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そして絶賛正座中だ。
シュリさんの屋敷に帰り義母上達に報告したらこれだ。
「どうしてそうなるのよ」
「おかしいことをおかしいと言うのはおかしいことでしょうか?」
「そっちはどうでもいいし、よくやったとも思うわ」
結構やらかしたつもりだったけど、どうでもいいのか…
しかも負けたし…
「問題は殿下の方よ。なんで我が家に招待なんかしたの?」
「えっ…社交辞令ですよ」
「楽しみにしているとおっしゃられたのでしょう?」
「はい。でもそれも社交辞令では?」
「はぁーっ…」
あっ、ローズ殿下が間違い男にしていた顔だ。
「なにかダメでしたか?」
「ローズ殿下は潔癖な方です。お嫌なことはお嫌だとハッキリ申されます」
「それ王族としてどうなんですか?」
義母上に威圧感が…
ヤバイなんか間違えた。
「なんであなたが王族の方を評価してるのっ!王族の方達はそれが許されるに決まっているじゃないの!」
確かにそうかもしれない。俺が知らなかっただけで…
「申し訳ありません」
意外に義母上は王族に敬意を持っているんだな。
父上が死んだ後も王族になにかあったら、おもむいていたらしいし。
「いいじゃない。評価したくらい。平民でもしてるのよ。もちろん私もしているよ。私の評価は王族はともかく陛下はクソよ」
不敬罪が怖くないのか…シュリさん凄いな。
「確かにな。陛下はウンコだ」
師匠の方はなんかひどい。同じ意味なのになんでだろう?
「…ルーク様。そんな汚い言葉を使わないで下さい」
「それは悪かったな。だがお前も否定はしないだろう?」
「それは…」
義母上は否定したいができないのか、口ごもっていた。
魔族の宰相に長年騙されていたんだし、父上が死んだのもあの魔族に騙された陛下のせいらしいしな。
シュリさんや師匠がいうように、本当に陛下はウンコなんだろう。
「まぁ本当に来るかわかんないし、来たとしてもそんなにひどいことにならないさ」
「はい。一応、口が悪い人しかいないって言ったので大丈夫ですよ。師匠が陛下と喋る時くらいと」
あれおかしなことを言ったか?
義母上がため息をつきながら頭を抱えていた。
幸せがたくさん逃げていきそうな、大きなため息だった。
「ハハハハっ。それはいい。それならたいがいのことは大丈夫だろう」
「大丈夫なんかじゃありません。私とケイン、マイク、それにスカイだってそんなに言葉は汚くありません。それなのにルーク様と同類だなんて…」
義母上も義兄上も、言葉が乱れたところをあまり見ないな。
義母上は乱れないだけで毒を吐くが…
「おいっ、それはひどくないか?」
確かにひどい。ここは俺がフォローしよう。
「師匠だってやろうと思えば出来ますよね?幼少期に教えてくれたときは、綺麗とまでいかなくても普通でしたし、シュリさんと喋る時も汚くありませんよ」
「そんなことは分かっています。あなたはルーク様が陛下に対して、どう接していられるのか知らないからそう言えるのです」
「…どれだけひどいんですか?」
ローズ殿下は来ないかもしれないな。
どっちでもいいけどな。
「そんなことはどうでもいいだろ」
「それもそうだね。マリン、今はローズ殿下のことを考えた方が建設的だよ」
「それにマリン。お前がスカイに後のことは任せろと言ったんだろう?言葉の責任くらい持て」
俺も秘かに思っていたが、とてもじゃないが俺から言えなかったことだ。
「そうでしたね…スカイごめんなさい。私がなんとかしないといけませんね」
お説教が終わり話し合いが始まった。
さすがに後は義母上にお任せしますと言って、この場を去ることはできなかった。
とりあえずの方向性が決まった。
この屋敷を借りることにした。
王都にある我が家は王族を呼ぶのに、格が足りないらしい。
まぁ王都にある家は小さいからな。
招待してやることなんか、ツバキと戦わせて、少し喋るだけだと思ったのだが、そうだとしてもいろいろと準備があるみたいだ。
王族って面倒くさいな。とローズ殿下にも少し同情した。
ちょっと外にでるだけで大事になるなんて、気軽に遊びもいけないんだろうな。
話し合いが終わったので部屋を出て、借りている部屋でタヌのご機嫌をとってから眠った。
それにしても、俺が負けたことに対しては誰もなにも言ってこなかったな。
ツバキが観客の前で自分のことを話されて、恥ずかしかったと文句を言ったくらいで…
師匠になにか言われると思ったんだけどな。
本当に師匠は自分が負けなければ、どうでもいいみたいだ。
次の日、いつものように自主練をしようと庭に出ようとした。
先に自主練のために庭に出ようとした、ツバキがエントランスにいた。
「あちゃぁ、めっちゃおるな。昨日おらんかったから大丈夫と思っとたんやけど」
向かっている途中、多くの気配を感じていたが、エントランスの窓から覗くと、百は超えるだろう人達が屋敷を取り囲んでいた。
「そうだな…カチコミかな?」
「なんでやねん。カイはんのファンやろ」
「俺の?それこそなんで?」
「カイはん。自分のやったことに手をあてて考えてみぃな」
なんだろう?結局負けたし、観客バカにしていたし、なにかファンになる要素あったか?
