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しゅぎょいしゅぎょい、門番弾け飛んじゃったよ、もうこれはガチでやばい感じだよ、超気持ちよくて、マジで昇天しちゃいそうだよ。もう大変だよ。
「いぎゃあああああああ!!」
爆発した同僚の破片を浴び、苦しそうにもがくもう一人の門番。
あーあ、凄い怪我してる。爆発の余波で燃えちゃってるし、皮膚が凄い燃えてる、可哀想、血もだらだらじゃないか。気持ちよさそうだけど、流石にああはなりたくないな、皮膚が垂れ下がってきてるし、もうあんな奇形人間じゃないよ。健康体じゃないやつは、とっとと死んでしまったらいいんだ。そうさ、生きてる価値なんてないんだよ、骨折くらいだったら許されると思うけど、それ以上に体が変形しちゃったやつは、街とか歩いてても気持ち悪いからすぐに死んでしまったほうが世のためだよ。
「しねい」
俺は男の首をふっとばした。
男は絶命した。
「はぁ、いいことしたな、不幸なやつを救ってやったんだ。俺はなんていいやつなんだ、もう自分で自分がすごいやつに思えてくるよ、ガチで興奮してきちゃうよ。さあて中まで進もうかね」
俺はようやく建物の中に入ることにした。
すごい速さで建物の中に入った。
中はすごく綺羅びやかでなんともかなりいい感じだった。
俺は中で盆踊りをすることにした。
けれども俺は盆踊りなんて生まれてこの方一度も踊ったことがない。見たこともない気がする。
しかし踊りと聞けば、真っ先に浮かんでくるのが盆踊りだ。むしろそれしか思い浮かばない。なぜだろう。なぜ見たこともない盆踊りというワードを俺は知っているんだろう。
まぁいいか、そんなことを考えたところで今後俺の未来に何らいい影響は及ぼさないだろう。それは必然であり、誰かが決めたことでもない。だから考える必要もない。
「よいしょ! よいしょ」
俺はとにかく踊った、狂うように踊った。
盆踊りのなんたるかはまるでわからないわけだから、それは有識者にしてみれば耐えれないほど意味不明な踊りだっただろう。場合によってはブチギレられているかもしれない。そのくらい、自分でも酷い踊りだという自覚があった。
けれども俺は踊ることをやめなかった。
そうすることでしか自分を表現できないと思ったからだ、俺は盆踊りにより生かされている。盆踊りを踊らない自分なんて、生きている価値がない。
体の一部を失った人と同じくらい、生きてる価値がないんだ。
だから仮におれの心が踊りを拒否したとしても、その思いをはねのけて俺は踊り続けないとならない。そうすることが俺が生きている唯一の理由だからだ。
「なんだ貴様! 何をしている!」
するとなんだか偉そうな感じの初老くらいの男が俺を見咎めてなにか言ってきた。
ああ、なんかすごくいい感じの服を着ているし、たぶんすごくいい感じの身分の人なんだろうな、すごく楽しいよ、すごく目にいいし、すごくいい気分になれるよ。身分が高い人というのは、動きとかもきちっとしてるし、なんだか浮浪者というイメージも全くないんだよな。ホームレスとか一番価値ないからな。その真逆にいる立場の人ということで、逆説的に株があがって最高の人間になるというわけだ。だから俺はこの人のことが好きだ。
「そうだ、俺は気づいた。俺はこの人のことが好きなんだ……」
「なにを言っておる! どこから入ってきたのだ、おい! 誰かこいつをつまみだせ!」
もう止められない、この思いを。俺はこの人に告白するんだ。
そしてすごく良い生活を送るんだ。
そうだな。なんだかすごく遠くに生きたい気分だな。もうすごく遠くで、この人と一緒に暮らしたい気分だ。そうだ、無人島とか良いかも絶海の孤島で、このおっさんと二人で楽しく過ごすんだ、楽しく海で泳いだり、バーベキューをしたり、歯を磨いたりするんだ。そしてわらのベッドで二人で笑い合いながら眠るんだ。ああ、楽しみだ、すごく楽しみになってきた。もう止められない、我慢出来ないよ。
俺は一瞬で、おっさんの前に躍り出た。
「おっさん! すきだ! 大好きだ! だから俺と結婚してくれ! 二人で幸せな家庭を気づいていこう」
「なんだこいつは。頭がおかしいやつだったか、おい、こいつは捉えて衛兵に付き出せ、この私の進言だ、極刑になることは間違いないだろうな」
「おっさん! 返事を聞けていません! 返事をしてください! 僕をあなたの妻にしてください! いえ、妻じゃなくてもいいです、夫でもいいです! そこは好きな方を選ばせてあげますので!」
「何してるんだ貴様! バーベル様に向かって!」
近づいてきた別の男が俺の腕を掴んできた。
それも激しく掴んできた。
な、なんだこいつ! 俺とおっさんの仲を邪魔しようというのか! あれ、でもこの男もなかなかにハンサムな出で立ちをしてるぞ。
ずきゅううううううううううううううううううううううううん!!
俺はときめくのを感じてしまった。
俺の胸が高鳴っている。
過去最大に高まってしまっている。
それは本当にやばいことだ、俺は本当にやばいことになっている。