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私と父の長い1日  作者: HARUNE
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 私が生まれた時、父は何を思ったのだろう。正直父の為人はよくわからない。喜んでくれたのだろうか。

 結婚して家庭を持つのが当たり前の時代だったから、子供が生まれてくることに特に感慨などなかったのかも知れない。今となっては、もうわからない。解き明かす術なんてどこにもない。 

 少しの気怠さをまとった薄曇りのその日、私は昔住んでいた街へと車を走らせていた。長い事訪れる事のなかった私が育った街。ずっと避けてきたし、2度と訪れる事はないだろうと思っていた街へ。


 私は18才の冬まで両親とあの街に住んでいた。私と母は28年前のあの日、父を1人置いてこっそりあの家を出たのだ。以来、一度も帰る事はなかった。

 父が亡くなり、2年の月日が経ち、今初めて父と自分の過去に向き合おうと、私はハンドルを握っている。あの、苦く、切なく、だけど懐かしさに胸が締め付けられるあの街へと…。

  

 山の中の曲がり道を通り抜けると、子供の頃父の車で通ったあの団地へと登る坂道がぱあっと開けていた。懐かしさが込み上げる。子供時代の思い出が全部詰まった街。

 28年の時を経て、所々変わってはいるのに、何故だろう、あの頃の姿のまま私の心にダイレクトに入ってきた。思いはあの頃へと戻って行く。

 ずっと直視出来なかった。父が亡くなり2年経つが、父が死ぬまで住んでいたあの家は、父の死後も一度も訪れる事なく、手放してしまった。

 帰れなかった。帰りたい気持ちと、帰れない気持ちの狭間で、私は帰らない事に決めた。2度と帰らないだろうと思っていた。 


 家のあった場所には新しい家が建っていた。

 台所から聞こえる食器を洗う音、子供達の声が聞こえてくる。しばらくその場に佇んでいたけれど、人目が気になり、怪しまれる前にその場を離れ、懐かしい街並みを歩いてみる事にした。

 昔遊んだ空き地へと向かう。シロツメグサを摘んで、花冠を作ったり、近所のお姉さんお兄さんに押してもらって自転車の練習をした。たくさん転んで、かすり傷をつくったな等と回想していたら、空き地だったであろう場所には、民家が建っていた。駄菓子屋さんは無くなっていたし、雑木林だった所は住宅が軒を連ねていた。夏になるとカブト虫がとれたのになあ。月日の流れを感じる。少し寂しさを感じながら、その先を曲がると公園があったなと思い立つ。少しドキドキしながら角を曲がった。


 



 

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