うーん…
「あっ、顔か?」
「なんでやねん。なんかめっちゃムカつくわ」
「違うのか?」
「それも違わへんさかい、ムカつくんやで」
なにそれ、なにかのなぞかけか?
疑問に思っていると師匠がやってきた。
「困ったことになったな」
「困っているようには見えないんですけど…」
「俺はな。むしろ喜んでいる。俺に用がある奴が減るだろうからな」
「喜んでいるのはわかります。それでこれなんなんですか?」
「だいたいはお前のファンだろう」
「他にもあるんですか?」
「そうだな。弟子志願、対戦申し込み、暗殺者ってところか」
「うげぇ、暗殺者以外帰ってほしいですね」
「なんでなん?普通は逆とちがうん?」
「暗殺者だったらメリットがあるだろう?他にはなにもない」
「どういうことなん?」
「捕まえたら得だし、殺しても罪にならない。逃がしたとしても特に困ることもないしな」
「えらい自信だな。殺されると思わないのか?」
「大丈夫でしょう。俺、索敵には自信ありますから。暗殺者なんて姿がわかれば弱い奴らの集まりでしょう?」
「なかには強い奴がいるかもしれんぞ」
「うーん。そうですね。強い奴がいたとして、師匠は負けると思うんですか?」
師匠はニヤリとしただけだった。
「それが答えですよ。それにセバス以上の奴がいたらスカウトですね。セバスも年だからそろそろ引退してもらわないとな」
「ひどおない?」
「坊ちゃん。私の陰口ですか?」
「うわぁ!ビックリしたわぁ」
ツバキの索敵もまだまだだな…って、俺のせいでもあるのか。シュリさんに言わせると…
「違う。悪口だ」
「全く…かわいくありませんね」
「セバスにかわいいなんて思われてもしょうがない」
「坊ちゃん。残念ながら私以上の者は見あたりませんね」
「残念だ。セバスも年だな…いるぞお前以上が」
「ほう…」
セバスは周りを鋭い眼光で見まわした。
「…私にはわかりません。この老骨にご教授いただきたいですね」
「いるだろう?ここに」
親指で自分の顔を指した。
「…それはそれは…否定できないことがまた辛いですね。心構えや所作などは大変不足しておりますがね。あの中にはいませんか?」
「残念ながらいなさそうだ。もしいたのならそいつはスカウトだな」
俺やセバスの索敵に引っかからない奴はかなり優秀だ。
「そうですな。この家に必要な人材でしょう」
「なに言っているんだ?俺がもらうんだからな」
「いやいや、私が育てましょう」
「いやだ。お前が育てたら口うるさい奴が増える。冒険者パーティーにいれる」
「いえいえ、スカイ様には注意する人が増えれば、お変わりになられるかもしれません」
しばらくの間、いるはずもない暗殺者をとりあっていた。悪口を添え合って。
「お前達よくそんな毒を吐けるな…それにもう気がすんだろ?それでどうするんだ?これじゃあ殿下も来られないだろう」
「どうしましょうか?これを理由に断れないですか?」
「…それマリンに言うなよ。また雷が落ちるぞ」
「そうなんですか?ありがとうございます。雷を落とすようなことは言いません」
「そうしろ。それでシュリさんやマリンに相談しようか、俺達よりも良い考えを思いつきそうだ」
「そうですね。そろそろ起きる頃でしょうし」
俺達三人はダイニングに向かった。
セバスは義母上を起こしにいった。簡単な報告をするのだろう。
しばらく三人で剣に関わる雑談していると、エルザが入ってきた。
エルザは料理を作っていたらしい。
それからエルザもいれて、四人でダンジョンについての雑談をしていると、義母上とシュリさんがダイニングに入ってきた。
さてどうなることやら予測が難しいな。




