たかしちゃんと茶道部
次回投稿は2日後です。
「はい、今日もお疲れ様でした。授業はこれで終わりです。みんな部活がんばってね〜」
『キンコンカンコン』
撫子先生の授業が終わり、カンコン鳥さんがチャイムを鳴いて、残すはホームルームだけになりました。
どんどん部活が近づいてきます。怖いです。
あ…。たかしです……。
「たーっかっしちゃんっ!」
「あ、きらなちゃん、こんにちは……」
「あれえええ!! たかしちゃんの元気がない!! 大丈夫??」
「大丈夫です…。大丈夫……」
あ、きらなちゃんが心配してくれてる……。ふう。
「怖い? やめとく?」
「頑張ります……」
「そっか、じゃあ今そんなに考え込んでも意味ないよっ!」
「わあああっ!?」
「ほーれ、高いたか…んー、やっぱり無理かー」
いきなり脇をこちょこちょされたのかと思ってびっくりしました。無理って言いながらちょっと足浮いたよきらなちゃん?
ふふふ、でも、おかげでちょっと楽になりました。
「ありがとうきらなちゃん。ちょっと怖いけど、今は考えないように頑張ってみるね」
「よーしよしいいこいいこー」
ふにゃあ。なんだか子供だと思われてる気がします。
きらなちゃん!私は同い年です!
「ねーねーねー、たかしちゃん部活体験するんでしょ? うちの部活おいでよ楽しいよー」
ここちゃんが部活のお誘いに来てくれました。
「えっと、ここちゃんのやってる部活って…」
「ハンドボール部! 本当はサッカー部が良かったんだけどねー、女子私しかいなくってダメだって」
ふふ、サッカー好きだなあここちゃんは。
「なんかさー!部室が一つしかないし着替える場所とかないからダメって言うんだよ!?一緒に着替えたら良いのにね!! でもお母さんにもお父さんにもダメって言われたから仕方なく誘われたハンドボール部に入ったの、でもこっちはこっちで楽しいよーサッカーに似てるし! まあ…全然違うけど……」
サッカーとハンドボールを比べてどんよりしています。
それにしてもここちゃんは恥ずかしくないのかな、その、下着とか、うう、考えただけで恥ずかしいのに。
「だからさ! おいでよ!」
「まあまあまあ、ここちょっと待ちなさいここ、後でちゃんと行くから」
「えー、最初じゃないの? あ、でも、最初に来てもゲームはしてないか、じゃあ後でおいでよ!」
「もう全く、ここは勝手に決めるんだから、ねえたかしちゃん?」
「え、ええ、ええっと、きらなちゃんも、その」
「まあいいわ! 今日行くところは大体決めてあるの! ハンドボール部には明日行くの! たかしちゃん今日は体操服持ってきてないし」
あれ、あ、明日?
「きらなちゃん、明日、明日?」
「ん? そうよ?」
『キンコンカンコン』
「はーい席に着けー」
「お、じゃあまた後でね」
ホームルーム開始のチャイムが鳴かれて先生が入ってきました。
うう、なんだかとても怖くなってきました。
「よーし、じゃあ今日はこれで終わりだ。部活頑張れよー、あ、そうだ、高橋、これ渡しとくわ」
不安がいっぱいで授業が全然頭に入ってきませんでした。うう、今日はもう終わっちゃうのかあ。部活……不安です。大丈夫かなあ。こわいなあ。
「……はし…高橋!!」
「ふにぁ!?」
「うおっ、大丈夫かお前、今日やめとくか?」
びっくりしたあ…。
うう、なんか頭がこんがらがっちゃいそうです。
「だ、大丈夫です、ちょっと、不安なだけです。えっと、その……」
「ああ、そうそう、他の先生方もみんな分かってるとは思うんだが、それでも結構忘れてたりとかするんだよ、忙しいからな、だからこれぶら下げとけ、部活体験カード」
首からぶら下げるそのカードにはかわいい文字でおっきく『体験!』と書かれていました。
「あー!なっつかしい!私も一年のときぶら下げてたー! それね!裏が入部届けになってるの!だから入りたい部活が決まったらそこの顧問の先生にそのカードを出せば良いんだよ!!」
あれ?いつの間にかきらなちゃんが隣にいました。
「吉良…まあいいか、本当の目的は一年生だって見分けるためだから、高橋には必要ないんだが、まあでもせっかくだからな、この学校を楽しめ。」
楽しめ……かあ。
「はい!」
がんばろう…!
