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【一部完】世界を救っているのに自分は気づかない話  作者: おむすびさん
第二部 一章【王都剣術大会~剣術大会の様子が見れるとは限らない~】
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 パンパンっ



 控え室に向かっていると花火がなり、アナウンスが聞こえた。


「さぁ、世紀の一戦です。剣に関しては未だ無敗。今代が生んだ伝説。剣聖ドルルーク」

「わーっ!」


 一応、この前一本とったんだけどね…


「それに対するのは、先日行われた剣術大会で、剣聖ドルルークが現れて以来、一度も破られなかった剣聖関係者以外の優勝者。王族が生んだ神童。ローズ殿下」

「わーーーーっ!!!」


 へぇさっきのお姉さんと戦うのか…

 それにしても大人気だな…まぁ綺麗だったしね。

 俺も師匠が師匠じゃなかったら、ローズ殿下を応援するな。


「剣聖VS神童。こよい剣聖が代わるのか…それともそれに待ったをかけるのか、これを見なくて何を見る。幸運にもチケットを持った皆様は時代の目撃者となるのです」


 かなり出にくいんだけど…


「…ちょっと待ってください…剣聖にアクシデントが起こったようです。なんと剣聖が怪我をしたらしく、今回は弟子である━━━(主人公)様が出場されるようです」


 ……


「…はーーーあっ!!」

「ふざけんなっ!」「金返せっ!」


 怒号が聞こえてきた。


 そして一人「帰れ」と言ったところで、帰れの大合唱が起こっていた。


『うるさいのぉ…じゃが、今回の主の戦いを見れば喜んでくれるじゃろ』

『そうだよな…』


 はぁーっ…帰りたいな。本当に帰りたい。と思いながら控え室に入った。

 そこに義母上が気にしていない様子でいた。


「義母上。聞こえないんですか?皆さん帰ってほしいようですよ」

「あんな有象無象の声なんてどうでもいいもの。羽虫の方がよほどイラつくわ」


 最近の義母上は悪役が言いそうなことばかり言っているような気がする。


「そ、そうですか…」


静粛(せいしゅく)にっ!静粛にっ!皆様なんと今回の出場される方は、剣聖ドルルークに怪我をさせたらしいです。その怪我のため剣聖は出れなくなったらしいです」


 あぁ…嘘の診断書か…


「義母上。嘘の診断書って医者的に大丈夫なんですか?」

「そんなことはどこの医者もやってるわ」

「本当ですか?」

「えぇ。考えてもみなさい。医者より立場が上の者からお願いされたら断るのも難しいわ」


 確かにそうだな。貴族の医者なんてそこまで多くないし、我が家と同じで子爵以下の下位貴族ばかりだ。


「それに上の者のお願いじゃなくても、お金さえ払えば嘘の診断書くらい書くわよ」


 ※この世界の話です。


「そうなんですね…ちょっとガッカリです」

「はぁーっ、あなたは他人に自分の理想を押しつけることをやめなさい」

「はい。申し訳ありません」



「そしてなんと!剣聖もこの弟子が負けたら、剣聖の負けでいいとのことです」


 少しヤジが減った感じがする。


「義母上。いいんですか?俺負けるかもしれませんよ」

「なにをするかは知らないけど。いいのよ別に。我が家はあなたが負けたくらいで落ちぶれたりはしません」

「いえっ、我が家のことじゃなくて師匠のことですよ。せっかくの無敗なのに…」

「ルーク様は大丈夫よ。自分が実際負けたんじゃないのなら気になさらないわ。無敗の称号だって邪魔くらいに思ってらっしゃるんじゃないかしら」

「そうなんでしょうか…」

「まぁ、あなたは今回の児戯よりも、三年間でルーク様に勝ってくれることの方が大切です。期待していますよ」


 児戯って…世間では世紀の一戦と言われているのに…

 まぁいいか。きっと客もタヌが言うとおり喜んでくれるだろう。


 試合が始まるまで柔軟をしていた。



 しばらくすると係の人がやって来た。

 いよいよ始まるみたいだ。


 入場口に向かっていると、観客をアナウンスで煽っていた。

 俺は師匠以上のヒールみたいだ。


 入場口に着くと木剣を渡された。


 えっ!?

 王都は凄いな。俺がやりたいことを知っていたのか?

『馬鹿め。そんなことある訳ないじゃろうに…』

『まぁいいじゃないか。手間がはぶける』


 木剣を受け取り、俺を呼ぶアナウンスがあったので闘技場へ歩いていった。

 帰れコールが大きくなった。

 子供じゃねぇか!ママのところに帰って、どうのこうのっていうのもあった。

 これには少しムッとしたが、結局帰れコールには変わらない。


 もうちょっとレパートリーがほしいな。ちょっと飽きてきた。


「はーーはっ…あっ!」


 ヤバイ。あくびをしてしまった。

 観客はそんな俺の姿にブーイングとヤジが響き渡った。


 謝ろうとしたがまぁいいかと思ったので、気にせずに闘技場にあがった。


 闘技場で待っていると、ローズ殿下登場のアナウンスがあり、ローズ殿下が登場した。


 俺と違い大歓声が起きた。

 ローズ殿下を応援する声と、どうやら俺のことを殺してとお願いしていた。


 そんなに恨むようなことしたかな?

