ながれぼしとしろねこさん
あるところにしろねこさんがいました。
ぎんいろにもみえるまっしろなけときんにもみえるこはくいろのひとみのきれいなねこさんです。ねこさんはまだちいさなおんなのこでした。けど、おかあさんやおとうさんはそばにいません。
ねこさんがうまれてすぐにおほしさまのせかいにふたりともたびだってしまい、いないのです。さびしくひとりぼっちでひびをくらしていました。
しろねこさんはさむいまふゆのあるひ、おおきなきのうろからふいにそとにでてみました。ふうといきをはくとしろくなってあたりにひろがりきえます。それをなんとはなしにみつめながらうえをみあげます。
「……わあ。きれいだわ」
そらにはいちめんにおほしさまがたくさんかがやいていました。しろねこさんはしばらくながめていました。
しゅんっとすごいはやさでなにかがめのはしをよぎりました。そらをふたたび、みつめるともういちどそのなにかがひかりおをひいています。
それはすぐにきえてしまいました。ちいさなころにそだててくれたおばあちゃんがおしえてくれたことをねこさんはおもいだします。
『……たまにね。そらにおをひいてすぐにきえちまうおほしさまがあるだろ。あれはながれぼしというんだ。みつけたらきえちまわないあいだにさんかいねがいごとをいってみな。そしたらそのねがいごとはかなうってむかしにきいたよ』
そうか。さっき、みえたのがながれぼしだ。ねこさんはやっとすぐにきえたおほしさまがなんなのかにきづきました。そしてもういちど、すがたをみせたながれぼしにねがいごとをいってみます。
「おともだちができますように!」
さんかい、おなじことをきえないうちにねがいました。ちゃんといえたわとねこさんはうれしくなってわらいます。すごくひえこんだあるよるのことでした。
よくじつ、うろでねていたねこさんにだれかがこえをかけてきました。
「……おーい。こちらにしろねこさんはいないかい?!」
おおきなこえでよばれ、しろねこさんはめをさまします。いいきもちでねていたのに。じゃまするのはだれよとおもいながらもうろからかおをだします。そこにはねこさんとにたようなはくぎんのかみにきんいろのひとみのひとがたっていました。せはたかいですがひょろりとしたかんじのほそみのおとこのひとです。
「……こんなあさっぱらからだれよ。わたしはまだねていたのに」
「ごめん。きみがしろねこさんだね?」
「そうよ。あなたはだれなの?」
しろねこさんがそうといかけるとおとこのひとはにこやかにわらいました。
「ぼくはほしのせいれいだ。なをシリウス。きみがともだちができますようにってねがうのがきこえて。かみさまにおねがいしてひとのすがたにしてもらったんだ」
「……ふうん。そうなの。シリウスさんはわざわざおそらからきたのね」
「ああ。ねこさん。きみのなをおしえてくれないかい?」
「いいわよ。わたしのなはベル。おばあちゃんがつけてくれたの」
ねこさんがこたえるとおとこのひと――シリウスはうれしそうにえみをふかめました。そしてすこしちかづくときていたふくのポケットからキラキラとしたふしぎなキャンディをだします。
「……これはおちかづきのしるしのキャンディだよ。たべてくれるかな?」
「……はあ。どうも」
しろねこさん――ベルはしぶしぶうけとりました。シリウスからもらったキャンディをくちのなかにいれます。とたんにやさしいあまさにパチパチとはじけるようなかんかくがくちのなかいっぱいにひろがりました。
「……わあ。ふしぎなキャンディね。おいしいわ」
「だろ。きにいってくれたかな」
「うん。あなたはまるでまほうつかいね」
「まあ、もともとはせいれいだからね。これくらいはおやすいごようだよ」
「ふふっ。そうだったわ。ありがとう。シリウスさん」
ベルがわらいながらいうとシリウスはめをほそめました。はじめてベルがえがおをみせたからです。そのご、またあしたにとやくそくをしてシリウスはかえっていったのでした。
それからはまいにち、シリウスがあそびにくるようになります。たいていはあさかひるまがおおいのですが。たまにゆうがたにくるときもありました。ふたりがはなすようになってからいちねん、にねんとたちます。さんねんがたってベルはあるひのよるにまたうろからそとにでました。けれどからだがあつくてへんになっています。いつもよりみとおしがよくなっているしよんほんあしなのがにほんあしでたっていてもへいきになっていました。
(これはなんなの?)
