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【一部完】世界を救っているのに自分は気づかない話  作者: おむすびさん
二章【ダンジョンの町でハーレムパーティーと呼ばれて~本当に呼ばれてるだけ~】
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ルータ


 馬鹿を見送って次の日。

 昨日の馬鹿がやって来た。


 凄く不味い。

 なぜなら犯人のなかに副商会長である兄の腹心がいたのだ。

 そりゃあいくら屋敷を点検しても被害者が出るわけだ。


 本来私は怒れる立場だし、昨日の夜聞いたときに怒った。

 理由は私が優秀で野心家なのが怖かったらしい。


 もちろん父も激怒して勘当されていた。勘当した後、どうなるかは目に見えている。


 兄も懇願していたが、父の怒りは収まらず家から叩き出されていた。

 それから昨日は家族揃って大変だった。


 話が広がらないように、あの屋敷の近所や関わった兵士、その上の口止めで忙しかった。

 商会のお得意様や被害者、被害者の家族にバレるのと口止め料とでは、天地ほどの差の金額がかかるし、信頼もなくなり大変なことになる。


 商会が潰れるかもしれないほどの危機で、私も火消しに奔走した。



 そんななかでの来店だ。

 どこかで聞いたのかもしれない。

 昨日、実家の商会のことも話してしまった。


 緊張しながら話を聞くとどうやら違った。

 押し入り強盗の話ではなく、エルザの勘違いの件だった。


 いつもなら煙にまくことも出来たが、緊張を返してくれと言いたいくらいホッとしたので素直に認め、これからの貸し出し料のなかの奴隷館の取り分を五年間無料にしてやった。


 まぁ騒がしくされても困るし必要経費だったと思おう。

 エルザも買ってくれた利益に比べればお釣も出るだろう。


 だがいつバレるかも分からないし、どこの貴族の関係者か知ってもおきたい。

 木っ端男爵や子爵なら問題ないが、大貴族の関係者やまさかと思うが王族の関係者なら大変だ。


 だが所詮力があるのはこいつじゃない。その家族や親戚だ。その方さえ味方に出来れば問題ない。

 王族の関係者ならどうしようもないが…


 馬鹿のことが分からないと動きようがない。貸し出す奴隷のなかにスパイを入れよう。


 エルザの従者も入れて、営業を込めてツバキも入れておけば問題ないだろう。


 ツバキは奴隷館にとって良い奴隷だ。

 貸し出しの単価も高いし、前回売れたが契約期間が終わるとまた奴隷になったので、また儲けさせてもらっている。


 それからしばらくすると貸し出した奴隷達が帰ってきた。


 どんな様子かスパイに聞いてみると、気付いてはなさそうだったが、馬鹿についてはなにも分からなかったらしい。

 引っ越したばかりで、どこの貴族家かわかる物がなかったらしい。


 だが今回の奴隷は全員気にいられたらしく、別にお金ももらったらしいので、私が推薦すればこれからも借りてくれるだろう。

 そして貸し出していればいつかは分かるだろうと思った。


 だが馬鹿な癖に勘は良いのか、スパイをしていた奴を借りることはなかった。

 それに加え、貸し出す頻度が高く、しかも毎回単価が高い従者とツバキを借りていくので困ったものだ。


 従者達やツバキを使って儲けを出したいのに、なかなか他に出せるタイミングがない。

 どこの家の奴か分かれば動きも変わるのだが、分からないので敵になるわけにもいかない。


 せっかく単価が高い四人なのに、馬鹿に貸しても奴隷館の利益はない。

 この奴隷館のトップの所長からもこの契約について、チクチク言われてしまった。


 バックにショボい貴族しかいない小物の癖にやかましいハゲだ。それに口が臭いんだよ。いつか後悔させてやる。



 ある日、馬鹿に貸し出している奴隷のなかに、私の協力をしても良いという奴隷が現れた。


 まぁ、あとあとのことを考えれば私につくのは当然だ。

 これで少しでも馬鹿のことが分かればいいが…


 馬鹿が来て一月程たった時に、馬鹿が珍しくこの部屋までやって来て、奴隷の購入を考えてるらしい。


 ツバキや従者の誰でもいい。

 あの契約を続けるよりも購入してくれた方がマシだし、スパイならバンバンザイだ。


 だが始まったのは、あなたの為にという気持ちの悪い痴話喧嘩だった。

 私としたことが少しイラついてしまった。


 それに怒ったのか馬鹿が出ていった。

 馬鹿の癖に私に敵意を見せ、少しその威圧にビビってしまったのは内緒だ。


