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たかしちゃんと  作者: 溝端翔
転校編
7/29

たかしちゃんと日直

 おはようございます。たかしです。


 今日はいつもより早くお家を出発しました。

 なぜなら今日は……初めての日直なのです!


 日直のお仕事はたくさんあります。

 朝一番に教室を開けたり、黒板を消したり、配布物を先生の代わりにくばったり。それから、カンコン鳥さんにご飯をあげるんです!


 朝の六時四十分。よし、いい感じ。


「おはようございます!」


「おはよう…あら、たかしちゃん、学校はもう慣れたかしら?」


 撫子(なでしこ)先生が正門にいるカンコン鳥の長老さんにご飯をあげていました。


「はい!まだ知らないことも多いですがお友達も出来ました!」


 撫子先生は国語の先生で、大和(やまと)理事長先生の奥さんです。

 転校の時にはとてもお世話になりました。


 ふあー、撫子先生は美人さんだなあ。


「うんうん。お友達もまだお友達になっていない子も大切にするのよ。今日も一日頑張ってね」


「はい!ありがとうございます!」


 撫子先生は容姿も中身も美人さんでした。

 あ、カンコン鳥の長老さんは正門に住んでいて、休み時間の終わりと下校時間の時に全校内に響く声で教えてくれます。クラスのカンコン鳥さんよりもずっと声が低いくておっきいです。


 うう、職員室についてしまいました。


 緊張するなぁ。ノックして、それから、ううう。

 頑張るぞ。


「お、おはようございます。え、えと、2年、A組の教室の、鍵を取りに来ました」


「おう、高橋か、元気でやってるか? 2のAならさっき(かみ)が取りに来たから渡したぞ」


「え、あ、わ、わかりました。あ、ありがとうございます。し、し失礼します」


 っはぁー。き、緊張したあ。

 鍵は上君がもう取りに来てたみたいです。今日は上君も同じ日直です。


「か、上君、おはようございます」


 私が教室に入るともうすでに上君が先生の机の上にある朝の配布物を見つめていました。


「高橋か、お早う。それと我の事は神様と呼びたまえ」


「う、うん。上君、鍵、ありがとう。は、配布物、私がくばるね」


「いや、大丈夫だ、天子に遣わそう」


「雨塚さん?」


 上君はいつも雨塚さんを呼びます。


「天子!これを下々の人間に配布してくれないか?…天子!…天子?」


「え、えーと雨塚さんは…」


 雨塚さんはどこにもいません。


「しまった、今日日直だった事を伝え忘れてしまった!」


 配布物から目を背け頭を抱える上君。


「すまない高橋…天子の代わりにそれを配布してくれまいか…」


「う、うん」


 しまった、天子、とぶつぶつ言いながら上君は頭を抱えて席に座ってしまいました。

 上君はいつもちょっぴり怖いです。


 ふう!

 さあて、みんなが来ちゃう前にくばっておこう!


 こことー、これとこれと、えーと、後は六班の分だけかな。


「お、おはよう〜」


「天子!!よくぞ来た!!」


 あれ? 雨塚さんがもう来ました。

 まだ授業は始まらないのに、えらいなぁ。


「雨塚さん、おはようございます」


「高橋さん、おはよう」


 雨塚さんはいつもランドセルと黄色い帽子をつけていて小学生みたいです。

 休み時間にもそのままなので授業中もつけてるのか気になります。


 雨塚さん、ずっとつけてるのかなあ。


「今日もしっかり我の与えたランドセルを携えているな、それでこそ天子だ。それよりも良くここがわかったな」


 ウェーブのかかったくりくりのショートカットがふわっと縦に揺れました。


「うん、昨日の帰る時に日直のところが上…こ、光貴って書いてあったから…」


「さすが我が使い、それと我の事は神様と呼べ」


 上君は腰に手を当てて雨塚さんに言いました。

 それにしても上君は誰にでも神様って呼んで欲しいのかな。


「そうだ高橋、二限目からカンコン鳥のえさやり任せる」


「う、うん!」


 カンコン鳥さんのご飯まかされちゃった。

 ちょっと楽しみにしてたから嬉しいな。


「我は二限目以降はやる事があるのでな。それまでは私が直々に与えてや、いて、いたい!」


 あ、またカンコン鳥さんにつつかれちゃってる。


「た、高橋さん、あの」


「なあに?」


「上君、何か言ってた?」


「ううん、雨塚さんの事呼んでたくらいだよ、天子ー天子ーって」


「そっか、ありがとう」


 雨塚さんの顔が赤くなっていきます。

 可愛いなあ。本当に小学生みたいです。


「高橋さん、その」


「なあに?」


「上君のこと」


「おっはよー!!」


「ひっ」


 わあ!ここちゃん元気良い!雨塚さんがびっくりしちゃってる。


「ここちゃんおはよー」


「たかしちゃんおっはよー!! あれ? 蹴人まだ来てない? なんだよーサッカーはー? あ、上またカンコン鳥にいたずらしたの?」


「何を、我はこ奴らにはなにも、いて、やめ、いてて」


「その喋り方が問題なんだよ!」


 上君の肩にぽんっとツッコミを入れながら笑っています。


「高橋さん、ま、またね」


「え? うん、またね?」


 あれ?上君のお話、良いのかな。


「おい天子、我を置いてどこへ行く!?いて、なにをそんなにいて、急いでいるのだ、いて」


「おはよー」


「おはよー」


 ぞくぞくとみんなが登校して来ました。

 きらなちゃん今日も遅刻かなあ、早く来ないかな。


「お前日直のたびに突かれてんな」


「我はなにも、いて、天子!天子!」


 上君はまだ突かれています。

 雨塚さんはどこに...あ、ドアの隙間からぴょこぴょこ見える。


「雨塚さん、上君が呼んでるよ」


「わあ! う、うん」


「たかしちゃんおはよー!」


 あ、きらなちゃん、今日は早い!


