったのだ。ズィーベンはハインリヒ皇子の正妻の実家の領地でな。奥方とその実家に言われてズィーベンの軍備を厚くしてしまったのだ」


「えぇ……軍の最高司令より奥さんの言うこと聞いちゃったのかぁ…」


この状況を招いた原因があまりに拙いものであったため、僕は顔を引き攣らせてしまった。


「其方の気持ちは私が一番分かっている。大恩あるカール陛下のたっての願いでハインリヒ皇子を後継者として立ててきたが、此度の件でもう限界だ。あの方が皇帝になればこの帝国は王国や皇国の手を煩わせる事無く崩壊するだろう。かと言ってヴィルヘルム皇子が皇帝になれば、帝国は血の通わぬ国になろう。唯一希望があるとすればレギウス皇子であるが、地盤が少なすぎてな…それに男子のお子もおらぬから継承者問題がまだ勃発するだろう…はぁ…頭が痛くなってきた…カチヤやミュラーのように武を振り回すだけの奴らが羨ましい…」


すごい勢いで愚痴が出てきたな。


バルター将軍も苦労してるんだろうなぁ…


「ご、ご愁傷様です…」


僕は申し訳程度にバルター将軍を労った。


「……其方のことはインペリオバレーナを討伐した時から調査させた。かのコウロン・ドラゴスピアの孫だそうだな。ふふふ、あの戦鬼とは似ても似つかぬ顔をしておる」


「じいちゃんを知っているのですか?」


「うむ。今でも其方の祖父の暴れる様が夢に出てくるくらいにはな」


「ご、ご愁傷様です…」


本気のじいちゃんと相対したのか…相当怖い経験だろうなぁ


僕とはあくまで稽古だし、それに家族であるからだいぶ甘く接してはくれているが、武に絡んだじいちゃんは本当に怖いからなぁ


あのじいちゃんと殺し合いなんてそれはもう一生夢に出るだろうな。


ご愁傷様です。


そんな風にバルター将軍と話していると会議室の扉が開けられた。


どうやらバルター将軍の部下の人のようだ。


「バ、バルター将軍!言われた地図を持ってまいりました!」


「よし。ここに置け。そしてお前は退室しろ。この会議室に誰も近づけさせるな」


「はっ!」


そう言って部下の方は退室して、僕らは部下の方が持ってきてくれた地図を眺めた。


挿絵(By みてみん)



バルター将軍が地図に近づく説明を始めた。


「まず大まかな地理について私が説明しよう。ここシュバルツスタット周辺は平野だ。サタイディガンとは大街道で繋がっている。そして貴殿らが向かうノースガルドまでの間には、『ラインハルト領』がある。ここは帝国屈指の名家ラインハルト家が実効支配する地だ。カール陛下の正妻とハインリヒ皇子の母である皇后様の御出身地でもある。このラインハルト領は北は森に、東は湿原、西は山脈、南は大河と大自然の防壁に守られている地域だ。このラインハルト領を南に抜けた先は山岳地帯になっており、その先には山脈の窪地となっている『前線地域』がある。その前線地域を抜けた先がノースガルドだ」


なるほど


皇国の大自然に守られている地形をしているが、帝国もなかなか地形が厳しい国なんだな。


「……どう行けばいいかしら?ヒルちゃん」


地図を見ながらヒルデガルドに問うリタさん


「……追手があることを前提に話すわ……ルートは主に2つ。サタイディガンまで大街道を使って南下し、サタイディガンから船で川を西へ上るルートね。そしてラインハルツ大橋付近の街で降りて、四国山道を通り前線地域を抜けるルート………そしてもう一つはラインハルトの森を抜け、カルフとラインハルツハーゲンを経由しつつラインハルト領を突っ切るルート……ラインハルツ大橋以後は一緒よ…」


「それぞれのルートのメリットとデメリットは?」


「サタイディガンを経由するルートのメリットは、単純に速いし、行軍が楽……大街道を利用するし、船を利用するなら文官達の脚の遅さも気にならない…デメリットは、追手も速いから、追手を向けられる時期が早ければ確実に追いつかれるわ…あと船を確実に捕まえられるとも限らない…」


