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チュンチュン…
結局一睡も出来ずにエルザと過ごした。
だが小説のように爽快な気分にはなれなかった。
小説では『生まれ変わった』みたいや、『世界が平和でありがとう』等の表現があり、それは誇張されたものだと理解はしていた。
それでも最高の気分になるものだと思っていたが、そんな事はなかった。
ただ股間が痛いだけだった…
それにしてもこういう時、アニメやドラマでは朝になるとお互い裸や、それに近い格好になっているがなんでだろう?
閑話休題。
朝日はさしているが全然寝ていなかったので瞼が重く、そのまま眠ってしまった。
目が覚めると驚く事態になった。
目が覚めると昼過ぎくらいでエルザも寝ていた。
それは普通の事だ。
俺が起きている間、エルザも寝ていなかったし。
だが、俺とエルザの間に五歳くらいの子どもが眠っていた。
えぇーっ!?もう子どもが産まれたの?
この世界ではそうなのか?というか成長早くないか?
いろんな疑問を叫びたい気持ちを抑えて、いろいろ考えているとエルザも起きた。
「おはようエルザ…それで子ども産んだの?」
「うーっ、おはようござい、はっ?えっ?なんで…そんなはずは…だってまだ…」
エルザも混乱していた。
このままじゃ埒があかないので、子どもを起こしてみることにした。
子どもを軽く揺すると、子どもの目が開き起きあがった。
「おおっ…成功じゃ。…主と泥棒猫よ。初めましてになるかのぉ?妾を主の事をよく知っておるがのぉ」
俺は主?エルザは泥棒猫?
パパママじゃなくて?ヤバい。意味がわからない。エルザも同様で動揺していた…
つまらないシャレを考えている場合じゃない。
「少しちんちくりんじゃが、まぁ成功でよいじゃろう」
いや0才にしては立派過ぎるだろ。
いやいや冷静になれ。俺達の子どもな訳ないだろう。
「主と泥棒猫の子どもな訳あるまい…」
動揺し過ぎて声に出てしまったか…
「君は誰?名前とかわかる?それとエルザをそんな風に呼ばないでほしいなぁ」
あの時見た聖霊でもなさそうだし…
「あぁ。自己紹介がまだじゃったな。妾はl$tmじゃ。まぁ魔神刀に憑いていた者じゃの。それに泥棒猫に泥棒猫と言ってなにが悪い」
最後の物言いにイラっとしたが相手はガキだ…
幼女はエルザの事を良く思っていないみたいだし、あの刀に憑いていたと言っていた。
万一の為を考え、エルザを部屋から出した。
「そうじゃ泥棒猫ははよう出よ」
…冷静にだ。
「…魔神刀に憑いていたもの?邪神かなにかか?」
身構えて聞いた。
「…うーん…邪神ではないと思うがの…というか自分のことを邪神と思っておる奴はおらんよ。考えてみよ。一方から見ると妾は悪の存在かもしれんが、別の何かから見た時は善の存在ということもあるのじゃ。そう。一方では邪神かも知れぬが、一方では救世神みたいにな」
こいつなに言ってんだ?それに名前もわかんねぇし…
「ちと主には難しかったかの…それに、主では妾の名前聞き取れなんだか…そうじゃな…タヌと呼ぶが良い」
こいつ、俺の心の声を…
「わかるぞ。主とは繋がっておるからな」
マジで生意気なガキだな…
ふーっ、冷静にだ。大人として…
冷静に…
「そうなのか…いくつか質問していいか?」
名前等のわからない事は置いといて、タヌにいろんな質問をした。
とりあえずわかった事は五つだ。
①今の魔神刀は現存する武器のなかで一番強かった。
②タヌのお陰で剣の腕が上がったし、傷ついている体を騙し騙しダンジョンを攻略できたらしい。
③ヴォルさんとの仲が最悪。
④なぜかエルザやツバキに対抗意識がある。
⑤顕現するためと刀が無くなる。タヌの戦闘力はタヌ自身は強いと言っている。多分見た目の五歳程度の戦闘能力しかないこと。
⑥刀に戻ることは出来るが、短刀になり攻撃力は激減する。
本来の刀にも戻れるが、今の俺だと一週間で合計三分くらいしか戻れない。
それに対する俺の感想。
①へぇー。
②ありがとう。
③まぁ好き嫌いはあるか…出来れば仲良くしてほしいが…
④なんで!?
⑤まぁ当たり前だよね。
⑥ウル○ラマンかっ!?
「なんじゃそれは?まぁよい。ちなみに頑張れば五分くらい…頑張るのは主じゃが、五分くらいになれるぞ。だが主に悪影響が出るからのぉ…やめといた方がよいぞ…」
なんか怖ぇよ。
こいつが言う悪影響ってどんな悪影響なんだよ…
「妾にもわからぬ…」
超怖ぇよ。絶対使わない…
って、これフラグみたいじゃないか…
本当に三分以上は使わないぞ。
「それが良いじゃろうて…」
こいつに言われるってことは本当にやめた方がいいみたいだ。
結局タヌはなにを言いたいんだ?
「詳しく話すと刀になれるのは一日で25秒くらいしか使えぬし、貯めた時間の最大が三分だけということなのじゃ…」
ハキハキ話していたのに、⑥の質問くらいから急にトーンダウンしていた。
顕現したことで俺の戦闘能力が下がったことを気にしているのか?まぁシュリさんに刀作ってもらったし別に良いんだが。
「さすが主じゃ。主ならそういうてくれると思っとったわ。思っとたが、こうあっさりと他の刀に浮気されると、それはそれで腹立つのお」
じゃあどうすれば良かったんだよ…
「あっ!…別に答えなくていいぞ。それよりも…」
次の質問をする前に、なんていうか疲れて眠たくなってきた。気のせいだと思うが…
「妾が顕現している間は魔力が減るからのぉ。気のせいではないぞ。あっ、魔力が無くなっ…」
それを早く言えよ!
