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※主人公がケチョンケチョンにされます。
王都までは馬車で三日の距離だ。しかし今回は明日の朝に着く予定だ。
王都へは馬車で移動した。ただの馬車じゃない。
シュリさんが作った馬車で、普通の馬車の二倍の速度なのに、馬がいなくても走る自動運転機能もある。いや自動運転機能があるから、馬の負担が減り二倍の速度なのかもしれない。
馬や御者がいないと怪しまれるので明るいうみはザーザさんが座ってくれてる。
客席は普通の家みたいだ。三つの寝室まであるし…もちろん揺れも感じない。
揺れが感じないので、馬車に乗っている感じがまるでしない。
とても凄いけどこれを馬車と言っていいのか分からない馬車だ。
これを父上と義母上、そして俺の実母の結婚祝いとして贈ったらしい。
この馬車は王様が使う馬車よりも高性能らしい。
馬車のなかではシュリさんにいろんな話をした。
シュリさんは魔法の師匠なので、魔法についてが主になると思っていたがそんなこともなかった。
魔法のことも少しだけ話したが、シュリさんに武器や防具、アクセサリーの目利きをシュリさんが作ったものや持っているものを見せてもらいながら教えてくれた。それに好きな食べ物等の他愛ない話もした。
「シュリさんはなんでも知っていますね」
「なんでもってことはないよ。まぁ、あなたより長く生きてますからね」
本当にいくつなんだろう?義母はもちろんツバキよりも年下に見えるのに…
「なんですか?なにか言いたいことがあればいってもいいのよ?」
いや、女性の年齢を気にしてはいけないな。けしてシュリさんの目がすわったからではないはずだ。
「えっと、シュリさんはパーティーのリーダーとしてやってきたじゃないですか。師匠や義母みたいに一筋縄ではいけない人達が多そうじゃないですか?」
「いや、ルークとマリン…マリアンヌはそこまでじゃなかったよ。(少なくてもお前の母よりは)」
マリアンヌは義母の名前だ。義母のことをそう呼ぶ人を父上以外で初めて見たな…って現実逃避していた。
えっ?凄いな母上…陛下にタメ口の師匠よりも、そしてあの義母よりもか…
実家に滞在中、母上のことをいろいろ聞きたかったが、それは成人のパーティーが終わったあとに詳しい話をしてもらうことになった。
母上が死んだと思っていた俺はどうしてそう思ったのかを話した。
その時に父上がまぎわらしい顔をした原因を聞けた。
それは俺の母上はかなり破天荒だったり問題が多い人だったらしい。
良かった。俺は父上に似たみたいだ。
『どこがじゃ…』
『タヌ。なにか言った?』
『いや、なにも言っとらんぞ』
タヌは下手くそな口笛をしていた。
それはまぁいいか。シュリさんにもっといろんなことを聞きたい。
「それでリーダーとしてどうまとめていたんですか?」
「そうですね…そんなことを聞くなんてなにか困りごとでも?」
「そうです。俺は━━」
これまでのことを話した。俺がその時どう考えてどうしたのかも一緒に。
「うん。君はおかしいね。さすがあいつの子だ。なんでそんなことを?それなら一人の方がマシじゃないかい?」
『そうじゃそうじゃ』
えっ!?そこまで言われるの…
それに父上もやんちゃしていたのかな?
それと口調が変わってる。
まぁいいか。こっちの方が話しやすい。
「一人ですか?」
「そうだよ。だって一人で偵察なんかもしてたんだよね。それで君は斥候とメインの戦いまでやって、二人の仕事はなに?戦いと治療だけ。もっと仕事を分散しないと」
『ようこやつはわかっとる。主も見習うのじゃ』
「…でも得意なことを…」
「でもじゃない。君はいろいろできるからやっているつもりだろうけど…それじゃあダメじゃない」
『それはちと妾と違うの…』
「えっ?シュリさんや師匠だって俺より強いのにパーティー組んでいたじゃないですか?」
「そうだね。でも僕はパーティーメンバーを信頼していたしね」
「俺だって信頼していますよ」
『そうじゃの。主は泥棒猫共を信頼し過ぎじゃ』
『タヌうるさい。少し黙ってくれないか。後で聞くから』
『わかったのじゃ。きちんと妾の意見も聞くのじゃぞ』
これで静かになるだろう。
「そうかな?例えば危険度が少ないダンジョンの上層部で君は仲間に索敵を任せたことはある?」
「それはありません。でも万が一があるかもしれないじゃないですか?」
「もちろん君も警戒はするんだよ。万が一が起きた時にフォローするために」
「そうですね。これからはアドバイス通りやります」
「うーん…」
「どうかしました?」
「私が気になっていることは、君はマリンの治療が必要なくらい傷ついているのに、仲間の二人はそこまで傷ついていないことなんだ」
「えっ!?」
「君達のなかで君が一番強いよね?それなのにそんなことが起っていることが、君が頑張り過ぎている証拠なんだ」
「それは…」
「頑張っている原因なんだけど、君は二人が死ぬところを絶対に見たくないんじゃないか?」
「当たり前じゃないですか?シュリさんは違うんですか?」
「そうだね。違う。私は仲間が死なないようにしていたよ」
「同じように聞こえますが…」
「違うよ。私は自分一人以外が私も含め全滅しても、出来るだけ生き残るようにしていたよ。一番下手なマリンでも簡単な索敵くらいはできるよ」
義母上も出来るのか…以外だ。
「君の場合は仲間二人が死ぬ前に自分が死にたいようにみえる。違うかい?」
