第21話
「ハァハァハァ、これで終わりじゃ。よく3日間耐えたな。」
不死竜は疲れた表情をしながらも満足そうな顔をしていた。
「はい、ありがとうございます。お陰様で私はまた強くなることができました。」
そう答えたのは私だ。あれから3日間、私達にとっては30年にもなる時間を訓練や座学に費やした。人は10年見なければ違って見えるものだ。大体が変わってしまう。私も一人称を俺から私に変えたのも、その一貫である。
「それでは、約束通りに蹂躙を開始しましょう。」
「・・・・お主かなり変わったのぅ。おじいちゃんちょっと悲しくなってくるの。」
「貴方のような老害に、私のおじいちゃんになってもらわなくても良いですよ。」
「う、五月蝿い!ちょっと言ってみたかっただけじゃ。」
「はいはい、じゃあちょっと体借りますよ。一応連絡をしたいので。」
「えっ!?ちょっ!いやぁあああああ!」
そう言うと不死竜をアンテナ代わりにすると、ガドに連絡を取った。
『っ!主よ、ご連絡をお待ちしておりました。眷属一同何時でも出陣できます!』
「あぁありがとうございます。ガド、今何処まで攻略したか、Lv40を越えた者が何名か、現在の総戦力を報告しなさい。」
『すみません。では、現在はダンジョンボスの部屋前まで攻略完了しており、現在Lv40を越えた10名を精鋭部隊として、ボス部屋前で私と待機、残りの約50名は私達よりも上の階層でレベル上げをしております。ボスには私と精鋭部隊のみで挑もうかと考えていました。』
「判りました。ボスにはそのまま挑みなさい。私と不死竜は下から直接ダンジョンマスターを叩き潰します。私をこんな目に合わせたダンジョンマスターには私を敵に回した事を後悔させてやりましょう。」
『了解です。では、私達はこれよりボスに挑みます。主もどうかご無事で。』
ガドとの通信を切り、私はこれからの計画を練ることにした。
(ガド達は恐らく問題無く事を運ぶでしょう。ダンジョンマスターはこれまでの報告を聞いた限りでは、狡い奴であるのは確実。追い詰めれば追い詰めるほど醜く逃げようとするでしょう。であれば・・・・。)
「のう、話は終わったかな?では、天井をぶち抜こうか。」
「ちょっと待って下さい。」
天井を文字通りぶち抜こうとした不死竜を止めて、私はある計画を不死竜に話した。それを聞いた不死竜はニンマリすると(かなり怖い)大人しく座り込んだ。
「フッフッフ。お主はやはり変わったな、3日前のお主なら直ぐにでも行動に移していただろうな。そういう所が育ったという事は師匠として、素直に嬉しいぞ。」
「ありがとうございます。では、時間まで・・・あと二時間位待ちましょう。紅茶でも飲みますか?」
「あぁ済まないな、頂こうか。茶葉のブレンドは任せる。」
「はいはい。」
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信吾は焦っていた。あの大きな魔物を落とし穴に落とした後、それから逃げて来たのであろう冒険者を狩れば元は取れると考えていたが、あの白い狼のせいで全てが台無しにされてしまった。最初は乱れていた冒険者達や黒い犬のような魔物が一瞬にして統率され、ダンジョンの攻略を始めて仕舞ったのだ。あの白い狼は強力な精神支配のスキルでもあるのだろう。でなければ本来敵対している筈の人間と魔物が協力するわけが無い。
「ああー、あの地底湖に落とした狼も恐ろしい強さを持っていたけど、あの白い狼は戦闘力もさながら、精神支配で人や魔物を軍隊のように操るとかチートだろ!チート。」
白い狼達の侵略はこの3日間で、ダンジョンボス部屋前まで突破されており、なけなしのDEを叩いて召還したかなりの強さを誇る魔物達は人間や黒い犬達が隊列を組んで、袋叩きにしてしまった。Aランクの魔物もいた筈なんだが、信吾が確認した時は白い狼に首を撥ね飛ばされていた。今、残っている戦力は・・・・
「マスター、ここにいましたか。」
「あぁティーナボス部屋の準備は良いのかい?」
「えぇ勿論、何時ものボスとは違う魔物を配置しました。魔物ガチャの確定ふぇす?があったらしくて、運が良かったですね。」
魔物ガチャとは信吾がこの世界に転移するときに、神から貰ったダンジョンマスターの力と一緒に貰ったスキルだ。DEをかなり消費する代わりに巨大な力をもつ魔物を召還出来るという優れ物だ。
「そうだな、あの神様も中々粋な事をしてくれるじゃないか。で、何がでたの?」
ガチャから召還される魔物は基本、信吾の言うことを聞くようになっているが、Sランクの魔物クラスになると中々言うことを聞かない事が多い。普段だったらコミュニケーションを取って、こちらの支配下になるように説得するのだが、今回は時間がない為、ボス部屋にガチャのボールを投げ込みそのままけしかけることにしたのだ。
「えーとSランク魔物の溶岩魔導式人形ですね。」
「えっ!?僕達のダンジョンって土と水属性じゃなかった?だからボス部屋も魚型の魔物にしようって腰辺りまで水没してたじゃん。大丈夫?」
「あっ・・・・・」
そうティーナが言った瞬間、信吾はモニタールームに駆け込み、ボス部屋の様子を確認した。
「ああ!!真っ黒になっちゃってるよ!なんだよあれ!動けなくなってるじゃん!どうするんだよ!」
「これは・・・予想外でしたね。てっきり周りの水を蒸発させてしまうかと思っていましたが。ダンジョンの機能でボス部屋に永久湧水を設置したのが祟りましたね。」
「いやぁあああああ!どぉおすればぃいいんだぁあ!!」
信吾はその言葉を聞いて、その場で転げ回った。頼みであったガチャの魔物は一瞬にして役立たずと化した、普段配置していたボスも最初人形が発していた熱で、焼き魚のようになってしまい、今はまた満ちてきた水の中でプカプカ浮いている始末。完全に積みであった。
「ハァ、仕方がないですね。私が出ます。」
ティーナは覚悟を決めた。信吾とティーナ種族は現在竜人だ。戦闘力はさっきの溶岩魔導式人形よりも劣るが、竜人の切り札である、《竜化》を使えばそれを上回る力を獲得できる。当然それなりのリスクはあるが、今はそんな事を気にしている場合ではなかった。
「えっ!?駄目だよティーナ!あいつらに殺されちゃうよ!それよりは逃げよう、ダンジョンコアを機能停止させれば僕にダメージは入らないからさ。」
「マスター・・・やっぱり駄目です。ここまでやっとのことダンジョンを成長させて来たのですよ。それを捨てるなんて、私はできません。私は戦います。」
「っ!わかった。じゃあ僕も覚悟をきめた。あれを起動してくる。」
「判りました。では、私は先にボス部屋に行ってますね。」
そう言うとティーナはボス部屋へ向かう階段を登っていった。信吾もあれを起動するために部屋の奥へと向かっていった。全ては自分の命を張ってまで助けようとしてくれる一人の女の子に恩返しをするために。




