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他の大陸を目指すことにした。
しかしなかなか進まない。体が進まないのだ。
肉体を、他の大陸に置くだけでいい。原理としてはそれだけのはずだった。
しかしその簡単な作業が、なぜか着工できない、進捗しない、運ぶことができない。
「ああ、なんで無理なんだろう。へんなでんぐり返しとか、そういうのばっかしてるのがいけないのかな。わかんないな。俺はただ自分の気の赴くままに行動しているだけ。そうなると必然的に俺が行きたいと思っている大陸にいけるんじゃないかと思うんだけどな。なんでこうなってしまうんだろう」
俺は体育座りをした。
そして泣いた。
しくしくと、女々しく泣いた。
そうだ、泣くくらいがちょうどいいんだ。泣いてすべてを破壊してやるんだ。そうして俺という人間の価値を高めていくんだ。俺は泣くことができる。それは素晴らしいことだ。人間として必要は要素、詰まる所のこころを持っているということの証明なのだから。
「うええええん! うええええん! いいぜ! 俺マジでいいぜ! このままどんどん泣いていこう! それが素晴らしい結果につながるはずだ。それこそがすばらしいはずだ。もっとジタバタしたほうがいいかー? その方が完璧になれるか? そうだな、そうしよう、いくぜ俺の本気モード、うわはあああああああああああああああああああん! ふはん! ふはん! ふはああああああああん! ちょへん」
俺は大泣きした。もうすべてを置き去りにする大泣きだ。これはもうとんでもなくすごいだろう。すごすぎて、ちょへちょへしてしまうだろう。もうそれくらい半端ないはずだ。そのはずだった。もう完璧すぎて、どうにかなっちゃうんじゃないかと思うくらいの完璧ぐあいだ。もう俺はどうにかなりそうだった。それが完璧なほどに俺だった。観測している自分が、どれほどの存在にまで上り詰めるのか、自分で興味が湧いてくるほどだった。いっそのこと現世から逸脱して、その後の自分がどのように映るのか遠くから見てみたいと思うほどだった。
「くすん、はぁ、もういいや、なくのマジで飽きてきたわ。もう最悪な感じだわ。勝ちでもう無理だわ、いいや、もう無理だから、全部無理だ。いいからいいから。もう気持ちよくなるしかないのか。もう本当に俺のこころを開花させていくしかないのかもしれないな。きもちよく、エクスタシーをいくのが大事なんだと思うよ」
マジで可愛くて、最高だった。
ほんとうに急にそんな気分になれてきたよ、泣いて、かわいいというのが結局一番なのかもしれない。それは本当に俺だけの感覚だった。俺だけがもてる貴重な感覚だ。
だから俺はこの感覚を大事に大事にしていかないといけない。それは絶対で、確実で、本当にいえることだ。俺にしかない、こと。それはすごいことなんだ。
「おれはすごいぞおおおおおおお! 誰よりもすごいんだあああああ!!」
俺は荒れ地を駆け回った。
すごすぎてもうそれくらいしかできなかった。
理性という理性がすべて吹き飛んでしまった。
ああ、かなしいなぁ。それは本当にかなしいことだなぁ。
「マジでそろそろ切り替えよう。ああ、もういつまでたってもこんなんじゃだめだからな。本当にこんなんじゃおしまいだ。絶対に絶対おしまいだから、絶対にだめだ。だめ、らめらめなんでしゅ。らめなんでしゅ。でっしゅ、でっしゅでしゅからあああああああ!!」
もうこうしてはいられない。俺はジャンプした。
今度こそ、絶対にほかの大陸にとんでやるんだ。それしかもうないんだ。俺にはそれしかなくてもうほんとにラメラメしちゃうんだ。
「とう!」
俺は両腕を広げ、空を飛んだ。
ぐんぐん加速し、一直線の光となり矢印と化す。
それは本当にすごいことで、俺は神秘的な存在になれたということだった。
それはたいへん光栄なことで、誇らしく、誰に対しても誇って芋もいいことだと思えた。
むしろそのくらいしないと、だめだ。
そのくらい誇れるようなことを俺はしているんだ。
そうだ、せっかくだからもっとこのすごさをいろんな人に見せつけよう、証明しよう。そうすることで、俺はもっと素晴らしい人間になれるはずだ。
とりあえず地面に突っ込もう。そうしよう。そうそう、それがいい。そうそうそう、そうそう! 思いつきやしたわ。完全に思いついてしまいやしたわ。もうこうしてやろう。はい、どがああああああああああああああああん!
俺は地面につっこんだ。そしておおきな大きなクレーターができた……かと思われたが、俺の威力がやばすぎたらしく、そのまま地面にめり込んでいっただけだった。
ああ、すごい、俺の鋭さが凄い、しゅぎょい、ってやつだな。もっと派手にいかないとぜんぜんらめらめですわ。恥ずかしくないのかなおれっち。こんなへたれではずかしくないのか? 絶対はずいだろ、なんでもっと、もっとだ。もっとおくまで突き進んでいくんだ。そうすることで、俺の凄さを証明できるんだ。
「あ、あれ、なんだかとっても熱くなってきたぞ? なんでじゃろうか」




