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エリア10 ~英雄の記憶~  作者: 猫島丸
2/5

第2話 傭兵街オービス

投稿できていなかった⋯⋯(><)

当面は毎日夜9~10時の間の投稿を考えています!頑張って投稿しますので、読んでいただけると嬉しいです!!

よろしくお願いします!

「ここの壁は無駄にデカイな⋯⋯」


 首が痛い程に見上げる。空へと続く、その石壁はこの街の外周全てを覆っている。


 爆心地から歩いて丸一日。この街の名は《傭兵街オービス》といい、傭兵の拠点として知られ、今日も人で賑わっていた。

 外壁の内部もまた、石造りになっており、その様相はまるで要塞のようだ。石畳の道が歩く度にコツコツと音を鳴らせる。

 街を歩けば、すれ違う人々は皆、武具を身に着けており、ここが傭兵街であることを実感させた。


 賑わう市場に露店が並ぶ。

 屋台の料理が芳ばしい香りを漂わせ、ずっと歩いていたせいで何も食していない俺の腹を刺激した。

 クルルとなる腹、しかし一文無しのため買うことは出来ない。

 しばらく眺めていると、廃棄品を纏めている店主を発見した。


「棄てるくらいなら少し俺にくれないか?」


 まだ食えそうな物も中に混じっている。それを棄てるなんてとんでもない。


「あ?ああ⋯⋯」


 訳が分からないといった表情をした店主は、数秒ほど固まり、ようやく理解して廃棄品を寄越してくる。


「お前⋯⋯、これを食べるのか?」


 食べる以外に何をするというのだろうか。


「そうだが?」


「腹を壊しても、俺から貰ったことは秘密にしろよ?」


 釘を刺す店主。腹なんぞ壊さないから、いらぬ心配だろう。しかし、面倒なので頷いておく。


「頑張って生きろよ?じゃあな」


 店主はそう言うと足早に立ち去っていった。

 手に握った廃棄品に視線を移し、思いっきりかぶりつく。冷えきっているが食べられなくもない味だ。元は肉料理なのか、肉汁が口の中に広がる。

 それは瞬く間に胃に吸い込まれ、気がつけばもう無くなっていた。


「貴方正気?」


 背後から失礼な声がかけられる。

 どんなやつかと振り向けば、所々破けた服を身に纏い、ボサボサの髪を一つに結った、見るからに貧相な少女が立っていた。瞳が紅色に輝いて宝石の様だ。珍しい色をしている。


「のっけから失礼なやつだ。正気に決まっているだろ」


 親は一体どんな教育を施したのか、見ず知らずの人間に罵倒を投げかけるとは何事だ。


「今食べてたのって、廃棄品よね?しかも肉料理の」


「そうだが?」


 質問に答えてやると、信じられないといった顔をされる。何を考えたのか、小さく「オエッ」と声を漏らしている。


「絶対正気じゃない!そんなものは人が食べるものじゃないもの!」


 俺の顔を指さして、確信得たりと叫ばれる。


「腹が減ってたんだ。それに金もない。なら、こうするのが当然だろう?」


「どこの常識よ!?」


 頭を抱える少女。そのお腹からは、きゅるると可愛らしい音が鳴る。


「なんだ、腹が減っていたのか。俺が何か貰ってきてやろうか?」


 親切な提案をするが、物凄い勢いで首を振られて拒絶される。


「腹が減ってるんじゃないのか?」


「お腹は空いてるの! でも廃棄品を食べるくらいなら死んだ方がマシよ!」


 廃棄品を食べていた俺に失礼だろう。と思ったが、口には出さずにおく。


「財布さえ盗まれなければこんなことには⋯⋯」


 ブツブツと呪言のように呟く姿に、段々と不憫に思えてくる。


「いつ盗まれたんだ?」


「三日前⋯⋯」


「じゃあ無理そうだな」


 探してやろうかと思ったが、三日も前なら手遅れだろう。


「馬鹿にして!」


 急に叫び、腰に掴みかかってくる少女。その目には涙が浮かんでいる。