 殺してほしいと願った奴は会った記憶がない。

 よく知らない奴を殺してほしいと願えるな。その気持ちが全くわからない。


『持っている者を持っていない者が恨むのは当たり前じゃ』

『なんでだ?持っていないなら持てるように努力すればいいじゃないか』

『馬鹿め。主のように持てる環境にあるとは限らん。じゃが大半は環境があるのに持っていない連中ばかりじゃがな。それに持っていても気づかぬ奴もおる』

『ふーん。そういうもんか…』

『あまり興味なさそうじゃの』

『だって他人事だし』

『そうじゃの。気にせんでよい』


 ローズ殿下は歓声に応えるように手を挙げ、観客を盛り上げていた。


 早く闘技場にあがってくれないかな…


 しばらく待つとローズ殿下も闘技場にあがった。


「さぁ。いよいよ始まります。どちらが勝っても次代の剣聖です」


 そのくらいで剣聖になれるの?剣聖の名って意外に安いな。


 ルール説明があって、お互いの名乗りがある。


「帰るなら今のうちだぞ」

「大丈夫ですよ。さぁお先に名乗りをどうぞ?」

「ハッ…こういうのは下位の者からだぞ。貴様は勉強不足だな」

「そのくらい知っていますよ。さぁお先にどうぞ」

「ふんっ。今回は剣聖に免じて私からしてやる」


 ローズ殿下の名乗りをした。

 貴族もそうだけど、王族も名前が長いんだよな…

 それと名乗り(これ)になんの意味があるんだろうな。これも長いし…


 それが終わると歓声があがった。次は俺か。


「我が名は━━。剣聖の代わりに参った。どうのこうのどうのこうの。ローズ殿下いざ尋常に勝負」


 さぁここからだ。


 バキッ


 木剣を地面に軽く叩くと木剣が半分に折れた。


「といきたいところですが、これはどういうことでしょうか?軽く叩いただけで折れましたが」

「なんだそれはっ!?おいっ!これはどういうことだっ!」


 ローズ殿下は本気で驚いているように見えた。顔芸なんてお手のものだろうから、本当のところは分からないけど…

 観客も驚いたのか声も上がらない。


「殿下見てください。綺麗に折れていますよ。あなたに怪我をさせないようにですかね?ずいぶん殿下想いの方がいらっしゃるようです」

「すぐに代わりを持ってこさせる!断じて私の指示ではない」


 それは困るかな。

 そもそも俺は木剣を短くして戦おうと思っていたからな。

 少しだけ予定より長いから、殿下想いの人は余計な真似をしたことになったな。


「まぁいいですよ。これでやりましょう」

「馬鹿をいうな。そんなので勝負になるか!」

「殿下を相手するのにちょうどいいハンデです」

「なんだとっ!」

「観客に聞いてみましょう」


 殿下から目を離して観客を見まわした。


「観客の皆もこのまま試合を見たくないかーっ!」


 おおー


「折れた剣で戦う者を見たくないかーっ!」


 おおおおーっ!


「殿下が勝つところを見たくないかーっ!」


 おおおおおーーっ!!


「俺が殿下にボコボコにされるところを見たくないかーっ!」


 おおおおおおおーーーっ!!!


「残念だがその未来は来ないがな。勝つのもボコボコにするのも俺だ!」


 ブーーーッ!


「さぁ観客は試合を見たいらしいですよ。それに殿下が俺をボコボコにしてくれることを願っていますよ」

「貴様っ!後悔してもしらんぞ」

「殿下も後悔しないように頑張ってくださいね」


 殿下は睨んでいたが、俺は殿下を見ながらニヤニヤしていた。


「あっ、ア、アクシデントが起こりましが、いよいよ試合が始まります」


「殿下ーっ!舐めたガキをやっちまえーっ!」

「殿下ーっ!頑張ってーっ!」


 ほとんどがこんな感じの殿下を応援する声だった。


「スカイ様ーっ!カッコいい!」

「スカイ様ーっ!今夜私を抱いてーっ!!」


 なかにはこんな声もあった。


 フッ…悪いな。願いを叶えることはできない。俺にはエルザがいるんだ。


 タヌのため息が聞こえた気がした。


『どうした?』

『二つの意味で叶えられそうもないと思ってな』

『どういうことだ?』

『なんでもない。試合が始まるぞ。集中せぇ』


「両者準備はいいですか?」


『わかってるって、タヌ、イレイスのサポートはいらないからな』

『ヤバそうじゃったら頼るがよい』


 審判が確認してきたので、俺とローズ殿下はお互い目を合わせながらうなずいた。


 さぁこれでどれほど出来るか…


『その心配はなさそうだけどな』


「それでは…試合開始っ!」


 殿下と剣を結ぶと、集中したのか観客が黙ったのかは知らないが、観客の声は聞こえなくなった。


『そこじゃ、そうそこっ!なにやっとるんじゃ!今いけたじゃろうに!!主!あるじーっ!!!』


 しかしタヌの声はとてもうるさかった。

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