第2話 傭兵街オービス
投稿できていなかった⋯⋯(><)
当面は毎日夜9~10時の間の投稿を考えています!頑張って投稿しますので、読んでいただけると嬉しいです!!
よろしくお願いします!
「ここの壁は無駄にデカイな⋯⋯」
首が痛い程に見上げる。空へと続く、その石壁はこの街の外周全てを覆っている。
爆心地から歩いて丸一日。この街の名は《傭兵街オービス》といい、傭兵の拠点として知られ、今日も人で賑わっていた。
外壁の内部もまた、石造りになっており、その様相はまるで要塞のようだ。石畳の道が歩く度にコツコツと音を鳴らせる。
街を歩けば、すれ違う人々は皆、武具を身に着けており、ここが傭兵街であることを実感させた。
賑わう市場に露店が並ぶ。
屋台の料理が芳ばしい香りを漂わせ、ずっと歩いていたせいで何も食していない俺の腹を刺激した。
クルルとなる腹、しかし一文無しのため買うことは出来ない。
しばらく眺めていると、廃棄品を纏めている店主を発見した。
「棄てるくらいなら少し俺にくれないか?」
まだ食えそうな物も中に混じっている。それを棄てるなんてとんでもない。
「あ?ああ⋯⋯」
訳が分からないといった表情をした店主は、数秒ほど固まり、ようやく理解して廃棄品を寄越してくる。
「お前⋯⋯、これを食べるのか?」
食べる以外に何をするというのだろうか。
「そうだが?」
「腹を壊しても、俺から貰ったことは秘密にしろよ?」
釘を刺す店主。腹なんぞ壊さないから、いらぬ心配だろう。しかし、面倒なので頷いておく。
「頑張って生きろよ?じゃあな」
店主はそう言うと足早に立ち去っていった。
手に握った廃棄品に視線を移し、思いっきりかぶりつく。冷えきっているが食べられなくもない味だ。元は肉料理なのか、肉汁が口の中に広がる。
それは瞬く間に胃に吸い込まれ、気がつけばもう無くなっていた。
「貴方正気?」
背後から失礼な声がかけられる。
どんなやつかと振り向けば、所々破けた服を身に纏い、ボサボサの髪を一つに結った、見るからに貧相な少女が立っていた。瞳が紅色に輝いて宝石の様だ。珍しい色をしている。
「のっけから失礼なやつだ。正気に決まっているだろ」
親は一体どんな教育を施したのか、見ず知らずの人間に罵倒を投げかけるとは何事だ。
「今食べてたのって、廃棄品よね?しかも肉料理の」
「そうだが?」
質問に答えてやると、信じられないといった顔をされる。何を考えたのか、小さく「オエッ」と声を漏らしている。
「絶対正気じゃない!そんなものは人が食べるものじゃないもの!」
俺の顔を指さして、確信得たりと叫ばれる。
「腹が減ってたんだ。それに金もない。なら、こうするのが当然だろう?」
「どこの常識よ!?」
頭を抱える少女。そのお腹からは、きゅるると可愛らしい音が鳴る。
「なんだ、腹が減っていたのか。俺が何か貰ってきてやろうか?」
親切な提案をするが、物凄い勢いで首を振られて拒絶される。
「腹が減ってるんじゃないのか?」
「お腹は空いてるの! でも廃棄品を食べるくらいなら死んだ方がマシよ!」
廃棄品を食べていた俺に失礼だろう。と思ったが、口には出さずにおく。
「財布さえ盗まれなければこんなことには⋯⋯」
ブツブツと呪言のように呟く姿に、段々と不憫に思えてくる。
「いつ盗まれたんだ?」
「三日前⋯⋯」
「じゃあ無理そうだな」
探してやろうかと思ったが、三日も前なら手遅れだろう。
「馬鹿にして!」
急に叫び、腰に掴みかかってくる少女。その目には涙が浮かんでいる。
つい条件反射で突き飛ばしてしまい、その場に倒れ込んでしまった。
「なんで私がこんな目に⋯⋯」
死んだ獣の様な目で力なく呟いている。そんな様子を見た俺は、いたたまれなくなってしまう。
「わかった。わかったよ! 俺が助けてやるよ!」
具体的に何をしてあげられるかは知らない。
「廃棄品は嫌だからね!」
生意気にも注文を付けてくる。
「わかったって。しかし条件がある!」
「何?お金なら払えないけど⋯⋯」
「お前もしっかりと手伝えよ。それでもって稼ぎは山分けだ」
正直俺も一文無しだし。というか何ができるんだろう。
「勿論よ!よろしくお願いね!」
よろしくされてしまった。武器も無いし、どうしようか。
「私の名前はロウフェよ!貴方の名前は?」
笑顔で握手を求めるロウフェ。
「マルク。マルク=アインだ」
小さい手を恐る恐る握った。
「図太い性格に、この筋肉。もしかしなくても傭兵よね?」
自信ありげに問うロウフェ。しかしハズレだ。
「いいや違うぞ? 俺は冒険者。世界を旅している。というか、これからする」
俺は凄いだろう?と教えてやるが、再びロウフェは頭を抱えた。
「有り体に言えば浮浪者じゃない!」
路地にロウフェの嘆きが谺響する。ブツブツと何かを呟き始めるロウフェ。
「貴方⋯⋯、一応戦闘はできる?」
ロウフェは期待薄といった感じで問う。
「人間相手ならそれなりに。兵士程度の実力はあるぞ?」
ロウフェはその言葉を聞き、胸を撫で下ろした。
「それなら提案があるんだけど?」
「なんだ?」
「ギルドに行って同行者募集の依頼を見つけるの。それなら契約金も必要ないから私たちでも受託できるじゃない?」
そうか、その手があった。確かに、と手を叩く。
「この街では傭兵ギルドがメイン、戦闘系の依頼が多いでしょうから、貴方が頑張るのよ」
提案したから役割は終わりといった顔をするロウフェ。まぁしかし、この子の見た目で戦闘に期待することは出来ないだろう。俺が依頼をこなす他ない。
「じゃあそうだな。とりあえず行ってみるか?」
「そうね。行ってみないと何の依頼があるか分からないもの」
よいしょ、とロウフェは埃を払いながら立ち上がる。彼女は腰に手を当て一息つく。
「今から私と貴方はチームよ。ギルドでもそう名乗りましょう。流れの傭兵を騙るの」
「その方が話が早そうだ。それならチーム名を決めないとな」
傭兵がチームを組む際、必ず看板となる名をつける。
実力、知名度関係なく、全てのチームに名があるのだ。
「《美女と野獣》なんてどう?」
「美女がいないからダメだ」
「失礼なやつね。というか野獣は否定しないのね⋯⋯」
いい名前が思いつかない。どうせならそれっぽい名前にしたいな。
「《夢追い人》なんてどうだ? 目指せ傭兵ドリーム」
「そうね。それでいいと思う」
元々チーム名に興味が無い様子のロウフェはなんでも良さそうに了承する。
「よし! 《夢追い人》仮結成だ。早速ギルドに向かおう!」
傭兵をやるのは初めての経験だ。なんだかんだワクワクが抑えきれない。
「急にテンション上げないでよ⋯⋯」と、文句を言うロウフェの腕を引っ張り、近場の傭兵ギルドを探して駆け出した。
《傭兵街オービス》
石造りの建物が並び、石壁に囲まれている。その様子はまるで要塞で、かなりの堅牢さを誇る。
多くの傭兵が拠点としている街として知られ、商人も多く集まる。ギルドも多々存在し、街の傭兵達はそこで依頼を受け、報酬を得ている。