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王都ではシュリさんの屋敷に泊まった。
シュリさんがいるってバレるのではと思ったけど、いつも剣術大会の時は師匠が借りるので大丈夫らしい。
俺の時は違ったので師匠に聞くと、それは父上が寝顔でもいいので、俺と会いたかったかららしい。
名義はシュリさんだが元々はパーティーハウスみたいだ。
シュリさんの屋敷はもちろん高性能だった。
なんでかよくわからない方法で部屋のゴミが一カ所に集まり、掃除をする人は集まったゴミを捨てるだけだった。
ゴミを直接捨てるようにすることもできたが、ゴミじゃないものが捨てられることがあったのでこうしているみたいだ。
それに防犯もしっかりしているらしい。
詳しくは知らないが無断で敷地に入ると大変なことになるらしい。
お風呂の水はシュリさんが気に入った温泉の水が出たりと他の機能も説明してくれたが庭が気になり、あまり頭に入らなかった。
タヌやイレイスが覚えているだろう。凄く驚いていたし…いやそのリアクションのせいで…いや人のせいにするのはやめよう。
「フフフっ、向こうが気になるみたいですね」
「すみません。どうも剣術の訓練が目に入ると気になってしまいまして…」
「さすがルークの弟子ですね。私は休むのでどうぞあちらに行かれては?」
お礼を言って庭へ向かった。
庭に近づくにつれ、木剣が打ち合う音がおおきくなった。
屋敷の庭に行くと師匠とツバキ、それと知らない人がいたが三人いて、師匠以外模擬試合をしていた。
いや、一人は知っているが話したことはないので、知らない人でいいだろう。
『ほう…あれが主の師匠かのぉ…なかなかよのぉ。主が死んだら妾を使うに値するのぉ』
何様だ?と思ったがタヌはタヌか…
『そうじゃそうじゃ。主も分かってきたのお』
俺はタヌやイレイスの言葉を無視し、なおかつ適当な相づちをする能力を手に入れていた。
「お疲れ様です!」
「おおっ、着いたか。体の方は大丈夫か?」
「はい。お陰様で万全です。今なら師匠にも勝てる気がしますよ」
『主だけじゃ無理じゃ。妾達の力を…』
「ほう…」
「剣術大会には間に合いませんでしたが、ツバキの応援に来ました」
「そうか。まぁお前はまだ若い。いつかは優勝できるだろう」
「そうだと嬉しいんですけど…」
「ハハハっ!俺に勝てるなら余裕で出来るだろうに…少し待て。模擬戦やめ!」
師匠の声が響くと模擬戦が終わり、模擬戦をしていた相手に礼をした後、こちらへ来た。
俺の自己紹介をした。
「へぇ、あんさんの名前そんな長かったんや。きちんと呼んだ方がええ?」
「俺の名前は長いからいいよ。それに貴族の自覚がないから、今まで通りカイでいいよ」
「そりゃあ助かるわ」
「うん。あっ!皆さんもカイもしくはスカイと呼んでください。師匠は俺のことをスカイと呼びます」
「あぁ、わかった。俺はダルガという。四年ぶりだな。今回は出ないんだろう?」
そう。この人は前大会で俺が負けた人だ。
「はい。ダルガさんリベンジしたかったんですけどね」
「俺も残念だ。今回はお前を瞬殺できると思ったのに…」
「へぇ…随分自信があるんですね?俺に瞬殺されても泣かないでくださいね」
『なんじゃこいつは…妾を使うに値しないくせに主を瞬殺じゃと片腹痛いわ。主の言うとおり泣かしてやろうぞ』
「俺もお前と戦った後、修羅場をくぐってきたからな。自称魔術師には負けられないぜ。この後模擬戦をやるか?」
くっ…俺の黒歴史を攻撃するなんて卑怯だ。
『卑怯って…あぁ、なんじゃか妾のやる気がのぉなったわ』
『当たり前だ。お前の力を借りなくていい。もちろんイレイスもだ。いいな。俺だけの力で泣かしてやる』
『了解じゃ』『了解マスター』
「いつでもいいですよ。どうぞかかってきてください」
人差し指をチョイチョイした。
「胸を貸してあげますよ。ハゲのおじちゃん」
「このくそガキっ!」
俺に攻撃を仕掛けてきた。思ったより速いが受け流すことは出来そうだ。
怒りは動きを単純にする。早くもリベンジが果たせそうだったが、一瞬で師匠が間に入りダルガさんの木剣を受け止め、ダルガさんを吹き飛ばした。
ッチ
「バカもん!あんな挑発にのってからに…」
「師匠!」と俺とダルガさんの声が重なり、お互いを見て師匠に戻した。
リベンジ出来そうだったのに…
「師匠。ひでぇじゃねぇか。やるって言ったのはあのガキだぜ。怪我明けで申し訳ないがまたママのところへ帰すだけだ」
「だからバカもんと言っておる。あのままやったら瞬殺されておったぞ。お前はそのての耐性がないことを反省せよ。スカイっ!いきなりあれはないだろ…」
…
『主…妾達に大見得をきっておいてあれとはのぉ…』
『マスター卑怯』
クソ、少し卑怯だったかもだけど卑怯者とは思われたくない。
「…えっ?そんなつもりはありませんでしたよ。まだガキですから煽られて我慢出来ませんでした」
これで卑怯者じゃなく、ガキだからってことになるだろう。
なぜだが沈黙が続いた。
「…カイはん。しんどいわ」
「なにが?」
俺は諦めない。シラをきってみた。
『諦めよ』
『諦めが肝心』
「しんどいですって、もうバレていますえ」
「無理か?」
「無理どす」
「無理かぁ…ダルガ殿。先ほどは卑怯な真似をして申し訳ありませんでした。それだけ貴殿を警戒していたのです。よろしければ模擬試合を頼みたく」
皆絶句していた。なぜか師匠やツバキまで…
「…俺も悪かった。殿なんかは付けなくていい。じゃあよろしく頼む」
ダルガさんが手を出してきた。
もしかして罠か?
