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「ツバキそこをどけっ!そいつは魔族だぞ!?」
「ちょい待ってや」
「魔族は人類の敵だぞ!?なぜ庇う!?もしやツバキ!お前は魔族軍の協力者なのか?」
ツバキとローズの元に向かっているとこんな声が聞こえてきた。
「うちじゃ厳しいわぁ…ってカイはんええ所に来たわぁ」
ローズのところに行くと、ベルジーナの間にツバキが入っていた
ローズは俺の方を向いた。
「ローズ。お前、少し…いやだいぶ頭が固いな」
「それはどういう意味だ?」
「なんで魔族ってだけでそんなに邪険にするんだ?」
「なんだと!魔族に殺された人、残された人がどれほどいると思っているんだ!!」
「そんなの沢山いるんじゃないか?」
「そうだ!私だって婚約者を殺された!」
話ながらベルジーナを背にする位置へやってきた。
やはり気にはしていたのか…
「そうだな。でも良かったじゃないか」
「なんだと!まさか年の差のことをお前は言っているのか?」
「そうだな。当時で三十過ぎだったんだろう」
「フッ…そんな些細なことを気にするなんて、お前もたいしたことないな」
「そうかもな。だがおかしいと思わなかったのか?」
「なにがだ?」
「死んだ婚約者って、ローズの婚約者ってことは初婚だよな?」
王家から降嫁…嫁にいくのに後妻はあり得ない。
「そうだ。当たり前だろ」
「おかしいだろ?跡継ぎなのにその年で初婚って」
「それは仕事や領地経営で忙しくて出来なかったと」
そんな訳あるか!領地経営も大事だが跡継ぎを産むことも大切だ。
普通に両方やればいい。普通はそうするし、そうしている家ばかりだろう。
「違うぞ。その婚約者クズだったらしいぞ。お前知らないのか?死んだ時、婚約者がなにをしたのか」
「なんだ!?勇敢に戦って死んだと陛下に聞いたぞ」
「俺が聞いた話とは違うな。あぁだから初婚なのかって俺は納得したぞ」
シュリさんから聞いたことを話した。
「そんなバカな…そんな…」
「まぁ、聞いただけだからな。本当のことかは知らない。王宮に帰ってローズが信頼できて、あの時戦った王宮魔導師か騎士の何人かに聞いてみたらどうだ?」
「そうしよう…だが魔族は沢山の戦えない無実の人達を殺し、拉致をする。拉致された者は犯罪奴隷のように使っていると聞くぞ」
「そうだな。だがそれは俺達にもいえることだろう?」
「なっ…」
「だから俺達王国も魔族にそんなことをいるだろう?このベルジーナだってそうだ。家族と平和に暮らしていたのに、家族を全員殺され、拉致されて来たらしいぞ」
「そ、そんなの本当かわからないじゃないか」
シュリさんが記憶を覗いてみたから、確度は高いんだけど、シュリさんの存在は秘密だからな。
「そうだな。だが王国が言っていることも、本当かわからないじゃないか」
「そんな馬鹿なことがあるわけないだろ!」
「いや、俺も魔族領にはベルジーナみたいな奴隷が、たくさんいると思うし、王国の人達をたくさん殺していると思うよ。だけどあたかも被害者の顔だけするのは卑怯だろ」
「ぐっ…カイお前は大切な人を…」
「ローズそれ以上はやめい。カイはんが一番とはいわへんけど、その気持ちは人一倍。いやそれ以上は持ってる」
そうかな?他にも俺みたいな人達は、無数にいるだろう。
だからそんなことないと思うけど…
思うけれどツバキの言葉が刺さってしまう。
子供の頃は、父上に魔法を教えてもらうのを夢見てたからな…
「すまない…失言だった。魔聖殿はカイの父だったな…本当にすまない」
「いや、ベルジーナよりはマシだからな」
そう考えるとベルジーナは強いし尊敬できるな。
大好きな家族を皆殺しされたうえに、ひどい扱いまでされたのに…
俺だったら生きていける自信がないな。
「ベルジーナ。お前本当に凄いな」
ベルジーナの横で目線を合わせて、頭をぽんぽんしようとしたが、なにかに阻まれた。
防御魔法なのだろう。もう習得したのか凄いな。
でも…
あれぇ?こういうの嬉しいんじゃないの?
…あぁ、そうか。そうだよな…
奴隷時代の扱いのせいで、人が怖いんだなと納得した。
「お気持ちは大変嬉しいのですが、御髪が乱れますので…」
おぐしって髪の毛のことだよな…
「…ごめんなさい」
「あ、あぁ俺もごめん」
……
「ぷっ、ハハハっ、カイはんは相変わらず締まらへんな。それにベルジーナって言うたか、あんたおもろいなあ…ハハハ」
ツバキが爆笑すると釣られてローズも笑い出した。
「ハハハっ…確かにな。陛下も私の髪をぽんぽんしたがるが、鬱陶しいんだよな。髪のセットが崩れて正直迷惑なのに、嬉しいだろうって顔をされたら、嬉しそうするしかないじゃないか」
そうなのか…俺もエルザにしたことある。
その時、嬉しそうにしていたのは演技だったのか…
「フフフ、わたくしの亡きお父様はひどいですよ。わたくしはご迷惑と何度も申し上げたのに、照れ隠しだと勘違いされて…んっ、もうお父様には…んっ」
ベルジーナは泣くのを我慢していた。
「我慢しいひんで泣いてええで…うちの胸を貸したる。きぃ…」
「あいがどうございます…ワァーっ…」
ツバキが抱きしめるとベルジーナは大泣きした。そんなベルジーナの背中をツバキは軽くたたいていた。
背中のぽんぽんはいいのか?
