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第21話 『おじいちゃん』

烈歴98年6月13日 帝都シュバルツスタット シュバルツ城 客室


午前はリタさんとハインリヒ皇子の鮮烈な会談の後に、カチヤ将軍に捕まった僕はクタクタになるまで仕合に付き合わされた。


カチヤ将軍の得物が大剣ということもあって、訓練用の武器ではなく、各々の愛用の武器で打ち合うというかなり本格的な仕合だった。


もちろん親善的な仕合なため、お互いが本気ではなかったものの、かなり高度な打ち合いを経験したため、僕自身かなり有意義な仕合であったと感じた。


でもカチヤ将軍は体力お化けで、昼過ぎから打ち合って日が沈むまで打ち合っていた。


日も沈んだから「今日はこれくらいに…」と逃げようとしても「まだまだ!体あったまってきたところだ!」と恐ろしいことを言うので、適当な所要をでっち上げて逃げてきたのだ。


怖すぎる。カチヤ・シュバインシュタイガー…


そんなこんなで夕食の後、湯浴みをして、寝巻に着替えた僕は完全にお休み気分であった。


「ビーチェ~…疲れたよぉ…」


そう言いながら、ビーチェの腰に抱き着く僕


「うむ。お疲れ様なのじゃ、カチヤ将軍との仕合は見事であったぞ」


抱き着いた僕を優しく抱きしめ、頭を撫でてくれるビーチェ


ぐへへ、たまりませんな…


そんなこんな部屋でイチャイチャしていると、部屋の扉がノックされた。


こんな夜更けに誰だろう…


「はーい。今開けますー」


そして扉を開けると、意外な人物が来訪してきた。


「……シリュウ・ドラゴスピア…?」


「はい、そうですけど…あなたは確か…ゲルト・ミュラーさん?」


尋ねてきたのは十傑第2位『白虎』ゲルト・ミュラー将軍だ。


特徴的な白髪に、白い肌…折れてしまいそうな華奢な体をしている男性で、容姿は中世的だ。


こうして話してみるとかなり覇気がないようにも見える。


「……ついてきて……奥さんも一緒…」


「は、はぁ…」


変な声で返事してしまう僕


「わ、妾もですか?()()()()()()()不格好なので…着替えを…」


ビーチェも困惑している。


「……だいじょうぶ……そのままで…」


か細い声だけども、有無を言わさない迫力があるミュラー将軍


「は、はあ…」


「…とりあえずついていくしかなさそうじゃのう…」


諦めて僕らは寝巻の格好のまま帝城をミュラー将軍の先導で歩いた。


帝城内はほとんど明りが消えており、ミュラー将軍の持つ蝋燭を頼りに僕らは進んでいく。


そして昼間は立ち入れなかった帝城の奥へと進んでいく。


この先は明らかに皇族の私用領域じゃないっすかねぇ……


淡々と奥に進んでいくミュラー将軍に無言でついて行く僕ら


そうして、ミュラー将軍が一つの扉の前で止まる。


扉自体は普通の扉で、ここが何か特別な部屋だとは外見からは伺えなかった。


「…この中…入る…じゃあ…僕は寝るから…」


そう言って、手を振りながらゆらゆらと去るミュラー将軍


何だったんだ…あの人…


「どうやらこの中に妾達を招いたお方がいるそうじゃな」


「う~ん、普通は罠と警戒するけど…ミュラー将軍が案内役ならこんな回りくどいことしないよね」


「じゃろうな。ミュラー将軍を暗殺に仕向ければいい話じゃ。十傑第2位の御仁より強いお人などこの帝城にはおりはせんじゃろうし…」


「じゃあとりあえず入ろうか…一応ノックだけして…」


コンコンと扉をノックする僕


そしたら中から「入るがよい」と声が聞こえたので扉を開けて入る。


すると中は外見からは想像できない程広い私室で、豪奢な調度品に溢れていた。


そして中央には天蓋付きの豪華なベッドがあり、そこには1人の老人がいた。


「ほっほ、よく来た。会いたかったぞシリュウ・ドラゴスピア」


老人はそれは立派な髭を蓄えていて、白髪の上品そうな人だった。


「こ、これはどうも…」


なぜか僕のことを知っているこのご老人は一体誰なんだ…


ビーチェに聞こうとビーチェの方を向くと、複雑そうな顔をしてその老人を見つめていた。


「ビ、ビーチェ…?」











「あなた様は……カール・シュバルツ・ラインハルト皇帝陛下ですね?」








えっ










えええええええええええええええええ!!!