 つい条件反射で突き飛ばしてしまい、その場に倒れ込んでしまった。


「なんで私がこんな目に⋯⋯」


 死んだ獣の様な目で力なく呟いている。そんな様子を見た俺は、いたたまれなくなってしまう。


「わかった。わかったよ! 俺が助けてやるよ!」


 具体的に何をしてあげられるかは知らない。


「廃棄品は嫌だからね!」


 生意気にも注文を付けてくる。


「わかったって。しかし条件がある!」


「何?お金なら払えないけど⋯⋯」


「お前もしっかりと手伝えよ。それでもって稼ぎは山分けだ」


 正直俺も一文無しだし。というか何ができるんだろう。


「勿論よ!よろしくお願いね!」


 よろしくされてしまった。武器も無いし、どうしようか。


「私の名前はロウフェよ!貴方の名前は?」


 笑顔で握手を求めるロウフェ。


「マルク。マルク=アインだ」


 小さい手を恐る恐る握った。


「図太い性格に、この筋肉。もしかしなくても傭兵よね?」


 自信ありげに問うロウフェ。しかしハズレだ。


「いいや違うぞ? 俺は冒険者。世界を旅している。というか、これからする」


 俺は凄いだろう?と教えてやるが、再びロウフェは頭を抱えた。


「有り体に言えば浮浪者じゃない!」


 路地にロウフェの嘆きが谺響こだまする。ブツブツと何かを呟き始めるロウフェ。


「貴方⋯⋯、一応戦闘はできる?」


 ロウフェは期待薄といった感じで問う。


「人間相手ならそれなりに。兵士程度の実力はあるぞ?」


 ロウフェはその言葉を聞き、胸を撫で下ろした。


「それなら提案があるんだけど?」


「なんだ?」


「ギルドに行って同行者募集の依頼を見つけるの。それなら契約金も必要ないから私たちでも受託できるじゃない?」


 そうか、その手があった。確かに、と手を叩く。


「この街では傭兵ギルドがメイン、戦闘系の依頼が多いでしょうから、貴方が頑張るのよ」


 提案したから役割は終わりといった顔をするロウフェ。まぁしかし、この子の見た目で戦闘に期待することは出来ないだろう。俺が依頼をこなす他ない。


「じゃあそうだな。とりあえず行ってみるか?」


「そうね。行ってみないと何の依頼があるか分からないもの」


 よいしょ、とロウフェは埃を払いながら立ち上がる。彼女は腰に手を当て一息つく。


「今から私と貴方はチームよ。ギルドでもそう名乗りましょう。流れの傭兵を騙るの」


「その方が話が早そうだ。それならチーム名を決めないとな」


 傭兵がチームを組む際、必ず看板となる名をつける。

 実力、知名度関係なく、全てのチームに名があるのだ。


「《美女と野獣》なんてどう?」


「美女がいないからダメだ」


「失礼なやつね。というか野獣は否定しないのね⋯⋯」


 いい名前が思いつかない。どうせならそれっぽい名前にしたいな。


「《夢追い人》なんてどうだ? 目指せ傭兵ドリーム」


「そうね。それでいいと思う」


 元々チーム名に興味が無い様子のロウフェはなんでも良さそうに了承する。


「よし! 《夢追い人》仮結成だ。早速ギルドに向かおう!」


 傭兵をやるのは初めての経験だ。なんだかんだワクワクが抑えきれない。

 「急にテンション上げないでよ⋯⋯」と、文句を言うロウフェの腕を引っ張り、近場の傭兵ギルドを探して駆け出した。

 


 


 

 




 

《傭兵街オービス》

 石造りの建物が並び、石壁に囲まれている。その様子はまるで要塞で、かなりの堅牢さを誇る。

 多くの傭兵が拠点としている街として知られ、商人も多く集まる。ギルドも多々存在し、街の傭兵達はそこで依頼を受け、報酬を得ている。

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