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2話

「ただいまエレオノーラ。突然だが少し私の部屋に来てくれないかな」


「おかえりなさい貴方。えぇ、わかったわ。……その子の事ね?」



 艶やかな黒髪を揺らしながら私を見て少し目を見開いてから微笑む。きっと彼女がアルディアーナ夫人だ。つまりはお姉様の母親で…



「メアは私のお部屋よ!お披露目の時のマナーを教えてあげなきゃ」


「はい、…お姉様」



 私がそういうと夫人は目をぱちくりして公爵を見た。ロゼリアが望んだんだ、と公爵が笑うのを見て目を釣り上げるかと思えばぱっと嬉しそうに微笑んだ。



「まぁ…まぁまぁ!家族が増えるのね、…ロゼリアにそっくり!お名前はなんて言うのかしら?」



 ロゼリアに手を掴まれ連れていかれそうになっていた私の横にしゃがみこむ。え、夫人そんなことしていいんですか…



「あのね、メアリージュンっていうのよ。私のメアリーからとったの。」


「……まぁ」



 ロゼリアがにこにこと言うと夫人はまた目をぱちぱちと瞬かせた。また公爵を見て何やら瞳を潤ませている。公爵もそれを見て目じりを滲ませた



「…あの子にそっくりだろう?」


「えぇ、えぇ…!あの子が帰ってきたみたい…メアリージュン、私はエレオノーラ・アルディアーナよ。貴方の母。どうかお母様と呼んで?」


「……お、お母様…」



 どうやら何かスイッチが入ったらしく私の手を掴んでぎゅうと抱き寄せた。おっと、中々たわわな膨らみをお持ちで…いや、なんでもないです。でも大きい方が好きです。確かにゲームのお姉様も見事なプロポーションでした。



「メアリージュン…もしかして、今年で10歳かしら?」


「…はい、恐らく…誕生日は、まだ後なのですが…」


「…冬の月の24日目かしら?」


「え、は、はい、」



 血統書にはそう書いてあったはず。私の育てられた奴隷館は所謂貴族向けで昔没落した貴族や王族の血がメインである。なのでまぁ…犬みたいに、血統書を皆持っている。私の血筋は確かこの国の昔の王族だった…かな?誕生日もきっちりと調べられていた。

 ちなみにこの世界は四季の月に分けられている。春の月、夏の月、秋の月、冬の月という感じだ。それぞれ31日なのでまぁ…1年は結構早く感じる。



「……まるで、…本当に、あの子みたい…」


「…エレオノーラ。」


「あ…ごめんなさい、わたくしったら…それじゃあメアリージュン、ロゼリアといい子にしてなさいね」


「はい、お母様」



 にこりと微笑み、私とお姉様の頭を撫でて公爵と別の部屋に向かっていった。



「それじゃあ行くわよ、メア。身長も同じだからきっと私のドレスも着れるわね!そんな服じゃ寒いでしょ?あ、ねぇマリアっ、ちょっと来て頂戴っ」


「えっ?お、お嬢様が2人!?」


「もうっ、変な顔してないで早くっ」


「へ、変な顔…」



 部屋に向かう途中栗色の目元が可愛らしいメイドのスカートをお姉様が掴んだ。お姉様と私を見比べ目を見開いている。そんなにそっくりかなぁ、お姉様の方が何倍も綺麗だと思うんだけど…

 お姉様がずんずん歩いていくものだからメイドさんはつんのめりそうになりながら着いていく。私も慌てて着いて行った。…いや、本当に転びそうなんだけど。



「お、お姉様、メイドさんが転んじゃいますから…スカートから手を離した方が…」


「あら、…メアが言うならやめるわ」



 お姉様がスカートから手を離すとえっ、と小さく声を漏らしたメイド…マリアさん。じっと私を見つめて頭を下げた。



「ありがとうございます。…メア、…様?」


「メアは私の妹よ。メアリージュンって名前なの、いい?」


「えっ!?お、え、お嬢様、妹様がいらっしゃったんですか!?」


「ええ、病弱で今まで別邸で臥せっていたの。体調が良くなってきたからこっちに来たのよ。まだ社交界デビューしてないからこれからドレスを作るの」



 …作った設定をさも当然のように言えるの、尊敬しますお姉様。



「そ、そうでございましたか…申し訳ございませんメアリージュンお嬢様。私、ロゼリアお嬢様のお付のマリア・ヒルトンと申します。」


「め、メアリージュン・アルディアーナです。」



 頭を下げるとまぁ、と声が降ってきた。



「メア、わざわざメイドに頭を下げなくてもいいのよ?」


「お姉様をお世話してくださってる方ですし…きちんと礼を払わなくてはいけません。食事を運ぶのも服を着せてくれるのも使用人ですから、感謝の意は払った方がいいと思いました。…貴族が無闇に頭を下げるのはいけないかもしれませんが…」



 そういうとお姉様は目を瞬かせ、納得したように呟いた。



「……言われてみれば、そう…かもしれないわね。」


「…お嬢様…」



 マリアさんが感動したようにふるりと震えた。柔らかなグリーンの瞳は潤んでいる。



「…今まで好き勝手して悪かったわ。…今後、気をつけるようにするわ、ごめんなさいマリア」


「い、いえ!め、メアリージュンお嬢様のお洋服のお話でしょう?如何しますか?」



心地が悪かったのだろう。話題を変え微笑むとぱっとお姉様の瞳が輝いた。



「そう!あのね、この子ったらドレスをほとんど持ってないのよ。…ほら、体調を崩しがちだからドレスを着る暇なんてなかったのね。だから、明日針子と商人をお父様に呼んでもらうのだけど、それまで服がないから私のを着せようかしらと思って…」


「なるほど…メアリージュン様はよろしいのですか?おさがり…ということになってしまいますが」


「ううん、お姉様の服、着てみたいです。」



 こういう世界に来たんだからドレスは夢だった。奴隷だったから諦めてたけどやっぱり…いち早く着てみたい。



「では参りましょうか」


「おてて、繋ぎましょ?メア」


「はい、お姉様」

ロゼリア、メアリージュン共に10歳です。社交界デビューは10歳からで、ロゼリアはついこの前終えた感じです。


夫人の名前がメリッサとエレオノーラとで間違ってたのでエレオノーラに統一しました。すいません。

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