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第10話 新生ヒルデガルド


烈歴98年 6月6日 リアリ・バルカ号 甲板


外交使節団一行の艦隊がルセイユを出航して数日が過ぎた。


航海は特に大きな問題もなく、順調に進んでいた。


僕もたまに現れる魔獣を掃討したりして、体を動かせて、エゴンとの戦いで傷ついた体の復調具合を確かめていた。


今は特にすることもないので、甲板の広いところで槍を振っている。


ビーチェはリアナさんと帝国での行軍計画の細かいところを調整してくれていて、パオっちは船首に座って、魔獣が出たら討伐していた。


リタさんとアウレリオ准将は外交省の文官達と帝国での交渉内容の調整でずっと会議室に引きこもっている。


ジョルジュ大佐は艦隊の指揮をずっとしてくれていて、今も艦橋に鎮座している。


こう見ると平時の海上は、本当に役立たずの僕であった。


くすん


そんなことで甲板で槍を振っていると、意外な人物が近づいてきた。


「……皆忙しそうなのに…あなたは暇そうね……一応准将じゃないの?」



アウレリオ准将の補佐官になったヒルデガルドだ。


前は紅色の髪を後ろで括っており、男性物のスーツを着ていた男装の麗人というべき風貌をしていたが、今は金色の髪を下ろしており、眼鏡を掛けていた。


服は皇軍の軍服を着ていて、スカート状の腰巻きにズボンを着用する女性兵士の格好をしている。


前と比べるとまるで別人のようだ。


「まぁ僕は戦うしか能がないからね。頭を使うことはビーチェに、海のことはジョルジュ大佐にお任せさ」


「…適当な上司ね…」


あまりの辛辣さに泣きそうだが、僕は負けない。


「適材適所と言って欲しいな。できないことをできないと言うことはとても大事じゃない?」


「……確かに口だけ出す無能な上司も、できないことを背伸びしてやろうとする部下も何人か斬ってやったわね…」


共感してくれているが、後半部分は僕は共感できない。


そんなことで斬るなんて、実はこの人エゴン以上に短気なのでは?


怖い怖い


「それにしても髪の色が変わると別人だね。これなら帝国に行ってもバレないんじゃないかな」


「……そうね。紅色の髪とスーツは私の代名詞だったもの。ラーム家の人間でもわからないと思うわ…」


「まさか髪を紅色に染めていて金色が地毛とは…アウレリオ准将と同じ色だし、お似合いだね」


「……あなた…なかなか良いことを言うじゃない…見直したわ」


アウレリオ准将とお似合いと言っただけで、好感度爆上がりである。


ちょろい


ヒルデガルドのここ数日の行動はまさにアウレリオ准将にベッタリだった。


呼ばれればすぐに駆けつけ、呼ばれなくても側にいる。


まるで懐いた猫のようだ。


今はアウレリオ准将はリタさんと共に文官達と会議をしていて、機密のためヒルデガルドは入れなかったようだが…


「いやいや、本当のことだよ。それにアウレリオ准将は特定の相手いないみたいだし、ライバルもいないからかなり勝算あるよ」


「……あんなに綺麗な顔をしていて、強くて、素敵な人格者なのに?皇国の女の眼球は石でできているのかしら?」


いやもう盲目すぎるでしょ


確かにアウレリオ准将は素敵な方だとは思うけど


「…いや…特殊な事情でね。アウレリオ准将は皇国では性格が悪いように演技しているんだよ。だからアウレリオ准将の国内での評判は最悪で、誰も寄りつかないんだって。君の見ているアウレリオ准将は素の顔なんだけど、実はほとんどの人が知らない顔なんだよ」


「……!そうなのね…そうよね…あれほどの人、普通ならほっとかれないもの」


安堵しつつも、アウレリオ准将の素の顔を知る数少ない人だと知って嬉しそうなヒルデガルド


僕ももう少しヒルデガルドの好感度を上げておくか。


「それにアウレリオ准将に好かれるならいい方法があるよ」


「……!!な、なに!お、教えなさいよ!」


僕の胸ぐらを掴み、前後に揺らして回答を促すヒルデガルド



食いつきが凄いよ、ヒルデガルドさん


「アウレリオ准将は自分を女手一つで育ててくれたお母さんを何より大事に思っているんだよ。だからそのお母さんと仲良くなれればいいんじゃないかな」


「…!将を射んと欲すれば先ず馬を射よ…素晴らしい案だわ…早速皇国に戻り次第お会いしないと…!」


今にも駆け出しそうなヒルデガルド


しかし皇国に戻るまでもない。


「あれ?知らなかった?アウレリオ准将のお母さんはこの船に乗ってるよ。レジーナさんっていって、リタさんの侍従(お茶飲み友達)してるよ」


「……!あ、あののほほんとした方が…!?……シリュウ准将…情報感謝するわ…」


「いいよいいよ、それに僕のことはシリュウでいいよ。別に君は部下でもないし」


「…いえ、リオ様があなたのことをそう呼ぶ限り、そう呼ばれてもらうわ…じゃあ私は急用ができたからこれで…」


そう言って消えるようにして去って行くヒルデガルド


レジーナさんのところへ行ったかな。


あの2人、うまくいくといいね




ヒルデガルド「あ、あなたが…リオ様のお母様!」


レジーナ「あらあら〜お人形さんみたいに可愛らしい子ね〜?」


ヒルデガルド「わ、私は新たにリオ様の副官として登用されたヒルデガルドという者です!」


レジーナ「まぁ!リオちゃんの新しいお友達ね!よろしくお願いします〜」


ヒルデガルド「こ、こちらこそ!末長くよろしくお願いします!」

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