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THE WORLD ENEMIES   作者: どら焼きドラゴン
第1章 リールの森とダンジョン
8/100

第8話

──冒険者side──

俺は新人冒険者のナバ。最近やっとのことでEランクに上がったばかりだ。今日はリールの森に来ている。討伐依頼のために装備や魔道具を揃えようと、俺達の先輩であるチーム〈刃黒〉が誘ってくれたのだ。3ヶ月ぐらい前に親友であるダイと村を飛び出してハセイン王国で一番冒険者で賑わっている街、カーブにやって来た。俺等は二人で採取依頼を沢山受けてランクを上げていった。ランクとは、冒険者ギルドによって定められている冒険者にとっての階級である。下からF,E,D,C,B,Aとなっている。

チーム〈刃黒〉はBランクの冒険者から成るチームであり、その実力は折り紙つきだ。その中のグレートーソード使いで有名なバトさんはなんと俺達と同じ村の出身だった。そのためか俺達は彼らから沢山のことを教えてもらった。そして、今回も沢山教えてもらおうと俺達は森の中を意気揚々と進んでいった。


「そう言えば、バトさん。何故さっきから魔物の姿が見えないんですかね?」


「なんだ、ナバお前気付いてなかったのか。ハハハハ!注意が足りてないぞ。ほら、道の両端を見てみな。」


そう言われて両端を見たら、等間隔に何か埋めてあった。白い箱の様であり、たまにキラキラ光っている。恐らく魔道具の一種だろう。これでこの道には魔物が近づかないのだろう。しかし魔道具はとても作るのが難しく職人も少ない。そのためとても高いのだ。


「しかし、こんなに魔道具を使えるとはエルフ達の技術は凄いですね。」


人間がレベル50を超えて、尚且つ自然に対する尊重の心があると進化できる種族だ。魔道具作成には、魔物から取れる魔石が必要不可欠であり、そのため魔道具職人達はそれを恵んでくれる自然に感謝をしながら作ることを心掛けている。また、ドワーフは火山や鉱山のある山には神が宿っていると教えられており、鍛治職人はこの教えを守りながら進化するとドワーフになれるとされている。冒険者やその他の人々は信仰しているものによっては進化するが、進化することは基本的にない。しかし、高貴な心とカリスマのある人はハイ・ヒューマンに進化することができるとされており、貴族や王族に多くいる。


「そうだな。ただ、ドワーフにも魔道具を作成している奴もいるぞ。逆に鍛治師をしているエルフだっている。種族だけで判断していると、見えることも見えなくなる。覚えとけ。」


バトさんはそう注意してきた。確かにそうだと思って、俺はダイと話ながらそれについて理解を深めた。いつの時代にも迫害や差別による争いは起こっている。自分達も気づかないうちに誰かを差別していることだってある。それを忘れてはいけない。


「・・・いる。」


白いローブを着た魔法使いであるターニャさんがいきなりそう言ってきた。


「ん?気のせいじゃないかターニャ。ここには魔物はいないはずだよ。」


そう答えたのは、ターニャさんと同じ魔法使いのニルさんだ。ニルさんは黒いローブを着ている。魔法使いにとってローブの色はどのくらいの魔法が撃てるかを表している。白は攻撃はからっきしだが、その他の魔法に秀でている。黒は闇魔法が一番得意。といった感じで結構曖昧だが、分かりやすくなっている。ターニャさんとニルさんは魔法学校の同級生だそうだ。バトさんに誘われて、パーティーを結成したらしい。


「ううん。今、気配探知の魔法を使った。反応がある・・・大体300メルトル(メートル)ぐらい。」


「何!?この道にある魔物よけの魔道具はSランクでも気付けなかったと言われているものだぞ。それ以上となれば・・・」


「ん・・変異種かSランクの進化個体。」


「そんな・・・。バトさん。ここは退くべきではないですか?」


「わかった。だが、姿を確認してからだ。ギルドに報告しないといけないからな。」


バトさんはそう言ってその魔物の所へ近づいていった。暫く歩いていると、バトさん達がいきなり止まったのでびっくりした。


「ちょっと、いきなり止まらないでくださいよ。」


「そう言ってる場合じゃない!あれを見てみな。」


そう言われてバトさんが指した方を見るとおぞましい(ばけもの)がいた。狼は二体おり、片方は幾つもの魔法陣のような模様が着いた青白い毛並みの5メルトルぐらいの狼で、もう片方は雪のように真っ白な3メルトルぐらいの狼だ。二体とも魔物の筈なのにどこか神聖さを感じるようだった。


