魔王の副官
少し長いですがお付き合いお願いします。
私は魔王様に仕えるヴィジャ。
ソーディア王国で普人族になりすまし、国の宰相になることができた。もう三十年になるか…早く役目を終えて魔王領に戻りたいものだ。家畜に頭を下げるのはうんざりだ。
それも魔王様に認められるため、そして私が魔王軍の幹部、更には魔王様の側近になるためだ。
私は幹部の方々や私と同じ幹部候補に比べると戦闘能力は低いが、変身能力と隠密能力が得意だ。それに魔王軍のなかでもトップクラスに頭が良い。
なんでもありなら幹部の方々にも勝てる自信がある。
家畜の王を優秀な奴ではなく、家畜らしい奴に就かせた。
私のお陰で王になれたので私のことを信用している。私の言いなりってことはないが、私が思うとおりに誘導することは簡単だ。
ソーディア王国の魔聖の存在はうっとうしかった。
奴は家畜のぶんざいで優秀だった。更に奴の周りもうっとうしい。そもそもあの家の者というだけで万死に値する。
それなのに宮廷魔導師のレベルを上げ、我々魔族でも厄介な集団にしてくれた。
奴の子供達を殺し、やる気をなくさせることも狙ったが失敗した。
策の魔人が弱かったのか、奴の子供とあって優秀なのか分からないが乗り越えてしまい、結果私の手駒が減っただけであった。
だがついにうっとうしかった魔聖を殺すことができた。
そう。あの時、家畜の王を不安にさせ弓聖を王都に置いておくように誘導したのは私だった。
ついでに奴の息子も一緒に殺すために同じ場所に送り、あわよくば奴の領地まで侵攻させたかった。
そのせいで奴の覚悟が決まってしまい思っていた以上の成果は出なかった。
まぁ奴を殺せたのでまぁ良かったとしよう。
魔聖が死んだことを利用して冒険者の大部分をヘタレにすることもできた。
家畜共が反抗されても問題はないが数は多い。家畜共のなかに魔聖や弓聖みたいに厄介な存在になる可能性がある。
そんな奴らに反抗されるとわずらわしい。
家畜共は威勢のいいことを言ったり、行動することがあるが、大部分は逃げる理由を作ってやるとすぐに楽な方へと流れる。
一つの策で多大な効果を出した。自分の頭の良さを恐れていたところだ。
兇聖が死んだのは少し予定外だったが…兇聖に内乱を起こすように仕向けたのは私だった。
この状況で内乱が起これば、この国はもっとボロボロになっていたはずだ。
兇聖のなかにスパイを潜らせていたのだが、兇聖が死んだ日から連絡がなくなった。
公爵が内乱に協力させるために、私が用意した(国宝庫から頂いた)伝説級の剣も行方知らずだ。
まぁ別にそこまでの問題ではない。剣が剣聖に渡るのを恐れたが剣聖の手にはなかったので大丈夫だろう。
仮に渡ったとしても国宝庫から盗んだとして告発すればいい。
だが私の計画が完璧でなくなったのは残念だ。
兇聖は死んだが兇聖が残したもの…そう。自分の欲望のため王国に反旗を覆そうとした貴族達の証文がある。
まだ奴らは利用できる。
内乱を起こす首謀者の役を私がやれば問題はないだろう。
いや。逆に私が首謀者の方が家畜共はショックが大きいかもしれないな…
さすが私だ。問題が起こってもそれに対応し、更にはそれ以上の策略を思いつくとは…
我ながら恐ろしい。
内乱をするためには今の役職は面倒だ。
魔聖を死なせた責任をとって、私は権力の中枢から身を引いた。
馬鹿な家畜王はそんな俺に感謝していた。まぁ奴の責任を奴のために被ったと思っているからな。
残念ながら奴のためなんてことは1ミリもないんだがな。くっくっくっ本当に馬鹿な奴だ。
とりあえず兇聖の住み家に行き貴族達の証文を手にいれた。
手駒は盗賊の幹部だったので住み家も証文を隠している場所も知っていた。
それから証文を片手に貴族達へと接触し協力をとりつけた。
忠臣として知られていたので最初は疑っていたが、「魔聖が死んだ責任をとらされた」等、貴族達が納得できそうな不満をいうと協力してくれた。
まぁ納得出来なくても証文がある限り、協力するしか道はないんだがな。
