第2話
今回は少し短めです
風が草をゆらす音が聴こえて目が覚めた。どうやら草原にまばらに生えている木の下で眠っていたようだった。
「ここが、あの管理者が言っていた世界か・・・」
俺は草原から見える景色に暫く見とれていた。どうやらこの草原は高地にあるようで、木が邪魔で見にくくもあるが空飛ぶ大陸やおそらくジャンボジェットよりも大きそうな生物が飛んでいるのがみえた。なにより遠くに町らしきものがあった。ここからでも中々大きく見えるのでもしかしたら何処かの国の首都かもな。よし、そうならば早速あの町に行くか。そう思って立ち上がると、目線がいつもより下がっているのに気が付いた。
「ん?・・何だこれ?なんで俺四足歩行してるんだ?」
そして、嫌な予感がしてちょうど草原の真ん中にあった湖へ走って行った。
(走る感覚からして予感はしていたが・・・これは・・・)
覗いた水面には黒い犬のような生物がいた。最初は水の中にいる謎のモンスターか?と思ったが、顔を傾けると水面にいた生物も同じ動きをしてきた。
何度も同じようなことをしてそれが自分だと気づいた。まさか犬になってしまったとは、でも顔はキリッとしていてカッコいいなーと呑気なことを考えていたが、よくよく考えてみると自分はこのままだと町や人のいる場所に入ることができない。入れたとしても魔物だと間違われて狩られてしまうだろう。今のままでは人に会うこと=死だと思わなくては。そうして俺は決意した後、管理者に説明してもらった事を振り返ってまず自分のステータスを確認してみようと思った。
「なんて言えばよかったっけ?まぁここはお約束の《ステータス》」
そう唱えると、目の前の地面に魔法陣が表れて一枚の紙が出てきた。いきなり起こった現象に半分ビックリ半分興奮しながら、その紙を見てみると、
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名:
種族:黒曜犬Lv1
HP:20
MP:35
攻撃力:15
防御力:15
素早さ:30
スキル:《加速》|《魂吸収》《ソウルイーター》
魔法:《暗魔法見習い》
称号:神の使い 転生者
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何だこれ強いのか弱いのかよくわからないな。しかも名前がなくなってるし、スキルもよく分からないのがあるな。そう思った瞬間俺のステータスを写した紙が光だした。
「!?ぐわあぁああ目がぁ目がぁ!」
突然のことに対応しきれずもろに光を見てしまった俺は暫く視界を奪われてしまった。やっと少し見えるようになったので、目をショボショボさせながら紙を見てみるとあるメッセージが書かれていた。
『ヤッホーこれを読んでいるってことは、ステータスシートを出したんだね。きっと困惑してるだろう。そこで僕が、なんで魔物になったかを説明するよ。簡単に言うと人のまま送ると、そっちの管理者にバレるからなんだ。名前を消したのもそのためだ。行く前に言うべきだったけど、つい忘れていたよ。本当にごめんよ。お詫びにいくつかアドバイスをあげよう。今、君が持っているスキルの|《魂吸収》《ソウルイーター》は食べた相手の魂を吸収して自分を強化できるスキルだよ。僕からのプレゼントさ。有効に使ってくれよ。最後に、なるべく最初は町に近づかずにレベル上げした方がいいよ。
それじゃねー。』
なんともまぁ気の抜けたメッセージだったな。だが、これで理由がハッキリしたな。あとやっぱり町には行けないようだな。まぁ当たり前か、魔物だもんなー今の俺。当面はレベル上げでもしながら情報収集やスキルの使い方に慣れないと。そう考えて俺は湖を後にした。
草原と森の境目にきていた。ここへ来るまでに自分以外の魔物には遭遇しなかった。鳥がいくらかいただけだ。そのため練習できたのは《加速》だけだった。どうやら《加速》とは一時的に五感と筋力を高めて、通常時よりも速く動く事ができるスキルのようだ。ただ効果が切れると、普通に運動した時より倍以上の疲れがでることがわかった。
「よしここで俺はレベルを上げてどうにか町にいけるようにしよう。それがしばらくの目標かな。」
そう言って俺は森の中に駆け込んでいった。
森の中は薄暗く、時折何かの鳴き声なんかが聴こえてくる。また木が一本一本がまるで樹齢何百年の屋久杉のような大きさなので、自分が小人になったみたいだった。
しばらく歩いていくと、茂みの中で何かが動いていた。サッと音をたてないように俺も茂みに隠れながら様子を伺っていると、茂みの中からネズミのような生き物が出てきた。ようなといった理由はそのネズミが地球にいるどのネズミよりも大きい。おそらくカピバラぐらいあるだろう、また毛の色が緑だったからである。
(ふむ。あいつでスキルの効果を試してみるか。)
そうして俺は《加速》ともう一つのスキル|《魂吸収》《ソウルイーター》を発動しながら、一気に近づきその緑ネズミの首に噛み付いた。
「キュウ?!」
と一鳴きした後抵抗らしい抵抗を見せず、緑ネズミは絶命した。俺は初めての狩りに成功した喜びと口の中に広がっていく血の味に何故か美味と感じていることにしばらく困惑していた。