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たかしちゃんと  作者: 溝端翔
転校編
6/29

たかしちゃんとサッカー

 おはようございます。たかしです。スポーツはあんまり得意ではないです。


 今日の一、二時間目は苦手な体育です。

 体育は隣のB組と合同で男女分かれて行います。

 女子はA組で男子はB組で着替えるのですが、女子だけでもみんなの前で着替えるのはやっぱり恥ずかしいです。


「おいたかし、男子は隣だぞー?」


 うう、阿瀬君がまたいじわるを…。


「たかしちゃんは女の子だからこっちの教室であってるの!!」


 きらなちゃん、ありがとう。でも、チョップは痛そうです。


「でもさー、別に男女分けなくても良いよね、いちいち移動面倒だし。まあボクは移動しなくて良いんだけどねー」


 同じクラスの僕津(ぼくつ)ここちゃんです。

 ここちゃんはボーイッシュで、くりくり茶髪のショートカットで可愛いうえに運動神経がとても良いです。


「なに言ってんの!ここは女の子なんだからもうちょっと恥じらいを持ちなさい!」


 きらなちゃんがまったくもう、と言った顔でここちゃんに言います。

 私はきらなちゃんもまったくもうです。制服のスカートはとても短いし、おなかも出ています。うう、私は絶対着れません…。


「だって移動の時間もったいないじゃんかー、休み時間も体育の時間も減るし、ね?天子(てんし)?」


 丁度教室に入ってきた隣のクラスの雨塚(あまつか)さんにここちゃんが言いました。


「え、う、な、なに?」


「えー? だからー、着替える時間のせいで休み時間も体育の時間も減るからその場でみんな着替えればいいのにって話」


「う、わたしあんまり体育、得意じゃないし、それに、男の子いたら恥ずかしい、かな」


「えー、何が恥ずかしいのか全然わかんないなあ、おっぱい?」


 こ、ここちゃん!?


