第1話 焦土の生き残り
初投稿です!しっかり投稿できたかな......?
「青年よ。貴様は運命に抗う気はあるか?」
昏い光に照らされる柱の間。神殿らしき空間で、闇のような雰囲気を持つ女が厳粛に語りかける。
その様子は何か偉大な力の奔流で、痺れるまでの威圧感が俺を支配した。
「夢があった。憧れがあった。不可能だと笑われても、無謀だと呆れられても、諦めきれない目標があった」
確固たる意志を持って言葉にする。もし気を緩めたならば、圧倒的な力の前に意識を刈り取られていることだろう。
「そこに絶望が待ち構えていようとも? 残酷な運命が、貴様を殺めんと牙を剥こうと?」
女はその深緑の瞳を、射殺さんまでの鋭さで俺へと向ける。
俺はゴクリと唾液を体内へと押し返し、逆に女を睨み返した。
「そんなものは覚悟の上だ。もしチャンスがあるのなら、俺は荒れ狂う川の中すらこの身一つで渡りきってみせる」
俺の答に女は哄笑する。暫く笑った後、今度は優しく語りかけてくる。
「貴様は既に死んでいる。だが、この私が貴様にチャンスを与えてやらんでもない」
女の言葉に心を震わせる。もしそんなことが可能ならば、
「もしそんなことが可能ならば、俺は貴方に尽くすと誓おう」
女は満足げに頷く。そして数歩歩き、力強く俺の体を抱擁した。
途端に光が集約する。大きな力が流れ込み、活力が満ちてゆくのを感じる。
「貴様には《使命》を与えよう。生涯をかけて世界を旅し、領域全てを踏破してみせるのだ。なに、貴様は夢を叶えるだけだ。願ってもない話だろう?」
女はフフッと笑う。
「貴様が生み出す新たなる風は、世界を善きものにするだろう。在るべき《プルクラム》の姿へと」
だが、と女は続ける。
「しかしそれは並大抵の事では無い。今の世界は歪み、悪しき者が支配している。貴様はそれらを乗り越えなければならない」
「先程貴様の覚悟は理解した。故に私は、貴様に《力》を与えよう。覆い尽くす深い闇に射す一筋の光明を」
「学ぶがいい!戦場を駆け、命燃やした戦士達の力を!知るがいい!世界を救わんと、その身を捧げた勇者達の心を!」
降り注ぐ光が止むと、女は体を離して手を広げる。
「我が名はソーズ。運命の女神ソーズ。貴様の運命を解放せし者!」
「貴様は死の運命から解き放たれた。再びその魂に輝きを灯すがいい。世界が貴様を待っている」
「期待しているぞ《マルク》」
女神ソーズを名乗る女は最後に俺の名を口にする。すると空間は歪み始め、俺の体ごと飲み込んでいく。
薄れゆく意識の中、祈り、感謝の意を捧げる。
徐々に強まる力に引き寄せられ、俺は意識を手放した。
生を感じさせぬ大地で目を覚ます。辺りには草木一本も存在しない、不毛の地が広がっていた。
「全て消し飛んだのか⋯⋯?」
俺が死ぬ前に何があった?混濁する記憶を必死に掘り起こす。
戦があって、みんな死んで⋯⋯。
徐々に思い出される記憶。
そうだ⋯⋯。俺は光を見て⋯⋯。
「お前!無事か!」
「何とかな。アンタは?」
「今のところ何ともねぇぜ!」
背中を向け合う二人、乱戦となり統率が取れていない戦場では常に危険が伴う。
緊迫した雰囲気に、手には自然と汗が浮かんでいた。
「お前もついてないよなぁ。新兵だろ?お前」
接近してきた敵を斜めに切り伏せながら、男は皮肉げに笑う。
「昨日配属されたばかりだ!クソっ!」
返答しながら、迫る敵に突きを見舞う。