「…っ」
勇気があった訳ではなく、なかったから無茶をした部分もあるのかもしれない。
「そこは違うって即答してほしかったけど…それはリーダーとして無責任だよ。君が死んだらどうするの?」
「それは…自分が死んだことは考えていませんでした」
「そうだろうね。誰かが死んだら詰みっていう状態はあまりいいこととは言えないよ」
「そうですね。でも足りないところを補うのもパーティーじゃないんですか?」
「まぁ、私が求めることが多いだけかもしれない。今の冒険者にそぐわないのかもしれないよ。安全第一ってやつさ。自分達が余力をかなり残してってやつ」
俺もそうやっていた。
『いや主は違うぞ…あっ…つい答えてしもうた』
『タヌ…別にいい。それよりなにが違うんだ?』
『主は割と危険でも楽しそうに戦闘しておるぞ』
『そんなことはない!』
「…確かに俺もそうしてます」
「ただ私から見ると、今の冒険者は安全を第一にしている割にやるべきことをやっていない人が多い気がするよ」
確かに。少なくとも俺はやっていなかった、足りなかったのかもしれない…
ザーザさんが御者席から客席に来た。
「もう暗くなってきやしたから、もう御者の振りはしなくても大丈夫でしょ」
「そう。ありがとう」
「ありがとうございます。ザーザさん」
「いえいえ。それでシュリさんまだ子供なんでっせ。外で聞いておりやしたが、そこまで言わなくてもよくありやせんか?」
見た目の年齢じゃないんですけど…
「ザーザになにがわかるの?」
「わかりませんぜ」
「それなら黙っててくれないかな?」
笑っているのになんか怖い…
「…わかりやした。しかしシュリさん。口調を戻したんですかい?」
「えっ…」
シュリさんは顔を赤くしていた。
「…ほほほっ。私としたことが…ザーザも早く言ってくれてもよろしくてよ…」
「俺は気にしませんよ」
逆にさっきの口調がよかった。いや、その口調を忘れるほどあきれていたのかもしれない。
「いえいえ、私はこの口調なんです。他になにか聞きたいことはありませんか?」
それ苦しくないですか…
「…そうですね。他になにかアドバイスはありますか?」
「もっと人を増やすとかいかがでしょう?」
「増やすですか?俺達も増やそうとはしました。でもなかなかいい人がいなくて…」
「そうですね。君達の攻略についていける人は、すでにパーティーを組んでいるでしょう」
「そうなんですよ」
「ビクターの町にはでしょう?他の町で探しましたか?」
「いえ探していないです。義母上に狙われていると勘違いしていたので…」
「…あぁそうでしたね。ビクターでも臨時パーティーを組んでみるとかやってみれば良かったのです。そうすることで他のパーティーがどういうふうに攻略しているのかわかるでしょう?」
「でも上手くできるか分からなくて…」
「上手くやる必要はないです。上手く出来なくてもいいんです。いや上手く出来ない方がいいかもしれません。自分の足りないところがわかります。臨時パーティーなんて上手くいかなくて当然なのですから」
「そうかもしれません」
「それとリーダーの役割を変えてみるのもいいかもしれません。もしかするとあなたより上手くできる人がいるかもしれません」
「そうですね。確かに俺以上に上手くできるかもしれません」
エルザは上手くできそうだ。ツバキも要領いいから失敗しない気がする。
ということは俺じゃなければ良かったのか…
いや、俺だってダメなところは分かったんだからいけるはずだ。
『やはり妾が言うとおり一人のほうが良かったのじゃ』
『いや。これからを見てくれよ。バッチリやってやるからさ』
『本当かの…なんか間違う予感がするのぉ』
『私も同じ…』
イレイスまで…
『そうじゃろ。そうじゃろ。イレイスはわかっておるの。主と違っての』
『私とタヌ様のおかげで戦力は上がった。あの二人は必要ない』
『さすがはイレイスじゃ。ワハハ』
イレイスまで…タヌの悪い影響だな…
『良い影響じゃろ』
『ハイハイ』
まだごちゃごちゃ言っていたので念話を切った。
今は考え事を増やしたくない…
しばらくたわいもない話をしていると
「そろそろ休みましょうか?もういい時間になりました」
返事をして寝室で眠った。
一日目は考えさせられる事はあり、なかなか心にくることがあった。
朝になると王都の壁が見えるところまでたどり着いていた。
剣術大会が近いからか、門の前には沢山の人が並んでいた。
なぜか貴族門の方へ向かった。
「えっ?シュリさんって貴族なんですか?それとも特別に許可があるんですか?」
「…なに言ってんですか?あなたは貴族の関係者でしょ?」
「あっ!そうでした…へへへ」
貴族としての自覚がないので申し訳ない気持ちになった。
「まぁ、許可はあるんですけどね。私が王都におもむいたら面倒なことになりますから、あなたの指輪を使います」
貴族関係者には家ごとの家紋がついた指輪を持っている。
俺も帰った時にもらった。
「面倒なこと?」
「まぁ面白くないお話ですよ。気にしないでください」
これは聞くなということだろう。
了承の返事をした。
ザーザさんに俺の指輪を渡し、門の前の手続きが終わり指輪を返されて馬車が動きだした。
その間、シュリさんは馬車の隠し部屋に隠れていた。
そこまでするのか…
久しぶりの王都だ。
剣術大会でツバキがどこまでいくか、ワクワクしながら、でもやはり剣術大会出たかったな。と思いながら王都の町を進んだ。
お読みいただきありがとうございます。




