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【一部完】世界を救っているのに自分は気づかない話  作者: おむすびさん
三章【里帰り】~誰もが凱旋できる訳ではない~
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 実家に入った後、義母達はエルザに挨拶をした。


 義母はエルザの家名を聞くとエルザを抱きしめて、エルザの耳元でなにか呟いていた。


 やはり俺の体がおかしいのだろう。少し前までなら聞こえたはずだが聞こえなかった。


 呟いている間にエルザがの手が義母の腰にまわり、泣くのを我慢していたが…


 そんなエルザの後頭部を義母は優しく叩いていた。


 エルザの置かれた状況を知り、義母は励ましたのだろう。


 そんな時、俺達は聞こえない振りをして、あの料理はキツかった…と懐かしくて笑い合っていた。


 笑い合っていたが、エルザに気を使い昔のことをあまり聞かないのではなく、泣かせてあげる状況を作るべきだったかもと少し後悔もしていた。


 ただ俺と義兄達にあった溝は少し改善されたように思えた。

 過去に嫌な思いを共有した者同士は不思議と仲良くなるものだ。


 そんな俺達に向かって義母がため息をついた後、一度手を叩いたので義母の方を向いた。


「そんなあなたに残念なお知らせです」

「なんですか?義母上…」


 嫌な予感しかしない…

 だが、きっと優しい義母だ。俺の考え過ぎを祈った。


「しばらくの間、魔力経路が治るまであなたの食事はあれだけです。私の治療とあの料理で内と外を同時に治療します。我慢なさい。あなたが無理しなければこんな事にはならなかったのですから…」

「そんな…」


 確かに自分のせいだし、優しさから言っているのもわかる。

 だが、エルザの料理で肥えた舌で今さらあれは無理だ。

 自業自得だが考えろ!

 

「高級品ばかりじゃ家の財政が心配です。セバスそうだろう?」


 頼む。あれでも高級品なのだから難しいだろう。というか難しいと言え!


「そうですね。旦那様がお亡くなりになり毎回あの料理を出せるほど財政はそこまで良くありません」


 そうだ。それで良い。


「やはりむず…」

「でも、スカイ様が稼がれたお金があれば可能です」


 何言ってんだっ!なにが悲しくて不味くて高い料理を俺の金で買わなくてはならない!


「義母上。あのお金はパーティーのものなのです。私個人のものではないので…」


「そうですね…スカイだけで稼いだお金ではないわね…でもスカイの健康には代えられないのよ…エルザさんはどう思う?」


 その質問は…エルザには不味い…

「もちろん。僕はカイ様が健康になれるならお願いします。足りないのなら僕の個人の貯金も出せます」

 ですよねー…エルザはそういう奴だ…


「あらあら…エルザさんは良い子ね。この子と…あらいけない。焦ってもダメね。また後で…」


 なにが後なんだよ!くそっ!どうする?


「そんなに嫌なのね。でもね…あなたの為なのよ」


 嫌なものは嫌だ。わがままということは自覚しているが、それだけマズイのだ。


「ちなみにそのお金でなにを買おうとしていたの?」


 これはチャンスだ。


「もちろん装備品や魔法書、学園に通う為の資金等です。装備品はやはり高い物の方が良い物が多いですし、なにより魔法書はものすごく高いです。そのために貯金していました。今回の事で実力が足りないことを嫌というほど体感しました。それを購入するのに家にこれ以上迷惑はかけれません」


 どうだ。この完璧な論理。


「なるほどね」


 良かったこれであれから解放される…


「でも大丈夫よ。装備品はもう既に良いものを使っているみたいだし、足りないなら私やあの人、スカイの母の冒険者時代に使っていたお下がりもあるし」


 父上のものを使えるなら嬉しいな。でも…


「義兄上達はいいんですか?」


「かまわないよ。私達もいくつか譲ってもらったし、お前には感謝していることもあるから。遠慮なく持っていくといい」


 感謝していること?なにかあったか?

 気になるが、それよりも俺の論理が早くも崩れている…


「装備品は解決したかもしれませんが、学園に行く為の資金は解決していません」


「それは大丈夫よ。魔法も私やシュリさんが教えてあげる予定だから、学園に行かなくても問題ないわ。学園より質の高いものになるわ」


 確かに学園に通うより、父上の師匠だったシュリさんに教えてもらった方が強くなりそうだ…


 凄く納得してしまった。

 完璧ではなくヘボ論理はあっけなく崩れ、俺の足も崩れ落ちた。


 ピンチはチャンスというけれど、逆のことも言えることを気づかされた。


「エルザさんも水回復なのよね?私もなのよ。私の弟子にならない?まぁ嫌ならいいのだけど…」 

「いえ!よければ弟子になりたいです。ありがとうございます。…それでなんとお呼びしたら…」

「なんでもいいわ。名前でも、師匠でも…もちろんお義母さんでもいいわよ。えぇそれがいいわ。そうしましょう。お義母さんとお呼びなさい」

「えっ…そんな…」

「遠慮しなくてもいいのよ。それとも呼びたくないのかしら?」

「いえ、そ、そんな事ありません」

「それならお義母さんと呼んで、はいっお義母さん」

「えっとお義母様…」

「うーん。さんが良かったけど様もありね。あー可愛いわ。やっぱり女の子も欲しかったわね」


 崩れ落ちた俺の前では、なんとも平和な光景が繰り広げられていた。



 義兄達はしれっと本邸から出ようとしていた。義兄達も好き好んであれを食べたくはないのだろう。


 義兄達だけ逃げるのが、俺のなかに逃がしてたまるかという気持ちがなかったといえば嘘になるが、義兄達の気持ちが大いに分かるのでそのまま行かせようとした。


 食い物の恨みは凄いと聞くし…


「あなた達。挨拶もなしに出ていくつもり?」


 逃げようとしていたが残念ながら義母にバレた。

 義兄達は頑張って言い訳していたが、それが逆効果になった。


 本来なら俺とは別メニューだったのに、義兄達が滞在中は俺と同じメニューになった。


 本当に別メニューだったかは義母のみぞ知るが…

 

 そうして俺は実家生活が始まった。

 最後までお読み頂きありがとうございます。


 異世界恋愛の短編を書いてみたので、見てくれると嬉しいです。

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