表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一部完】世界を救っているのに自分は気づかない話  作者: おむすびさん
第二部 一章【王都剣術大会~剣術大会の様子が見れるとは限らない~】
46/59


 ローズ殿下との試合が始まり、どうしようかと思った。


 剣筋は綺麗だし、基本もしっかりしていた。


 一言で言えば、ローズ殿下の剣は上手い。

 しかし強いわけではなかった。


 強いわけではない…はっきりいえば弱いので短い木剣で余裕でさばける。

 綺麗な剣筋の相手だと、目が良い俺にとって格好の獲物だ。

 相性がいいだけなのかもしれない。

 曲がりなりにもリアさんに勝ったわけだし…


 タヌがさっきから文句を言っているとおり勝とうと思えば勝てる。

 しかし、あっけなく勝ってもいいのだろうか?

 名乗りの時間よりかなり短い時間で…しかも剣を短くしてハンデをつけているのに…


 こんなことを考えられるほど余裕があった。

 やはり弱い相手と戦っても面白くない。四年前だったら面白かったかもしれないが…


「殿下ーっ!あと少し!あと少し!」

「そいつを早くボコボコにしてくれーっ!」


 観客達は殿下が押しているように見えるのか、ずいぶん盛り上がっていた。


 うーん…どうしようかな…


 そうだっ!