「クソッ!あいつらこちらに始めから気付いていたようだな。」


「どうします?」


「逃がしてはもらえないだろうな。見ろあいつらを、道のど真ん中に堂々と居座っていやがる。おそらく獲物が来るのを待っていたんだろう。」


「ん・・防御魔法みんなにかけとく。」


「よしこれで少しは生存する可能性が上がったな。ナバ、ダイ。お前らは先に撤退しとけ。」


「そんな!できませんよ。」


「そうですよ!俺達も役に立つはずです。前にそう言っていたじゃないですか。」


「うるさい!ここからは俺達〈刃黒〉の仕事だ。お前達のような未来のある冒険者はここで死んでいい存在じゃねぇ!」


「そうです。あなた達は未来のある人材だ。さぁ早く!」


「・・・ッ!わかりました!ではいき「あっ」─どうしッ?!」


ターニャさんがいきなり声を出したので何事かとそちらを見たら、白いローブを赤く染めながら崩れ落ちていくターニャさんが目に映った。


「ば、馬鹿なターニャさんのローブは魔法耐性があるはずなのに・・・。」


「ダイ、魔法耐性があっても魔法は打ち消すことはできない。」


俺達は()()を放った元凶を改めて見た。どうやら大きい方が放った攻撃だったようだ。しかし、相手にとっては小手調べだったのか少し拍子抜けと言うような顔をしている気がした。


「グルルルル・・・。」


その唸り声を聞いた途端に全身を冷や水に浸けたかのような感覚が襲った。

──喰らってやる

そんな幻聴すら聞こえてくるような恐怖か俺達を支配していた。


「クソッ!ターニャが殺られた!撤退だ!ニル、煙幕を頼む。」


「待ってくださいバトさん!まさかターニャを置いていくつもりですか!?そんな事僕はできません!連れていきます。」


「我が儘を言うなニル!今はそんな事いっている場合じゃない!」


「まだターニャは生きています胸だってまだ動いてるじゃないですか!やっぱり連れていきます。おい、お前らターニャを担いで街まで逃げろ。僕達が暫く足止めする。」


俺達はそう言われて、感覚をある程度取り戻すことができた。


「わかりました。二人ともどうかご無事で!」


俺はターニャさんをおぶり、ダイは俺とターニャさんの武器を担ぎながら急いで街に向かっていった。だが、俺達は狼達の視線が何処に向けられていたのかを気づいていなかった。

暫く走っていたがダイがそろそろ限界のようだな。夜の森はまるで俺達を逃がさないと言ってるかのようだ。


「ハアッハアッ」

「ハヒッハヒッ、もうダメ暫く走れそうにない。」

「仕方ない暫く休むか。だが、警戒は怠るな。気を抜いたら死ぬぞ。」

「う、うん周りに魔物よけの道具を着けておくね。」

「頼んだ、ダイ。」


道にある魔道具より効果は薄いが、二重に張っているのでもしかしたらさっきの狼も気づかないかもしれない。そう期待しながら俺は木に穴を開けて別の魔道具を取り付けた。これはカモフラージュ用の魔道具で、取り付けた物に変形して俺達を周りから見えなくする物だ。これで気配と視覚から見つけられることはまずない筈だ。


「よし。休む間はターニャさんの応急処置だ。」

「わかった、僕が魔法で癒すよ。」

「頼む。」


ダイは回復魔法が少しだけ使える、ターニャさんの傷は深かったが魔法のお陰である程度ふさがった。俺はポーションを鞄から取り出し、傷口にかけていった。ポーションとは回復魔法を込めた水のことであり、込めた魔法使いによって効果が左右する。このポーションはターニャさんが作ったものだから、回復力は折り紙つきだ。傷口は完全にふさがりターニャさんの呼吸も安定したものになった。


「しかしナバ、ターニャさんはなんで今まで生存できたんだ?普通あれだけ血を流したら死ぬぞ。」

「あぁ、それはなターニャさんはいつ襲われても大丈夫なように自分に刻印魔法を刻んでいたんだろう。ほら教会とかでやってくれるだろ、高いけど。」


刻印魔法とはあらかじめ魔法をセットしておく魔法だ。発動には様々なトリガーを設定できる便利な代物だ。ターニャさんは持続回復魔法を自分の体に刻印して、トリガーを【自分の命の危険】にしていたのだろう。


「あぁ!それでか。今回それで命拾いしたね。」

「あぁそうだな。ターニャさんが目覚めたら出発だ。それまで休むぞ。」

「おう。」


そう言って俺は意識を高めながら自分のスキルである《遠視》を使った。近くに魔物が来てないか心配だったのだ。そして俺の目に映ったのは

──真っ黒な見たこともない狼達が三十体ほど、自分達の拠点を取り囲んでいる様子だった。





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