回想2
私はふうーとため息をついた。
回想から戻った私がいたのは公園だった。
公園の入り口付近でロンパカーに乗った3才ぐらいの男の子がおばあちゃんと遊んでいる。微笑ましい光景に笑みが溢れる。息子がまだ小さかった頃を思い出した。
私が見ていたのは白昼夢みたいなものなのだろうか。
しばらくブランコに座ったままぼんやりしていた。
父との記憶はここまでだ。もうこれ以上思い出せそうにない。父のことを知ろうと試みてみたけれど、後半のつらい記憶が邪魔をする。
姉が進学の為家を出ていき、父、母、私の3人暮らしになった。その頃の父は出世も出来ず、会社での居場所もなかったのだろう、だいぶ壊れていた。
いつも貧乏ゆすりをして、煙草を止めどなく吸い、目を血走らせて会社の人の悪口を言っていた。そして母とはお金のことで口論ばかり。親戚が顔を出しても声を荒げてばかりいた。
母はよく溢していた。
「お金を家に入れてくれない。」
「普通は薬を飲むと治るのに、飲まないから治らない。」
父は病院の薬を自分の判断で勝手に飲むのをやめていた。
そもそも病院にすら行かなくなっていた。
今となっては思う。
父は本能とでも言うのか、薬に疑いを持っていたのではないだろうか。薬を飲んでも治るどころか副作用で余計に辛くなり、自分が自分でなくなって行くような不安を誰にも分かってもらえず、たった1人で抱えていたのではないだろか。小心者の臆病な父だっただけに余計に…孤独だったのではないだろうか。
なんか重い。
私はため息をついてから立ち上がった。
いつまでもこうしていたら私は不審者だ。
公園を後にした。