『イレイス。ちょっと体を動かす練習してみるか?』

『なんでじゃ?なぜ妾じゃないんじゃ』

『タヌは簡単に勝ってしまうだろう。俺がしたいのは時間稼ぎだよ』

『それならしかたないのぉ』

『マスター勝てるかわからないよ』

『正直勝負なんてどうでもいいんだよ。どうやら格付けは終わったようだし』


 ローズ殿下はくやしそにしていた。

 俺がローズ殿下でも泣くな。こんななめプされたうえに、勝てないんだから。


 本当にひどい男がいたもんだ。

 更にその男はその勝負すら真剣にしないで、別の者に任せる最低野郎だ。


『わかった。負けても怒らないでね』

『怒らないよ。でも勝ったらめちゃくちゃほめる』

『頑張る』

『負けても頑張ったらほめるよ』

『やる気でた』

『それはなによりだ。距離をとるからその後にね』

『分かった』

『魔法は使ったらダメだからね。それは怒るよ』

『身体強化も?』

『ダメ。俺がやるから』

『マスターのは弱いけど我慢する』


 相手の隙を見て離れた。

 イレイスに体の主導権を与え、俺はタヌと一緒に観客気分で試合を見ていた。


『大丈夫かのぉ。心配じゃな』

『別に大丈夫じゃない。傷つくのは俺の体だし』

『分かっとらんのぉ。心も傷つくんじゃぞ』

『そうだな』

『そうじゃろ。…ってイレイス危ない!』

『タヌ。こうしてみると妹を心配するお姉ちゃんみたいだな』

『そ、そんなことある訳なかろう』

『そんな顔で言われても説得力がないぞ』

『うっ、うるさいわ』


 こんな感じでタヌが心配したり、イレイスにアドバイスをする声を聞きながら試合を見ていた。


 初めの頃は体が勝手に動いてかなりの違和感と嫌悪感があったが、今は慣れて少し違和感があるくらいになった。


 これは俺の意識がなくなった時、逃げれるように練習しているものだ。

 操るのはタヌの方が上手いが、タヌを持っていない可能性があるし、操作できない可能性もある。


 タヌと話してイレイスにも練習させているし、俺が訓練している間はタヌが教えている。

 緊急時にイレイスが操る時の攻撃は魔法主体になるので、あまり意味がないかもしれないが、魔力がなくなる場合もあるかもしれない。


 俺とタヌの意識がなく、魔力も枯渇している状況って詰んでるが…


 なんか…そうしないといけない理由を探して、納得しようとしている気がするがまあいいだろ。

 単純にイレイスが成長するのが嬉しいから、やらせていた。


 それが役に立ったのだから結果オーライだろ。


 もしかすると、お遊戯会を見る保護者のような気持ちなのかもしれない。



 最低だなと思いはするし、もの凄くローズ殿下を侮辱しているが、はっきり言ってしまえばここまでされてしまうローズ殿下の実力が悪いんだ。


 俺の予想通り、勝負はいい感じになった。

 殿下の剣は綺麗すぎるんだよな…

 剣筋が読みやすいから対応も楽だった。イレイスも危なげながらもさばいている。

 一応さばいている状態なので攻撃するところまではいけてない。


 ローズ殿下が押しているからか、観客も盛り上がっているから問題ないだろう。


 ちなみに師匠と戦った時に使ったリミッター解除とは違う。

 少し似ているがあれは、イレイスが身体強化魔法をフルに使い、タヌが俺の体を操るものだ。


 その時の身体強化魔法は、最大限の俺の力を強化し引き出す。

 最大限に引き出すために、邪魔な脳のリミッターも解除するので本当に最大限だ。

 リミッター解除時、イレイスが使う身体強化魔法は身体超化魔法になる。


 脳にかなりの負荷がかかるので、俺の意識まであると俺の脳じゃ処理ができなくなり、防衛反応で俺の意識がなくなってしまう。


 この剣術大会は、身体強化魔法を使うことは禁じられていないし、俺が知る限り出場者の全員が使っている。

 もちろんローズ殿下も使っているので、その程度の身体強化魔法を使っている。


 イレイスの身体強化魔法が上手すぎるのか、リミッター解除状態じゃなくても、解除した時に体中が痛くなるので嫌だ。


 リミッター解除の状態の時は、俺の体をタヌが操っているので、短刀を元の刀に戻すのも自由自在だ。


 いきなり刀の長さが変わるのはかなりセコいと思う。

 確実に当たらないと思われる振りが当たることがあるなんて初見殺しだ。

 しかも初見殺しを見抜いても、当たらない刀の振りをいちいち警戒しないといけない。


 俺は相手と戦う時、目で相手の次の手を予測するので、やりづらくてそんな奴とはやりたくない。


 いつかはリミッター解除を、俺に主導権がある状態でやりたいものだ。


 それにリミッター解除状態になるのも、条件が結構あるみたいだ。

 リミッター解除は、トロール戦に見せた力よりも強化している。


 そんな危険な技なので三分が限界のはずだった。

 だから師匠と戦った時、二分っていったのに限界を超えて五分も戦うなんてあり得ない。


 師匠との真剣勝負が終わった時、俺の体はどうなったか想像するだけで寒気がする。


 リミッター解除状態の俺に勝った師匠は、やはり化け物だ。

 俺になめプされる程度の実力で、よく師匠に挑んだものだ。


 それにリミッター解除は意識がなくなるので、俺がそこまで楽しくないからあまり好きではない。


 気持ち的には、師匠が強敵に勝ったと聞かせられる感じだ。

 あの状態で勝った。又は負けたとしてもどこか他人ごとな感じだ。



 そろそろいいか。


『イレイスお疲れさま。そろそろ代わろうか』


 殿下との距離が空いたので話しかけた。


『マスターもう少し。絶対勝つ』

『わかった。あと一分ね』

『ありがとう』

『あと少しじゃ。頑張るのじゃぞ』

『うん』


 イレイスの意識が殿下に向けられ、勝負が再開された。


『タヌ。このままでは分が悪いぞ』

『そうじゃな…それも経験じゃて。そもそも剣の経験が違うからのぉ』

『そうだな。そう考えるとイレイスは凄いな。短い木剣でもう互角に戦っているんだからな』

『そうじゃそうじゃ。イレイスは凄いのじゃ』

『もしかしたらイレイスは短剣や短刀が合っているのかもな』

『そうかもしれぬな』


 これからイレイスをどう育てるのかをタヌと話していた。


「そこまでっ!」


 試合が終わるかけ声がかかった。


「勝者ローズ殿下っ!」


 殿下が勝ったかけ声がなると歓声が爆発した。


 予想通り負けてしまった。

 少し他人ごとだけど悔しいことは悔しい。


 最後は殿下の綺麗な剣筋が少し乱れた。

 殿下がこのままではダメだと思い変えたのか、ただ単に体力がなくなったのかは知らない。

 ローズ殿下を見る限り後者だろうとは思うが…


 しかしイレイスはいきなり乱れた剣筋に対応できず、そこから押し込まれてしまい、そこからもちなおし対応できる技術はなかった。

 最後は短木剣をはじかれ、殿下の上段の振りが頭に当たった。


 俺の体は闘技場で意識がない状態になっていた。


 まぁ得るものがあったから良かったかな。


『ごめんマスター。負けちゃった…』


 幼稚園生がなにかに負けて、涙を我慢している姿みたいだ。


『いやよく頑張った。イレイス胸を張れ』

『そうじゃぞ。お主はようやった』

『でも…』

『これで負けたからといって死ぬ訳じゃないよ』

『そうじゃぞ。生きて諦めなければ負けじゃない。今度勝てればいいんじゃ。ほれこっちへこい』

『うん…』


 タヌとイレイスは抱き合い、タヌがなぐさめの声をかけていた。

 さて俺は後始末にいくかな。


 体の主導権を奪い立ち上がった。思ったより体力を使っていたのか体がダルかった。

 俺が立ち上がると拍手がおこり、俺をたたえる声があがった。全くげんきんなものだ。


 だが、この歓声がイレイスのものだと思うと嬉しい。


 ローズ殿下と向かい合うと息をきらしていた。

 この程度の勝負で、そんなに息をきらすなんて体力不足だな。


 後始末といっても、あとは礼をして俺は終わりだ。

 義母上も勝負はどうでもいいと言っていたし、これで俺の仕事も終わりだ。


「おいっ!おま、貴殿は短剣使いか?」


 なぜか審判が聞いてきた。お前って言おうとしてたな。一応貴族なのに。別にいいんだけど…


「えっ?どうしてですか?」

「それなら、短い木剣で殿下をここまで苦戦させたこと納得できる。それに短剣を身に着けているしな」


 短剣じゃなくて短刀だし、それにこれ伸びるんだけどな…なんか面倒くさい。間違ってはいないし…


「あぁ…あなたがそう思いたいなら、そう思えばいいんじゃないですか?思うことくらいは勝手ですよ。俺に迷惑がかからないのであれば」

「そ、そうか…」

「早く礼をして帰らせてください。これでも疲れているんですよ。殿下もお疲れのようですし」

「ぐっ…はあはあ」


 まだ息を整えられないのか…訓練不足だな。


「そうだな。お互い礼っ!」

「ありがとうございました」


 俺の声しか響かなかったが、一応は礼をしていたしどうでもいいか。


 観客から拍手が鳴り響き、俺が闘技場を出るまで続いていた。

 俺はローズ殿下のためにゆっくりと出ていった。


 俺が見えなくなるところまで進むと拍手がやんだ。

 勝利者インタビューが始まるみたいだ。

 俺はそれを入場口で聞こうとしていた。


 ローズ殿下のイレイスの評価が少し気になったからだ。それを聞いてからでもいいだろう。



『主なにを言っておる』


 上手く締めたと思ったのに、なぜかタヌから待ったがかかったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