『主はダメじゃな。ツバキじゃからじゃ』
『ダメなのか…ってタヌ。今ツバキって呼んだな…どろぼ…』
『なっ!…き、気のせいじゃ。イレイス鍛錬の続きじゃ!妾を忙しいんじゃ!』
珍しくタヌから念話をきった。
「そうか…魔族も変わらないんだな。ベルジーナすまなかった」
ベルジーナは頭を横に振り、気にしていないことを表していた。
「あれ?うちには謝らへんの?」
「すまなかったよ。そんな意地悪言わないでよ」
「許したる。うちは懐深いさかい」
━━???視点━━
ベルジーナが泣き止むと、それから仲良さそうに三人で喋っていた。
王女、平民、魔族の奴隷。価値観や見た目、信じるものも違うし、交わりそうなことがない三人。
そんな三人が仲良さそうにしていると、奇跡や神ってものを少しは信じてもいい気分になる。
剣聖が変わることなんかよりも、これこそが歴史に残すべき1ページなんじゃないだろうかと…
そんな奇跡を起こした男はというと…
あれぇ?もっとシリアスになると思ったんだけど…
例えばこんな感じだ。
「お前の婚約者。元宰相の発案らしいぞ。そいつも魔族だったな」
「な、なぜそれをお前が知ってる?まさかマリアンヌが…」
ローズうろたえる。
「あぁ違うぜ。捕まえた時に俺もその場にいたからな」
「そうだったのか。カイは凄いな」
俺、褒められる。
「父上が死んだのは元宰相が原因だ。そしてもう一人。俺は父上の死に関係のないベルジーナを恨むくらいなら、原因の一人である陛下の方を恨むよ」
こんな感じで陛下に宣戦布告をする。
なんかカッコいいだろ?
こんなしょうもないことを考えていた。
━━???視点終わり━━
「ヒヤヒヤしておりました」
セバスが近づいてきた。そして俺の横に立った。
「坊ちゃんが王家に対していつ喧嘩を売るかもと…」
「セ、セバス…いくらなんでも王家に喧嘩は売らないぞ」
「そうですな。もし、そうなったらどんな手を使ってでも、坊ちゃんを殺さないといけないところでした」
こ、殺す…えらく物騒だな。
「へ、へぇ…どうして?」
「お家を危険にさらす者は、誰であろうと許せませんからな。もちろん坊ちゃんだけじゃなく、奥様やケイン様、マイク様でもです」
「義母上でもか?」
「えぇ、でも奥様はそんなことをなさる心配はないので、安心して仕えられます」
「そうだな…って俺もしないぞ」
「ふぉっふおっ…そうですね。そう信じております」
あっぶねぇ…戻って知ったけど、この家のやり方はマジでエグいからな。
義母上が本気で俺のことを疎んでいたら、普通に死んでいた…いや普通には死ねないか…とにかく残念な結果になっていたと思う。
それに全てを知ってるわけでもないし…
本当にベルジーナは命の恩人になった。
貴族ってお家第一だもんな。
それにしても家に危害を加えるなら、義母上でもっていうのは驚いたな。
そして、そんなことがいえるセバスって、いったい何者なんだろうな…
閑話休題。
三人はセバスに任せて、ベルジーナを心配しているだろう、シュリさんに報告しにいった。
「そうなんだ。面白いことになったね」
「えぇ、丸くおさまって良かったですよ」
宣戦布告なんかしないでよかった…
「フフフ、本当にね。ローズ殿下にお会いしてみようかな。君は殿下のことどう思う?」
「そうですね。少ない時間しか会話していないので、違うかもしれませんがいいですか?」
「少ない時間で君が見たまんま、感じたまんまでいいよ」
「はい。良くも悪くも真っ直ぐなお人です。少し融通がきかない所もありますが、道理を話せば理解できる頭もおありです。それに心根は優しく強い人だと思います」
「そうなんだ…結構高評価なんだね」
「見たまま、感じたままをお伝えしただけなので、もしかすると低評価かもしれませんよ」
「ハハハ…そうだね。うん。君の目を信じてお会いするよ」
それからシュリさんを連れて三人のところへいった。三人は廊下から場所を移して応接間にいた。
楽しそうに喋っていた。
「仲良さそうにしているところ悪いんだけど、ローズ紹介したい人がいるんだけど会ってくれる?」
「誰だ?私の知っている者か?」
「知ってはいるんじゃないか?」
「あっ…」
「どうした?ベルの知り合いか?」
もう愛称で呼んでいるのか…
「もしかいたしますと、お師匠様かもしれません」
「ほう…ベルの師匠か…もしかして魔族なのか?」
「違うよ。俺も魔族の知り合いはベルジーナしかいないよ。会いたい人はエルフだよ」
「私の知り合いのエルフは弓聖殿しかいないが…もしかしてバレたのか?」
「バレたのかってこっそり来たのかよ。勘弁しろよ。違うから安心しろ。お待たせするのも悪いから、早く決めてくれ」
「わかった。通してくれ」
シュリさんを連れて入った。
「シュリさんだ。ローズは知っているか?」
ローズはフローズンしていた。
『くだらぬ』
『五点』
『十点中五点か…赤点回避だな』
『千点中』
『百を超えて千か…イレイスは厳しいな。ずいぶんと寒い評価だ…これはどうだ?』
……
『…主はほっといて鍛錬を再開するぞ』
『うん。暖まりたい』
最初はともかく、二つ目は結構自信があったんだけどな…




