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「一応会ったことはあるんだけど覚えてないかな?」
シュリさんが話しかけているのに、まだ固まっている。
「どうしようか…困ったな。やっぱり私は戻るよ」
「おーい。頭ぽんぽんするぞ」
「やめろ!」
ローズが復活した。頭ぽんぽんにはいろんな効果があるな。
俺が思っていた効果とは違うが…
「…失礼を。私はローズミリアン・ルイーズ・メアリー・フォン・ソーディアともうひま…申します」
長い名前は噛まずに言えたのに最後に噛んだ。
恥ずかしいのか顔を赤くして、下を向いている。
「丁寧な自己紹介ありがとう。でも、その名前をを呼ぶには少し不便だなぁ」
「ローズとお呼びください。シュリ様にお会いできて光栄です」
シュリさんは王女が敬語を使う存在なのか…
「私も王家の神童に会えて光栄だよ。ローズだね。そう呼ばしてもらうよ。私もシュリでいいよ。敬称なんかいらない」
「恐れ多いです。シュリ様と呼ばせてください」
「うーん…困ったな。王女に様付けされる身分ではないんだけど…」
「なにをおっしゃいます。シュリ様の数々の功績は、王家が足を向けて眠れないほどなのに。例えば…」
シュリさんの功績が聞ける。
実際よくわかっていないんだよな。なんか大人達はぼかすし…
「あぁ、やめてくれ。若気の至りなんだ。スカイやツバキ、ベルにも知られたくないんだ。秘密にしてね」
「了解しました。絶対に話しません」
なんでだよ!
こそっと聞けないかな…
うん。ローズの性格的に無理だな。
「うん。お願いね。恥ずかしいし、特にベルにはあまり聞かせたくないんだ」
「そうですね…失礼いたしました。それではカイと同じでシュリさんとお呼びしてもいいでしょうか?」
「うん。それでいいよ。ヴォル以外誰も呼び捨てで呼んでくれないな…」
シュリさんは悲しそうな顔をしていた。
「それなら今から俺が呼びますよ。シュリ。これでいいですか?」
シュリさんの顔が赤くなった。
もしかして俺に惚れたのか?
怒っていないことを祈りもこめて、こう思うことにした。
「ば、馬鹿ものっ!無礼だろうが。シュリさんが許しても私が許さん!!シュリさんとお呼びするだけでも私は緊張するんだぞ!」
なぜかローズが注意した。
「なんでローズの許しが必要なんだ?それにローズが緊張するからって、どうして俺も緊張しないといけないんだ?」
「なんだとっ!?」
「やめてくれないかな。やっぱりみんな、さん付けでお願いするよ。ツバキもいいかな?」
「えぇ、シュリはんと呼ばせてもらうわ」
「はい。今回もさん付けにします。もし呼び捨てが良かったら言ってください」
「そうするよ…ローズもありがとう。気持ちは嬉しいよ。でもローズも私の功績とかそこまで気にしないでくれると嬉しいかな」
「はい。努力します」
「あの…」
ベルジーナが手をあげていた。
「あぁ、ベルは普段通りお師匠様でいいよ」
「感謝いたします」
ベルジーナはホッとしていた。
俺も一応弟子なんだけどな…
『それなら、なんで呼び捨てにするんじゃ?』
『あっ!そうだな。ヤッバ…それじゃあ、やっぱり怒っていたのか…』
『はぁ…もう好きにするんじゃ』
パンっ!
シュリさんが手を叩いた。
「こういう話はこれくらいにしよう」
「そうしましょう。シュリさんとお話しできるなんて夢のようです」
「固いな。もっと友達と話すみたいに喋ってよ。スカイとベルは普段通りでいいから…」
「感謝いたします。お師匠様」
「分かりました」
ツバキとローズは考えこんでいた。
「そうしよう。こないな感じでええどすか?」
「うん。いいよ」
ローズはまだ難しい顔をしていた。
「どうしたんだい?ローズには難しそうかい?」
「…すみません。私に友達はいないので…配下に友達役はいるんですけどね…」
今日は誰かが地雷を踏むな…
なんだよ友達役って?そんなの友達じゃないだろ…
「なに言うてるん?私達友達やん。うちの勘違いやった?」
「そ、そうなのか。私達は友達なのか?これがか…」
「うちはな、別れてすぐにまた会いとうなったら友達やと思おてる。うちはまた会いとうなったわぁ。ローズはちゃうの?」
「いや私もまた会いたい。もちろんベルにもだ」
「わたくしも同じです」
「せやったら私達は友達やな」
「あぁ友達だ」
「はい」
ツバキの距離の詰め方半端ないな…
最初は全然喋られなかった平民なのに、貴族ですら難しい王女と友達になったぞ。
「ツバキ。この場ではいいけど、義母上の前や公の場ではそんな風に喋るなよ」
「そんなん分かってる。うちをアホや思てへん?」