くらいなかでしたをみるとにくきゅうがあるはずのてはシリウスにそっくりなごほんゆびのものにかわっています。からだじゅうをおおっているはずのまっしろなたいもうもありません。あたまなどをさわるとたしかにあったものがないのです。うえにあったはずのみみはかおのよこにありあたまにだけにたいもう――かみのけがありました。いったいどうしたのだろうとベルはあわてふためきます。
「……あ。ベル。こんなところにいたらかぜをひくよ」
「……シリウス。どうしてここに」
「きみがしんぱいだからようすをみにきたんだ。それにしてもベルがひとになるとはね」
「えっ。ひとって!?」
「……きみにあげたキャンディにはまほうがこめられていてね。もちぬしがねがいごとをしながらつくるんだ。そしてかなえてほしいあいてにわたすとそれがかなうんだ」
ベルはシリウスのことばにぽかんとなります。シリウスはにがわらいしながらもベルのちかくにきました。
「ぼくはきみをひとのすがたにしたいとおもった。それでこのキャンディをつくりきみにわたした。けどね。さんねんくらいはずっとたべつづけてもらわないとこうかがあらわれないんだよ」
「……そ、そうなんだ」
「ああ。そのかっこうのままだとさむいだろう。ぼくのコートをつかうといい」
シリウスはそういうとじしんがきていたコートをぬいでベルにはおらせます。かのじょがきるとたちまちだぼだぼになってしまいました。けれどさむさをふせぐにはちょうどいいとベルはおもいます。
「……ベル。ぼくははじめてきみとあったときからすきだった。このもりをいっしょにでてたびにでよう。ぼくはせいれいでなくいまはひとだけど。もしよかったらけっこんしてくれないか?」
「……あ、あの。いきなりいわれても」
「ごめん。けど。へんじがききたい」
シリウスはいままでにないくらいにしんけんなかおでベルをみつめます。ベルはに、さんかいしんこきゅうをしました。しろいいきがあたりにあらわれてはきえていきます。そしていいました。
「わかったわ。シリウスといっしょにたびをするし。けっこんもする。ひとのすがたにかってにしたせきにんはとってもらうわよ」
「……ありがとう。きっとしあわせにするとやくそくするよ」
シリウスはわらいながらベルをだきしめました。ひとになったかれのうでのなかはたくましくあたたかなものです。ベルはしばらくみをまかせていたのでした。
そのご、シリウスはちょっとまっていてといい、コートをベルにはおらせたままでどこかへいってしまいました。まっていたらすこしたってからかれはもどってきます。りょうてにはいるいがたくさんありました。シリウスはいそいでベルのもとにもどります。そしてかのじょにいっそくのブーツをわたしました。ベルはめをまるくしながらもシリウスからはきかたをききながらブーツをはきます。かれはあとをついてくるようにいってあるきだしました。ベルはついていきます。
しばらくしてやまごやらしきたてもののまえにつきました。シリウスがドアをあけるようにいいます。ベルはドアノブをいわれたようにひねってあけ、なかにはいりました。シリウスもはいるときようにかたてでしめます。
かぎもかけるとベルにいるいをわたしました。
「ベル。これはひとがきるふくというものだ。きかたをおしえるからこれをみにまとったらいい」
「はい」
シリウスからていねいにおしえてもらいながらベルはいふくをみにつけていきます。じつはシリウスのコートをはおるだけのすがたでベルはいました。とめぐをしていたのでまだましでしたが。はだぎなどをきてからくつした、シャツにズボンとみにまとっていきます。さいごにセーターやショールをきてやっとシリウスは「これでおわり」といいました。
さむいだろうからとかれはだんろにひをいれてくれます。しばらくするとこやのなかはあたたまってきました。シリウスはベルにベッドへいくようにいいます。いわれるがままにベッドにはいりました。
「……つかれただろう。もうねむったらいいよ」
「わかった」
「おやすみ」
シリウスはベルのあたまをなでながらいいます。ベルはひさしぶりのぬくもりにあんしんしながらまぶたをとじたのでした。
そのご、こやをでたシリウスとベルはもりをでました。はてのないたびにでるためです。ふたりはまちにむかうことにしたのでした。
シリウスとベルはこんなんのおおいたびじになったでしょう。それでもふたりはいつもいっしょにいてはなれることはなかったといいます。ひとりぼっちだったベルでしたが。ながれぼしのおかげでかけがえのないひとをえることができたのでした――。
――めでたしめでたし――




