再びの日曜日
庭先に来ている雀の声で目が覚めた。
何故か今日も日曜日で、やはり朝ごはんがなかなか出てこない。
痺れを切らした私はまた公園へと向かった。
公園には女の子が1人でブランコを一心不乱に漕いでいた。歳の頃は小学校4、5年生ぐらいだろうか。立ち漕ぎをしている。
あの子は…。懐かしさを感じで眺めていたら、スピードがグングン上がっていき、ブランコは頂点に達すると一瞬止まり、それから力を失った。
ガシャガシャガシャン。鎖が捩れて、女の子を乗せたままブランコは揺れながら落ちていく。
揺れがおさまって止まった時には、そこには私1人しかいなかった。しーんと静まり返った公園で狐につままれたような気分になった。
「幻だったのかな。」
つぶやいてみて、その声が少し成長していることに気づく。目線が先ほどよりやや高い。私、10才ぐらいになっている。不思議な気分だった。それからお散歩してから帰ろうと思った。
私は公園を出て住宅地の中を歩いた。
右手は雑木林で、溜め池があって、池には水草がたくさん生えていた。池の向こうには丘が広がっていて、丘の真ん中には大きな岩が鎮座している。
昔ピクニックをしに皆で行った。
あの頃私はまだ小学一年生ぐらいで、凄く遠い場所に感じたなあ。岩に登っておにぎり食べて楽しかったな。そんなことを思いながら、街路樹の葉が風にそよぐ音を聴き、その木漏れ日の揺らぎを感じながら家へと帰る。
いつも世界は綺麗で優しい。
「ただいまー。」
玄関を開けると、洗濯機の回る音と一緒にご飯のいい匂いが流れて来た。ガチャガチャと台所から食器の重なり合う音も聞こえてくる。
よし、ご飯できているな。
私は靴を脱ぎ、ついでに玄関の乱れた靴を全部揃える。玄関の靴を綺麗に揃えるのはいつからか私の役目になっていた。多分最初に揃えた時母に褒められたのがきっかけだろう。それで気をよくした私は調子に乗っていつも揃えていた。というか、母が喜ぶいい子でいたかったのかも知れない。
チロがどこへ行っていたんだと言わんばかりに玄関にかけて来て、吠えながらぐるぐると回る。
「ただいま。」
私は興奮するチロを抱き抱えた。
チロはベロベロ私を舐め回す。
朝ごはんはトーストにサラダ、紅茶と言う簡単な物だった。嫌いなパンの耳の部分をチロに芸をさせながら与えた。チロはもっと欲しいとお座りしながらワンワン吠えた。
話題は夏休みの旅行の話だった。
去年は近所のニ家族と一緒に海へ行った。
今年は従兄弟たちと尾瀬へ行くと言う。
叔父ちゃんの運転するマイクロバスで行き、途中河原でキャンプをするのだと言う。キャンピングカーなど洒落た乗り物を知らなかったあの頃、10人ぐらい人が乗れる叔父ちゃんのマイクロバスは、私にはワクワクする巨大な乗り物だった。
テンションが上がる。
ただその話題に父はいない。父はまた競馬にでも出かけているのだろう。
私たち家族の団欒、家族の会話はいつも母と姉と私の3人だけのものだった。
記憶にある限り、そこに父の姿はない。いたとしても一緒に会話をした記憶がない。
そして、父を含めた家族旅行はこの年が最後の年となった。