たかしちゃんと天文部
次回の更新は11月11日金曜日更新です。
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こんにちは!高橋たかしです!
今はきらなちゃんを探しに第二体育館に向かっているところです。きらなちゃんまだハンドボールやってるかなー。
あ、私はさっきまで阿瀬くんからサッカーを教わってたんです!ちょっとだけできるようになったんですよ!えーっと、確か、リフティング!
「あー、たかしちゃん! サッカー終わったの?」
あ、きらなちゃんです。ハンドボール終わっちゃったのかな。
「うん! きらなちゃんも終わったの?」
「ううん、まだだけどやっぱり心配だから見に行こうかと思って」
きらなちゃんお姉ちゃんみたい。ふふふ。
「ありがとー。でも大丈夫だったよー」
「本当!? だって男ばっかりだしさ、シュートに教えてもらったんでしょ? いじわるされてない??」
「されてないよー。阿瀬くん凄いんだよ、とっても分かりやすく教えてくれたの」
「そうなの? まあいじわるしてたら私が飛んで行ってたけどね。あ、あいつは!? 真矢! 変なこと言われなかった!?」
真矢……えっと……あ、うう、あの人かな……。
「えっと……えっと……」
思い出したら、ほっぺがあつくなってきちゃったよう。
「やっぱりね! 気にしなくて良いからね!? 私にも言うの! 彼女彼女って!」
「でも、きらなちゃんは、その、お似合いだし……」
「えええー!?たかしちゃんまで!!シュートは別に幼馴染なだけだよ!?お似合いとかないって!!」
「そうかなあ……だってきらなちゃんと阿瀬君仲良しだし」
「ストーップ!!たかしちゃんストップ!! 真矢みたいなこと言わないの!! シュートはただの幼馴染! おーけー?」
きらなちゃんなんだか可愛い。ふふふ。やっぱりお似合いだと思うなあ。
「たかしちゃん? 私にはわかるよ? 口に出さなくったってわかるんだからね? おーけー!?」
「ふふ、うん、おーけー」
「全くさー、みんなしてお似合いお似合い言うんだから困っちゃうよ。本当にただの幼馴染なのになー」
可愛いなあ。スポーツもできて可愛いってちょっとずるいなあ。あ、そうだ。
「きらなちゃん! 聞いて聞いてリフティングできるようになったんだよ!!」
「ええ!? ほんと!? あのたかしちゃんが!?」
グッサリ。
うう、た、確かに運動苦手だけど……。
「何回くらいできたの!?」
えっと、回数?何回なんだろ。綺麗に上がったのだけで、えーっと……。
「30回くらい?」
「ええええー!?30回も!?シュートのやつどういう教え方したの!?この短時間で30回!?すごい!!」
きらなちゃんびっくりしてる。やっぱり阿瀬くんってすごいなあ。
「んー、今見たい、今見たいけどボールがない! くそー、たかしちゃん! 今度見せてね!?」
「う、うん!」
「楽しみだなー。あ、そうだそうだ、次で部活体験終わりにしよっか。たかしちゃん疲れたでしょ? だからまずは制服に着替えに行こ。別にその辺のすみっこで着替えても良いけど。どうする?」
その辺のすみっこって!!きらなちゃん!!
「着替えにいこう!」
「じゃあ、そうしよっか。いくら人がいないとは言っても、その辺の男子にバッタリたかしちゃんの下着姿見られちゃったらヤだしね。じゃあこっちこっち」
うう、なんだか恥ずかしいです。もう、きらなちゃんたら。
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「よーし着いた着いた。って言っても教室だけど。でもカーテン閉めたし、とりあえず後ろのドアの鍵は閉めといたからドアを開けられる確率は二分の一よ」
「に、二分の一って…」
「大丈夫大丈夫、今みんな部活中だから誰も入ってこないって。ちゃっちゃと着替えちゃお」
ああ、きらなちゃんもう着替え始めちゃった。うう、二人っきりで着替えるのもちょっと恥ずかしい。
「何してるの、早くしないと誰か来ちゃうかもしれないよ」
「うん」
うう、恥ずかしいよう。
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「ふう、よかったよかった。誰もこなかったね」
「う、うん。ま、まだどきどきしてる」
「ははは、可愛いなあたかしちゃんは。あ、こっちこっち」
「きらなちゃんがお着替えの邪魔するからだよー」
「だってたかしちゃん遅いんだもん。せっかく着せてあげようと思ったのにさ」
まさか、あんな恥ずかしい姿で走り回っちゃうなんて……。うう。どきどき。
「そこまで子供じゃないもん」
「ふふ、楽しかったねー。あ、ここの上だよ」
「どこの部活いくの?」
「ないしょー」
どこ行くんだろ。制服着ちゃったし文化部だと思うけど……でも今日は運動部の日だし……。
でもこっちって。
「ほーら着いたよ。天文部!」
わ、天文部です。天文部でした。きらなちゃん!
