ヴォルの初めての友達
あたしはヴァナルガンドのヴォル…それがあたしの名だ。
千と一六回の年が過ぎた。それまであたしは人類を脅威的な魔物から守る為に過ごしてきた。
本来は脅威からこの世界を守る為の存在だ。
だから人間にその脅威があるのならその人間を滅ぼすのだが、あたしが産まれてから一度もそんな事がないので人類の為に働いていると言っても過言ではない。
それなのに恩を仇で返しやがった。
まぁあたしも考えなしだったが、人間が大好物のオークを連れてやって来たから、普段の恩に報いる為に連れてきたと思った。
だがあのオークは【魔神刀】を持っていて少し苦戦した。
結果的には勝ったが刺されたままで抜く事が出来ない…このままではあたしは【魔神刀】に力を吸われ続け一年を待たずに死んでしまうだろう。
まぁいい。ちょうど生きる事に飽きてきたところだ…
あたしが死んだら人類は滅ぶかもしれなちが、その原因を作ったのは人間なのだから、あいつらも文句は言われまい。
死ぬ覚悟もでき、後の生はのんびり暮らそうと思っていた時に元凶があたしの縄張りに入ってきた。
あたしの亡骸でも確認してきたか?確かにあたしの体はお前らにとっては宝の山だろう。
これは喧嘩を売っているのか?それ以外考えられない。
陰行の技を使うようだがあたしは誤魔化されない。あたしに気づいて逃げるか…
だがもう遅い!
すぐさま元凶のところへたどり着いた。
『よくもノコノコやって来たな!あたしを利用したな?』
「すみません。緊急事態で…あなたならオークなんて相手にならないと感じたので…」
まぁその通りだが…そんな戯れ言に騙されるかっ!
『お前のせいであたしに刀が刺さって抜けないのだが、どう落とし前つけてくれよう』
「えっ!?刺さってるんですか?僕で良ければ抜きますが…」
こいつなに言ってるんだ…
そうか、この刀を持ったらそのまま刺し殺すつもりだな。
『ほう…抜けれるものなら抜いてみろっ!』
一撃で終わらせようと全力で攻撃したが避けられた。
こいつ何者だ!あたしの攻撃避けれる癖にオークになんぞに負ける訳ないだろ!
やはりあたしを殺しにきたか。
短い期間であたしは死ぬだろうがお前なんぞに殺らさせない。
三回ほど攻撃したが全て避けられ懐に入られた。
ふざけるな。魔法で消し炭にしてやる。
魔法を使ったがなぜか消し炭にならずに生きていた。あたしは魔法を使った影響で動く事が出来なかった。
そして【魔神刀】が奴の手のなかに…
あたしもこれで終わりか…と諦めていた。
痛いっ!
痛いがその痛みと共に不快な感覚がなくなった。
本当に抜きやがった。
だがそれを持ったということはまたお前と戦わなければならない。
面白い奴だったが一撃で葬ってやろう。
『すまない…』
「いえいえ、元々僕が原因ですし怒るのは当然です。むしろ僕がごめんなさいです」
あれっ?普通…
『なんともないのか…?その変な感覚とか?』
「うーん。特に…近づいた時にかなり痛かったことくらい?でも師匠の攻撃も痛いので大丈夫です」
確かになんでだ?あたしの魔法は当たったはずだ。
あぁ…あの指輪か…どうりで…って違う…聞きたいのはそういう事じゃない。
『そのなんというか、この世界を滅ぼしてやる。とか思わないか?』
「はっ?なにそのヤバい奴…俺もそこまでヤバくないぞ。された事をする。こちらはなにもしてないのに殺されそうになったら殺すし、助けてくれたなら助ける。まぁ俺が出来ればの話だが…あっ!すみませんタメ口で…」
こいつなに言ってるんだ?まぁいい。
どうやら正常のようだ。ってことは人間に見えるがこっち側か…
それとも高位魔族…には見えないから多分こっち側…いやもうわからん。もう考えるのが面倒臭い。
『タメ口など別にどうでもいい。なにか願いがあるか?なんでも叶えてやろう』
まぁあの指輪を壊してしまったし、一応命の恩人だからな。
死ねと言われれば死んでやろう。飽きてきたのは本当だ。
「えっと…本当に?恥ずかしい願い事なんですが…」
くっ!まさかあたしをペットにでもするつもりか…くそっあたしに二言はない。なれと言われればなってやろう。
『あぁなんでもだ。早く言わないとまた殺してやる』
「えっ?えーっ!そっ、そしたら恥ずかしいんだけど、サラモン茸ってどこにあるか教えてもらっていい?」
やはりペットにされるのか…
仕方ない…百年くらい我慢すればいいだけだ…
いやちょっと待て。こいつの正体謎だった…
もっと長くなるかもしれない…はーっ、殺された方がマシだった…
「依頼でバルザ街からこの辺まで来たんだけどわからなくて…その場所を教えてもらうと助かるんだ」