『主…主の人間不信はここまで重症なのか…』
『マスター。大丈夫だと思う』
一応警戒しながら握手した。
「パンっ…よしっ。休憩は終わりだ。模擬試合を始めるように。スカイ対ダルガ。リア対ロビン。ツバキは俺が相手してやろう」
それからダルガさんと模擬試合をした。
ほらやっぱり強い。先ほどの剣と違いフェイントが上手くて、実と虚を見抜くのが難しく、さばくのに精一杯だ。
だが今回は勝つことが出来た。ダルガさんはさっきまで他の人達と模擬試合をしていたので、疲れていたのだろう。粘り続けると剣速が遅れたので勝つことが出来た。
『マスター。勝てるのに卑怯な手を使う必要なかったんじゃない?』
『楽に勝てるならそうした方がいいじゃん』
俺達の模擬試合が終わった時、他の人達既に終わっていた。
「スカイ。腕を上げたな。それに俺の流派でもないな。壊したか…」
「そうですね。師匠の剣は体が大きい人向けなので俺には合わなかったんですよ」
「そうか…お前がまた強くなって嬉しいぞ。俺に勝つ日も近いかもな」
師匠は一瞬さびしそうな顔をしたが、すぐに嬉しそうな表情をしていた。
「それは今日かもしれませんよ」
「たわけが…そこまで言うなら次は俺とやるか?」
「いえっ、次は久しぶりにツバキとやりたいですね」
「ダメだ。ツバキとは大会が終わった後にいくらでもできるだろう」
「そうどすな。うちも大会を優勝した後にしますわ」
「ツバキちゃん。それは私にも本番で勝つっていうこと?」
微笑みながら知らない女性が聞いた。
「そうどす。リア姉さん。胸を借りて勝たせてもらいますわ」
「ツバキちゃんも言うようになったわね」
こんな感じでバチバチになりながら、剣術大会が始める前日になる今日まで訓練をしていて、終わる頃には疲れてあまり喋る余裕はなかった。
お風呂に入った後はすぐに眠った。いやあのお風呂のせいかもしれない。
もちろん俺も訓練に参加していた。
前日は体を休ませるために訓練はしない。
この間、ダルガさんとの戦績は五勝五敗だ。前大会をあわせると負け越しているが…
あの時の一勝があれば…とみみっちいことを考え、タヌとイレイスにダメ出しされた。
やはり普通に強い。相性があるのかもしれないが、ここに来ている師匠の弟子のなかで一番ダルガさんが強かった。
リアさんとロビンさんは勝ち越せた。
結局最後まで師匠がツバキとは剣術大会が終わったら、いつでも戦えるからという理由で戦えなかった。
ツバキはダルガさんに負け越してはいるが、何度か勝っていた。
そして二日前、ついに師匠に一本いれることができた。
皆驚いていた。
その時、師匠が「こいつは子供の頃からいつも俺に勝つつもりで挑んでいた。それがない奴に俺からは一本もとれんぞ」と言って皆はもっと驚いていた。
いや…隠していたのは師匠なのにひどい。
そんな恥ずかしい黒歴史は言わなくてもよくない?
あとで聞いたシュリさんは驚いた後笑っていた。それで俺が黒歴史のことを言ったら、師匠がかわいそうなくらい俺に同意しながらも爆笑していた。
しかし、とても悔しいが一本とった前後、特に後は何本も取られていたので、少し油断していただけなのかもしれない。
あの師匠が油断していたのか?と疑問にも思うが…
他の人とももっと戦いたかったが、師匠が俺ばかりと模擬戦をするので戦えなかった。
俺が師匠に一本とる以外に大きな事件はなく、そんな日々を過ごしながら、剣術大会の前日になった。
今日の訓練は休みだが皆自主練はしていた。模擬試合をしないということだろう。
しかし俺と師匠は大会に出ないので関係ない。
「師匠。今日は真剣でやりません?」
「ほう…だがいいのか?」
「シュリさんが怪我をしたら治療してくれるらしいです」
「死ななきゃ大丈夫。完治は出来ないかもしれないけど、マリンに頼めばなんとかなるでしょ」
「シュリさんもそう言ってくれてますし…」
「ほう…いいだろう」
こうして師匠と本当の真剣勝負が始まった。
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