……不安だけど。
「よし、じゃあ今日は終わりだ、気をつけろよー」
「さようならー」
「さようならー」
クラスのみんなが先生に、先生は私達に頭を下げて挨拶をします。
『キーンコーンカーンコーン』
長老さんの低いチャイムが鳴り響き、今日の授業の終了を伝えてくれました。
今から部活動の始まりです。
「よーし!たかしちゃん!行こうか!!」
「は、はい!」
「もー、うんでしょー、緊張してるねえ、よしよし。じゃあまずはねー、運動部は明日行くとしてー…」
どきっ。
「あの、きらなちゃん?」
「んー?」
「明日も行くの?」
「もちろん!今日は文化部!明日は運動部!全部回りきれなかったら明後日もあるかも!」
わあああ、そんなには頑張れる気がしません。ど、どうしよう。
「さっ、いくよー!! 明日の事は明日考えなさい! 今日は今日だよ!! じゃあまずは茶道部!!」
ううー、あ、でも、お茶なら、怖くない……かも…わああああ!
「はあ、はあ、すぅーっ、ふぅぅ、きらなちゃん、ふう、はや」
「たかしちゃん、これからだよー、なにばててんのさー」
「それは、ふう、きらなちゃんが、ひ、ひっぱるから、ふう」
えっと、ここは……。
「さっ、行くよー」
相変わらず全然聞いてくれません、きらなちゃん!ふえー。
でも、がんばろう、一つ目の、体験。
「失礼しまーす!」
「し、失礼…します」
きらなちゃんが扉を勢いよく開けるとお茶と畳のいい香りが。
わあ、すごい、ここの教室は畳なんだ…。
ギロリ。
「わう」
着物を着た顧問の先生が私達をギロッと睨みつけました。
「あなたたち、ここは茶道室です。ドアにも書いてある通り、静かに入り、中では静かにしてください」
あ、本当です。確かに書いてありました。
「ごめんなさ…」
「はーい。それより先生、体験していいですかー? これ!体験カード!」
「だから静かに!」
きらなちゃんにつられて顧問の先生も声が大きくなっています。
うう、ご、ごめんなさい。
「仮入部ですか、よろしい。ではまずは靴を揃えて脱ぎ、そこの座布団をとって座りなさい。そこで他の部員たちが来るまで待っていてください」
どれくらいかなぁ、そんなに長い時間正座できるかなぁ。
あれ?きらなちゃんが進みません。
「せんせー、色んな部活体験したいのでどんな感じなのか今できませんかー?」
ギロリ。
ああ、また聞こえました。また睨まれてしまいました。ごめんなさい。
「お茶というのは落ち着いて飲むものです。静かに会話をしながらお茶菓子を食べる。一人静かにお茶を味わう。急ぎなんて言語道断です」
「えー、じゃあいいや、次いこーたかしちゃん」
そう言って私の手を引っ張ります。
「え、ええ、あ、あの、失礼しました」
言い終わった頃にはもう茶道室の前にはいませんでした。
茶道部の先生怒らせるだけ怒らせて出てきちゃったなあ…。でも一つ終わった……後何個あるんだろう。また怒られちゃうかなぁ。うう、不安です。
「もー、ちょっと体験したいだけなのにねー」
「で、でも、まだ部活始まってないから」
「でもどうせ入部しないんだからさ、ちょっとぐらいいいと思うなー、ぷんぷん」
きらなちゃんはいつも通りです。不安です。
「じゃあ次は新聞部ね!」
とても可愛い笑顔です。
ふうー、不安です、きらなちゃん。