えっ…ペットじゃなく、本当に場所を知りたいだけ…なんだそれは…一生懸命考えたあたしはなんだったんだ。
『あははっはは』
これは笑ってしまうだろう。
「あのーっ、大丈夫?場所がわからないとか?それなら大丈夫なので…」
『あー、待て待て。場所は分かるぞ。ここから━━』
場所を教えてやった。
「ありがとう。助かったよ。えっと名前ってある?俺はカイっていうんだけど…」
『あぁあたしはヴォルという。カイよ。またわからない事があったら聞きにくるが良い』
「えっ…それは悪いよ。お返しできないし」
くそっ…聞きにくればいいじゃないか。
『そうだな。それなら以前の様にオークを連れて来てくれ』
「えっ…ヴォルさんが怒ってた原因ってオークじゃなかったっけ?」
こいつ細かいことまで覚えているな。
それは【魔神刀】があったからなのだが、それを言うのはあまり良くないか…こういうのは意識したせいで予期せぬことが起こりやすいからな。
『あれは不意討ちだったからだ。ちゃんと連れて来た事を教えれば問題ない。瞬殺するところを見せてやろう』
「そうなんだ。でもヴォルさんって意外におっちょこちょいなんだね。ちょっと親近感が沸くよ」
『うるさいっ!…で、どうする?というか持って来い!』
「えーっ、俺に選択権ないじゃん…分かった。聞きたい事があったら連れてくるよ」
そう。それで良いんだ。カイの事が気にいったこともあるが、【魔神刀】の今後も見ておかなければならないからな。
個人に干渉するのはあまり良くないが仕方ない。
『聞きたい事がなくても来い』
「えーっ、なにそれ…でも大丈夫だよ。ほぼ確実にまた聞きにくるから、採集依頼舐めていたよ。もう三日も探したのにないんだ。他の採集物もあるからまた教えてね」
『分かった。気をつけて帰るんだぞ』
「うん。あっそうだ!刀傷は大丈夫?よかったらポーションあるけどヴォルさんにも効く?」
『あぁ。それは助かるな。くれるのか?』
「そこまで聞いてあげないほど性格悪くないよ。よかったらつけてあげるよ」
ここで信用できないほど、私の器は小さくない。
『それも助かるな。それじゃあ頼む』
カイはポーションをつけて帰っていった。
それからも何度も聞きにやって来た。
カイが行くのが難しい場所や【魔神刀】を見られると不味い場所にあるものはあたしが採りにいったり、眷族に採りにいかせた。
愚痴を言いに来た事もある。
なんか変なことも言ってきたりもしたが、ヴァナがどうとか…
あぁそれは忘れる約束だったな…
カイに話を聞くと【魔神刀】をあまり使ってないようだ。
理由を聞くと戦いに自信がないらしい。私の攻撃を避けるくせに…
どの口がっ!とツッコミたいが我慢だ。
あれを使わないに越したことはない。
だがカイには無事で居てほしいので、気配察知と陰行の術を鍛えることにした。
カイ自身は遊んでいる感覚が良かったのか、みるみる上手くなっている。
その際にあたしを見直していた。
高い能力を持っているのに、戦闘力は自信がないカイ。
そんなカイは意外にもこの二つは自信があったらしい。
もう少しであたしにも追いつくだろう。
これで変な事が起こらない限り大丈夫なはずだがなんだか心配だ。
カイ自身が少し…いやだいぶ変だからな。
そんなカイだが、最近カイがやって来るのを待っているあたしがいる。
そんななか、ゴブリンプリンセスの事があったが、どうやら奴が入れ知恵したのかあたしの活動範囲にやって来ない。
強いあたしだがいろいろと制約があるので、自由に好き勝手できる訳ではないのだ。
だがその憂いもなくなった。
なぜかわからないが運が良かった。
そんな折りにカイがやって来た。
あたしの不安が当たってしまった。
どうやらこれからは討伐や冒険をしたいそうだ。
魔石の色が淡かったのは【魔神刀】のせいなのは明らかだった。あれは魔石や心臓の魔力を奪って強くなっているからな。
だが朗報…というには少し微妙だ。
ゴブリンプリンセスが死んだのは良かったし、傅神服にいた奴が滅んだのも朗報だが、その代わり【魔神刀】の力が大きくなってしまった。
様子を見る為にカイを泊めた。
様子を見たがこれ以上【魔神刀】を使わせる訳にはいかない。
帰りにあたしの牙を渡してやった。
これで少しは安心する。あたしの牙を武器にしたらもうあれは使わないだろう。
なにしろカイはあの刀にそこまでの愛着がないからな。
ざまぁ見ろ!━━。お前が日の目を浴びることはない。
ポーションを置いていったのには助かった。ちょっと怪我したからな…
うーん不味い。
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