木っ端貴族達がいくら集まろうと内乱は大きくならない。だが三つある公爵家からの中から一つ、出来れば二つあれば内乱は大きくなる。
伝説級の剣があればある公爵家を確実に落とせたのだが…まぁ仕方ない。
一つ心当たりがあった。
ある公爵家の娘に呪いをかけていた。手駒の魔人や魔獣を生贄にした呪いだ。治療のスペシャリストである魔聖の番でも治療するのは無理だろう。実際に挑戦したが無理だった。魔王領にある薬草があれば治療できることを知っていたのは驚いたが…
まぁそれが分かったところで問題ない。現在魔王領に行って帰ってくる家畜など皆無だろうしな。
閑話休題。
なぜそこまで強い呪いをかけたかというと、その娘になんと七柱の一角でもある邪神の加護※がついていた。将来確実に魔王様の道に泥をつける恐れがあったからだ。
※魔族からみての邪神なので、普人族からみたら教会で奉られている神です。
私みたいな者が家畜のなかに入るのは、こういう邪神の加護を持っている者を影ながら滅することが目的だ。
優秀な者はそのなかで魔聖みたいな邪魔な存在を殺したり、国を荒らして家畜共を絶望させる。
私は優秀なので主目的だけで達成するだけでなく、どちらもやって上にいく。
そのガキは加護のお陰でなかなかくたばらず、公爵家とあってか護衛も粒揃いだった。直接殺すことは可能だが、私が死ぬ可能性があったので実行出来ず、やきもきしていた。が、今となっては助かった。
もちろん完治させる為に必要な薬草を渡す訳ではない。少しだけ症状をやわらげる薬草を少しだけ渡すだけだ。その薬草も魔王領にあるので私にしか用意出来ない。それを餌にして公爵を内乱に引き込む。
一応魔王様にも許可をとった。
その薬草を配下に用意させ公爵家がある領都に向かった。物が物なのでここだけの話にするため、先触れや手紙などは書かなかった。
薬草を待っている間、ビクターにあるダンジョンの様子をみたり、疫病を流行らせようとした。伝説級の剣を探してみた。
ダンジョンは副官が上手くやっていたが、疫病はくい止められ、伝説級の剣を見つけることは出来ず集まった情報はガセばかりだった。
薬草を持って領都へ行くと驚いた。
なぜか件の娘が完治し、そのお祝いでお祭りをしていた。
なぜだっ!あの呪いを解くためにはあの薬草が必要だろうっ!
もしや魔王軍のなかにスパイ、又は協力者がいるのか…
内乱は別にしても、しなくても問題ない。魔王軍の勝敗にあまり関係ない。
だがしかし、魔王軍にスパイや協力者がいるのはマズイ。
いや…チャンスなのか…
もしも私がスパイや協力者を見つけたら、魔王軍での私の扱いが変わるかもしれない。
それにスパイや協力者が幹部や幹部やその手駒だったら、幹部次第だがその幹部に対して弱味を握れる。その幹部が脳筋だったら私の命が危ないが、敵対勢力の幹部に手土産として渡せばこの先の扱いは変わるはずだ。
それからスパイ探しに注力した。が、なかなか進展しなかった。
冒険者ギルドの幹部(私の魔人)を使い、持ってきた奴を調べた。
するとカイという冒険者だと分かった。それによく調べると、そいつのせいで私が準備していた疫病が広がらなかった。その主な原因の一つだった。
早くブチ殺してやりたいが、そいつのいる場所が悪い。
近くに我々のS級敵対者であるヴァナルガンドがいる。
〇級敵対者とは、魔王軍でブラックリストがあり、BからSS級まである。魔王様の覇道に邪魔な存在だ。
もしS級敵対者を討伐できたら、多額の報酬と幹部の椅子がもらえる。SS級を討伐出来たなら幹部のなかの幹部といわれる十忌将になれる。
S級のヴァナルガンドの居場所は分かっているのに討伐出来ていない。なぜか?それは全く割にあわないからだ。
奴の強さはSS級とそんなに変わらない。それなのに奴がSS級じゃない理由がある。
奴はあの森からあまり出ない。だから奴の縄張りを無視すれば魔王様の覇道に問題ない。だからS級になっているだけだ。
