第7話
リールの森の奥深くは今までよりも強い魔物が多く、その分俺等のレベル上げに丁度良い。そうガドから聞いていたので新しい拠点を探しつつ、森の中を歩いていたが、暫くして道のような場所にでた。
「なんだここ?誰かがよく通るのか?」
「恐らくこの森の中心部にあるエルフの街への道かと思います。」
「へぇ!エルフとかいるんだ。だが、よくこんな魔物が比較的強いと言われているところに道をつくれたな。」
「主よ。道の端をよく見て下さい、何かしらの魔道具で魔物が近づかないようにしているのかもしれません。」
「だけど、俺等には効いてないようだな。ちゃんと動いてんのかこれ。」
俺は道の両端に等間隔に置かれている魔道具をぺしぺし叩きながら、そう言った。
「私達は普通の魔物と違いますから効かないのかもしれませんね。」
「うーん。そんなもんかね。」
暫くの間俺達はその道のど真ん中に座りながらガドに魔道具について教えてもらっていた。曰く、魔道具とは特定した魔法を発動させる道具でありダンジョンか専門の技術者が作ってるらしい。色々な種類があり、マイナーなものから何に使うのか不明のものまであるらしい。何故ガドが知っているかというと、ガドのスキルである《博識》というお陰だ。これは自分が知りたいと思えば、頭にその説明が表れるスキルらしい。ただ、かなり大雑把な説明しかしてくれないらしくガドからしてみると使いにくいスキルだと言っている。役に立つには立っているので、無駄なスキルではないだろうがな。
「っ!主よ!何かこちらに近づいています!」
「何!・・・確かに近づいてるな。これは・・・何の臭いだ?」
「恐らく冒険者かと思われます。我々を専門として狩る者達です。いかがいたしますか?」
「一応姿を確認したい。このまま待つとしよう。」
暫くして遠くからこちらに歩いてくる集団が見えた。大体五人ぐらいのグループで皮鎧か金属製の鎧を身に付け、様々な武器を携帯していた。
丸盾とショートソードと皮鎧を装備した初心者?のような人が二人。あとは、真っ黒なグレートソードを背負った金属鎧のやつが一人と恐らく魔法使いだろうと思われる二人がいた。前衛一人に後衛二人、そして二人の初心者といった感じかな。恐らく新人の実戦訓練としてきたのだろう。魔法使いは男と女の二人でそれぞれ黒と白のローブを身に付けていた。ゲームでいったら黒魔術士と白魔術士と言ったもんかな。新人らしき二人は基本的な革鎧と盾と剣しか持っていなかった。
「主よ。どうやらこちらに気付いたようです。魔法使いが詠唱を開始しています。」
「相手との距離はだいたい200メートルぐらいかな・・・。試してみるか。」
試してみるのは《魔爪撃》だ。こいつの射程距離と威力を知っておきたいからだ。俺は爪に魔力を籠めるイメージをしながら狙いを定めて、腕(前足)を振るった。爪から紫色の塹撃が4つほど飛び出していき白いローブを着た女の魔法使いに当たった。魔法使いは突然のことに避けれなかったのか、棒立ちのまま身体中を魔爪でズタズタに切り裂かれた。
「あっ、えっ・・・。」
魔法使いはそのような声を出した後倒れて、そのまま動かなくなった。多分死んだのだろう。最後の一撃は首の動脈を切り裂いたからな。しかし、初めて人を殺したが罪悪感は余り無く、むしろここまで漂ってくる血の香りに食欲が身体中駆け巡っていた。
──喰いたい、あいつを喰いたい。
そんな感情が脳を支配している。が、辛うじて理性が働いて押さえつけることができた。危なかったな。
「クソッ!ターニャが殺られた!撤退だ!ニル、煙幕を頼む。」
「待ってくださいバトさん!まさかターニャを置いていくつもりですか!?そんな事僕はできません!連れていきます。」
「我が儘を言うなニル!今はそんな事いっている場合じゃない!」
「まだターニャは生きています胸だってまだ動いてるじゃないですか!やっぱり連れていきます。おい、お前らターニャを担いで街まで逃げろ。僕達が暫く足止めする。」
「わかりました。二人ともどうかご無事で!」
「あぁクソッ。わーったよ!ニル、魔法支援は任せるぜ。」
「はい!行くぞ《ダークランス》!」
冒険者たちが茶番劇やってるのを見ていたらこちらに魔法を撃ってきた。
俺はその《ダークランス》を体に受けたが、俺の毛皮によって弾かれた。どうやらあまり強くなかった魔法のようだ。
