表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一部完】世界を救っているのに自分は気づかない話  作者: おむすびさん
第二部 一章【王都剣術大会~剣術大会の様子が見れるとは限らない~】
47/59



『なにを言っておる。今頃になって自分のやったことを、あやつが怒っていないか確認するためじゃろうが』

『ぐっ…でもイレイスのことも気になるぞ。タヌは違うのか?』

『うむ。あやつがイレイスのことをどう評価しようと妾はどうでもいいぞ。妾と主さえわかっておればそれでよい。イレイスもそう思っておるだろうに…主は違うのか?』

『俺はできればエルザやツバキにもイレイスのこと評価してもらいたいぞ。出来れば義母上や師匠達にも』

『うむ。主はそうかもしれんな…じゃがローズ殿下(あやつ)の評価なんてどうでもよいのは変わらんじゃろうが』


 それは否定できないかもしれない。


『まぁいいじゃないか。俺は聞くぞ』

『勝手にすればよい。しかしイレイスをだしに使うなというておるのじゃ』

『わかったよ。ごめん。でもローズ殿下が怒っていないか気になって残る。っていうのもなんか締まらないじゃないか』

『確かにそうかもしれぬが…別に綺麗に締まらなくてもよいではないか』

『それはそうだけど…まあいいじゃないか。さぁ始まるぞ』


「お疲れさまでした。白熱の…いや伝説の試合でしたね。相手のことはどう思いますか?」


 こいつがいう伝説っていうのはずいぶん安い言葉だな。


「そうですね。強かったです。しかし彼はあの木剣でしたからね。あまり勝てた気がしません」

「いえいえ。情報によると彼は短剣使いらしいですよ。あの木剣も彼が事前に細工をしていたのかもしれませんよ」


 なるほど。そう考えることもできるのか…


「そうだと信じたいですね。まさかこの剣術大会の運営のなかに、私が有利になるよう細工した不届き者がいないことを祈っております」


 あらら…ローズ殿下は潔癖だな…

 勝利者インタビューをしてている奴の顔が青くなっているよ。

 なんか知っているのかな?


 ローズ殿下もそんな潔癖なら予選のおかしさにも目をかけてもらいたいな。

 それなら四年前の俺もあんなことにはならなかったかもしれないのに…


『主よ。自分のことよりあのツバキ(泥棒猫2)のことに腹立てておるのじゃろうて』

『タ、タヌ。黙って聞いてろよ』

『本音つかれてあたふたしよって…まぁよいが…』

『それにエルザとツバキのその呼び方をいい加減やめてくれないか?』

『そうじゃの……うむ。考えてみたが嫌じゃ』

『そ、そうか…』


 即答だったじゃないか。考えるかどうかを考える時間の方が長かった気がする。

 考えるの意味を教えてやりたい。


「私達運営側にそのような者はおりません。身命を賭して言えます」


 どんどんこいつの言うことが安っぽく聞こえてくるるな。


「そうですか。あなたがそこまで言うのならそうなのでしょうね。しかし、どうやって彼が細工をしたんですか?私はあそこの入場口で木剣を渡されましたが、彼は違うのですか?」


 はい。渡されました。


「そ、それは…」

「彼も私と同じように渡されていたのであれば、係の者が見張っていたはずです。どうやって彼は細工をしたのですか?」


 うわぁ、そんなに詰めなくてもいいじゃん。勝ったんだからさ。

 なんかあの安い男に同情してきた。


『単に主の義母に怒られている自分を思い出しているだけじゃろうに…優しいふりをするのをやめよ』

『…よしっ!疲れたから念話をきるぞ』

『あ、主それはひきょ…』


 よし切った。これでいいだろう。ただ次に繋げる時に面倒くさいんだよな…


「それは…」


 口ごもっていると、観客から一つのヤジが飛び、それを皮切りにヤジが大きくなった。


 ローズ殿下が話ができないので、静まるように言うとまた静かになった。


「仮に細工が出来たとしよう。それならば、強化することも出来たのではないか?運営側はそんなことも考えつかないアホばかりなのか?この剣術大会は公平ではなかったのか?」