まぁ討伐出来れば、魔森からの侵攻を出来るようになるため邪魔なことは間違いないのだが…
はっきり言って奴を討伐しようと思う魔人族はアホだと思うし、他の者も同じだろう。
魔王軍のなかで年に一~三回くらい挑戦しているみたいだが、戻ってきた奴は一人もいない。
そのなかに元幹部や元十忌将もいたが結果は同じだった。
奴を討伐するくらいなら別の敵対者を倒した方がマシ。本当に割にあわない犬なのだ。
しかも奴は犬なので鼻が効く。だからあの町には私の手駒がいない。多分魔人自体いないんじゃないだろうか…
しょうがないのでカイという奴を呼び出そうとした。ただ私と会うだけで多額の報酬を貰える指名依頼を出したのだが断られた。なんでも人見知りらしい。
それを聞いてニヤリとした。
人見知りだと?そんな理由があるかっ!
私の潜入任務は極秘だ。魔王軍のなかでも限られた者…魔王様や十忌将、又はそれらに関わる者しか知らない。
それなのに私と会うのを断った。それも他の者なら絶対に断らない依頼をだ。
私は身分もしっかりしているし、逆に私に会うためにお金を払う奴もいるくらいだ。
それなのに断った。答えは一つだろう。やはり私が睨んだ通り魔王軍のなかにスパイがいる。しかも十忌将級が関わっている。
それから私は魔王様にこのことを報告した。
すると魔王様がお怒りになられた。それはそうだろう。もちろん私にではない。その裏切り者にだ。
私に対してではなかったのに本当に恐ろしかった。
その後、私に内密の依頼をなされた。
私の任務を知っている者を教えてもらい、その者達の監視を任された。
もしもスパイが分かったら、私を側近にしてくれることも約束してくれた。
しかしスパイは優秀でなかなか尻尾を出さなかった。私が探っていることを気づいたのか魔王軍に不協和音が響いているが仕方ない。
そんななかでも王国の反乱も準備もしていた。言われたことしかしない奴は無能だ。それにプラスアルファをしてこそ有能なのだ。
忙しくしている時に冒険者ギルドにいる手駒からカイがビクターにいるという情報をもらった。
やはりカイという者と接触した方が早い。それにあそこは副官や手駒もいるし、補充もしやすい。
私はビクターに向かった。
もちろん顔は変えた。宰相の顔は目立つし、私を知っている者(貴族や役人、騎士等)に接触するのも厄介だ。それにカイもスパイに教えられて宰相の顔を知っているだろう。
ちょっとこなれた冒険者に変身した。
出来れば偶然を装って知り合いになった方が良いので、町中やダンジョンで接触したかったが、なかなか接触出来なかった。
冒険者ギルドでは顔を見るのだが町中では姿が見えず、ダンジョンでも同じだった。
さすがスパイの協力者。隠密能力が高い…
しかし頭は悪いようだ。高い隠密能力を見せたことや、それに加え初めてのダンジョンを二人で行くなんて…凄腕だとバラしているようなものではないか。
しかも奴隷を買ったみたいだが元貴族だ。しかもあの時潰れた元貴族だ。馬鹿な奴め。私と敵対しているのがバレバレだ。
奴の口からどのお方の名前が出てくるか楽しみだ。
早く接触したかったがそれどころではなくなった。
内乱を計画していた貴族達が次々に捕まり、更にはそこに潜り混ませていた魔人が討伐されることになり、それの火消しに手をわずらわされた。
その間、カイの方はダンジョンにいる副官に任せた。出来れば生かして捕らえ情報を得たいが、難しいなら殺せと指示をだした。
火消しに行ったが私にどうにか出来る状況ではなかった。もう既に元宰相が関与していることもバレていた。
元宰相の顔はなにかと便利だったのだがもう使えないか…
難を逃れた魔人に聞くと、S級の剣聖とA級のセバスチャン、それに加え『天衣無縫』や『武芸百般』、『神鋼の処女』等と呼ばれるSS級のシュリが動いたみたいだ。
更には『天衣無縫』くらい強い女がいて、自分達だけではどうしようもなかったらしい。
クソっ!なんだよっ!おかしいだろうがっ!
