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第25話 『門に帰る』

烈歴98年6月15日 帝都シュバルツシュタット シュバルツ城 第8会議室


僕達シリュウ派の面々がリータ殿下の皇妹派に加入することを約した次の日


僕達外交使節団は皇国へ帰る準備に追われていた。


本来なら16日まで滞在して外交会談を行い、17日に出立する予定であったが、肝心の交渉相手のハインリヒ皇子が仮初の後継者であることが判明したため、リタさんは帝国との交渉内容を大幅に削減したのであった。


交渉内容は以前より通常の外交筋で調整した内容を確認したレベルにまで落とされており、それゆえ本日の会談に必要な人数はかなり少なく、手持ち無沙汰の人員が外交使節団にも護衛団にも多くいたため、帰り支度をしているというわけだ。


そして今ここには皇国の幹部(リタさん、アウレリオ准将、サルトリオ侯爵、ヒルデガルド、パオっち、リアナさん、ビーチェと僕)とリックことリクソン・ベタンクール都督で帰りの行程の行軍計画について話し合っていた。


ちなみにジョルジュ大佐は今日の早朝に1部隊を引き連れて、先にハンブルグへ向かってくれている。


ハンブルグに停泊している船団には、少数の海軍兵士が待機しているが、先にジョルジュ大佐が戻って出航の準備を指揮してくれる予定だ。


これで僕たちはハンブルグに到着してすぐ出航することが可能なのだ。


できるだけ早く皇国に帰りたいリタさんの想いを海軍側が汲み取ったのだ。


そしてリタさんは陸の行軍計画についても、更に短縮できないか僕達に要請していた。


「行きはハンブルグから2日かかったわよね?なるべく早く帝国から撤退したいから1日で帰れないかしら?」


「それはしたいのは山々だが、難しいだろう。我ら皇軍と海軍の軍人だけなら問題ないが、外交使節団の文官達にはきつい行程になる」


「そんな軟弱者は帝国に捨てておこうかしら。どうせ皇王派の連中でしょ」


とんでもないことを言うリタさん


「おおう……皇妹殿下の思想に染まれない哀れな知識人は帝国の地にて血に染まるのか…!」


相変わらず芝居のような台詞でリタさんをいじるサルトリオ侯爵


「冗談に決まっているでしょ。馬や馬車を行きより借りたいけど……王国みたいに友好的じゃないから難しそうね…1日目でできるかぎり行程を進めるしかないか…でも街での宿泊じゃなくて野営にするわよ。それは我慢してもらうわ」


「野営か……シリュウ准将、海軍には野営の準備はあるのか?皇軍は我ら50人分とリタの分の野営の備品は持っているが」


アウレリオ准将から聞かれるが、そんな細かいことはもちろん答えられない。


僕は笑顔でビーチェの方を向いて、回答の肩代わりをお願いする。


そしてビーチェが持っていた資料を見ながら答える。


「今回随行している海軍の総数は約480名で、ハンブルグに待機しているのが30名、今朝ジョルジュ大佐がハンブルクに先行して出立したのが50名で、このシュバルツ帝城に駐留しているのは約400名です。帝国での道中は何が起こるかわからないため、外交使節団約100名分を含めた500名分の野営の準備はしております。兵糧は残り6日分ありんす」


おお!流石ビーチェ!


外交使節団の人員含めた野営の準備とたった2日の行程に6日分の食糧とは十分すぎる備えじゃないか?


「たった2日の行軍なのに、やけに準備がいいわね?流石は危機管理の達人、海軍ってところね。ベアトちゃんも海軍に入って日が浅いのに流石ねー」


「恐れ入ります。ただこれは妾の立案ではなく、事前にフランシス中将が計画したものでありました。フランシス中将が船に余分に積載した食糧の一部は帝国の行軍に使うようにと指示が入っていました」


フランシス中将が?