「どうしますか?」
「ふむ、今夜の夕食とするかね。俺はあの金属鎧を殺るから魔術士の方は任せた。」
「わかりました我が主よ。」
そう言って俺は《超加速》を使い一気に金属鎧に襲い掛かった。
「クソッ何なんだこいつは!見たこともない魔物だな。森狼の変異種か?」
「グルルルル・・・。」
「まぁいい!掛かってきやがれ!」
「ガオオオン!」
金属鎧は《超加速》を使っている俺の攻撃を紙一重でかわした。初めて自分の攻撃をかわされた事に驚いたが、それもまた面白いと思い。様々な攻撃を仕掛けにいった。
「っ!ここだ、食らえ《重撃》!」
「ギャオオオン!」
金属鎧はなんと、俺のスピードに付いてきただけでなく、カウンターまでやってきた。俺はその攻撃を避けれずもろに受けてしまった。グレートソードの重さに遠心力が加わりさらにスキルまで上乗せされた一撃は5メートルはある俺の体を吹き飛ばした。金属鎧には吹き飛ばされた俺が木に叩き付けられた後ぐったりとして、その場に倒れたように見えた。その後全く動かなくなったのを確認した金属鎧は、魔術士のサポートに入ろうと俺に背を向けた。──向けてしまった。
「グハっ。なんだ・・・なにが・・・!」
金属鎧はいきなり自分の体に激痛が走ったのに混乱していたが、その元凶を見つけて顔を青ざめさせた。俺が金属鎧の体に牙を立てていたからだ。さらに、
「な・・無傷・だと!?」
そう。俺の体には傷が全くなかったからだ。
「そうか、お前は弱ったふりをして油断した所で食らいついたのか。俺がそれに気付けなかったとはな。クソッ俺も年を取ったな・・・。」
そう言って金属鎧はなにも言わなくなった。俺はそいつの体を装備ごと食べていった。今回はとても良い経験になったな。《物理攻撃無効》がなければ結構苦戦を強いられただろう。ガドと連携を取れば一瞬で倒せそうだがな。
(もっと強くならないとなー。)
そう思いながら金属鎧を食いながらガドの方を見たら、とっくに終わっており、辺りには魔術士だったであろうものが飛び散っていた。かなり一方的な戦いだったようだった。
「ガド、随分派手に殺ったな。」
「新しい体の調子を確かめていたらいつの間にかこうなっていました。夕食を吹き飛ばしてしまい申し訳ありません。」
「いや一人食べたら大分腹に溜まったからいいよ。」
「そう言えば主よ。逃げた奴等はどうなさいますか?」
「うーん。このまま街に逃げられたらヤバいかな?」
「恐らく。見たこともない魔物だと言っていたので、もしかしたら討伐隊を組まれるかもしれません。」
「ヤバいな。それ。じゃあ殺るか。」
「追いかけますか?今ならまだ遠くには行けてないでしょう。」
「いや。眷属たちを召還しようと思っている。」
「しかし、それは・・・。」
「あぁ。確かに召還しても言うことを聞かないと説明にあったがな、進化した後に確認したらこうなってたんだよ。」
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《眷属召還》
魂を2個消費して冥界から冥獣を呼び出す。
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「これは・・・運次第という文字が消えたのですか?」
「そう。だから試してみようかなーてな。」
そうして俺は《眷属召還》を行ってみた。使いたいと念じればと魂が抜けていく感覚があった後、目の前に魔法陣が現れて中から進化前の俺に似た真っ黒な犬(狼?)が出てきたて俺の姿を見るとひれ伏した。
「召還していただきありがとうございます。何なりとご命令を。」
「お前を呼び出したのはこの森から脱出しようとしている人間をみんな俺の前に引きずり出すためだ。あと何十匹か召還するつもりだからそいつ等と命令を実行してくれ。」
「承知。」
俺は魂を30消費して同じ黒狼を15匹召還した。残りの14匹にも命令を出し
最初に召還した黒狼が、リーダーとなり夜の森に走り出していった。
「これで上手くいくといいんだがなぁ……。」
「何人かは逃げ延びるでしょうね」
「そうだよなぁ。・・・仕方ない、もし討伐隊が来ても返り討ちにしてやる。その為にも早く拠点を見つけるぞ。」
「はっ。」
俺とガドはそう言いながらまた、森の中に入っていった。
プライベートが忙しいので、更新が遅れるかもしれません