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第8話 王国での戦果


烈歴98年 6月4日 深夜 海軍旗艦船「リアリ・バルカ」号 特別会議室



夕方に船に乗り込み出航して、船内で夕食をいただいた後に僕とビーチェとパオっち、リアナさんのシリュウ派の4人はリタさんに呼ばれて、船内の特別会議室に来た。


会議室はリタさんとアウレリオ准将と外交大臣であり外交使節団の責任者かつ表向きは皇王派で実は皇妹派のサルトリオ侯爵もいた。


これはどうやら皇妹派の集まりらしい。


「夜分遅くにごめんなさいね。王国での総括を一緒にしておきたくて」


一言謝りを入れるリタさん


「いえ、全然大丈夫です」


僕は4人を代表するようにして答える。


「そう言ってもらえると助かるわ。早速だけど王国での交渉結果をまとめるわ。お願い」


リタさんはそう言って、アウレリオ准将に合図をした。


「結論から述べるとボナパルト王家とは無条件同盟、プラティニ家及びポアンカレは条件付き同盟、ピケティは決裂、タレイランは敵対となった」


おお!王国の五大勢力のうち3つと同盟を結べるなんて!


これは大戦果じゃないだろうか。


それにピケティとタレイランとはシリュウ派の心情としては組みたくなかったので、満点の結果と言える。


「これはあなた達4人のおかげよ。本当にありがとう」


「いえ、僕は何も…」

「わ、妾も何もしておりませぬ!皇妹殿下のご尽力の結果かと存じます」

「オイラ…ポアンカレに揉みくちゃにされただけろん…」

「あわわ…わ、私もパオに引っ付いていただけで…」


僕らは一様に否定する。


それをアウレリオ准将が否定した。 



「何をいう。シリュウ准将は魔猿を討伐し、プスキニアの氷塊を砕きあの場にいた全ての人間の命を救った。そして帝国の十傑エゴン・レヴァンドフスキを捕縛した。ベアトリーチェは帝国十傑ヒルデガルドの襲撃を耐え忍び、シャルル王とリタの窮地を救った。マルディーニ少将は剛猿を討伐することで、プラティニ公爵家の心象を良くし、ポアンカレとの交渉もマルディーニ少将なくしては成立しえなかった。フォッサ少尉はポアンカレとの交渉で海域における王国戦線を実質的に終結させるという皇国にあまりにも大きな利益をもたらした。これだけの功績を見ると、我々の方が何もしてないと恥じるばかりだ」


アウレリオ准将が僕らの功績を詳らかに褒めてくれる。


「そうよそうよ。それにシリュウちゃんとマルディーニ少将はある程度やってくれると思ってたけど、まさかベアちゃんとフォッサ少尉まで凄い功績を挙げるんだもの。驚いちゃったわ」


リタさんも目を見開いている。


「皇国の若き風は、役立たずの老人には冷たく感じるほどさ」


相変わらず芝居じみた台詞を放つサルトリオ侯爵


「ライモンドはもう少し働きなさいよ。ピケティとの交渉も早々に打ち切っちゃって」


にべもなく言い放つリタさん


「いや、サルトリオ侯爵は本来の外交使節団の責任者なので、かなり多忙だったのでは?それに加えてピケティとの交渉っていつするんですか…」


僕はサルトリオ侯爵に同情しながら言う。


「ああ!この若者のなんと温かいことよ!それに比べて人をまるで水車の如く回そうとするこのご婦人を救いたまえ!」


「うっさいわねー。何よ、ピケティとの交渉が午前2時から始まったことをまだ根に持ってるの?小さい男ね」


「いや、それはかわいそすぎるでしょ!!」


僕は精一杯の声でツッコむ。


リタさんや…恐ろしい予定の組み方しているな。


午前2時から会議なんて、眠過ぎて何を話しているかわからないぞ。


「サルトリオ侯爵、それはリタなりの気遣いなのだろう」


「私ではなく、マルディーニ少将とフォッサ少尉に対してだろう?」


ん?


どういうことだ?