「今日は天文部休みの日だけど、多分部長と副部長はいるはずだよ」
「おやすみなのに?」
「入ったらわかるよ」
「うん」
きらなちゃんがドアを開けました。ドアを開けてすぐが黒くて厚めのカーテンになっていて、その向こうにまた同じカーテンがかかっています。
「たかしちゃん足もと気をつけて」
「うん......。わあっ!」
「ね、すごいでしょ?」
「うん。すごい」
天文部の部室の中は星空で覆われていました。
光が入らないようにカーテンが二重になってたんだ。綺麗。なんで光ってるんだろ。すごい……!
「すごい、きらなちゃんすごいね!」
「本物じゃないけどね。ここの天井だけ球体型になってるんだよ。これだけのために。この学校の理事長変だから」
「きらなちゃん、私天文部が良い」
「良いじゃなくて天文部なの! もう決まってるんだよ! あ、輝先輩やっぱりいた。玲も。新入部員だよ。たかしちゃん」
わ、ほんとだ、二人で並んで座ってた。気づかなかった。
「せ、先輩、初めまして。高橋たかしです。よろしくお願いします」
「…………」
あれれ?
「あー、ダメだこりゃ、二人の世界に入ってるわ。 輝先輩!輝先輩!!」
全然聞こえてないみたいです。
「こうなったら。てりゃ!」
「いたっ!? あれ? 吉良、いたのか」
「輝先輩!新入部員! まだ入部届だしてないけど新入部員! もう、椅子に座ってたらひっくり返してるところだよ!」
「よ、よろしくお願いします! 二年の高橋たかしです!」
「僕は部長の星見輝。三年だよ。よろしく。っていっても実は今日は部活の日じゃないんだ。部活の説明とかそういうのは顧問の先生が居る時でも良いかな?」
「は、はい。ま、まだ入部届も出してないので、大丈夫です」
「たかしちゃん、そんな堅くならなくて良いよ。輝先輩は優しいから」
「うん、まあそうだね。運動部みたいに厳しくないから、リラックスして良いよ。なにせ星を見る部活なんだ。星に比べれば一年や二年なんてちっぽけだからね」
「わかりました。て、輝先輩!」
「ほら玲、君も」
「うん。干柿玲。よろしく」
暗くてあんまりお顔わかんないけど、輝先輩にきゅって引っ付いてる。たぶん可愛い女の子なんだろうな。
「玲は君たちと同じ二年だから仲良くしてやってほしいな」
「はい」
二年生。お友達になれるかなあ。
「今日はまあ、ここにある星を見ても良いし、帰っても良いし、好きにしてくれて構わないよ。僕たちはここで星を見させてもらうね」
「あ、輝先輩、一つ聞いて良いですか?」
「なんだい?」
「この星、なんで光ってるんですか?」
「これは蓄光塗料っていう特別な染料で描かれてるんだよ。名前の通りに光を蓄える。それが暗闇の中で静かにゆっくりと光り輝いているんだよ。それに、この星空は本物の星空を忠実に再現しているんだよ。作ったのは僕じゃなくて大和理事長だけどね」
「すごい……」
本物の星空と同じ……。
「でも、やっぱり本物には敵わない。七月になったら綺麗な天の川、冬になったら一段と星が綺麗に輝く。楽しみにしておくと良いよ。星が綺麗に見える時期には必ず部活があるからね」
「はい!」
「どう?たかしちゃん」
「楽しみ!!」
「じゃ、僕たちはもう少しこの星空を眺めるよ」
輝先輩はまた同じ位置に、二人で並んで星空を眺め始めました。
「たかしちゃんどうする?」
「わたしももうちょっと見てたい」
早く本物の綺麗な星空を見てみたいなあ。