「そ、それは」


 それにしても雨塚さん、ちっちゃくてわたわたしてて可愛いなあ。


「あーあ、時間がもったいない早く着替えよっと」


「あっ」


「こらー!!」


 まだ部屋に男子が残っているのに、ここちゃんが上の服を脱ぎ始めました。

 急いできらなちゃんが止めに入ります。

 ああ、上を全部脱いでしまいました…。し、下着が…。


「なにやってんの!まだ男子いるでしょ!!」


「えー、いいじゃん! 早く着替えて遊びたいの」


「遊んでもいいけどもうちょっと待ちなさい!ていうか隠しなさい!」


 ここちゃんはどこまでもボーイッシュ?なのかな。


「いいじゃんか、下着つけてるんだしさー、ちぇー」


 きらなちゃんは口をとんがらせているここちゃんに服を被せます。


「こらシュート!たかしちゃんというものがありながらいつまでここのおっぱい見てるの!!他の男子も!早く移動する!!」


 阿瀬君の背中を押して教室の外に追いやります。


「あ、蹴人ー! 着替えたらグラウンドね!」


「返事は私がしとくから早く出て行く! ふう。ねーたかしちゃん」


 え、えと、な、なにがねーなんでしょうか。


「さ、着替えた。グラウンド行こーと。あ、今日の体育はサッカーだったよね? やった! サッカーボール蹴れる!」


「んー? それは男子じゃない? 女子はバレーボールよ」


「えー、今日はサッカーの気分だからサッカーしたい、バレーボールよりサッカー!」


 不満げに「サッカーボール蹴りたーい」と叫びながらここちゃんはグラウンドに走って行きました。

 運動神経が良いって良いなあ。あ、わたしも早く着替えないと。うう、恥ずかしいなあ。



——————————



「えーっと、僕津さんがどうしてもどうしてもとお願いをしてきたので、良い機会だから女子もサッカーをしてみましょう」


 グラウンドに集まった女子に悲報です。

 えええー!!と大勢の女子が声をあげました。


「えー、じゃない! バレーボールは女子、サッカーは男子の競技。なんて決めつけちゃあだめよ! それに男子に混ざってやるわけじゃないんだから」


「えー」


「えーじゃない! あなたの意見でサッカーにしてあげるんだから男子に混ざるのは諦めなさい」


「くそーう、ぶーぶー」


 シュートに痛い目見せてやろうと思ったのに...とここちゃんが悔しそう。

 サッカーは11人で1チーム。A組とB組に分かれて試合をすることになりました。

 女子は11人よりちょっと多いので、前半後半で何人か入れ替わるルールです。

 前半私はベンチでした。


「ここは運動神経は良いからね、強いよー、相手チームじゃなくて良かったね」


 隣に座っているきらなちゃんもベンチです。


「いつも休み時間シュート達と遊んでるから。あ、そうだ、シュート見れるんじゃない? あいつ、ああ見えてもサッカー部のキャプテンなのよ」


 キャプテンなんだ、知りませんでした。

 ピーッ側と向こうのグラウンドで笛が鳴りました。


「ほら、シュートがゴールしたみたい」


 見てました。足でボールを、なんだか足に引っ付いてるみたい。

 なんだかいつもの阿瀬君と違って格好良いです。

 あ、こっち側のグラウンドでも笛が鳴りました。


「ふふ、ここもゴールしたね」


 ここちゃんも、格好良いなあ。


「もー先生!ここちゃん強すぎて勝負にならないよ!!」


「うーん、そうねえ」


 先生もB組の女子たちが全く歯が立たずに困っています。


「ここ!こっち来いよ!」


 こっちのやり取りを見ていた阿瀬君がここちゃんを呼びました。


「阿瀬君、勝手に呼ばない」


「良いでしょ先生。どうせ試合になんないんだし、それならこっちでやってる方が良いって」


「んー、んー」


 先生がすっごく悩んでます。


「じゃあ先生、ボク行ってくる!」


「あ、こらー! もう、仕方ないなぁ、まあでも僕津さん居たら試合になんないし。じゃあ吉良さん代わりに入って」


「はーい」


 抜けたここちゃんの代わりにきらなちゃんが入りました。


「たかしちゃんはシュートのサッカーでも見てなさい。ただのいじわるじゃないからね」


「う、うん」


 きらなちゃんも見ますよー。

 あ、阿瀬くんがボールを持った!

 一人二人かわしてシュート。

 三人来たのをかわしてパス。

 足でサッカーボールを持ってるのに、阿瀬君すごいなあ。


「たかしちゃん!」


「わあ!」


「あはは、どう? あいつ、かっこいいとこもあるでしょ」


「うん!……あ」


 かっこいいって…。は、恥ずかしい。ううう。


「ははは、可愛いなあ、たかしちゃんは。交代だってさ、私もまだ出るけどね」


 ここちゃんも男の子に負けてない。

 かっこいいなぁ、私もあんなかっこよく動けたらなぁ。


「がんばろうね、きらなちゃん」


「ん?うん」


 よーし、がんばる…わあっ!