ピケティと午前2時から交渉することがなんだパオっちとリアナさんへの気遣いなんだろう。


僕が疑問に思っていると、僕専用最強美人参謀がこそっと教えてくれた。


「ピケティとの交渉を深夜にすることで、暗に『貴方達とは話す気はありません』というメッセージを伝えているのじゃよ」


なるほど


パオっちもリアナさんもピケティを嫌っていたからね。


「まぁ使えない外交大臣より優秀な若者を気遣うのは普通じゃない?それに今回フォッサ少尉がもたらした戦果は本来あなた達外交省が引っ張るべきのものでしょう?」


「それを言われると耳が痛いですな。しかし我々にはポアンカレとの交渉は無理でしょう」


「どうしてよ?」


「簡単な話です。マルディーニ少将を交渉の材料にできる方などマルディーニ少将が愛するフォッサ少尉だけでしょうに。この方法はフォッサ少尉にしか取れなかったはず。違いますか?マルディーニ少将」


「違わないにー。オイラはリアナの言うことだから従っているだけろん」


「パ、パオぉ…」


おおう…リアナさんが涙目になっている。


そして目がハート型だ。


続きは自室でお願いしたい。


「確かにそうね。ポアンカレの条件であるマルディーニ少将の定期派遣は私からゾエちゃんに責任を持って言うから安心してちょうだい。まぁゾエちゃんが怒ることなんてないと思うけどね」


「おろろん。タレイラン、ピケティの背後をポアンカレが突いてくれるなら、王国海域の戦闘は段違いにやりやすくなるはずにー。リアナの大手柄ろんよ」


「私は…どうすればパオが安全になるかなって思って…今思えば公爵家当主相手に宣戦布告しろって…あわわ…私はなんということを…」


リアナさんが自分のしたことを思い出して、慌てている。


それをパオっちが肩を抱きながら宥めていた。


本当にお似合いの2人だな。


そんな2人のやり取りを微笑ましく見ているとビーチェがリタさんたちに質問をしていた。


「一つ気になるのですが、プラティニの同盟の条件とは何なのでしょうか?」


「それはね、ノースガルドを取り込んで欲しいそうよ」


「ノースガルド?なんでノースガルドが出てくるんです?」


僕はまた疑問が出てきたので素直に聞いた。


これもまたアウレリオ准将が答えてくれた。


「プラティニ公爵家の領地は王国の北部一帯で北は帝国だが、西はヘスティア神国、そして一部だがノースガルド領とも接する部分もあるのだ。プラティニ家は帝国とやりやっているうちにノースガルドから横っ腹をつかれるのを恐れているのだ。その憂いを断つために我々にノースガルドを取り込んでほしいと提案してきた」


「ノースガルドは私に伝手があるから取り込むのはそんなに難しくないわ。ノースガルド当主の偏屈爺さんは実は誤解されやすいだけでいい人だから」


ノースガルドか…


なんかじいちゃんは嫌っていたなぁ。


めちゃくちゃ帝国に攻められているのに援軍を拒否したり、援軍に行ったのに『兵糧だけ置いていってもらって結構、後は我々で十分だ』補給部隊扱いされたり…


「あ、あのご当主がいい人…?妾にはにわかには信じられませぬ…」


ビーチェが信じられないという顔で言う。


「会ったことあるの?ノースガルドの当主に」


「社交の場で何度かのぅ…妾が武闘大会に優勝した時に、『女子が剣を振るうなど恥を知れ。屋敷の庭で俗な話に興じているがいい』と言い放ちおって…!今思い出しても腹が立つ!」


ビーチェがぷんぷんと怒っている。


このビーチェはなんか久しぶりに見たな。


そのビーチェを見てリタさんは苦笑いをしている。


「あの人なりにあなたを気遣ったのよ。その言葉を意訳すると『女子のか弱い身で剣を持たなくていい。そういうことは男に任せておきなさい。そんなことせず友達や家族とお茶を楽しんでいればいいんだよ』ね。あの人絶望的に厚意が伝わらないから」



わかるか!!!


「ほぼ原型を留めてないですよね?わかるはずないですって」


「直接会ったらわかるわ。まぁあの人ノースガルドからほとんど出ないから会う機会はそうそうないだろうけど…」


「へぇ。何にせよ、会ってみたいですね。皇国の番人と称されるノースガルド公爵に」


「まぁそのうちにね。話が少し脱線したわね。まぁ王国での交渉での成果はこんなもんね。次の議題に行くわ」


「次の議題?」


「リオ」


「承知した」


そう言ってアウレリオ准将は外に出た。


そしてすぐに縄で縛られた2人の男女を連れてきた。


エゴン・レヴァンドフスキ


ヒルデガルド・ラーム


僕らを襲撃したものの返り討ちに遭い、皇妹派の捕虜となっている2人




「さぁ、裁判の時間ね」


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