 しばらくすると二人が戻ってきて、エルザを解放するというので、思ってもない綺麗事を言うと、バカップルはやはり馬鹿なので騙された。

 だが痴話喧嘩をまた聞くことになったが我慢した。

 これからおめでたいことに解放を祝うらしい。


 奴隷達が戻ってくると、なぜかツバキを購入することになっていたので助かった。

 これで私の一日が無駄になることはなかった。


 馬鹿が奴隷館に来て半年たつが、奴の肝心なことが何一つ分からない。

 だがいろんな理由をつけて、貸し出し料金の値上げには成功した。

 契約を破っているが馬鹿なので文句も言わずに了承していた。



 そんななか、今日の食事会に特別な方を招待したらしい。

 私も眉唾物の噂くらいしか聞いていないが、父によると噂以上のことをしている人物らしい。


 名前はシュリというらしい。


 もし気にいられたら国内…いや世界一の商会になるのも夢ではないらしい。


 緊張しながら出迎えた。

 王様に会う前日にも緊張しないあの父が、招待することが決まった日から緊張しているようで、日が近づきにつれ商会のなかがピリピリしていたらしい。



 自己紹介が終え食事会が始まった。

 シュリ様はとても美人なのに、父はもちろん亡くなった父の祖父よりも年上なんて信じられない。


 シュリ様は父と雑談をしながら食事をとっていた。

 ケチな父が今日の食事には気合いが入っている。

 オーラが凄いのと、私なんかが喋りかけていいのかも分からない。兄も同じだろう。


 食事が進みしばらくがたった。


「あぁ、今日の本題を話すわね。昔話を出来る人も少なくなってきたから、本題を忘れるところだったわ。私も年なのかしら」

「そんなことないですよ。シュリ様は美しいし、頭も良いではないですか」


「そうね。あなたの頭よりはマシよね。あなたの頭は随分さっぱりしちゃって、ふふふっ」


 父の頭のことは禁句だ。食事会の雰囲気が悪くなるかを心配した。


「そうですな。私も年をとりましたからな。ワハハっ。それにそんな意味で言った訳ではありませんよ」

「ごめんなさい。ちょっとした冗談よ。そんなこと言ってくれる人も少ないでしょう?」

「そうですな。少し寂しくなりましたよ。頭だけじゃなくてね」

「ふふふっ、やっぱりあなたは面白いわ。話も面白いし、さすが大商会の商会長ね」


 父が自分の頭を自虐に使うのを初めて見たし、私達がいじったらブチ切れるくせにと思った。

 兄も同じだろう。


「それで本題とはなんでしょう?」


 この話題が嫌だったのだろう。話を変えた。


「そうだったわね…」


 シュリ様は本題の前にワインを一口飲んだ。


「そろそろあなたも引退を考えた方がいいわ。若い人に跡を任せるのも年長者の務めよ」


 ただの顔合わせと思っていたのに凄いことになった。

 兄は期待した顔をしていた。


「私が不甲斐ないのか、ただ跡を任せる者がなかなか育たなくて…」


「そんなことないわよ。若い人も育っているし、能力も高いのに気づかないのよ。それが年をとるって事なのかも知れないけどね」

「そうなんですかね?」

「そうよ。そうね…物を買う人はあなたの年代より、若い人の方がよく買うでしょう?」


「そうですな。金持ちじゃない限り、年寄りはあまり買い物しませんな」


「そうよね。じゃああなたは若い人がなにを求めているのか分かるのかしら?経験で予想は出来るでしょうけど、そういうのは同じ若い人が一番分かると思うのよ。あなたが誉めてくれた頭が良い私よりね」


「そういうものなんでしょうか?」


「まぁ私も今の若い人が、なにを考えているのかは分からないけどね」


 シュリ様はワインを一口飲んだ後私を見た。


「あなたは随分やり手のようね。どう考えているのかしら?」


 分かる人には分かるのね。


「いえいえ、私なんてまだまだです」

「そんなことないでしょう?自己評価が低いのね。ふふふっ。そんなあなたを商会長に推薦するわ」


 この人が言うなら決まったも同然だ。


「ありがとうございます。でも私ではまだまだ実力不足です」


 謙遜しておいた方が可愛いげがあるだろう。


「そうかしら。あなたはどう思う?」

「はい。少し心配ですが…うん。こいつなら商会を引っ張っていけると思います」


 父も笑顔で頷いていた。それだけこの人の影響力は凄いのだ。

 よしっ!これで商会は私のものだ。

 兄は取り繕った顔をしていたが面白くないだろう。


「父さん。シュリ様。私にはまだ無理です」

 まぁもう一度くらい謙遜しておこう。


「そんなことないでしょう?」


 シュリ様の雰囲気が変わった。


「…庶民を言葉巧みに騙して利益を得てるみたいだし…」


 なぜそれを!?

