第39話
がらがらと揺られて魔車の旅を楽しんでいた石橋達勇者一行は、現在聖皇国のかなり奥にまで進んでいた。予定で行けば後数時間で、聖都シャルムガーデンに着くらしい。魔車の中では瀬田や古城もどんな都市なのかわくわくが止まらないといった感じだ。
「いやー。一体どんな都市なんだろうねー?」
「なんでも、山とその裾に至るまでが一つの都市だなんて噂をきいたぞ。」
「うわー。それすげェな。」
「・・・・・・・・」
「ん?どうした古城?さっきから黙ってるけど、具合でも悪いのか?」
「・・・いや。別に。」
「なんだよどうした古城。」
石橋と瀬田は古城の様子がおかしい事に気がつき、何かあったのかと心配した。古城はそれでも大丈夫だ、と言って何も言わなくなったがこちらが判るくらい眉をひそめているのでかなり辛そうだった。
「うーん。ねぇ石橋君。もしかしたらう◯こ我慢しているんじゃない?」
瀬田が突拍子にそう言いだした。
「あぁ!なるほど。古城は腹壊したんだな。」
「そうだ。そうだ。」
「「やーいやーい下利便小僧!」」
石橋と瀬田は面白がって古城を冷やかした。古城は怒りでプルプル震えていたが、それがまたトイレを我慢しているように見えてしまい、更に冷やかしを受けた。
(こいつら・・・・後で殺す・・・・ぐぅおおお。気持ち悪い。)
実際古城は聖都に近づくに連れて気持ち悪さを感じていた。他の魔車に乗っていた癒者に様々な薬草を煎じてもらい薬湯を飲んだり、お香を炊いてみたりしたが、全然良くならなかった。
「まぁ頑張って我慢しな、後ちょっとで聖都に着くらしいからさ。」
「石橋の言うとおりさ。後ちょっとの我慢さ。」
「いや・・・・・これ腹痛じゃ・ウグォオオ!・・ヴォエ・・もうやだよー。」
「ホラホラホラ。喋らないで横になりな。」
瀬田に押し倒されて古城はゴロリと横になった。
「さーて、後どのくらいかな?」
石橋がそう言って窓を開け、外の様子を伺う。直後石橋の視界には巨大な都市の姿が写った。噂で聞いたように山裾から山頂にかけて都市が発展しており、全体的に白亜の建物が多かった。山頂には、巨大な城。いや神殿が建っており、その中央から伸びる四本の尖塔と一本の塔は頂点が雲に隠れるほど大きかった。都市全体が一つの建物のような雰囲気を醸し出す統一性のある都市だった。
石橋はあれこそが聖皇国の聖都シャルムガーデンだと確信していた。石橋は窓から首を引っ込めるとその光景を二人にも見せようと、瀬田と古城の襟を引っ付かんで窓に押しやった。
「古城!瀬田!スッゲーぞ!見てみろ!」
「ぐぇぇぇ!」
「ちょ・・・・今は・・・優しくしてくれ。」
「まーまー。そう言わずに見てみろって。」
そう言われて瀬田と古城は渋々窓の外を見た。
「「・・・・・・・」」
「な?」
「確かに・・・これは凄いな。」
「・・・・凄い綺麗に見える。」
(あそこに近づくにつれて気持ち悪さが、酷くなっているんだが・・・)
瀬田と古城がそれぞれ感想を言い合い、石橋もそれに満足そうに見ていた。魔車は速度を徐々に下げながらその都市へと近づいていった。入り口は都市をぐるりと囲んでいる8メルトル(メートル)程の高さの壁と同じ白亜だったので一見何処が入り口か判りにくかった。これは敵が遠目から偵察しているときにカモフラージュになる為らしい。
門の前に到着すると、そこには既に30人程の純白の鎧を身につけた人達が一列に並んで待っていた。その列の前には三人のローブを身につけた男がおり、一見するとキリスト教の神父のような格好をしていた。
「全員魔車から降りて頂きたい。ハセイン王国からの勇者一行とは報告に聴いているが、規則上例外は作れない。理解してくれ。」
