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三十と一夜の短篇

桃おじいさん(三十と一夜の短篇第21回)

作者: ひなた


 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

 おじいさんはまで死ばかりを、おばあさんは川で選択をしていました。

「もうこんな時間かの。夜まで死ばかりじゃった」

 死ばかりとはどういう状態なのか、よくわかりませんが、おじいさんはおじいさんは、夜まで死ばかりをしています。

 一方その頃おばあさんは、川で選択に迫られています。

「も、桃じゃぁ。川を桃が流れて来よった」

 拾うか拾わないか。

 川上から流れてくる桃。迷うおばあさん。

「危ないかしら。拾うべきじゃないかのう。きっとこれで怪我をしたら、おじいさんを心配させてしまうし、迷惑にもなってしまうわい」

 やっと選択をして、おばあさんが帰ろうとしたところ、大声が聞こえてきました。

「桃じゃぞ! ばあさんや、桃じゃあ!」

 間違えなくおじいさんの声でした。

 おじいさんの好物は、そういえば桃だったのです。

「危険じゃ。おじいさん、諦めるのじゃ! 桃ならば、街で買えば十分なのじゃから、ほら、危ないじゃろ。命よりも大事なものなんてないのじゃぞ!!」

 叫びは聞こえていたはずだが、それでもおじいさんは動く気配がありません。

 桃にしがみ付いて、決して放そうとしません。


 どこまで行っても、流されていても、手を離しません。

「わしは諦めないのじゃ!」

 諦めないことが、何よりも大切だとでも言わんばかりに、おじいさんは桃を放しはしないのでした。

 決して、決して……


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― 新着の感想 ―
[一言] 死ばかりと選択、作中の感じだとお二人とも生活がヤバそうです。死ばかりは気になりますが、言葉から野辺送りを想像してしまいます。 おじいさんの行方はいかに?
[気になる点] おじいさん、いつの間に川に! 夜までなにかしていたのでは? おばあさん、日が暮れるまで悩んでらした? 桃はその間、拾われ待ち? ううん、謎が謎呼ぶ展開です。
[良い点] 「夜まで死ばかり」も怖いですが、「川で選択」も怖い表現ですね。  しがみつくほど大きな桃。川に流され、おじいさんはどこまで行くのでしょう。
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