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チェイサー 〜真実を追う者〜  作者: 夛鍵ヨウ
第一章 消えた村人達
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アルマ村2日目①

 カラック村の宿で一晩眠り、朝一番に雑貨屋で道具を調達したカイは、再びアルマ村の入り口に立っていた。手にしたのは果樹園の植え付けに使うスコップ。

 村を探せば農具は見つかるが、小屋の中で使うには些か大き過ぎる。雑貨屋に手頃な物が売っていたので助かった。

 

 スコップを担ぎなおすとカイは真っ先にある場所へと向かった。

 昨日、戦って倒した黒い犬。傷だらけだった誰かのトビー。

「昨日はきちんとしてやれなくて済まなかった」

 カイはトビーを埋め直し、立派な土饅頭を作ってやった。

 

 リルデンに来たばかりの頃自分の孤独を癒してくれたのは、街や郊外にいる猫や犬といった、人語を話さぬ動物達だった。彼等はカイを好奇の目で見る事も、厄介者扱いする事もない。胸の内である決意をし、自分の在り方を変えるまで、彼等とはいつも心を許し寄り添い合っていた。それほどまでに、人間よりも身近で親しみの持てる存在だったのだ。それは今も変わらない。

 そんな気持ちがあるせいか、カイはトビーの様な見知らぬ犬に対しても、つい思い入れを抱いてしまうのだ。

 

 もっとも猛獣やモンスター等、命の遣り取りをし合う存在にまで気を許す訳は無く、襲われれば迎え撃つ程度に割り切っている。それ故に残念な結果となってしまったが、それはそれでしょうがない。……そう思うしか無い。

 

 トビーの墓を作り終えたカイは、少しだけほっとした気持ちで小さく黙祷する。

「……どうか安らかに」

 安息を願い、その場を後にする。

 しかし数歩進んだ所でふいに一つの疑念が浮かび上がった。


(そういえばあの時……)

 トビーを倒した時、普段なら気付く事があった。その時はただならぬ緊張感の余韻に捕われ考えが及ばなかった。太い血の流れが走る首すじ。そこを切られた時の、噴き出す筈の血。

 トビーからは殆ど血が出ていなかった様に見えた。そしてあの傷や欠損。

(……何か邪悪なものが関わっているのか……?)

 

 ここで不穏な推測をしていても何の解決にもならない。

 出来る事をやるだけ。

 カイは予定通りピーターの鶏小屋へ向った。

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