「思ってる」
「カイはん、ほんまにムカつくわ。それにカイはんに言われたないわ」
「なっ…冗談だったのに…」
「おもろないわ。それにうちはほんまに言うてるけどな」
イラッとしたが、ビクターの町ではこんな感じだったよな…と懐かしんでいた。
「喧嘩はやめてくれ。お願いだ」
「わたくしからもお願いいたします」
ローズとベルジーナが本当に止めていた。シュリさんは二人に同意するようにうなずいている。
「…あぁ、ツバキとはいつもこんな感じなんだ。本当の喧嘩しているわけじゃないよ」
「ローズ、ベルそしてシュリはんもかんにんえ」
ツバキは苦笑いしながら謝った。
「紛らわしいのよ。心配して損したわ。ねぇベル?」
「はい。けれど安心いたしました」
ローズとベルジーナはホッとしていた。
「へぇツバキってそんなに喋るのね。大人しい性格だと思っていたよ」
「お貴族相手では、やっぱし緊張するんどす」
「私は貴族じゃないし、この場ではそんな感じで喋ってもらいたいな」
「分かった。努力はするで」
それからお互いの軽い自己紹介などの、他愛のない話をしばらくした。
「ローズの好きなものはなにかな?」
「やはりこの国です。そしてこの国にいる全ての人達です。それと剣と魔法も好きです」
王女が言いそうなつまらない答えだな。
「ちゃうやん。カワエエものやん」
「なっ…」
ローズは顔を赤くしながらツバキを睨んでいた。
「カワイイものが好きなんだな。でもそんなに恥ずかしがることか?女の子なら普通だろ?」
「私には似合わないだろう?」
なに言っているんだ。
「合う、合わないじゃないだろ。好きなものってやつは。それに綺麗なローズがカワイイぬいぐるみとか持っていたら、ギャップで男はやられると思うぞ」
「そうか…カイお前もか?」
「いや俺はやられない。俺にはエルザがいるからな」
俺をなめてもらっては困るな。
どや顔をした。
「うっざ。くたばれ。きしょいわ」
「私も同意見かな」
「わたくしはノーコメントで…」
「……」
ローズはまた固まっていた。よく固まるな。
なぜか不評だった。
そうか!この国は多夫多妻制だから、一途はダメなのかもしれないな。
「俺はエルザが他の男にとられることが、耐えられない小さな男なんだよ」
「そんなん身長見たらわかんで」
「なっ…」
ツバキお前は俺に言ってはいけないことを言ったな。
「ぷっ…ツバキ。それはあまりにひどいと思うぞ…ふっ、ふっん…ふ」
ローズは笑いを堪えていた。お前もか…ローズ。
だがなローズつく方を間違えたようだな。
「馬鹿め。こっちには俺よりも身長が低い、シュリさんとベルジーナがいるんだぞ」
天下無敵のシュリさんだ。どうだ参っただろう。謝るなら今のうちだ。
「悪いんだけど一緒にしないでくれるかな?」
「わたくしもお願いいたします」
早速仲間割れがおきていた。
「あきれたわ。シュリはんはおろかベルまで出すなんて」
確かに子供のベルを出すのはやり過ぎたか…
「そんな…なぜですか?なぜ裏切ったんですか?」
勝てた試合だったのに…
「裏切るもなにも、私は気にしていないから…気にするから小さく見えるんだよ。もっと広い心でいるんだ」
「そや、あそこでそうだなと言っとったらよかったのに…そんなんやったら、ほんまに小さな男になんで」
「カイは剣がもの凄く強い。それでいいじゃないか。身長が低いくらいなんだ」
「魔族の奴隷であるわたくしをお救いいただいた、お優しさもおありです。身長が不自由なくらいお気になさらないでください」
ちょっと待ってくれ!!!
「いやぁ、あのぉ、その…俺も本気で気にしているわけではないので、そんな風に言われると逆に気にしてしまいます」
……
「そ、そうだ忘れていた。私はツバキと剣の立ち会いを頼みにきたんだった。手合わせお願いできる?」
「そやな。善は急げって言うさかいすぐにやろか」
「わたくしもお二人のお立ち会いを拝見したいです。お師匠様もご覧になりませんか?」
「そうだね。見に行こうか」
四人は部屋から出ていった。
シュリさんがいるので、外から見えない裏庭で手合わせをするのだろう。
「坊ちゃんは、私顔負けの隠密能力と索敵能力があります。身長が低い…」
「もういいっ!やめろっ!!」
「失礼いたしました」
性格が悪いな。くそ爺め!
俺の性格がまっすぐ育たなかったのだとしたらこいつのせいだな。
「少し疲れた。部屋で休んでくる。あとはセバスに任せてもいいか?」
「はい。今は皆様、坊ちゃんとは気まずいでしょうし、私が任されておきましょう。なにかあったらお呼びします」
「なにもないことを祈るが…頼んだぞ」
借りている部屋で少し寝た。