まぁこの際、内乱の失敗はどうでもいい。宰相の顔が使えなくなったのも少し痛いが良しとしよう。
だが『天衣無縫』が動くなんて…鍛冶でもしてろよっ!それに剣聖を連れてくるなんてふざけんな!
それにセバスチャンが出てきたということはあの家まで絡んでいるし、それに加え『天衣無縫』くらい強い奴がいただと…
なんだよそのドリームチームは…本当にクソだ!
『天衣無縫』が冒険者から引退するって聞いた時は魔王軍では驚いた。もしかしたら家畜共達よりも衝撃が大きかったかもしれない。
なにかの罠だと思い、調べたが本当だとわかり魔王軍で祝杯があがった。
『天衣無縫』は本当に厄介で、奴自身も強いが周りも強く、奴が装備品を作れば『国宝級』くらいにはなる物を作る。それを自分が気に入った者には安く渡すが、気に入らない者には絶対売らない。
それに頭もきれる。こちらの策を潰されたことが何度あったか。時には策を策で返し、時には単純な力押しで破壊された。
何拍子揃ってるの?って感じのマジで訳が分からない女だった。
ダンジョンコアが破壊されそうになるし(それは私が尽力して止めたが)、魔王軍も奴を倒すのに必死だったが全て返り討ち。そのなかには元十忌将だった方も含まれてる。
そんな奴が引退だ。あまり喜怒哀楽を出さない魔王様もご機嫌で初めて褒められた。
正直言うと私はなんの策もしていない。だからそう言った。
そう言ったが、いかにも関わってそうな感じで言ったので、私の言葉を魔王様や他の者も信じていないだろ。
閑話休題。
そんな『天衣無縫』と同じくらいの強さだと、有り得ないだろ!そんな奴が今までどこにいたんだ。
くそっ!私の大失態だ。そういう奴を探し、出来れば排除、最低でも情報を手に入れなければならない。それなのに気づけなかった。
どこにいたんだ。そんな奴の情報なんて一切聞いていない。
マズイぞ。魔王様に報告するか…無理だ。今のままではガキの使いだ。多分殺される。良くて半殺しだ。せめて情報を集めないと…
情報を集めたが誰だか分からなかった。
そんな奴この国にはヴォルフガングくらいしかいなかったはずなのに…笑えるな。
奴はあの森から出ないはずだ。
それにだ。もしヴォルフガングが『天衣無縫』についたなんてシャレにならん。考えるだけで…いや考えたくもない。
しばらくしてようやく『天衣無縫』達の情報が入った。どうやらビクターの町へ行ったらしい。
ダンジョンの手駒は上手くやれるだろうか…まぁ荷が重いな。私でも重いのに…
カイという冒険者の方を上手くやれていればいいのだが…
そんなことを考えながらビクターの町へ向かった。
ビクターに着くとそこで残念なお知らせを聞いた。
カイの正体が分かった。奴はあの家の者だった。それにダンジョンにいた私の副官は『天衣無縫』達によって殺された。
副官の作戦は理解出来る。まずエリアボスを当て弱らせる。まぁ最悪そこで死んでもいいが、生き残ったところを捕らえる。
手駒によると作戦は上手くいきそうだったらしいが、最後の最後で『天衣無縫』達に邪魔されたらしい。
今は副官のことはどうでもいい。私自身のしんたい(身体と進退)のどちらもかかっている。
あの家の者が魔王軍に協力する?逆に魔王軍の者があの家に協力を求める?どちらも有り得ない。
本当に最悪…吐きそうだ。
私はスパイを探すために少し強引に捜査をした。そのせいで魔王軍の仲、特に十忌将達の間に傷をつけた。それなのにスパイや協力者はいなかった。
そのことがバレれば私は死ぬだろう。それにそれも時間の問題だ。
