たかしちゃんと園芸部
たかしです。
うう、疲れました。
それにしてもすごいです。きらなちゃんはお絵かきからお料理からお裁縫からなんでもできちゃいます。お歌も上手だったし、楽器の演奏だって上手でした。本当にすごいなあ。
私なんて「出来るもん!」って言えるのはお料理とお裁縫くらいです。
きらなちゃんは何が苦手なんだろう……。
あ!そうだ!
阿瀬くんのお友達の……縫合くん!お名前聞きました、縫合一くんは裁縫部でした。たくさんの女の子の中に一人だけでびっくりしました。男の子一人なのに恥ずかしくないのかな?
わ、にぁ、うう、お歌の時のこと思い出しちゃいました。みんなの前でお歌を歌うのって恥ずかしくて…。うう。
「どしたの? 良いじゃん下手っぴでも。今度一緒にカラオケで練習しようよ!休みの日に行こ!」
あう!お休みの日に!!
うう…カラオケ……。
「まあまあ、声は可愛いから大丈夫だって!よーし、そろそろ着くよ園芸部!」
待って、きらなちゃん待って、うう、もう着いちゃいます。もしかしたら部活体験よりもきらなちゃんの全力疾走の方が疲れるかもしれないです。
「うんうん、たかしちゃん先輩は家庭的だが、歌に関しては音痴……と。よし、次は園芸部ですか、自分の見立てだとたかしちゃん先輩は園芸は得意分野です」
「うう、知広くん、お歌の事は書いちゃだめ……」
「よーし!!着いたよ!!」
ああ…きらなちゃんの声で私の声がかき消されました……。着いちゃいました……。
「先生ー!部活体験したいです! 今は何してますか!?」
「はあ、ふう、きらなちゃん、まってまって、ふう」
きらなちゃんがドアを…ふう……。あれ?ドアが閉まってて開かないみたい…。
「あれー? 誰もいない」
「きっとみんな外に出てるんじゃないですか? 部活始まって結構時間たってますし」
「えー、どこにいるかな」
「たぶんどこかの花壇です。この間先輩が一年生の為に園芸部特集で紹介してましたよ」
「そっか!知広ナイス!じゃあいくよ知広!たかしちゃん!休んでる暇ないよ!」
「はい!」
「うにゃああ」
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「いたいた!!先生!体験させてください!」
「ふう、ふう」
「あら、えっと吉良さんと……あなたが噂の転校生の高橋さんね、その後ろは……」
「新聞部の一年、新巣知広です!現在たかしちゃん先輩の部活体験を取材させてもらっています!」
「そんなことよりもー、今園芸部は何してるんですか?」
「今は花壇の掃除をしているところですよ。この掃除が終わったら次の花壇。この学校には花壇がいっぱいありますから、それの繰り返しです」
わあ、よく見たらいろんなお花が咲いていました。ここの花壇もおっきいなあ。
「…………」
きらなちゃんがとても難しそうな顔をしています。どうしたんだろう。
「……先生、それって楽しいですか?」
「たのしいですよ? 綺麗になった花壇ではお花達が輝くんです。太陽の光でキラキラ光ってそれはそれは綺麗に生き生きとして、みんな花が好きでこの部活に入るんです。花が好きなら是非園芸部に入ってください」
「んー、だって今日曇ってるしなあ。楽しいかなあ…」
「一度体験してみればわかりますよきっと」
「そうかなあ、うーん」
お花達が輝くのかあ。ちょっと見てみたいです。
「きらなちゃん…」
「たかしちゃんどうする? 掃除だって。掃除だって」
「ちょっとお花、見たいかなあ…」
「そっかー……でも掃除だよ?掃除するんだよ!?」
「なるほどなるほど、きらな先輩は掃除が嫌い……と。は! ということは、部屋もきっとすごふッ!!」
「知広うるさいよ。んーやりたいかー、ちょっとだけなら」
ふふ、きらなちゃん掃除がやなのかな…あ、そういえばさっき掃除部の部室通り過ぎたのも……。ふふ。
「ちょっとだけ、ここだけ掃除しよ?きらなちゃん」
「うーん、じゃあちょっとだけ……えー」
「ほらほらきらなちゃん、やろーやろー、知広くんも」
「ええ!?自分もですか!?」
「じゃ、ほらほらみんな箒持って、まずは花壇のレンガの上に乗ってる砂をその小さい箒で綺麗にします。その次は花壇の周りを箒で綺麗にして、花壇の中にあるゴミや雑草などを取り除いて、しおれたお花には頑張れって話しかけるんです。そしたらお花は元気になるんですよ」
「ぶー、掃除しなくちゃダメなの先生」
「そうですよ十分綺麗です」
「なにさ、知広も掃除嫌いなんじゃないの」
「きらな先輩こそ」
「うるさい」
「みんなでお掃除すればすぐ終わるよきらなちゃん、知広くん。がんばろ!」
よーしがんばるぞー!えへへ、話しかけるのかあ、楽しそうです。
「掃除さっきしたのにー……ぶう」
「たかしちゃん先輩は…掃除と花が好き……と……」
ふふ、ふたりとも箒持ったまましょんぼりしています。まったくもう。ふふふ。