「ああー!! たかしちゃん!!」


「わるい! だいじょうぶ…あ…たかし…」


 ううう、痛い。なんでか転けちゃった…。それになんだか頭も痛い…。


「ごめんミスった…」


「こーるあ!シュート!ミスったじゃない!なんでたかしちゃんに当てるの!それでもキャプテン!?」


「う、ご、ごめん…」


「私じゃなくてたかしちゃんに謝りなさい」


 なんだかよくわかんなかったけど、阿瀬君が蹴ったボールが私の頭に当たって、その衝撃で転けちゃったみたいです。


「た、たかし、わるい…大丈夫か?」


「ううう、うん」


「高橋さん、大丈夫? あら、転けた時に膝すりむいちゃってるわね、阿瀬君、保険室連れてってあげなさい」


「え、おれ?」


「当たり前でしょ?あなたが蹴ったボールなんだから」


「え、で、でも」


「蹴人、これはお前が悪いわ、わざとか? そう言う魂胆か?」


「うーん、僕もそう思うよ…あ、前者の方ね。だから蹴人が高橋さん保健室連れてってあげるのが筋だと思うけど」


 阿瀬君の後ろから出てきた、阿瀬君の友達…。えっと、確か(ただし)君と(はじめ)君。

 二人とも隣のクラスで…そういえば名字はまだ聞いたことがなかったです。


「そうそう、二人の言うとおりよ、ぶつけたんだから責任を取りなさい」


「わ、わかりました。ほら。後!忠!わざとじゃ無いからな!」


 阿瀬君が手を引っ張って起こしてくれました。


「歩けるか?」


「うん」


「ごめん」


「ううん、大丈夫」


 とっても気まずくなってしまいました。

 後ろからはヒューヒューって男子が言っているので余計に気まずいです…。


「まさか人に当てるなんて…。練習不足だった。ほんとごめん」


「ううん」


 阿瀬君は本当に何回も謝ってくれました。


「あ、阿瀬君」


「な、なんだ?」


「サッカー、凄かった」


「え、あ、ありがとう」


「足であんなに、私も阿瀬君みたいにできたら楽しいだろうなって思ったよ」


「じゃ、じゃあ今度教えてやるよ。あれだぞ、ボールぶつけたお詫びだからな」


「え、う、わ、私運動苦手だから阿瀬君みたいに出来ないよ?」


「いいんだよ、ちょっとでも出来るようになるかもだろ、ほら、ついたぞ、大丈夫か?」


「うん」


 痛た、膝がヒリヒリ。


「失礼します。先生、こいつ膝すりむいちゃったんで、診てやってください」


「あらあら体育?転んだの?」


「いや、あの、それは、俺が頭にボールぶつけました」


「あらあら大胆ねえ、名前は?」


 う、た、高橋です。


「高橋たかしです、俺は阿瀬蹴人」


「たかし?」


「名前なんかどうでもいいでしょ、それより傷、診てやってください」


「そうね、痛い?頭は?」


「うう、ちょっと…」


「うん、大丈夫ね、膝もそんなに大した傷じゃないし、頭も特に…あーちょっとたんこぶが出来ちゃってるくらいね」


「ありがとうございます。高橋、お前休んどけ、体育の先生には俺が言っとくから。 先生、ちゃんと診ててやってください。体育の先生にも伝えないとなんで戻っていいですか?」


「はいはい、任せなさい、連れてきてくれてありがとうね」


「阿瀬君、ありがとう」


 うう、言う前に阿瀬君は走って行っちゃった。それにぼーっとしていた私が悪いって、言いそびれた。


「ふふふ、優しい子ねー、彼氏?」


「ち、ちがいます!」


 保健室の先生がいきなりとんでも無いことを聞いてきました。首を横に大きく振ります。優しいけど。ブンブン。


「なんだー残念」


 先生はニヤニヤとしています。

 絶対信じてもらえてないです。残念って思ってないです。


「あなたがたかしちゃんねー、知ってるわよ、有名だもの」


「う」


「大丈夫よ、変わった名前の子は最近多いからね、その為に先生がいるんだけど…あなたには彼がいるから大丈夫そうね」


「だ、だから違います! わ、私転校してきたばっかりなのでまだそんな…違います!」


「ふふふ、知ってるわよ可愛いわねえ。まあ彼に甘えて、次の時間までベッドで休んでなさい」


「うう、は、はい」


 保健室の先生はやっぱり信じていませんでした…。

 そうだ、ここちゃんも格好良かったな。

 またみたいな、今度ここちゃんの部活応援しに行こうかな。きらなちゃんと。

 それから阿瀬君にサッカー教えてもらって…。


「あ、どうする? 次の体育も休む?」


「え、ええと、行きます」


「そ。じゃあ次までちゃんと休んでなさいね。……で、本当は彼氏なんでしょ?」


 ちがいます!!


「じゃあ好きなの?」


「友達です!!」


「なんだー残念」


 まだ先生はニヤニヤしています。

 なんだか、次の時間まであまり休めない気がします。

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