タヌが短剣になったと同時に俺の意識も無くなった。
次に目が覚めると辺りは暗かった。夜みたいだ。
今日はなにも食べていないからかお腹が空いた。
空いたが…
今日はもういいかと思ったが、美味しそうなにおいが…
このにおいはエルザが作った料理のにおいだ。
においに誘われて部屋を出ようとした時に嫌な予感がした。
予感はしたが食欲には勝てずに部屋を出た。
エルザと義母が食事をしている部屋の扉の前で話し声が聞こえた。
「あの子がここまで酷かったなんて…エルザには申し訳ないわ。私の知り合いを紹介しましょうか?結構顔が広いのよ。相手次第では貴族にも戻れるわ」
俺の体はそんなにヤバいのか…?
「いえ大丈夫です。僕の方からはカイ様の側から離れません。貴族に戻るよりカイ様の側にいる方が嬉しいです」
なにを言っているんだ。俺がエルザに離れるように言う訳ないだろう。
「そう。それでこそ私の弟子ね。それにしてもあなたの料理は美味しいわね」
「ありがとうございます。カイ様にも食べてほしかったんですけど…」
俺も食べたい。
扉を開けた。
「良いにおいだね。朝からなにも食べてないからお腹ペコペコだよ」
「…随分と遅いお目覚めですね。それに挨拶もありませんね。体が治したら教育をやり直さないといけませんかね?やはり甘やかし過ぎたのでしょうか…?」
なぜか義母がめっちゃ怒っている。
義母が怒っているときは俺に対しても敬語になる。
「申し訳ありません。義母上。ご挨拶をさせて下さい」
「もういいです。スカイ座りなさい」
うぅ…義母に逆らっても悪いことにしかならないだろう。
了承して椅子に座った。
「あなたの食事はあれです。準備を頼むわ」
俺が部屋に入る前の雰囲気が嘘のように沈黙が続いた。
エルザが空気を変えようとなにか喋ろうとすると、義母に食事中は静かにしましょうかという忠告に、エルザは了承の返事をするしかなかった。
さっきまで喋っていたじゃん。とツッコんだらきっと「盗み聞きしていたのですか?」など百返されそうだ。
良い雰囲気とはいえない空気のなかメイドがあれを持ってきた。
いつもの二倍の量だ。朝と昼の分だろう…
一口で俺の食欲が失せた。慣れていてもエルザの料理が食べられると思ってからのからこれは辛い。
本当に辛い…義母になにか言っても無駄だろうし…
それにエルザの想いを無下にはできない。
これは体には良いみたいだし、治療にも効果があるはずだ。
早く治して冒険を再開するんだ。
ツバキが出場する予定なので、剣術大会も見に行きたいし…
頑張って食べた。食べきった。無理矢理口へ放り込んだ。
放り込んだといっても、マナーにうるさい義母の前なのでお行儀良く食べたつもりだ。
なにも言われてないから多分大丈夫。
本当に全部食べるとは思わなかったのか、先に食事が終わっていた二人は褒めてくれ、エルザの料理も食べるか聞かれた。
だが、とてもエルザの料理を食べれる余裕はなかった。
食べたらきっと吐いてしまう。吐くとあれを食べた事が無意味だろうし、義母が吐いたからまた食べろと言われるかもしれない。
義母もそこまで鬼ではないと思うが…全部食べたことで義母の機嫌が多少良くなったが、それまでかなり怒っていた。万一のことを考えると…
「エルザ。ごめん。お腹一杯で食べれない…」
エルザが少し残念そうな顔をしていた。
「スカイ。次元カバンに入れてあとで食べなさい。とても美味しかったわよ」
まさか義母がそんな事を言ってくれるとは思わなかった。
メイドに部屋にある次元カバンを取ってきてもらいに頼んだ。
頼んで待っている間、義母のお小言は終わらなかった。
貴族らしい遠回しの言い方だったので、あまり何を言いたいのかわからなかったが、わかったことは三つだ。
①エルザを大切にしなさい。
昨日の出来事を聞いたのだろう。エルザの顔が赤くなっていた。
朝まで寝かせなかったことを怒っているのかも知れない。
②いろいろと勉強が足りない。
自覚はしているが、なにが足りないのかがわからない。
③シュリさんの指導は厳しい。
父上でも泣いたことがあるらしい。
とりあえず勉強は今までと同じように魔法を勉強することにしよう。
きっと義母はシュリさんに魔法等の指導をしてもらう際に、俺の勉強不足でシュリさんを困らせないようにしたいのだと思う。
人に教えてもらう際に、最低限の知識は必要らしい。
それは教えてもらう人が凄ければ凄いほど、最低限といってもその知識量は多くを求められるのであろう。
メイドが次元カバンを持ってきたので、エルザの料理を次元カバンに入れて部屋に戻りベッドで横になった。
次の日から、食事以外は勉強をした。
魔法書に紛れて情操教育の本があったが、そんなものより魔法の勉強が面白かった。
しばらく勉強しているとなぜかため息が聞こえた。一人じゃない。何人ものため息だったがなんだったんだ?
もしかしたら思った以上に、俺の学習ペースな遅れているのかもしれない。と考え、より魔法の勉強を頑張った。
お読み頂きありがとうございます