 父が驚いた顔をした後、さっきまでの笑顔がなくなり、青い顔になっていた。


「あぁ別に責めている訳じゃないのよ。大きな商会を背負うんですもの。良い人ではやっていけないものね。あなたの教えかしら?」

「違います。そんなこと教えるわけがありません。私の祖母みたいな人達に不幸を与えるようには教えません」


「そうなのね。まぁそれはどちらでもいいの。本当に責めている訳じゃないの。逆に助かっているのよ」


 それは嘘だ。

 笑顔だが目が笑っていないどころか、羽虫をでも見るような目だ。


「だって、いくら私でも善人にキツイ事を…まるで一昔前の奴隷のように働かせるのは抵抗があるの」


 …えっ?どういうこと?


「あぁ、言ってなかったわね。今日私が来たのは優秀なあなたを商会長にする事と、あなたが知りたがっていることを教えてあげようと思って来たのよ」


 私が知りたがっていること?…まさか!


「あぁ分かったみたいね。やっぱり優秀ね。あの子の正体を探っていたでしょ。優しい私はそれを教えてあげる」


 優しいのならその威圧をやめてほしい…言葉が出ない…


「あの子ね…魔聖の子どもなのよ。その意味分かるわよね」


 よりによって…あの一族…本当にヤバい…

 しかも本家の人間だ。下手すると王族を敵にするよりも…


「それに剣聖の弟子でもあるわ。それにこれから私の弟子にもなる予定なんだけど…その意味分かるわよね?」


 なぜだ…なぜそんな奴が…

 唯一理解出来たのは、これから私や商会が食い物にされることだけは理解出来た。


「はぁはぁ、シュ、シュリ様とあろう方がこんな、こんな騙しうちみたいな事を…」

「ふふふっ面白い冗談を言うのね。本当におかしい。まさか自分は騙しているのに、自分が騙されることが嫌だなんて…これからはあなたが騙した奴隷みたいな生活をするだけよ。頑張ってね」


 少し威圧が弱くなった。


「い、いん、因果応報ってやつですか?」

「うーん。どうかしら?因果応報っていえばそうなんだけど、運が悪かっただけだと思うわ」

「どういうことですか?」

「世の中はいくら良いことや悪いことをしても、それにみあった報いを受けないまま死んでいく人達ばかりよ。その逆もあるしね」


 確かに…


「死後の世界ってものがあるならそこで報いを受けるのでしょうけど、そんなの私は知らないし興味もないわ。あなたの場合は騙した相手が悪かった。ただそれだけよ。あなたが仮にいくら善人だったとしても、あの子を食い物した時点でこの未来は訪れていたわ。運が悪かったの方が正しいと思わない?」


 その通りだが…ってそんなことどうでもいい。

 それに私だけじゃなく、父や兄もなにか発言してほしい。私だけじゃなく商会の危機なのだ。

 父は目が焦点が合わないまま呆けていた。

 くそっ!


「そんな…どうにか出来ませんか?お願いします」

「うーん…うん無理ね。あの子の家の者も聞いたのよ。本家にも伝わるわ。貴族って舐められたら終わりだから…」


「そこをなんとか…」

「そもそも許しを請う相手は私じゃないわよ。それとね…一つ聞きたいんだけど、あなたが騙した人が懇願してあなたは言うことを聞いたことはあるのかしら?」


 それは…


「うん。ないようね。あなたへの要件は終わったわ。それよりも昔話の続きを…」


 父はうぉーうぉー言うだけで会話にならない…


「難しいようね。じゃあ私は帰るわ。あなたの父と昔話だけをしたかったけど、そういう状態ではないようだし…」


 シュリ様は兄の方を向いた。


「あなたも無関係ではないのよ。あなたもあの子を騙したでしょ。あぁ言い訳はいいわ。それが事実だから」


「あなた達家族も大変ね。ボケてしまった父の面倒もみないといけないみたいで…まぁ頑張って生きてね。あなたの父に免じて私から取りなしてみるわ」

「お願いします」


 こう言うしかないじゃないか…


「それじゃあね。…逃げようなんて考えないでね。私の面子は…まぁそんなのはどうでもいいけど、あの家から逃げて捕まった時の方が悲惨よ」


 そんな事は百も承知だ。

 シュリ様は帰っていった。


 せっかく念願であった商会長にはなれたが、これからのことを考えると…

 あぁ…私も父のようにボケたい…



 しばらくして来た手紙には、商会の利益の七割をあの家に納めることになった。

 初めは九割という無理な数字だったが、シュリ様のとりなしで七割になったらしい…


 あの家と交渉なんかも考えたくもない。この契約以上に酷くなる未来しか見えない。


 本当に奴隷のように働かないと商会が潰れてしまう。


 あぁなんで私は…



 ルータは優秀ではあったので、その後もこの商会はしぶとく生き残り、ルータが老衰で死ぬまで主人公の家の財政を潤した。とさ

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

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