 しかたない。助けてあげるか。

 俺はローズ殿下の元へ走っていき、闘技場に昇った。


「な、なんな、な!なんなんですかっ!?」

「俺が助けてやるよ」


 安い男からマイクの魔道具を奪いとった。


「なにを今さらそんなことを言っているんですか?ローズ殿下は意外なことに、まだまだかわいいお嬢ちゃまなんですね」

「なにを…私を愚弄する気か」

「いえ。滅相もありません」

「ならばどうしてそんなことを言った!」

「現実を見られておられなかったので」

「なっ!」

「この剣術大会が公平などと本気で思ってらっしやるのですか?」

「違うのか?お前はなにを知っている?」


 マジかよ…本当に知らないのか?


「そうですね。現実を知らない殿下にお教えしましょう。まず殿下が優勝するまで、剣聖ドルルークの弟子が優勝していましたよね?」

「そうだな。剣聖の弟子が優勝していた。私が戦ったリア殿もそうだったし、とても強かった」


 リアさんもヘロヘロな状態で強かったと言われても嬉しくないだろうな…


「では強い師匠の弟子同士、兄弟対決の決勝ってあってもおかしくないですよね?」

「そうだな。あってもおかしくないな。私の記憶にはないが…はっ!」

「お気づきになりましたか?一度しかないんらしいですよ。剣聖の弟子同士の決勝は…十六年前。剣聖が引退されて最初の剣術大会だけです。僕とローズ殿下が産まれる前ですね」


 ローズ殿下の年齢はしらないが、若くみえるぶんにはいいだろう。多分…


「そ、それは剣聖の弟子以外が頑張って差を埋めたんじゃないのか?」


 肯定も否定もない。一体どっちなんだろうか?ってどうでもいいか。


「…そうですね。それもあるかもしれません。しかしローズ殿下は決勝以外で剣聖の弟子と戦いましたか?」

「戦っていない。しかし…」

「…しかしなんですか?」

「しかし、それはクジ運が良かっただけで…」

「そうですね。殿下はクジ運が良かった。それに引き換え、師匠の弟子達はクジ運が悪かったのか、何度も同門対決をしています」

「それは…」

「しかもそれは、十二年前の大会からずっとですよ。兄弟弟子達のクジ運は最悪ですね。しかも毎回Bブロックです」


 この剣術大会はAブロックとBブロックに分かれるが、なぜかAブロックは一日目に準決勝まであり、Bブロックは二日目に準決勝までして、勝ち上がった者同士で三日目に決勝だ。


 今年のBブロックは夜遅くまで続いたらしい。リアさんがヘロヘロだった原因みたいだ。

 師匠と真剣勝負をした日は、Aブロックの予選が行われていた。


「そんなことが…」

「えぇ、まあ師匠は陛下にもタメ口みたいなので、バチがあたっているのかもしれませんが、俺も含め弟子達がそのバチをうけるのもおかしいと思います」


 師匠のケツは師匠で拭いてほしい。


「それもそうだな。フフフ…」


 言いたいことは伝わったのだろう。ローズ殿下は笑っていた。

 殿下の機嫌が少し良くなったし、もう少し踏み込んでみるか。


「殿下にとても失礼なことを言ってもいいですか?」

「なんだ?言ってみろ」

「お言葉に甘えて、俺が戦った限り、一回戦で負けたツバキより殿下は弱いです」

「なんだとっ!?」


 大ブーイングが起こった。なかには殺害予告まである。


「黙れぇっ!!雑魚どもがさえずるなっ!!!」


 一喝すると黙ってくれた。いくらなんでも羽虫以下はかわいそうだ。本当に義母上はひどい。


「先ほどその方が俺を短剣使いと言われましたが、間違ってはいません。間違ってはいませんが、短剣よりも剣の方がはるかに強いですよ。俺は」


 殿下は驚きもせずにうなずいていた。

 あのくらいの嘘は見抜いていたのだろう。


「そしてツバキ相手に短剣で勝負したら必ずといっていいほど負けます。それは俺がお会いした兄弟弟子みんなそうです」


 ツバキの名誉も少しは回復できたかな?