カイが一枚上手だったか…まんまと騙されたぞ。頭が悪い振りをし、私を利用して魔王軍の仲をこじらせる。仮に私が処刑されたとしても、完全には不協和音はおさまらないだろう。
家畜に私の正体がバレていたと考えなかったが、あの家の者なら納得できる。
私は踊らされていたのか…
だがせめてカイという冒険者は必ず殺してやる。奴はあの家で治療中らしい。副官の作戦も本当にあと少しだったらしい。奴は今動けないと状態と聞く。
そこであの家の者も殺せばもしかすると減刑されて命は助かるかもしれない。
私の隠密能力は謙遜してもトップクラスだ。ヴォルフガングの鼻や、やけに勘が良い剣聖には通用しないかもしれないが…『天衣無縫』にだってバレない自信がある。
『天衣無縫』はその辺のことを自分で作った装備品でカバーしているので殺せないが…一撃を入れることはできる。
手駒達を陽動に使い、裏からカイや魔聖の番、セバスチャンも殺せば減刑は間違いない。
「くそが!」
私は捕まってしまった。
作戦は上手くいっていたのだ。途中『天衣無縫』がやってきたのは想定外だったが手駒達を捨て石にしてなんとかした。
作戦は上手くいっていた。あと少し、あと少しで魔聖の番を殺せそうだった。
あの女を殺した隙を突きセバスチャンを殺すつもりだったのだが邪魔された。
私の一番の想定外はカイだった。
私の隠密を見破り短刀を投げられ私の体に刺さった。奴の隠密能力も高く、私はカイの接近に気づけなかった。
しかもその短刀が厄介だった。すぐに抜きたかったが背中に刺さったので、なかなか抜けず更に私の魔力を吸い出していた。
その一瞬で『天衣無縫』に捕らえられ、手駒達も制圧された。
束縛を解除できる気がしない…『天衣無縫』…SS級というのよ頷ける。
なぜかカイは謝りながら短刀を抜いていた。謝るくらいなら投げるなよとも思ったが、ありがたかったのでお礼をいうとなぜか驚いていた。
魔族にだって感謝の気持ちはある。
「それで私をどうするつもりだ。死んだ魔聖の代わりをはげめばいいのか?」
怒らせて殺してほしくて挑発した。
「そんな汚い言葉は使わないで頂けない?子供が見ているのよ。初めまして…ではないかしら。元宰相様ですよね?」
どうしてそれがバレた。
「フフフっ、あなたも貴族なら顔は取り繕わなければいけないわよ。魔力の波長が似ていたからね。まさか本当に宰相閣下とは…フフフ」
しまった。私の隠密が見破られ、捕まってしまい、更に正体まで当てられたことで動揺してしまった。
「んーってことは、襲った魔族がボスとしてみてる。…なるほどなるほど。元宰相は魔族だったのか。マリンは知っていたの?」
「だから知りませんでしたよ。シュリさんは知ってました?」
「本当かな?」
「白々しいっ!分かっていたから私を…魔族軍を陥れたのだろう。カイを使ってな!よくもそんな奴を育てたな。魔聖を殺した復讐かっ!」
…
「…あの人を殺した?どうやら私はこの方とよく話さないといけないみたいです。スカイ。もう遅い時間だわ。寝なさい」
「えっ?僕も父上の子供としてっ…ハイ。義母上、シュリさんお休みなさい」
「素直でよろしい。エルザ。あの子のことよろしくね」
元貴族のガキがカイを連れていった。
「これからすることをあの子に見せたくないわ。ちょっと刺激が強いからね」
私にだけ聞こえる小さな声で囁いた。
「お前っ!なにをするつもり…グフッ」
文句を言おうとすると、魔力で内部から喉を絞められた。
「声が大きいわ。あの子に聞こえたらどうするの?あなたの質問はなにをするつもりかであってる?そうねぇ━━━━や━━━。それでもダメなら…」
