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第29話 ボナパルト王城の戦い②〜シリュウ・ドラゴスピアの初陣


ベタンクール都督の掛け声と共に、僕は全身に灰色鎧を纏い、大人の身の丈2人分ほどの巨大な戦斧を担いでいるエゴンへ突撃をした。


全力で駆けて、その勢いのままに槍をついたが、戦斧を盾に防がれてしまう。


「おうおう!活きのいい奴だなぁ!おい!わざわざそっちから来てくれるとは話が早いぜ!」


エゴンは僕と戦えることが嬉しいのか、大きな声で答える。


しかし顔は鎧で囲われているため、表情は見えない。


だがおそらく笑っているのだろう。



「……ここで加勢するのも無粋ね…私は王の首を取りに行くわ…!」


そう言い残して紅の髪の毛を後ろに束ねた男装の麗人、ヒルデガルドはシャルル王の元は駆け出して行った。


ベタンクール都督の読み通りだ。


「ちょ、ちょっと!あたいの護衛は!!あたいの氷塊をぶっ飛ばすやつの相手なんてまっぴらごめんよ!」


空色と青色のショートカット、王国の一級魔術師の証である赤いローブを来た魔術師、プスキニアはそう言って、空中に氷の道を作り出し、その上を滑ってその場から逃げるように離れた。


(す、すごい…あんな使い方もあるのか…!)


しかしプスキニアは逃げた先で大きな炎の壁に阻まれた。


ベタンクール都督の炎の魔術だ。


「おいおい、こんなことをしでかしておいて、はいさようならと行くわけないだろう?お尻ペンペン千回の刑は受けてもらわないと」


「リ、リクソン…!あんたはほんとに昔から鬱陶しいわね!それにあたいはもう23よ!子ども扱いすんな!」


「ははは、僕にとっては君はいつまでも可愛い後輩さ。でもこの場では反逆者だからね。昔馴染みのよしみで腕2本に負けてあげるよ」


「腕なくなっちゃうじゃない!きいいい!こんな壁凍らせてやる!」


どうやらベタンクール都督とプスキニアの戦いも始まったようだ。


「これで邪魔は入らないね。えーとエゴンさん?だっけ、その首頂戴つかまつる」


「面白れぇ…帝国で面と向かって俺様の首を取るなんて言う奴はてんで減っちまったからなぁ!楽しませてくれよぉ!ドラゴスピアぁ!!」


そう叫びながらエゴンは戦斧を僕に叩きつけた。


ドゴオオオオン!!!!


僕はその一撃を躱したが、戦斧の一撃で地面に10メートル程の亀裂が入った。


(な、なんて膂力だ!じいちゃんと同等…それ以上かもしれない)


あの一撃を受けてしまっては間違いなく絶命する。


エゴンの攻撃は受けてはいけない。


そう考えた僕はエゴンの攻撃パターンを見切るため、受けの体勢に入った。


「おいおい?さっきの威勢はどうしたぁ!踏み潰すぞ!」


巨大な戦斧を片手で振り回しながら、僕を捉えようとするエゴン


何度か躱したところで、エゴンの振りが大きくなり大きな隙ができたのを見て僕は龍槍をエゴンの左脇腹を目掛けて突いた。


するとエゴンは鎧で覆われた左腕で槍を受けようとした。


(貫ける…!)


僕はそう確信したが、エゴンは左腕をコロのように回転させ、僕の槍を受け流した。


「……な!?」


「危ねぇ、危ねぇ…!ちぃと隙見せたら急所狙ってくるなんざ油断ならねぇ野郎だな…」


危ないと言いつつもどこか余裕を漂わせているエゴン



この男、ただの力自慢の戦士じゃない。


僕の槍を躱した繊細な受け身一つ見ても、武術師としての技量は底知れない。


「そろそろ、本気で行くぜぇ?」


そう言ってエゴンは戦斧で僕を攻撃する。


しかしその振りは先ほどまでと違いコンパクトになり、速さも増していた。


(ぐっ…!…戦闘スタイルを変えられるのか!?見た目によらずなんて器用な戦士だ!)


「おらおらおら!!避け切ってみせろや!」


エゴンが挑発しながら、猛撃を僕に浴びせる。


(……これは避け切れない!)


ついにエゴンの横振りの一撃が躱せず、エゴンの一撃が僕を捉えた。


ガキィイン!


僕は龍槍の柄で目一杯受け止めたが、エゴンの一撃で吹っ飛ばされてしまう。


ドゴォン!


そして断崖絶壁の壁に背中からぶつかってしまった。


「いててて…あの振りでここまで飛ばされるのか…なんて膂力だよ…」


僕は壁にぶつかった背中をさすりながら、起き上がる。


幸いダメージはそこまでない。


「シ、シリュウ…!」


遠くからビーチェの心配そうな叫び声が聞こえたので、槍を降って無事を知らせる。


さて…どうしたものか…


あのエゴンという男は、間違いなく僕にとって、今まで命のやり取りをした戦いのなかで、最も強敵だ。



あの戦斧の猛撃を躱しながら槍を入れるのは一苦労だ。


槍を入れても巧みな受け身で受け流される。


隙を見せれば、信じられないほど重たい戦斧の一撃が飛んでくる。


これが帝国の十傑


武術大国であり、この大陸最大の人口を誇る帝国においてさえ、10人しか与えられない達人の称号


凄いな…


この大陸にはこんなに強い人があと9人もいるのか!!