神父もどきの一人がいきなりそう言ってきた。石橋は何を偉そうにと思いはしたが、冒険者達やハセイン王国の学者達、竹田達もなんの抵抗もせずそれに従っていたので、石橋もそれに見習った。それもそうである。相手は天下の聖皇国。ハセイン国王から死ぬほど説教を受けた石橋は国王から絶対に聖皇国には逆らうなと身体に刻み込まれていたので、嫌々ながらも反発はしなかった。石橋は学習したのだ。
魔車から降りて皆がやってるように、門の中にある検問所に行った。遊園地の受付カウンターのようになっている窓口が4つ程あり、それぞれ『一般人』、『冒険者』、『商人』、『アーメナクバルム教信徒』と看板に書かれていた。
石橋は迷うことなく『一般人』のカウンターへ行こうとしたが、瀬田と古城に止められた。曰く、こちらの世界の人からしてみれば、『アーメナクバルム教』の最高神と言われる『サマナ』から召喚された勇者であろうから、『一般人』に行くのはおかしいと言われたのだ。
そう言われてみると確かにそうだと思った石橋は、改めて『アーメナクバルム教信徒』の受付に行った。受付窓口には黒いキャソック擬きを身につけた男がいた。
「すいません。入所手続きをしたいのですが。」
そう言うと男は少し呆れた顔をしながら説明してくれた。
「『・・・・それなら、一般人か冒険者の方でやってください。ここはアーメナクバルム教信徒の為の受付ですよ。』」
そう言われて石橋は古城と瀬田を睨み付けたが、二人とも狼狽えていたので嵌められた訳では無いようだ。石橋は受付の男に謝ると言われた通りに『一般人』の受付に行った。
「こんにちは。」
「『はいこんにちは。今日はどんなご用でしょうか?』」
「入所手続きがしたいのですが。」
「『それでしたら、神民証明書か住民証明書を提出して、それから犯罪歴を調べさせてもらいます。それから──────』」
こちらでの話は先程とは違い、トントン拍子に手続きが進んだ。石橋達は証明書は持っていなかったが、ハセイン国王の書簡とギルドに作ってもらっていたギルドカードを合わせて出すことで通して貰えた。犯罪歴に関しても、ウソ発見器のような魔導具に手をかざしてもちょっとしか光らなかった為、OKを貰えた。
「『はい!これで全ての手続きは終わりです。こちらをどうぞ。』」
そう言って受付の人は一枚のプレートを差し出した。
「これは?」
「『これからの入所手続き用プレートです。それを持っている間はこの都市の滞在が許されます。そして、警備魔装兵に攻撃されません。肌身離さず持っていてくださいね。死にますから。』」
サラッと恐ろしい事を言った受付の言葉にちょっとドキドキしながら石橋達は先程の神父もどき三人組の所へと行った。
「おや?審査は通りましたかな?」
「はいこれ。」
石橋が一人にプレートを差し出す。
「おぉ。これは正しく聖都シャルムガーデンの入所許可プレートですな。ということは合格というわけだ。」
「?」
「ふふふ。まぁお主らが気にすることではない。おっと!忘れていたな、お主らは召喚された勇者であろう?」
「えっ?あっはい。」
「儂らにはそれがちょっと今一信用できなくてのぅ。」
「そうですか。まぁ良いんじゃないですか?これから結果を出していけば。魔物をぶっ殺して、レベル上げて魔王を叩きのめして終わりですよ。」
石橋が自信満々にそう言ったのだから、三人組は心底面白そうに笑った。皮肉ではない、久しぶりに面白いガキが来たな。とおもったのだ。
「ククク。そうか。では期待するよ。」
「はい、期待しといてください。」
「ブっハハハハハハハハハハ!!面白いな君は。気に入ったよ!・・・・おっとそうだ君達が最後だったからね。説明しとかなきゃな。ついてきなさい。」
神父もどきは気を引き締めた顔をすると石橋達を連れて、門の中へと入っていった。
「ようこそ。大陸一巨大かつ雅な都市シャルムガーデンへ。」