確かにフランシス中将は、慎重に慎重を重ねる人だけどもやけに用意がいいな


「フランシス・トティ中将……彼は石橋を大槌で叩いて渡る性格だからな…納得だ」


アウレリオ准将がフランシス中将をそう評するが、あながち間違ってはいない。


1つの策に2つも3つも保険を掛けるような人なのだ。


「まぁそれくらいの備蓄なら多少強行軍でも問題なさそうね。明日早朝に出立できるように全員に周知してちょうだい。今日中にハインリヒ達にお別れの挨拶をしておくわ」


「了解だ。じゃあそれぞれ抜かりなく」


アウレリオ准将がそう言ってこの場が流れようとしたその時



バーン!!!



僕達がいた会議室の扉が勢いよく開けられた。


そこにいたのは十傑第3位のフリッツ・バルター将軍だ。


冷静で重厚な雰囲気を醸し出していた人だが、めちゃくちゃ焦っている表情をしている。


その長い黒髪を乱れており、肩で息をして顔には汗が流れていた。


「し、失礼する!!緊急事態ゆえご勘弁召されよ!」


明らかにただ事ではない様子に僕らは全員身構える。


「……あなたがそんなに慌てるなんて……見たことないわ…」


ヒルデガルドがバルター将軍の焦りように驚く。


リタさんは気丈にも一歩前へ出て、バルター将軍に問う。


「大丈夫よ、落ち着いて。何があったのかしら?」


リタさんがバルター将軍に冷静に問うが、返答は僕らの想像の斜め上をいくものだった。








「ヴィ、ヴィルヘルム皇子が総勢20万の兵でこのシュバルツスタットを目指しているとの報告が先ほど早馬でもたらされました!」





「「「「「!!!!????」」」」」







会議場は驚愕に染まる。




第二皇子が第一皇子と争っていたのは知っていたが、まさか大兵力で、しかも皇国の外交使節団が滞在しているこのタイミングで襲撃するとは、誰にも予想できなかった。


「馬鹿な!他国の外交使節団が滞在中の首都に攻め入るなど、国際儀礼上あってはならぬことだ!」


机を叩き憤慨するサルトリオ侯爵


外交大臣からすれば他国の外交使節を戦乱に巻き込むヴィルヘルムの暴挙は受け入れがたいものだろう。


「まずいぞ!…我々は至急ハンブルグに戻らねば!」


アウレリオ准将が焦るように言うが、バルター将軍の報告に続きはあった。


「お待ちを!ハンブルグ近海にアルジェント王国のタレイラン公爵家の者と思われる船団が確認されているとの伝令もありまする!このままハンブルグに戻れば、タレイラン公爵家との海戦になるやも……」


「なっ!?」


バルター将軍の報告に驚愕するアウレリオ准将



これはまずいぞ……


今回の艦隊はあくまで外交使節団の形を取っているため、本気で海戦をする仕様になっていない。


相手が海戦をすることを前提とした艦隊ならまず間違いなく負けてしまうだろう。





このまま帝都にいてもヴィルヘルムの大軍が押し寄せる。


ハンブルグに戻ればタレイランの船団とかなり不利な状況で相まみえることになる。



「……このシュバルツスタットの兵力は?戦の見込みは?」


僕はバルター将軍に問う。


「……自由に動かせるのは3万程度だ……」


バルター将軍の答えに会議室は静まりかえる。


たった3万しかいないのか!?


「さ、3万!?帝国の首都なのですよね?なんでそんなに兵力が少ないのです!?」


僕は半ば詰問するようにバルター将軍に言う。


バルター将軍も苦虫を嚙み潰したような顔で答える。


「……貴殿の指摘は最もだ……こちらの都合で帝都の兵を北方の領地に異動させたところなのだ……それもヴィルヘルム皇子の策略やもしれぬ…」


なんということだ……


「つまり、シュバルツスタットは…いやハインリヒ皇子はヴィルヘルム皇子に完全にしてやられたってことかな?これは流石にまずいんじゃないか?」


ベタンクール都督もいつもの飄々とした表情ではなく、深刻な顔つきで危惧を示す。


「……誠に申し訳ない…!私程度の頭で足りぬだろうが…!」


そう言ってバルター将軍は頭を深く下げる。


僕らもバルター将軍にこれ以上何かを言っても何も進まないと感じたのでバルター将軍に何かを言う者はいなかった。



そんな中リタさんは1人深く考え込んでいるようだ。


そしてその口を開く。


「文句を言っても何も変わらないわ。バルター将軍、帝国の地図を見せてくださる?そしてヴィルヘルム皇子の行軍の状況の説明を」


「はっ!こちらになります!」


そしてバルター将軍が懐から一枚の地図を取り出した。



挿絵(By みてみん)