こ、この人が帝国の現皇帝!?





「いかにも朕がカール・シュバルツ・ラインハルトその人である。よく来てくれたベアトリーチェ・ドラゴスピアよ」



「も、勿体なきお言葉…!」


ビーチェが恐縮しながらカーテシーをするが、僕は頭の中がめちゃくちゃだ。



まさか皇帝陛下自ら、僕とビーチェを呼び出すなんて……


何が狙いなんだ…?



僕がそう警戒心バリバリにしていると、カール皇帝は優しい笑みを浮かべる。


「ほっほ、そう構えるでない。お主らに何も危害は加えぬ。ただ朕がお主に会いたかったのじゃ」


「ぼ、僕にですか?」


「そうじゃ…もっと近う寄れ…そう…良く顔を見せよ…」


そう言われたので、僕はカール皇帝に近づく。


そしてカール皇帝の手が僕の顔に届くまで近づくと、カール皇帝は僕の顔を手で掴み、顔の隅々までを確認するように見た。


「…おお……!そなたは…確かに…!…この奇跡を女神に感謝しますぞ…!」


そう言って目に涙を浮かべる程感動しているカール皇帝


な、なんで…僕の顔がどうしたの…


僕はこの状況についていけていなかったが、ビーチェの顔を見るとやはり複雑そうな顔をしている。


どうやらこの状況の意味を知ってそうだ。


そしてカール皇帝もそれに気づく。


「…ほう…シリュウは知らぬが、そなたはどうやら知っておるようじゃのう」


「ええ…」


え?何が?


何を知っているのビーチェさん!


「ほっほ、よいよい。朕から説明しようぞ」


「………お願いいたします」


なぜだか通じ合っている2人


この状況はなんなの…



「シリュウや…父の名は覚えておるか…?」


「そりゃあ…タラン・ベッケンバウアーです」


「そうじゃ…タランはのう……朕の息子じゃ」


「へぇ~そうなんですか。……ん?……と、ということは……あなたは……!」


「うむ。朕はそなたの祖父である。孫の顔が見れてこれほど嬉しいことはないぞ」


へぇ~この人僕の祖父なのかぁ……













えええええええええええええええええ!!!







「ええええええええええええええ!!!!」



「ほっほ、愛い奴よ。おじいちゃんと呼んでくれ」


「いやいやいやいやいやいや!て、帝国のこ、皇帝が僕の祖父!?そ、それに父さんが皇帝陛下の息子ぉ!?」


「そうじゃよ。タランはお主の母マリアと結婚したいがために、皇子の地位を捨て皇国へ亡命したのじゃ。そして皇国で生まれたのがお主、シリュウ・ベッケンバウアーじゃよ」


おおう……規格外なのは母さんと思っていたけど…父さんも規格外の人じゃないっすか……


まさか僕の祖父が帝国の皇帝だなんて…


驚きすぎて、心臓の鼓動が激しくなっていた。


でも祖父なのか、この人が…


それはそれは驚いたもののそれ以上に僕の中にとある感情が溢れていた。


それは喜びだった。


「そうか……僕にもまだじいちゃん以外の肉親がいたんだ……帝国の皇帝とは思わなかったけど会えて嬉しいです『おじいちゃん』」



「ほっほ!朕も可愛い孫に会えて嬉しいぞ」






シリュウ「ミュラー将軍をお使いにするくらいだから普通に考えてとんでもなく偉い人に決まっているよね」


ビーチェ(ミュラー将軍が来た時点で察しがついたとは言えぬなぁ…)

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