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皆が俺を呼ぶ声が聞こえてきたので、目を開くと皆が心配そうに膝をついて俺をとり囲んでいた。
皆じゃないか…セバスとベルジーナは心配そうに立って見てた。
あぁ俺は倒れたんだった…
上半身だけ起き上がった。
すると皆は安心した顔をしていた。
「スカイごめんなさい!」
義母上が膝を立てたまま俺に抱きついてきた。
それを俺は受け止めた。
「私のせいで━━」
俺に抱きついたまま、なにやら義母上は勘違いした様子で、俺の気持ちがわからずすまないことや、自分が有象無象と同じだったと反省していた。
俺は義母上の勘違いを利用して、ベルジーナを奪い俺のものにすることに協力をお願いした。
「わかりました。スカイの言うことも一理あります。今回は協力しましょう」
「義母上ありがとうございます。では早速ゲルマン侯爵の弱味を教えてください」
「いえ、その前にやることがあります」
「あぁ、ローズ殿下のことがありましたね。集まっている人達は義母上に治療を…」
「それでもありません」
「なにか他に問題が?」
俺達が外にいるときなんかあったのかな?
「えぇ、大きな問題です」
「そんな大きな問題が…ならば早く解決しないといけませんね」
マジかよ。我が家って問題多すぎない。
あっ!もしかしてシュリさんがバレたのかもしれないな。
「もしかしてシュリさんがバレましたか?」
「私はバレていないよ」
「どんな問題ですか?俺もできる限り手伝います」
「それならおおいに協力しなさい。息子の行いを正さないといけないわ」
…
「…義兄上がなにかやら…」
「わざとやっているのかしら?」
「俺ですか?義母上さっき申し訳なかったって…」
「そうですね。魔族の件は悪かったわ。でもねその他はいただけないわ…スカイそこに正座なさい!」
今回のお説教タイムは長かった。倒れたんだから少しは遠慮してもいいんですよ…
説教の内容は、セバスの言うことを聞かず、服を着替えなかったこと。
一応俺の考えを言って師匠に賛同を得られたが、師匠がシュリさんに黙ってってと言われて援軍にならなかった。
あの時の俺がしたことは、産まれが良いことをいいことに、産まれが低い上官の命令を聞かないで、部隊を危険な目に遭わさせるクズと同じだと言われた。
それに納得はした。確かにクズだなと思った。
しかし俺は軍には入らないし、冒険者なので関係ないと言った。
するとシュリさんがリーダーをエルザやツバキに変わったときに、同じことをするのかと言われてぐぅの音も出ず、反論できなかったので謝った。
次に助けたこともゴミを掃除したことも良いが、助けるために自分の意識がなくなるのはダメだろうと言われた。
まぁこれは怒られると思っていたので、反論せず素直に謝った。
しかし、ゴミ掃除って人の命をなんだと思っているんだ。ひどい人達だ。
『奪った主がなに言っとる。主が一番悪いじゃろうが』
『それもそうだな』
思うだけならチンピラに害がないもんな。
ありがたく長いお説教が終わったので、足をなんとかくずし、俺の下半身の痺れをエルザが治療魔法をしてくれた。
ふぅ、二時間十八分か…新記録だ。
『それにしても思ったより立ち直りが早かったのぉ』
『エルザが治してくれたからね』
『足の痺れではないわ。自分が魔族かもしれぬ方じゃ』
『あぁそっち…結論からいうと魔族だからなに?って感じだ』
『ほう…』
『母上が魔族だったとしても、父上や義母上、義兄上達は父上は父上なりに、義母上達も義母上達なりに俺のことを大切に思ってくれていたし、今もくれていると思う』
『そうじゃな。しかし父の方も魔族かもしれんぞ?』
『魔聖は魔族にはつけないだろう?』
『そういう意味じゃなくてな…』
『ハハハ、それはないだろ。冗談キツイぞ。それに仮にそうだったとしても、父上への尊敬や感謝は変わらないさ。逆に大きくなるかもな』
『そういうもんかのぉ…』
『でもエルザ達に話すのは少し勇気がいるけど、受け入れてくれると信じられるしな』
『それもそうじゃな。これしきのことで離れてくれれば妾も苦労せぬ』
「さて、これからどうする?」
「そうですね。セバス。集まっている人達に私の治療費の説明をしてくれる?」
「わかりました。残った者達の裏どりも明日までにやっておきます」
「お願いね」
セバスが外に行き、義母上に用か、俺や師匠に用かを分けていた。
圧倒的に義母上が多い。
「私達は奥にいるよ。ベルジーナもついてきて。私達がここにいるのは不味いから」
シュリさんとベルジーナは部屋を出ていった。
シュリさんに任せておけばいいだろう。
「義母上の治療費っていくらなんですか?」
「平民だと人を除いた全財産ですよ。うちの領だと半財産くらいかしら。貴族だと家宝の一つか、それに値する情報くらいですね」
あぁ…なるほど。
「なかなかひどいですね。貴族の方達には心から同情します。平民贔屓ですか?」
「はい。でも平民の方には理解されなくって困っているわ」
セバスが治療費を説明したのか、外では軽い暴動が起きていた。
悪魔や守銭奴などひどい言われようだ。
「平民にも義母上の優しさがわかる時がきますよ」
「そうねぇ。どちらでもいいわ。あなたがわかってくれたからね。それだけで私は嬉しいわ」
セバスは悪魔と言ったおじさんは、無理矢理中に入ろうとしたので意識を刈りとっていた。