「まず緑色がハインリヒ皇子の勢力圏です。そして青色がヴィルヘルム皇子の勢力圏、北方のアハト州はレギウス皇子の勢力圏です。ヴィルヘルム皇子の軍はゼックス州の州都リューベックより4万、フィーア州の州都インバジオンより8万、ツヴァイ州の州都ランベルリンより6万、そしてローデンベルクの2万の計20万の大軍でシュバルツスタットを目指しているようです。ランベルリン、リューベック、インバジオンの兵はローデンベルクを経由して、ここシュバルツスタットに進軍中です」


「20万とは…皇国軍の全軍の総計よりも多いな…」


アウレリオ准将が20万という大軍の重さを噛みしめている。


「ええ、全地方の領邦軍と皇国軍を合わせてやっと届く数でしょうな……」


ビーチェも冷や汗を掻きながら、その数の脅威を感じていた。


そしてバルター将軍が続けて説明する。


「この20万はおそらくヴィルヘルム皇子の所有する全兵力です。ヴィルヘルム皇子はこのタイミングで一大決戦を仕掛けに来ました。我らもズィーベン州とヒュンフ州、ドライ州から援軍を呼び寄せます。その総数はおおよそ20万…それまで壁内で籠城をする予定です」


なるほど


帝都は籠城し各地方の兵を終結させることで防衛するのか。


ならば重要なのは、現有戦力でどれだけ持ちこたえられるかだ。


「ヴィルヘルム軍の到着予定は?あなたなら大体計算できてるんじゃない?帝国軍の総司令官『黒狼』フリッツ・バルターさん…?」


リタさんがあえて肩書を付けてバルター将軍に問う。


「……ヴィルヘルム軍の先鋒隊6万が到着するのは明日の見込みです。全軍が揃うには4日程かかるでしょう。対してこちらの援軍は、どんなに早くても7日はかかるでしょう…」


「つまりあなたたちは3万の兵で最低でも3日はこの帝都で持ちこたえないといけないわけね?」


「…その通りでございます」


バルター将軍は非常に申し訳なさそうな顔で言う。


「つまり私達はここにいても、この非常に不利な籠城戦に巻き込まれるだけ…と…はぁ…頭が痛くなってきたわ…」


そう言いながらこめかみを抑える仕草をするリタさん


「しかしハンブルグに戻ってもタレイランとの海戦だ…勝てるか?パオ少将?」


アウレリオ准将がパオっちに問う。


「船団の規模が不明だから答えようがないろん。でも今のうちの艦隊編成じゃ、タレイランがいつも通りの編成なら難しいろんね。そもそもオイラ達が戻るまでに船が無事とも限らないにー」


「確かに…タレイランがハンブルグに停泊している我らの船を轟沈してしまえば、我らはハンブルグで立ち往生だ…そうなればどうしようもない…」


アウレリオ准将が下を向き、悔しそうに拳を握る。


「帝都に残っても戦…ハンブルグに戻っても立ち往生…私達どうなるんですか…?」


リアナさんが泣きそうな顔で言う。


絶体絶命の危機だ。


そんな顔になるのも仕方ない。


「……私達はどうすれば……」


「…何か…打開策は…」


かつてない危機に会議室には緊張が走る。


皆どうすべきか迷っている。










ん?