「おはよーきらなちゃん! 今日は早いねぇ」


「うん、たかしちゃん日直初めてだから手伝ってあげようかと思って」


「あ、ありがとう」


 もうほとんど終わっちゃってるよきらなちゃん。でも嬉しいなあ。


「いいのいいの、友達でしょ! って、あ、天子、また高貴のとこ来てるの? 好きだねえ」


「わ」と赤かった雨塚さんの顔がもっと赤くなりました。


「高貴のどこが良いの? 偉そうなのに、ねーたかしちゃん」


 ええ!?

 あ、うう。


「まあ頑張りなさい頑張りなさい」

「う、うん」


 雨塚さんは真っ赤なお顔でちょっと涙目になっています。


 雨塚さん、そっかあ、上君が好きなのかあ。


「たかしちゃん日直の仕事は?」


「うん。朝はもう大丈夫、上君が色々やってくれたの」


「そっかそっか、わからないことがあったら次から私に聞きなさい」


 きらなちゃんはとんっと自分の胸を叩きました。


「ありがとう」


「いいのいいの…あ、そうだ、仁衣さんとこも行かないとなんだった。また後でねーたかしちゃん!」


 ふふ、騒がしいなあきらなちゃん。

 あ、ちょっぴり気まずくなっちゃった。


「ち、あやつら我の事を好き放題突きおって。我を誰だと思っているのだ。そんなことより天子、ちゃんと休み時間は我の側に居てくれないと困るぞ」


「うん、ご、ごめんなさい」


「いや、謝らなくてもよいが……。ま、まあ、我は寛大だ、今回は許してやろう」


「うん、あ…ありがとう」


「どうした、元気が無いな」


 わ、撫でた!

 あ、逃げた!


「天子!? 何故離れるのだ!待て!」


 ふふ、追いかけて行っちゃった。

 仲良しだなあ。


「好き。かあ」


「んー? たかしちゃん誰か好きなの?」


「わあ! う、ううん、違うの、なんでもないの」


 心の声が出ちゃってました。


「そうなの? 私はスポーツが好きだけどね!! それより蹴人おっそいなー、サッカーはどうしたんだよサッカーは!」


 ふふ、ここちゃんらしいのかな。

 私は、まだよくわかんないなあ。


「あっちー。おはよー」


「ああ!!蹴人!サッカーはどうしたんだよー!」


「あ……ここ……言うの忘れてた……。普通にグランドで練習してた」


 阿瀬君はパタパタ下敷きで扇ぎながら言いました。


「なんで自分だけいい汗かいちゃってんの!もー!」


 ふふ、ここちゃんもかわいいなあ。

 可愛くてスポーツできて…ずるいです。


「わりーわりー。お、たかしじゃん、今日も相変わらずスカートなのか」


 うう、阿瀬君がまたいじわるを。


「こおらー!!シューッ!!トッ!!」


 えへへ、きらなちゃんが来てくれました。


「いってえ!!」


「クリーンヒット!」


「まあたたかしちゃんいじめて!!」


「ばか、そろそろ骨折れるって、跳び蹴りはやめろ…あと、お前、パンツ見えるんだからもうちょっと違う方法に…」


「はあ!?なに言ってんの!こんな可愛い子いじめるからでしょ!たかしちゃんを助けるためなら見せパンの1つや2つシュートに見せるくらい!ね!たかしちゃん、ここ」


「そうだそうだ!パンツなんて別に見えたっていいだろ服なんだから!それよりもサッカーはどうした!」


「え、えと、跳び蹴りは、危ないか、な?」


「そう?まあたかしちゃんが言うなら考えとくわ、さあさあ入るわよー、先生来ちゃう前に。ていうかここ、あんたせめて見せパンくらいは履きなさいよ、それか短パンとかさ。」


「えーいいじゃん、どうせ見せパンとか短パン履いても一枚しか変わらないんだしさー」


「何言ってんの! 下着では無くなるでしょ!? ん…あれ?シュート?そんなとこで寝てたら風邪ひくわよ?」


 阿瀬君蹴っ飛ばしたのきらなちゃんなのに、ふふふ。


「蹴っ飛ばしたのお前だろォ!!」


 阿瀬君も楽しそう。阿瀬君はきらなちゃんの事が好きなのかな。


 きらなちゃんは...どうだろ。


 ここちゃんは...どうだろ。


 私は。


「いつもありがと、きらなちゃん」


「なに言ってんの、友達でしょ!」


 私は、きらなちゃんが好きです。


「たかしちゃんはこんな可愛いのに、変な名前だからすぐいじめられちゃうの。私が守ってあげないとね」


 ぐさっ。


 でも好きです。

 阿瀬君もここちゃんも上君も雨塚さんも、お友達はみんな好きです。


「きらなちゃん。ありがとう」


「いえいえ、任せなさい!」


「でも、跳び蹴りはやっぱり危ないよ」


 とても良いお友達ができました。


「そう?」


『キーンコーンカーンコーン』


 あ、カンコン鳥の長老さんの声だ。

 もう朝休みも終わりです。先生も来ました。


 よーし、今日も一日頑張るぞ!


「お? 阿瀬、そんなとこで寝てたら風邪引くぞ、早く席つけよー」


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