たかしちゃんときらきら娘
朝です。ホームルームです。おはようございますです。
私は高橋たかし(たかはし たかし)といいます。これでも花の女子中学生です。
この中学校に転校してきてまだ一ヶ月くらいなのですが、いっぱいお友達が出来ました。
今日はそのお友達の一人、一番仲良しの吉良綺羅名ちゃんのお話をしたいと思います。
きらなちゃんは、とっても可愛いです。お目々がぱっちりで、私なんて比べものにならないくらい見た目も名前もとっても可愛い女の子です。
いつも、学校にお化粧をして来ます。とっても明るい茶色の髪の片方を可愛いシュシュで、もう片方を学校指定のスカーフでツインテールにしていて、左耳にだけつけたイヤリングをキラキラさせています。自分でお直しした制服をオシャレに着こなして、右手首にはいつも何かのキラキラしたブレスレットをしています。毎日見惚れちゃうのですが、先生は注意します。
「おっはよー!」
あっ。
勢いよく扉を開けてきらなちゃんが来ました。
「吉良、今日も遅刻か…って吉良、お前その格好で来るなと何回言ったら」
「えー、たかしちゃんおっはよー」
お、おはようございます。それにしてもきらなちゃんはビクともしません。かっこいい…。
「聞いてるのか…まったく、早く席に着け、吉良は遅刻…と」
「えー!ホームルームにはまにあってるじゃん!ギリギリセーフでしょ! あ、せんせーおはよー」
「ギリギリアウトだよ。吉良、いつになったら校則を守るんだ。お前はこのクラスの委員長なんだから、一つくらいは守ってくれよ。せめて制服くらい…」
先生がお説教している最中にきらなちゃんは「ちぇ〜」と言いながら自分の席に歩いて行きました。
「いいんちょ〜あうと〜」
もう一人の委員長、阿瀬蹴人君が笑いながら言います。きらなちゃんも笑顔で「うっさい」と頭にチョップを返しました。
この阿瀬君は何故かいつも私にいじわるをしてくるのですが、その度にきらなちゃん渾身の飛び蹴りが炸裂します。
きらなちゃんは人気者なので休み時間になると、ほかのクラスや、ほかの学年のお友達にまで誘われて遊びに行くことが多いです。
転校してきたばかりの時には、私のことも引っ張って一緒に連れて行ってくれたりもしたのですが、このクラスの人達ともお話し出来るようになりたいと言ったら「そうだね! じゃあ、またあとでねー」と笑顔で手を振ってくれました。
「やっほー、きらきらいるー?」
今日もまた、お友達に呼ばれてどこかに行くみたいです。
あ、仁衣さんだ。仁衣さんは一つ上の三年生で、何度かお話ししたことがあります。
仁衣さんが私に手を振ってくれました。また上くんの相談かなー。いってらっしゃーい。
「あれー? たかし。なんでスカート履いてんだー? たかしなのに」
うう、きらなちゃんの姿が見えなくなった途端、また阿瀬君がいじわるを…。
「こおおぉるぅぁぁああああ!! シュートおおおお!!」
「げッ」
どこからともなくきらなちゃん…あれ?いま仁衣さんと出て行ったばかりなのに。
きらなちゃんは教室の扉を勢いよく開け、そのまま阿瀬君に飛び蹴りをかましました。
「ぐうおぁ!!」
「あんた! まーたたかしちゃんのこといじめてたでしょ! えー? 正直に言ってみなさい? なーに、どうせまたそんな名前でとか言ってたんでしょ!? あほんだらーー!!」
「お、おいおい! は、離せってバカ、待て、待て! はなせ、背中! あ、あた」
「あーん? 背中ー? 何よ、うらうら」
きらなちゃんは阿瀬君をより強く羽交い締めにして叱りつけています。
「あのねえ? たかしちゃんは女の子なの! そんな名前でもねー、女の子なの! 確かに変な名前だけどね?」
う、始まりました、きらなちゃんの追撃です。きらなちゃんはそのままぐいぐい阿瀬君の顔を私に近づけてきました。
「こんな名前でも可愛い女の子でしょ? シュート? よく見てみなさい! 名前は変だけどたかしちゃんは私の大切な友達なの!」
「おい!きらな!近い!!近い近いー!!!」
ううう、近いですきらなちゃん。もうちょっとで顔がひっついちゃいそうです。
目と顔があついです。う、泣きません。負けません。うう。
「あ、シュート! あんた今ちゅーしようとしたでしょ。ダメよ、たかしちゃんは私のなんだからね」
「はぁ?!してねえよ!!」
「嘘、こんなに可愛いたかしちゃんにちゅーしたくない訳がないわ!」
「は、はあ!?何言ってんだ!してねえしとりあえず離せ!近いって!」
「本当に? まあいいわ」
色々よくないですきらなちゃん!
よい事と言ったら今阿瀬くんの顔が近くなくなった事くらいです!
うう、ふう…。負けませんでした…。
「今度たかしちゃんいじめたら、私があんたにちゅーするからね、もしくはたかしちゃんにちゅー」
「はいはい、いじめねえか…はあ?」
き、きらなちゃん??
「だから、あんたかたかしちゃんにちゅーするからね」
「いや、だからなんで俺なんだよ」
「たかしちゃん、そんな不安そうな顔しなくても大丈夫、私が守ってあげるからね」
そうじゃなくって、不安な要素が増えてるよきらなちゃん…。
私も阿瀬君も顔が真っ赤です。
「それから、たかしちゃんはそんな変な名前でも可愛い女の子なんだから、自信持ちなさい! 名前以外は完璧よ! 名前以外は完璧なの! あとシュート、たかしちゃんと呼びなさい」
うううっ、ううう。
泣かないって決めたのに…。うう。
嬉しいのに素直に喜べません…。
きらなちゃんには、全く悪気がありません。とっても友達思いの頼れるお友達です。ちょっぴり天然なだけです。
「うっ…うう…」
「あら? なんで? たかしちゃんが泣いちゃったー! 泣いちゃったでしょ!? シュート謝んなさい!」
「ちげえよ、綺羅名、お前のせいだ」
「えええーー!? なんで?私何もしてないわよ! 人のせいにするのは良くないわよ!ねえたかしちゃん? 本当に私のせい?? たかしちゃん大丈夫?」
うう。うん。
私の大切なお友達、可愛くて天然なきらなちゃん。この日のきらなちゃんのとんでもない約束のおかげ?かはわからないですが、阿瀬君は私にあんまりいじわるをしなくなりました。
「あらあら、仲がいいのは良いことだけど授業始めるわよ、ってあれ、だあれ? また高橋さん泣かしたのは! あ、また阿瀬君? だめでしょう?」
「そーよそーよ! やっぱりシュートのせいでしょう! だめじゃないの!」
「いや、だから、その…俺だけじゃなくて…先生…綺羅名も」
「私じゃないよねーたかしちゃん?」
「うう、その、あの」
今日もにぎやかで楽しい日になりそうです。うう。