突き出した剣の刃が鎧を貫き、敵の胸を穿つ。
肉を突き破る感触が手のひらに伝わり、命を奪ったことを実感させる。
死体を蹴り飛ばして剣を引き抜く。流れ出た赤い血が剣を伝っている。
俺は軽く剣を振り、血潮を払う。その様はまるで赤き花が散りゆくようで。
「にしても湯水のように敵が湧いてきやがる⋯⋯」
男は愚痴りながらも、二人、三人と相手取っていく。
飄々としているが、その実力は確かだろう。
「アンタ中々強いんだな」
俺の言葉にニヤリと笑う男。
「お前も新兵の割にやるじゃねぇか!」
次から次へと現れる敵を何とかして斬り捨てる。徐々に周囲は血に染まり、死体の山が積み上がっていった。
しかし、戦の脅威は俺達の生存を決して許さない。敵の圧倒的な物量を前に俺達は追い詰められていった。
「クソっ!キリがねぇ!」
三人の敵が一斉に襲いかかる。流石に三方向からの攻撃を防ぎきることはできず、その腕を切り飛ばされる。
「クソっ!」
何とか意識を保つ男であったが、片腕ではまともに戦うことができず、次々に襲いくる敵に対処が間に合わない。
グチりと肉を叩く音が聞こえる。
音が止む頃には先程まで背を合わせて戦っていた仲間は物言わぬ骸へと姿を変えていた。
「不味いな⋯⋯」
敵に囲まれ、絶望が支配する。いかに奮闘しようとも、もはや生きて帰ることは不可能だろう。 しかし、
「まだだ⋯⋯!諦めてなるものか!」
次々に襲いかかる刃をすんでのところで躱していく。風切り音が重なって生き物の鳴き声のように唸る。
絶え間なく続く攻撃に、躱しきれなかった一撃をなんとか剣で防ぐが、支給用のため脆く、根元からへし折れる。
武器を失った俺に、好機とばかりに攻撃の勢いが増す。
咄嗟に腕を使って、振り下ろされた剣を受け止める。刃は骨へと届くが、全てを断ち切ることは出来ずに抜き取られた。
「これまでなのか⋯⋯?」
ジュクジュクと泡立つ血液が生暖かい。痛みを感じる間もなく次の攻撃が襲ってくる。
無理やり身を翻して躱すが、次の攻撃は避けれないだろう。
見下ろす敵の眼光が獲物を捕らえた猛獣の如く光る。
剣を掲げ、構え、振り下ろす。
敵の動作の一つ一つがスローモーションで視認できる。
(剣さえあれば⋯⋯)
空の拳を敵へと向ける。剣があったのならば目の前のコイツを殺せるのに。
迫っていた剣が身体へと肉薄する。
死を覚悟し、歯をくいしばる。
が、刃が俺を断つことはなかった。
轟音を轟かせ、眩い光を放ちながら、「それ」は訪れた。
「それ」は一瞬にして辺りを焼き焦がし、大きく大地を震わせた。
知覚した時には敵も味方も俺も、全員纏めて吹き飛んだのだろう。
俺の記憶はそこで途切れた。
焦土となった大地にただ一人立ち尽くす。
終わるはずだった俺の物語が再び綴られ始めた。
運命に沿った俺の人生は終わりを迎えた。
夢のため、使命のため、新たな命は自分の為に使わせてもらう。
《領域踏破》、誰一人と成しえなかった偉業を俺の手で成し遂げるのだ。
神々が創りし大陸
美しさで溢れていた大陸は、長い月日を経たことで闇が蔓延しつつあった。
野望や無理解、貧困、悪意、本能。
隔たれた世界に今、邪悪なる戦禍が訪れようとしていた。
これは一人の青年が伝説の英雄へと至る物語。
解き放たれた彼の運命は、世界の命運を大きる変える。
これから頑張ります!アドバイスをいただけると嬉しいです(`・ω・´)ゞ