始まりのパトロール
「今日の日誌がんばって」
そういって、先輩の甘木巡査部長から交番の日誌を受け取る。
「マジ今日もお疲れ様です!先輩の日誌書かせて頂いて『僕』幸せです!」
俺はそういってニコニコしながら、先輩のご機嫌うかがいをする。
「先輩に初めて着任した日に言われた『なにが経験になるかわからない!』今も胸に刻んでます!」
「だろ。お前はまだ新人だからな。いろいろやってみろ。じゃあ、俺帰るわ!」
そういってそのクソ野郎は帰り支度をはじめる。
「はい!頑張ります!」
俺は、交番の机に座り、今日の日誌に手を動かしながら、彼を目で見送る。
彼の姿が、交番から消えた後、巣の自分が帰ってくる。
「はあ、マジあのクソ警官最低!」
ぶつぶつ言いながら、彼の日誌を書く。
「なにが、先輩だ!あのタコ!てめえなんて地獄に堕ちろ!」
いろいろと今日あった日のことを適当に書く。
俺の名前は白井誠。新人警官だ。まだ着任して2年目だ。
はじめて警官になってからずっとこの調子である。
警官にも様々いて、悪どい奴らがたくさんいる。
まだ俺はいい方だと思う。
「はあーかけた。」
ある程度今日の彼の日誌をかくと、バタンと閉じる。
「おつかれー」
背後から女の子の声がする。
「松田さん!」
俺が後ろを振り返る。おかっぱ頭の女性がパンと両手をあわせ、
「いつも、ごめんね!今日ちょっと忙しくて、今日も当直変わってくれない?」と微笑みながらいってくる。
松田蓮子。同期の警察官だ。ある美人警官と友達で、その人の情報をもらうかわりに彼女のいうことをきいている。
「ああ、いいよ!俺暇だから!」
「ありがとう!」
そういって彼女は帰り支度をしはじめる。
「あとで、ビーナスのパフェ中の写メ送るね」
彼女は、俺のほうにきて耳元でそうささやくと、
「じゃあね」といって手を振る。
ビーナスとは俺の片思いの警官の愛称だ。
「ありがとうございます!」
俺は、嬉しさのあまり、敬礼をする。
彼女が去ったあと、俺は、ため息をつく。
「はあ。見回りでもいっとくかな。」
俺はとりあえず、交番の前にあった自転車に手をやると、夜の街へと走り出した。