「そんな…馬鹿なことが」

「それと知っていますか?剣を知る者なら決勝よりも、二日目の試合の方が人気なんですよ。師匠の弟子どうしで戦うから、レベルの高い試合が見れるとね」

「それは本当かっ!?」


 俺じゃなくて安い男に聞いた。


「そんなことはありません。現に決勝戦の方が観客は多いです」

「言葉が苦手なんですか?こんなお仕事をしているのに?殿下は観客の数を聞いているわけではありませんよ」

「いいえ。観客だけじゃありません。名のある方もお見えになります」


 誰だよ。名のある方って?

 普通にみんな名前はあるだろう。

 こいつが言いたいのは、きっと名が通った方だろうな。

 本当に言葉が苦手だな。

 さすがに失職はかわいそうだから、言わないであげよう。


「名のある方もいらっしゃっる…その方は剣を見る目がないのでしょう。それか義理や仕事でいらっしゃっているのではと愚考します」


 結構恥ずかしいな…

 間違った言葉を使うのは、殿下もあれ?って顔をしてるし…


「そんな訳ありません。まさしく愚考です」

「そうですか。今回はその名の通った方はいらっしゃっるのですか?」


 しれっと戻してあげた。気づいてくれよ。


 殿下も疑問が晴れてスッキリしたのかうなずいていた。


「もちろんです。名のある方々も新しい時代の到来を楽しみにしていらっしゃいました。しかしあなたのような方が出られて残念だったでしょう」


 ダメだった。分かりにくかったのかな?

 殿下のこいつを見る顔が、義母上が俺によくする顔になった。失望させた時の顔だ。


 王族なんだからもっと顔芸をしてください。さすがに義母上も外では見せないですよ。


「それは良かった。では聞いてみましょう」


 観客の方を向いた。


「名の通った方にお聞きします。二日目と決勝が行われる三日目どちらがレベルが高いですか?俺は二日目だと思います。もし俺の考えが違うのなら出てきてください。俺が見る目を教育してあげますよ。(これ)で」


 しばらく待ったが誰も出てこない。

 誰か出てきてくれると思ったんだけどな…

 まぁ当然か。剣を見る目がないことが知れ渡ってしまうからな。


「…名の通った方も俺の考えは間違っていないとおっしゃっていますが?」

「ぐっ…」


 インタビュアーはこうべをたれた。


 自分の間違いに気づいてくれたのかな?それならいいけどな…

 出来ればどちらの間違いも。



「ローズ殿下。ご無礼をお許しください」

「うむ。許す。そして礼を申す。無知な私に教えてくれてありがとう」


 無知ってそこまでさげすまなくても…って俺が言ったんだっけ?

 ここはスルーだな。


「寛大な心に感謝いたします。それではこれで失礼いたします」

「あぁ達者でな」

「それと殿下。ご自身の力を知りたいと思いになるなら、我が家へどうぞお越しを」


 社交辞令だから本当に来ないだろ。


「うむ。考えておこう」


 うん。社交辞令には社交辞令だな。


「おもむくさいには、ご覚悟をお持ちになって、いらっしゃってください」


 でも念のために言っておかないといけない。


「…そうか私は弱いのだな…」


 そんなことないですよ。と言いたいが、これも俺が言ったか…

 あっ!


「殿下が弱いのではありません。私が強いだけです」


 これからが本番。


「ただ、それよりも私の周りは私を含め、殿下とお話できるほどの言葉使いができません。師匠を思い出していただければと思います」


 そう。これさえ言っておけば来ないだろうし、来たとしても無礼討ちにはならないだろう。


「フフフ…できているように見えるが?」

「いえいえ、かなり無理をしておりますゆえ、我が家では荒いですよ」


 家でもこんな口調でいられるか。義母上は除く。


「そうか。それは楽しみだな」


 楽しみにすることか?なんに対して?まぁいいか。


「では、お先に失礼します」


 あとは義母上がなんとかするだろう。

 報告だけはしておかないとな。

 シュリさんの屋敷へ帰った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