僕がそう感動しているとエゴンは引き攣った笑いを浮かべている。


「おいおい…俺様とこんなに撃ち合って、なんでそんなガキみたいに無邪気に笑いやがる…?てめぇ、頭のネジぶっ飛んとんでんなぁ…」


「え、笑ってた?」


僕はエゴンの言葉があまり理解できなくて思わず聞き返した。


「こいつ…自覚ねぇのかよ…なんて危ねぇ奴だ!ここで仕留めてやる…!」


エゴンはそう言って僕にまた戦斧の猛撃を振るう。


僕は躱すのを基本に、受けれそうな一撃は槍で受け、なんとかエゴンの猛撃を捌く。


右に避け


左に転身


下にしゃがみ


上に飛ぶ


僕は縦横無尽に空間を駆け巡り、エゴンの猛撃を捌き続けた。


「この…!ちょこまかと…!いい加減諦めやがれ!」


エゴンはイラつきながらも攻撃を続ける。



そうだ。



これでいい。


受けるのに専念すれば、いかにエゴンがコンパクトに戦斧を振おうが、僕に戦斧は届かない。


そして僕に当てようとすると、その一撃には力がなく、槍で受けられる。


これを続けるんだ。


これが勝機


エゴンの猛撃を捌き続けていると、もとの戦闘場所からかなり離れてしまい、もうビーチェやベタンクール都督の戦闘の様子もわからない。


それでも僕はエゴンの攻撃を捌き続けた。


するとエゴンの猛撃は少しづつ止むようになった。


あんな全身鎧で馬鹿でかい戦斧を振り回しているんだ。


体力が削られるに決まっている。


攻撃の合間に少し小休止を挟むエゴン


しかし僕はそれを許さない。


「あれ?もうへばったの?帝国の十傑ってこの程度でバテるんだ。なんか大したことないんだね」


僕は子どものような挑発を行う。


普通なら乗ってこないが…


「クソガキが……!……十傑を舐めんじゃねえぞ!ぶっ殺してやる!!」


怒り狂うエゴン


怒りのまま僕に向けて大きく戦斧を振りかぶった。


(………好機!)


僕は大きく振りかぶって、隙だらけのエゴンの脚を目掛けて、龍槍を投げる。


「投龍!!」


ザシュッ!!


「ぐあああっ!!」


僕が投げた槍が、エゴンの左脚に直撃し、刺さった!


灰色の鎧の下半身の部分が砕かれ、エゴンの脚が晒される。


ビーチェの胴体ほどもありそうな丸太のような脚だ。


「く、くそぉ!なんて速ぇ投擲だ…!うらぁぁ!こんな槍なんざどっかいっちまえ!!」


エゴンは痛みを感じる素振りをしたが、左脚に刺さった槍を抜いて遠くへ投げ飛ばした。


「やるじゃねぇか……だか得物はもうないぜ?死にさらせぇ!!!」


左脚から血を流しながらも、猪突猛進してくるエゴン


しかし左脚を負傷して、踏み込みがかなり甘くなっている。


それでも僕が丸腰だからエゴンは構わず、戦斧を僕に目掛けて振り下ろす。


ドゴオン!


その戦斧を避けて僕はエゴンの左側に回る。


そして腰巻で隠れていた暁月を抜刀するように構える。


「な…!?…か、刀だと!!……させるか!」


唐突に出てきた僕の得物に焦るエゴン


そして僕がエゴンの首を見据えているのを見て、戦斧を高めに構えた。


それも狙い通り!


「残念!僕がいただくのはそっちじゃない!」


そして僕はエゴンの晒されている左脚の腱を目掛けて暁月を一閃する。


「閃光烈刃!!」



ザシュ!!


「ぎゃああああ!!」


エゴンの顔が苦痛に歪む。


さらに僕はその隙に右の腱に追撃を加える。


「もういっちょ!」



ザシュ!!


「ぎゃああ!!く、くそがぁ……!」


両足の腱を切られたエゴンはもう立てない。


「ふぅ…勝負アリだね。まだやる?」


「………抜かせ!脚を切られてどうにかなるか!……俺様の負けだ…首をもってけ…」


そう言って、潔く頭の鎧を外したエゴン


そこには40代くらいの紅髪で短髪の男性の顔があった。


それに左眼に大きな傷があり、ほとんど閉じている。


「潔いね。流石は名高き帝国の十傑だ。でももらうのは首じゃない」


「は?」


僕の発言の意味がよくわからなかったのか、呆けた顔で聞き返すエゴン



「全部もらう。ビーチェを殺そうとしたんだから首だけで済むとでも?まぁとりあえず寝ててもらおうか」


そう言って僕はエゴンの頭を掴む。


「お、おいおい!正気か!?よせ!?なにもしねぇって!」


「おやすみ、少しゆっくりしておきなよ」



そうして僕はエゴンの気が絶えるまで、エゴンの顔を地面に打ち続けた。



生捕り成功っと

パオ「う〜ん、魔力がある方向はわかるろん…でもそこへの行き方がわからないにー」


リアナ「空を飛んで上から見たらすぐわかるのにねー」



パオ「………リアナ、それ採用」


リアナ「パ、パオ?ちょっと?えっ//いきなりお姫様抱っこなんて…//」



パオ「ばびゅーん」



リアナ「きゃあああああ!!!」

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