第三話 ステ振りその2
その後、「スキル習得」の「その他」の欄を開いたが何も無かったため、今度は海心は「スキル確認」という欄を開いた。
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所持スキル
|戦術眼|イカサマ|跳躍得意|
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「は?」
思わず声が出た。どうやら、スキル確認ページによると海心は既に3つスキルを習得していたようである。もちろん海心にそんな心覚えはなかった。
「戦術眼にイカサマ、跳躍得意……。てんで身に覚えがない、元の世界で特にそういうのがあったこともないし」
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戦術眼:小規模の戦局の予想に補正。
イカサマ:ランダム判定において確率が大きいものが確定で発動するようになる。
跳躍得意:あなたの足はバネのようだ!跳躍に補正。
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「マジで良くわからないラインアップだな……。なんなんだ、ランダムで3つ決まるとかそういう感じなのか?」
軽く首をひねるも結論は出なかった。ボードスキルの「盗み見」が2pだったのでそれで他の人のと照らし合わせてみようかとも思い、一つの案として考えておくことにした。
「大体これで全部見たかな?そしたらスキル習得の中身ざっと見直して、ビルド決めに入るか……」
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『時間だ……キャラメイクはここでおしまいだね。気づいている者もいるようだが、向こうについてもボードは使えるから、途中でもまあそんなに気負わないでくれたまえよ。まあ、今のと比べると出来ることは少なくなるがね……』
巨大な人影はクラスメイト達を見渡した。
『ここから様々な困難が君たちに襲いかかるだろう……だが、君たちはもはやただの無力な学生ではなく、力を持った転移者なのだ!全ての知恵を振り絞り、全力で生きてゆくとよい。では、さらば』
すると、周囲の様子が変わる。背景に投影された宇宙が動き出し、クラスメイトらの眼前を星々が目にも留まらぬ速さで流れていく。気がつけば上空の人影は影かたちもなく、そして正面には巨大な緑の惑星が現れていた。
教室の形に分けられた生徒たちがバラバラに離れ、惑星の各地に散ってゆく。海心もまた、大きな大陸の東側に落ち始めていた。
「……!」
落下しながら、海心はいくつかのものを見た。遠くに、雲を貫きそびえる圧倒的に巨大な大樹。反対側に、異世界でも変わらず青い海。真横を通り抜けていったのは、赤い鱗が日差しに煌めく、美しい龍。そして落下していく先、豊かな緑に囲まれた国――ランカスタ王国と呼ばれている――こそが、海心の異世界生活のスタート地点であった。
――
「つ、着いた……!」
そのまま立派な城の屋根を突き抜け、海心は城内の一階にある召喚の間と呼ばれる部屋の魔法陣の中に降り立った。次の瞬間、体の奥から力が溢れてきて、ようやく自分が今真の意味でこの地に降り立ったのだ、と理解した。
石かレンガで造られているらしい部屋は、入り口から奥までおよそ50メートルはあるかという巨大さで、中央に光り輝く魔法陣及び海心がいて、周囲に12名ほどの重装の騎士たちと、その後ろに豪勢な服を来た貴い身分らしき者が3名立っていた。
[異世界語翻訳:同種族の言語が理解できるようになうパッシブスキル]
「ついに異世界人が召喚されたぞ!殺せ!」
「強い能力を持っているといいがな……」
「さっさと攻撃しろ!その強い能力を持っているかもしれんのだぞ!」
「そうだ!やれえええ!!」
「……えぇ?」