ルータの鴨
別視点です。
短いのにあとがきは少し長いです。
出来れば最後までお読みください。
私は若くしてバルザ街の奴隷商役員をしている。
奴隷商人といっても昔の奴隷商人ではない。
二百年くらい前の奴隷商人も楽だっただろう。
人を買って、売るだけで儲けが出たのだから。
その後、その奴隷がどうなろうと関わりがなかったし、逆になにかあった方が、また購入してくれるので儲けが出ていただろう。
だが今のこの国では、犯罪奴隷は別だが奴隷にも人権があるし、それを破る奴に売ってしまうと破った奴だけでなく、売った商人の査定にも響く。
衣食住もその奴隷が希望するように主人が整えないといけないし、それだけでなく労働時間、労働内容まで奴隷が決められる。
それらと借金の額で契約期間が決まる。
そんな今の奴隷商人の仕事は、忙しいや人手不足の客にニーズにあった奴隷貸し出すことと、奴隷の権利を少なくすることが主な仕事だ。
貸し出した奴隷を気に入ってもらえればまた貸りてくれたり、買ってくれたりするが、間違ってしまうと噂になり奴隷の価値が下がるので難しい。
権利を少なくする仕事の前に、少し昔の話だが奴隷のなかには、無茶苦茶な権利を主張する奴がいた。
それで買い手や借り手が付くわけがない権利を主張する奴で、働かせれなくて奴隷館に負担がかかっていた。
もちろん奴隷館の生活にもお金がかかるので、借金が増える訳だが、きっとそいつは働かずに奴隷館で楽に暮らそうと思っていたのだろう。
今の王様が奴隷の能力によって借金額の上限を決めて、それに達したら犯罪奴隷になるという法を作ったために、そんな奴は今は見ないくらい少なくなった。
少なくなったが、それでもまだ奴隷の権利が多いと思う。
権利を少なくすれば、借り手や買い手がつきやすくなるので、奴隷達を説得して権利を少なくすることも大事だ。
庶民はアホが多いので権利を出来るだけ無くして、以前の奴隷のような権利が少ない奴隷にすることで、貴族などとの繋がりもある。
それをやってきたので、若くして役員にもなれた。
しかし私の実力があればもっと上に行けるはずだ。
そう例えば王都にある本部の役員とか、もしくは更にその上とか…
そうすれば私を商会から追い出した父や兄達を見返してやれるし、将来商会長に返り咲けるかもしれない。
見返してやるといっても、なにも父や兄達を殺してやりたいとか、商会を潰してやる等の過激な事を思っているわけではない。
ただ単に私が商会にいれば…と商会から追い出したことを後悔させ、商会に戻ってきてくれと懇願されたいだけだ。
家族仲は良くもないが、悪くもないって感じのどこにでもある仲だし、今日も家族で定例の食事会だ。
実家の商会はもちろん父が商会長をしていて、跡継ぎである上の兄が副商会長で、下の兄が不動産の責任者をしている。
もちろんあまり行きたくはないが、実家は大商会なので今は素直に従っていた方が良いし、多くの情報が手に入るために参加している。
そんな風に思っていたが、今日は来ない方がよかったかもしれない。
以前私が騙されて購入してしまった小さな屋敷があるのだが、その屋敷には一月もしないうちに、住人が亡くなってしまう不良物件だった。
犯人はわかっている。私に売った奴だ。
売った奴が屋敷にいろいろ仕掛けをしているのか、戸締まりをしっかりしても侵入され、殺されるか殺されなくても財産を奪われる。
犯行の後、家をしっかり調べているのだが、その後も犯行は続いた。
商会で賞金首をかけているがなかなか捕まらない。
三度そういう事があるとそんな噂はすぐに広がり、なかなか買い手や借り手がいなかった。
そんな屋敷の借り手が見つかったようだ。
しかも、不良物件の値段ではなく、定価の値段で貸し出したらしい。
それを恩着せがましく話していた。
兄は運が良いな。そんな馬鹿な奴がいるなんて…
食事会中は後悔していたが、今日その馬鹿な奴が奴隷館にやって来た。
身なりや、貯金額を考えるとどこかの貴族だろう。
やはり馬鹿なのか購入を考えているのに、自分の全財産を教えたらしい。
奴隷についていろいろ話した後に購入を進めてみたが、働きを見てから決めたいと言ってきた。
あぁ…こいつ買う気がないな…と思った。
こういう風に言う奴は大抵そうだ。
だが、そういう奴に買わせてこそだ。
うちにも困った奴隷がいる。
エルザだ。
少し馬鹿だが魔法も使えて見た目も悪くないのに、なぜかというと元貴族だからだ。
元貴族ってだけで守られる権利も多いし借金額の上限もない。それに加え奴隷館での生活費も高いので、借金額が上がり購入代金も上がり、ますます買われなくなり、高い生活費…と負のサイクルになりやすい。
それに庶民のように騙すことも難しい。元貴族を騙すのも難しいし、騙したことが国にバレるとあとあと大変なのだ。
それなのにこちらはあまりなにも出来ないし困った存在なのだ。
それでも優秀な私は元貴族であるエルザを誘導して、家事をある程度まで出来るようにした。
運が良いことに料理は好きみたいだったので良かった。
家事がある程度出来るようになると、家事は労働時間に入らないようにもしたし、他にも権利を少なくしていった。
これらは買い手がつきやすくするためだ。生活費は少し安くは出来たが、足しにはならない。
そのため、他の奴隷達にクリーンを使わせて自分の生活費の足しにさせた。
それだけではエルザの生活費に全然足りない。
足りないが、貴族には優秀な従者が付いてくるので、従者達の稼ぎで少しの赤字ですんでいるので、購入代金はそこまで上がってないので少しはマシだ。
いなかったらと思うとゾッとする。
そんなエルザを連れて、馬鹿な客の元へ連れていった。
馬鹿なエルザは私が思った以上の反応をしてくれ、馬鹿な客はどうやらお人好しみたいだ。
こいつなら契約を破ることはないだろう。
破ったとしてもあいつの親がうやむやにする可能性もあるし、しなくてもエルザを買ってくれるなら、査定が多少下がろうが問題ない。
それだけ国内の元貴族の奴隷を抱えるのは損なのだ。
購入させることにして、もちろんそれに成功した。
やはり私は優秀だ。
契約の際に少しごたつき、このエロガキと思ったが、エルザが納得した。
これを最初から取り除ければ契約なんかすぐにとれ、今以上の値段で売れたのにと思ったが、きっとこのエロガキだからだろう。
頭は悪いが顔は良いからな。
購入手続きが終わったので、二人が帰るのを見送った。
まぁ馬鹿同士よろしくやってくれ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この国の奴隷は、日本の派遣社員と昔の宮殿で住み込みで働く人を、足して二で割ったイメージですってことを伝えるために書きました。
派遣や宮廷に詳しくないので、実際はこんなに酷くはないのかもしれませんが、あくまでイメージですので御容赦下さい。
またご不快に思われた方がいたのなら、申し訳ありません。
とりあえずこの国の奴隷は自分次第ですが、しっかり権利があることを知ってほしかったです。
余談ですがそんなつもりで書いていたのに、私も今日までその設定を忘れていました。
奴隷って言葉はパワーワードだなと改めて思いました。
あとがきの最後までお読みいただきありがとうございます。
※一週間くらいしたら二章の二話の後に配置します。
ルータの糞っぷりが足りなかったので足しました。