その隙に入ろうとしていた者は、防犯装置が作動して転倒した。
俺の方も早く終わらせないとな。
俺と師匠に用がある奴のところへ、師匠とツバキを連れていった。
いた人数は十二人だった。
百人は超えていたのに、ほとんどは義母上目当てだったな。
「こんにちは。俺か師匠に用があるとのことだけど、なにかな?」
「キャーッ!」「スカイ様よ。」「待ったかいがあったわ」「サインを…」「私とデートに…」「キャーッ」「私の部屋で…」という声と、「俺はお前を倒しにきた」「私は教えてもらうために」「僕も戦いたくて」と理由は師匠が言ったとおりだった。
「じゃあ、俺と戦いたい人はこちらに、俺に教えられることはないから、剣を学びたい人は師匠のところへ、そこの五人は…」
「うちに任せといて」
「えっ!ツバキ関係あるか?」
「そうよ。ブスっ、あなたには関係ないわ」「そうよそうよ」「でも私はあなたも好みよ」「えぇーっ趣味悪いわよ」「でもよく見たら…」
やかましくなった。しかし俺のどこがよかったのかがよくわからんな。
ツバキでもいいようだし、やはり顔なのかな。
とりあえず放置でいいかな…
「ツバキ邪魔しないように五人を見ててくれ」
「任せときい」
弟子志願は三人、戦いたい奴は四人だった。
「さて、君たちは俺と戦いたいみたいだけど、真剣と木剣どちらがいい?順番に聞いていくから答えてね」
一人ずつどちらで戦うか聞いていった。
「俺は真剣だ」「真剣だ」「木剣」と答えていた。
なぜか少し離れている最後の一人に近づいて、「君は?」と聞いたが、答えてくれなかった。
「ローズ殿下にやられて頭がおかしくなったんじゃないか?ハハハ」
最初に答えた奴が笑い、他の一人も笑い、もう一人は黙って見ていた。
「早く答えてくれないかな?俺が変人だとお…」
するとそいつは俺に向かって短剣を突き出した。
それを普通に避け、伸びた手をとり、その手をそいつの背中の後ろに回して倒した。
倒した勢いで腕は折れたようだった。
「ああーーっぶおぉ…っ「ゴンッ」」
俺はすぐに口を覆っているマスク?をそいつ口の中に突っ込み、頭を地面に叩きつけた。
意識がなくなったみたいだ。多分死んでいないと思う。
「真剣希望が一人終わったな。じゃあどんな目にあっても恨むなよ」
あとはセバスに任せよう。
セバスを呼ぶと準備がいいことに猿ぐつわを取り出して装着し、そいつの後ろ襟を持って引きずっていった。
荒い運び方だな…
それを見て、義母上に用があった人の大半が帰っていった。
「それじゃあ残りは三人だな。真剣二に木剣一だな」
「お、おいっ俺も負けたら、あんな風にどこかに連れていかれるのか?」
威勢のよかった真剣を選んだ一人が聞いてきた。
「当たり前だろ。お前バカか?俺を殺しにきておいて、五体満足で帰られると思っているのか?」
「殺すつもりなんてなかった」
「そうなのか?真剣勝負って殺す覚悟と、殺される覚悟をもってやるものじゃないのか?」
だから俺は、師匠相手に危険なリミッター解除をした。
タヌは師匠に勝つ手段が殺すことで、殺せるなら殺していただろう。負けず嫌いだしな。
そしてそれは師匠にも言える。
一応シュリさんに危ない時は止めてくださいと言っていた。
シュリさんの横槍もなく師匠は勝ったから凄い人だと尊敬するのだ。
『ぐぐっ…次は勝つ』
『だからもうやらないって』
『それなら妾は負けたままではないか』
『俺を勝たせれば、タヌも含めた俺達の勝利だろ。完全勝利だ』
『そうじゃな。完全勝利じゃ。もっと励むんじゃぞ』
『ぼちぼちな』
俺がタヌと話している間、真剣AとBは、俺は正々堂々と挑んだのどうのこうの言っていたが無視した。
俺にとっては同じだ。
暗殺者も暗殺者なりに正々堂々と挑んできた。と思っている。
「…おいそこのお前、俺が言っていることは間違っているか?」
「間違っていないな。そこまでの覚悟がなかったから私は木剣を選んだ」
「ということだ。今日は機嫌がいい。帰りたければ帰っていいぞ」
真剣を選んだ二人は帰っていった。
そんなに急がなくても追いかけたりしない。
木剣を選んだ人に近づいた。
「殿下。なぜそんな格好を…」
「なんだ気づいていたのか。おかしいな。この変装の魔道具。王家の家宝なんだけどな」
なんでそんなもん持ってくんだよ!
「気づいた坊ちゃんがおかしいんですよ」
「わっ!ビックリした…」
セバスがいつの間にか現れた。
くそっ、気づかなかった…
「うるさいな。それに殿下が驚くだろ。不敬だぞ」
俺は気づいてましたよ感を出して言った。
「ローズ殿下申し訳ありません。騒ぎになる前にこちらへ」
セバスはローズ殿下を屋敷の中に案内していた。
それから俺はファンの子達全員にサインをした。
サインの練習なんかしていないので、ファンの子が持ってきていた物にスカイと書いただけだ。
付き合ってとか言っていたファンには、心に決めた人がいるので諦めてくれと話した。
するとなぜか、遊びでもとさらに食い下がってきたので困った。
こういう時どうしたらいいんだ…
『殴れば一発じゃ』
『それはさすがに…』
『マスターの記憶の情報だと、逆効果になる恐れがある』
『そんな記憶が…』
殴りはしなかったが、少しキツイ言い方をしたのだが、効いている様子がなく逆効果だった。
あながち記憶も間違っていないのかもしれない…
ツバキにも協力してもらい、なんとかそれも断って屋敷に戻った。
ファンとの邂逅は、女心はわからないなと一層思うだけに終わった。