もうすぐ部屋の出入り口の扉までいる。聞こえるはずがないはずのカイはブルっていた。
嫌な予感でもしたのか…あっているぞ…
「ま、マリン。そこまでやるのかい?」
『天衣無縫』ですら引いていた。
「わ、私をなんだと思っているんだ。そんなこと許されないだろう」
「ふふふっ、誰の許可が必要なの?さぁ診療室に行きましょう」
あなたの辞書の診療室と実験室がいれ違っていないか…
その考えは『天衣無縫』も同じだっただろう。
「さて、約束通り。はじめましょう」
「情報を話すっ!だから勘弁しろ…いえして下さい。お願いします。なんでも話します。話したら楽に殺して下さい」
「うーん。分かりました。お話を聞きましょう」
それから嘘を混ぜて真実を話した。
いくらこんな目にあったとしても魔王様の不利になるようなことは喋らなかった。
「なるほど。ありがとうございます」
「そうか…じゃあ楽にしてくれ…」
「じゃあ、じっけ…診療を始めますね」
やっぱり彼女の辞書は誤っていたか…じゃない。
「約束が違うじゃないかっ!私はちゃんと話しただろっ!」
「いや。情報を精査するのにやはり、診療は必要です。大丈夫ですよ。私は上手ですからね。それにあなたたちは私達との約束を守りますか?それが答えです」
そこからのことはあまり覚えていない。
情報を喋ったのか、喋っていないのか分からない。私自身は喋っていないと思うが…いや私とは誰だ?情報とはなんだ?いや私はなんでここにいるんだ?そうか私はマリアンヌ様のために頑張らなくては…
マリアンヌの犬になった。
ゲームでは詳しく描かれなかったが、彼は公爵の娘を殺し、反乱に暗躍してこの王国をどん底にした。
その功績で魔王の幹部になる。
幹部になった後、魔王軍に有利な策を実施した。
魔王城の改築や敵対魔族との同盟等を成して魔王の覇道を手助けする。
それらの功績で、ゲーム後半では魔王の副官として登場する。
そんなゲームでは魔王の副官として登場する予定であったヴィジャが死ん…いや死んではいないか。
死んではいないが戦力外、いや戦力害になった。
まぁゲームと現実は違う。そうゲームにはカイという存在はいなかった…
彼は世界を救った。
そんな男はというと…
「義母上怖い。貴族怖い。本当に勘違いで良かった。嫌われていないよな?」
「はい。大丈夫ですよ。お師匠様はカイ様のことを大切に思ってらっしゃいます」
「そうだよな。良かっ…」
『話は終わっとらんぞっ!よくも妾を投げてくれたなっ!謝罪が足りんぞ』
『もう謝っただろう?』
『妾は謝罪が足らんといっておる。誠意を見せよ』
『誠意ってなんだよ。どうしたら良いんだ?』
『そうじゃのう…妾を顕現させ美味しい物を食べさせよ。そこの泥棒猫の作った飯でよい』
『くっ…仕方ない。だけど今日は疲れたから明日な』
『さすが主じゃ。じゃが心が広い妾にもっと感謝してもよいぞ』
『そうだな…』
マリアンヌの恐ろしさと、そんな恐ろしい人が味方で良かったと少しの安心を感じながら、自分の武器の機嫌をとっていた。
自分が世界を救ったのだと知るよしもなく…
長くてつたない文をお読みいただきありがとうございます。
これで一部完です。
新しい物語を作りました。『僕の常識、異世界では非常識』をよろしければご一読お願いします。
こっち進めろよ。と思う気持ちは重々わかっていますが許してください。
https://ncode.syosetu.com/n6547im/