サタイディガンのルートでの成否はヴィルヘルム皇子側がいかに僕らの逃走経路を掴めるかに左右される。


「もう一つのラインハルト領を突っ切るルートのメリットは、険しい地形を行軍するから大軍の追手からは逃げ切れる可能性は高いわ……あともし追いつかれても、ラインハルト大橋まで辿り着けば寡兵でも大軍相手に戦える……それにこっちには化け物もいるし…数千程度の軍なら打ち負かせるんじゃないかしら…デメリットは地形が険しいから行軍が楽ではないのと、魔獣に出会う確率は上がるわね…」


今僕の方をみて化け物って言った?


気のせいだよね?


「…こっちの兵力は400……バルター将軍…率直に聞くわ。ラインハルト大橋でこちらは400、こっちにはヒルデガルドとシリュウ准将がいる。どのくらいの帝国軍の兵力までなら持つかしら?」


リタさんがバルター将軍に聞く。


普通ならバルター将軍は帝国軍の総司令官だから、このような軍事的なことを聞いても答えられないだろうが…


「緊急事態につき、本音で回答しよう。まず帝国軍ではなくヴィルヘルム軍と呼称させてもらう。ヴィルヘルム軍と皇国軍の兵を同等の実力と見積もった場合に、ヴィルヘルム軍から十傑が追手に来ているかどうかで変わるだろう。そして私は追手に十傑の誰かは来ると推測する。わざわざ皇国軍が滞在中に襲撃しているのだ。皇国軍の要人の首の一つは欲しているはず。ならばヴィルヘルム軍に十傑は1人はいるとして……うぅむ……」


「どうしたのかしら?」


「いや…ヒルデガルドとヴィルヘルム軍にいる十傑の実力はよく知っておるのですが、いかんせんシリュウ准将の実力が私にはわかりかねますので…」


バルター将軍が考え込む。


そりゃそうだ。バルター将軍の前で槍を振るったことはないし。


バルター将軍が考えているとヒルデガルドが軽い感じで言う。


「…ああ……そんなこと……こいつ……一騎討ならフィリップくらいまでなら多分勝てるわよ……ホウセンまではわからないけど…」


「……な!?フィリップだと…!?第4位だぞ…!?」


えぇ…僕十傑4位に勝てるの…?


ヒルデガルドさんや、ちいと盛りすぎではないかや?


5位のカチヤさんと打ち合って、あまり勝てる気しなかったけど…


「……あなた…本気のエゴンを生け捕りできる?…向こうは殺す気で…」


ヒルデガルドがバルターに問うた。


「……確かに自信はないな……死合いなら負ける気はせんが、こちらが殺さない前提なら難しい戦いになろう」


「……こいつはそれをやってのけたのよ?…」


「……うぅむ……そう仮定するなら…十傑のホウセン以外が来た場合は、シリュウ准将が抑えられるか……400…ラインハルツ大橋での南側の防衛……」


再び考え込むバルター将軍


そして顔を上げて答えた。


「…追手に十傑がいなかった場合は、3,000…十傑がいた場合は…1,500といったところだろう…」


それって僕1人で1,500人換算してませんか?


盛りすぎでは…?



「…妥当ね……ならルートは1つ」


そう言ってヒルデガルドは地図を指す。


「…ラインハルト領を突っ切るしかないわ。サタイディガン経由なら万単位の兵を送られる。でもラインハルト領を突っ切るなら地形が険しくて、大軍は行軍できない。私達に追いつくことを考えても3,000が限度のはず…」


「決まりね。私達はラインハルト領を突っ切るわ。さぁ広場に集合して、早速逃げるわよ」


リタさんがそう結論付けて、逃走経路を決めた。


僕達のこの決断がどうなったのか、それを知る日はそう遠くはない。





シリュウ「ラインハルトの森って魔獣出るの?」


ヒルデガルド「あんたが気にするレベルの魔獣は出てこないから心配ないわ」


シリュウ「そうなんだ。なら安心だね」


バルター(Sランク魔獣は生息しておらぬが、Aランクはそこそこいる森なんだが…?)

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