()()()()()







そして僕は思い出す。









「ちょ、ちょっと待ってください!!」




僕は会議室に響き渡る大きな声を出して言う。


「ど、どうしたのシリュウちゃん?」


「シリュウ准将…何か思いついたのか?」


「おおう…我らを救う手立てが何かあるのかね?」


会議いる全員が僕に注目する。


そして僕は思い出したことをみんなに伝える。


「僕たちは今、迷っています。なら見返すものがあったはずです」





「「「「!!!」」」」



僕の言葉に皆がはっとした顔になる。


「サ、サンディ中将の手紙!リオ!あれどこにやったの!」


「今手元にある…!…『門に帰れ』…との一文だが…」


この状況で示す『門に帰れ』の意味は…




そして地図を見つめていたビーチェが答えを見つけた。













「も、門!『門都』ノースガルドのことではないかや!?」











「「「「!?」」」」



ビーチェの発言で、皆が一斉に地図を見つめる。



「た、確かに…この状況ならハインリヒ皇子の勢力圏内を通って、ノースガルドへ陸路で辿り着けるわ!」


「インバジオンの兵も出払っている!おそらく皇国前線に帝国の兵はいまい!」


「…ここからならノースガルドまで…おおよそ徒歩で4,5日…!糧食も足りまするな!」


ビーチェの答えに賛同するリタさん、アウレリオ准将、サルトリオ侯爵


この4人の意見が合致したんだ。


『帝国で火急の事態に陥った時にノースガルドを目指して帰還せよ』


サンディ・ネスターロ中将の伝言の意味はこれで間違いない。


「にー。フランシス中将の備えもこれを見越していたのかや?あの二人はどこまで未来が見えているじゃもん。怖いろん」


「た、確かに……この計画を貰ったのは、もう1月近く前よ…?その時からこの状況を見越していたのかしら?」


パオっちとリアナさんがサンディ中将とフランシス中将の慧眼に恐れ入っていた。


しかしリクソン・ベタンクール都督が1つ疑問を呈した。


「その伝言が何やらは僕にはわからないけど、ノースガルドを目指すくらいなら、このまま南下して王国を目指すのはどうかな?わざわざ第二皇子の勢力圏内近くを行軍しなくてもいいと思うけど。南下した先はプラティニ公爵領だから、僕達も保護してもらえると思うよ」


確かにその通りだ。


距離的に短いし、第二皇子の軍から遠くに逃げるように皇軍できる。


プラティニ公爵はリタさんと軍事同盟を締結しているから、保護してもらえるはずだ。


しかしその案をリタさんは一蹴する。


「いえ、ここはサンディ中将の言葉どおりノースガルドを目指すわ。サンディ中将も王国とはいかなくとも南下してヘスティア神国に避難するルートは考えたはず。しかしそれでもわざわざノースガルドを目指すように指示したのは、何か理由があるはずよ。私はそれを信じる」


リタさんは力強くベタンクール都督に言い切る。


「そこまで言われちゃあ部外者は引っ込みますよ、ははは。でも先行したジョルジュ大佐とハンブルグに残された兵士と船はどうしますか?」


そこがこの策の鬼門だ。


ハンブルグに残された海軍の兵士達を見殺しにするわけにはいかない。


「…それなのよね…いまから早馬でジョルジュ大佐を呼び戻せてもハンブルグの兵士達は…」


リタさんも心配そうに言うが、ハンブルクに残された兵士達を待っていてはヴィルヘルム軍に飲み込まれてしまう。


そんななか声を上げたのはパオっちだった。



「ハンブルグにはオイラが行くよ」



「え!?パ、パオっちが!?」



「うんむ。オイラは護衛団の団長じゃもんね。部下の1人だって見殺しにしないさ。オイラはジョルジュ大佐の隊と合流してハンブルグに急行して、ハンブルグの兵士の安全を確保するっしょ。そして合流次第状況によって船を諦めて王国へ南下するじゃもんね。まぁオイラたち80名くらいで帝国の南東の端を行軍するくらいなら安全だろうにー」


