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たかしちゃんと  作者: 溝端翔
転校編
3/29

たかしちゃんの転校初日(3)

 「さっ! 自己紹介も終わったし、たかしちゃんもちょっと落ち着いたと思うからお話しなんだけど……。うーん、ちょっと外がうるさいわね」


 あ、ほんとだ、教室の外に人だかりができてます。

 わ、み、みんなこっち見てるよう。


「おっ、あれが転校生だよな」

「さっきの授業中覗いてみたけど寝てたぞ?」

「転校してきていきなりから寝てるって相当な不良なのかな??」

「いや、でもよく見たらすっごく可愛くない??」

「ほんとだ、かわいいねー!」

「名前なんだろ、俺友達になりたい」

「高橋だってさ、さっき聞いた。ってか友達じゃなくて恋人だろ。下心見え見えで相手にされるわけないだろ」

「下の名前なんだろーねー」

「絶対かわいいぜ、ずりーなーA組」


 男の子も女の子も、身を乗り出してこっちを見てます。

 ううう、いろんなこと言われてる。可愛くないのに……。

 

 どんどん人が増えていきます。

 ちょっと、こわい……。


「……はあ、ちょっと失礼」


 きらなちゃんがずんずんと扉の方に進んでいきます。

 後ろのドアをピシャリ。窓をピシャリピシャリ。最後に前のどあを……。


「たかしちゃんを怖がらせないで!!」


 勢いよくバン!と閉めました。


「たかしちゃん?」

「たかしっていたっけこのクラス?」


 閉められたドアの奥から微かに聞こえてきました。

 うう、多分たかしいませんでした。


「よしっ、これで静かにお話しできるね。ったくうるさいんだらか。転校生が来たくらいでねえ? あ、でもたかしちゃん、頑張らないとね、このクラスから外に出る時だってあるんだから」


「うう、うん。頑張ります。あ、ありがとう、ございます」


 うん、ずっと、ずっとビクビクしてるだけじゃダメだもん。頑張らないと!


「それでね!! たかしちゃんの質問にみんなで答えるってことでどう!?」


「きらきらナイスアイデアー!」

「そっかー。じゃあしょうがないからそれでいいや!」

「私も、お話しできるんならなんでも良いよ!」

「また今度聞かせてねー!」


「ほらほら、たかしちゃん、好きなだけ質問して良いんだよ! 私の好きな食べ物!?」


 ふふ、きらなちゃんの好きな食べ物なんだろ。

 えっとえっと。質問……あっそういえばさっき前のドアのところに。


「ほら、食え、今日も一日ご苦労なこった。この後もしっかりと頼むぞ」


 教室の入り口にいた三羽の鳥さんたちにクラスの...えっと、男の子...?がご飯をあげています。髪は長いけど声も制服も男の子だから、男の子だよね。うん。

 この鳥さんたちはクラスで飼ってるのかな?

 わあ!つつかれてる!だ、大丈夫なのかな?

 まだまだわからないことでいっぱいです。


 あ、今その男の子がご飯を一掴み鳥さんたちのご飯のお皿にばら撒きました。


(われ)が貴様に餌をやっているんだ、感謝しろ」


 あっ、ついに鳥さんたちが本気で怒り出したみたいです。


「いてっ! おい貴様、いてて! すまない! 悪かった! 確かに愚民共に優しくせねば、いてててっ! わ、俺が悪かった!」


 あーあ、綺麗な金色の長い髪がボサボサになっています。

 鳥さんは怒らせちゃダメみたいです。


「大丈夫かな…?」


「大丈夫大丈夫!! なにが?」


「わぁっ」


 どこからともなくきらなちゃんです。


「鳥さん...」


「あー!! 光貴(こうき)ね! 上光貴(かみ こうき)!いつもの事だよ、いつもエラそうなの」


 やっぱり男の子でした。

 ってそういう事じゃなくて...。


「まあ、悪い奴じゃないから、仲良くしてやってよ!」


「う、うん…じゃなくってきらなちゃん」


 きらなちゃんは、全然、人の話を聞いてくれません。でも、とっても優しい女の子です。


「えー?違うの?」


「うん、え、えっと。あの鳥さん…」


「鳥? 鳥ってカンコン鳥の事? カンコン鳥がどうかしたの??」


 あの鳥さんはカンコン鳥っていうらしいです。

 あの鳥さんの名前かな…。でも三羽いるけど。


「どの子がカンコン鳥さん?」


「えー? 何言ってるのたかしちゃん! カンコン鳥はカンコン鳥でしょ!? そういえばあの子達名前あったっけ…なかったらみんなでつけてあげる?たかしちゃんの前の学校では名前つけてたの??」


