表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と父の長い1日  作者: HARUNE
4/8

再びの日曜日

 庭先に来ている雀の声で目が覚めた。

 何故か今日も日曜日で、やはり朝ごはんがなかなか出てこない。

 痺れを切らした私はまた公園へと向かった。 


 公園には女の子が1人でブランコを一心不乱に漕いでいた。歳の頃は小学校4、5年生ぐらいだろうか。立ち漕ぎをしている。

 あの子は…。懐かしさを感じで眺めていたら、スピードがグングン上がっていき、ブランコは頂点に達すると一瞬止まり、それから力を失った。

 ガシャガシャガシャン。鎖が捩れて、女の子を乗せたままブランコは揺れながら落ちていく。

 揺れがおさまって止まった時には、そこには私1人しかいなかった。しーんと静まり返った公園で狐につままれたような気分になった。

「幻だったのかな。」

 つぶやいてみて、その声が少し成長していることに気づく。目線が先ほどよりやや高い。私、10才ぐらいになっている。不思議な気分だった。それからお散歩してから帰ろうと思った。


 私は公園を出て住宅地の中を歩いた。

 右手は雑木林で、溜め池があって、池には水草がたくさん生えていた。池の向こうには丘が広がっていて、丘の真ん中には大きな岩が鎮座している。

 昔ピクニックをしに皆で行った。

 あの頃私はまだ小学一年生ぐらいで、凄く遠い場所に感じたなあ。岩に登っておにぎり食べて楽しかったな。そんなことを思いながら、街路樹の葉が風にそよぐ音を聴き、その木漏れ日の揺らぎを感じながら家へと帰る。 

 いつも世界は綺麗で優しい。  


「ただいまー。」

 玄関を開けると、洗濯機の回る音と一緒にご飯のいい匂いが流れて来た。ガチャガチャと台所から食器の重なり合う音も聞こえてくる。

 よし、ご飯できているな。

 私は靴を脱ぎ、ついでに玄関の乱れた靴を全部揃える。玄関の靴を綺麗に揃えるのはいつからか私の役目になっていた。多分最初に揃えた時母に褒められたのがきっかけだろう。それで気をよくした私は調子に乗っていつも揃えていた。というか、母が喜ぶいい子でいたかったのかも知れない。


 チロがどこへ行っていたんだと言わんばかりに玄関にかけて来て、吠えながらぐるぐると回る。

「ただいま。」

 私は興奮するチロを抱き抱えた。

 チロはベロベロ私を舐め回す。


 朝ごはんはトーストにサラダ、紅茶と言う簡単な物だった。嫌いなパンの耳の部分をチロに芸をさせながら与えた。チロはもっと欲しいとお座りしながらワンワン吠えた。

 話題は夏休みの旅行の話だった。

 去年は近所のニ家族と一緒に海へ行った。

 今年は従兄弟たちと尾瀬へ行くと言う。

 叔父ちゃんの運転するマイクロバスで行き、途中河原でキャンプをするのだと言う。キャンピングカーなど洒落た乗り物を知らなかったあの頃、10人ぐらい人が乗れる叔父ちゃんのマイクロバスは、私にはワクワクする巨大な乗り物だった。

 テンションが上がる。

 ただその話題に父はいない。父はまた競馬にでも出かけているのだろう。

 私たち家族の団欒、家族の会話はいつも母と姉と私の3人だけのものだった。

 記憶にある限り、そこに父の姿はない。いたとしても一緒に会話をした記憶がない。

 そして、父を含めた家族旅行はこの年が最後の年となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