パオっちが迷いもなくそう提案した。


自ら危険な地に飛び込み、そして部下を救う。


これが海軍少将の責任感…



「……頼めるかしら?…パオ・マルディーニ少将…!」


リタさんが断腸の思いでパオっちに依頼する。


「もちろんだにー」


いつも通り飄々として答えるパオっち


「…すまない!恩に着る!」


頭を下げて感謝するアウレリオ准将



「…パオっち…ごめんね…危険な役割を…」


「ノンノン!役割分担さ。シリュウっちにはリータ殿下を始め、使節団の皆をその槍で守ってほしいんね!シリュウっちの大事な役割っさ!」


そうだ。


この危機に、一番働くべきなのは僕じゃないか。


普段は役立たずなんだから戦の時くらい働けよ、僕!


「任せてよ!僕がこの使節団を絶対に守る!」


「にー!」


僕はパオっちと固く握手をする。


するとリアナさんがパオっちの袖を引いて言った。


「パ、パオ…私も…パオと行く!」


その表情は涙に溢れていた。


「にー。こっちはハンブルグまでは危険だにー。シリュウっちとベアちゃんと一緒にノースガルドを目指すろん」


「で、でも!私は…パオの補佐官で…婚約者で…!……何かあったら……ここで…お別れになっちゃう…!」


そして号泣してしまうリアナさん


パオっちも困惑してしまい、宥めようとするがリアナさんは泣き止まない。


するとリタさんがリアナさんに駆け寄る。


「……あなたの気持ち…痛いほどわかるわ」


「リ、リータ殿下…」


「あなたに命じます。パオ少将に付き添い、ハンブルグの兵士達と合流し、安全な道で王国へ避難することを補助しなさい」


「!?」


「ぎょっ!リ、リータ殿下ぁ…」


「何よ?そもそもパオ少将単独でハンブルグまで辿り着けるの?それにハンブルグに到着した後もフォッサ少尉のような知恵者がいないと臨機応変に立ち回れないじゃない?」


「……は、はんろんできない…_| ̄|○」


リタさんの辛辣な物言いにがっくりと肩を落とすパオっち


「…はっ!必ずやその任、果たしてまいります!」


力強くリータ殿下に敬礼するリアナさん。



「ははは、素晴らしい絆だねぇ…僕もそろそろ嫁の一人でももらおうかなぁ」


そんな2人のやり取りを茶化すベタンクール都督


「そしてあなたはどうするの?」


ベタンクール都督に問うリタさん


「そうですねぇ。王国へ避難するにも王国人がいたほうがいいでしょう。僕もマルディーニ少将に付いていきますよ」


「……!そう…助かるわ…」


「ははは、なら貸3つにしてもらったぶんをゼロにしてもらっても?」


「パオ少将達が安全に皇国に戻れたらチャラでいいわよ」


「なんと!これは粉骨砕身で挑まねば!ははは!」


大きな声で笑うベタンクール都督


これで話はまとまったな。


「バルター将軍…馬や馬車は借り受けられるかしら?」


「……正直…お渡しできるのは、ハンブルグからの行軍で貸したのと同程度だ」


ハンブルグからの行軍で借り受けたのは、馬車1台に馬20頭


各小隊長が乗れるくらいの数だった。


「まぁないよりましか…ヒルちゃん、先導をお願いできる?あなたが適任よ」


「…承知しました」


帝国人で土地勘のあるヒルデガルドが先導なら道に迷うこともないだろう。


これで方針は固まったな。


これまでの話し合うを踏まえて、下記のように分かれて皇国への帰国を目指すことになる。


ノースガルド組:リータ殿下 アウレリオ准将 ヒルデガルド 皇軍50名

サルトリオ侯爵 外交使節団100名

シリュウ准将 ベアトリーチェ少尉 海軍400名


ハンブルグ組:パオ少将 リアナ少尉 ベタンクール都督 ジョルジュ大佐 海軍80名







「では早速動きましょう。必ず皇国へ帰るわよ」



リタさんが僕達全員に命じた。




そして僕達の短いようでとても長い逃走劇が始まった。


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