 え、えと…。


「カンコン鳥さん…ええと、その、金魚さんならいました…」


「ええーっ!?じゃあじゃあカンコン鳥は?いなかったの?いたよね?チャイムは?キンコンカンコンは?えー? ……。ええーっ!?」


「わうう、えと、えと、チャイムはスピーカー聞こえました…?」


「え、じゃあほんっとうにカンコン鳥いなかったの??」


「い、いなかったです」


「ええーっ、珍しい!」


 珍しいのはカンコン鳥さんだと思います。

 鳥さんの図鑑でも見たことないです。


「私たち小学生の時からカンコン鳥いたのに。たかしちゃんどこの中学校言ってたの??」


「小学校の時から…。えと、前は…」


「ねえねえ、たかしちゃんカンコン鳥知らないんだって!」

「えー!うそ!ほんと??」

「まじ!?」

「ほんとほんと!チャイムはスピーカーからだって!」

「あ、あの…」

「ええー!変なの!」

「あの…」


「よおし!!」


 わにゃあっ!


「私がカンコン鳥のこと教えてあげよう! あ、また後で喋ろうね!私はたかしちゃんにカンコン鳥のこと教えてあげるから!」

「ほーい、きらきらガンバー」

「まさかカンコン鳥知らない人いるとは思わなかったねー。クスクス」


 私もまさかこんなに驚かれるとは思いませんでした。


「ふうー、お、お願い…します」


「えーっとまずはー、うーんと。そうだなー。カンコン鳥はね、チャイムで授業の開始と終わりを教えてくれるの。そんで、ひとクラスにひと家族のカンコン鳥がいるんだよ」


「家族なの?」


「そう。一番ちっちゃな子が子供なの。そんで大っきな方がお父さん、中くらいのがお母さん。うちのクラスは子供一羽だけだけど、他のクラスにはもっといるところもあるよー。あと、卵産むかもしれないよ。もしかしたらだけど!」


「たまご…」


 えへへ。


「たのしみ?」


「うん!」


「よかった。それから、授業の始まりと終わりで声の高さが違うのは気がついた?」


「うん。ずっとスピーカーから聞こえてきてるんだと思ってた…」


「しょうがないよ、次見ててごらん、ちゃんと鳴いてるから。でね、授業の開始がお父さんカンコン鳥、授業の終わりがお母さんカンコン鳥なの。お父さんの方が低くて、お母さんの方が高いからね」


「ええと、子供のカンコン鳥さんは?」


「それはー、今お勉強中なの。いつもチャイムの時はお父さんとお母さんの鳴き方を見て勉強するの。それで、上手く鳴けるようになったら、次の一年生が入ってくるまでに恋人を見つけて、一年生のクラスを担当するんだよ!楽しいでしょー」


 お勉強中なのかー、可愛いなあ。


「あ、後ね、朝休みと中間休みとお昼休みにご飯をあげるんだよ!これは日直の仕事ね!」


 わあ!ご飯!


「おててからあげても大丈夫かな…」


「カンコン鳥に気に入ってもらえたら大丈夫!!私はいつも手からあげてるよ!! まあ光貴みたいに意地悪しない限り嫌われないと思うよ。たかしちゃんなら大丈夫!可愛いからね!」


 ふにゃあ。

 か、上君髪の毛ボサボサだなあ。ご飯あげ終わってるのにまだカンコン鳥さんに睨まれてる…。

 私も上君みたいにならないように優しくしないと。


「あ、そうだ! たかしちゃん、学校案内してあげるよ!!」


「え!? でも、放課後の方が時間いっぱいあって良いって先生が...」


「良いの良いの!!」


 なにが良いのかな。


「だってさ、今行きたいし、それに、他のクラスの子にも紹介したいし!」


「う、うん」


 照れくさいですが、きらなちゃんはとっても優しいです。友達になれて...。


「たかしって男の子みたいな名前の女の子が転校してきたって! 可愛いって教えてあげたいの!!」


「うっ」


「可愛い女の子が! たかしって! それにカンコン鳥も知らないんだよ!」


 よかった、です、友達になれて、よかったです...。これは、ただ天然なだけです。だって。


「ほら! たかしちゃん! おいでよ!」


 優しく笑顔で、手を引っ張ってくれるのです。


「ううう、うう、うううう」


 でも、悲しいものは悲しいです。


『キンコンカンコン』


 お母さん鳥の声が聞こえます。

 また鳴いてるところ見れませんでした。


「あ、鳴いちゃったー。そんなに楽しみだったの?チャイム鳴いちゃったし、放課後にいっぱい案内してあげるね! なでなで。ふふ、私も楽しみー、みんなびっくりするだろうなー、男じゃないの!?って。ね!たかしちゃん!」


「ううう」


 私は結局、3時間目の半分を泣いて過ごしてしまいました。


『キンコンカンコン』


「いてっ!! おい貴様!! まだなにもしてないて!! いて!!」

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