表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

猛者

昼食を取ろうという事になり、市谷の予算的な問題もあって、普通の定食屋へと入っていった。

市谷は4人分の日替わりランチを頼んだ。

「日替わりらんちは、なんじゃろうな?」

「魚のフライ定食みたいですよ。」

席に着くなり、自問自答する杏子。

杏子が魚のフライ定食だと気付いたのは、テーブルに置かれたメニューを見たからだ。

日替わりというのは、魚の種類が日替わりということらしい。


運ばれてきた魚のフライを一口頬張る一行。

「旨いっ!なんじゃこの弾力はっ!」

魚とは言いがたい身の弾力に日照様は驚いた。

「なんでしょうね、ふぐではないと思いますが。」

地元民であるはずの市谷も、何のフライか判らなかった。

「これは今まで食べた事が無い食感ですね。」

将人も感心したように食した。

「美味しいです。」

咲も満足のようだ。

「ちょっと何の魚か聞いてきますね。」

市谷は、席を外した。


「おばちゃん、これ何の魚かね?」

厨房のおばちゃんに声を掛けた。

「モサって魚なんじゃけどねえ。」

「ああ、モサかね。なるほどねえ。」

「モサ、知っちょってかね?」

「ああ、俺は、地元じゃけえね。」

厨房のおばちゃんは、少しバツが悪そうな顔をした。

今日は、いい魚が仕入れられず、仕方なくモサにしたようだ。


テーブルに戻った市谷は、一行に魚の種類を告げた。

「モサのフライだそうです。」

「モサ?」

将人と咲は、何の魚か判らなかった。

「ほお、瀬戸内にも鮫がおるんじゃのう。」

「サメと言っても、小さいサメですがね。釣りをしていると外道で釣れるんですよ。」

「ふむ、猛者と言えば人食い鮫じゃがのう。瀬戸内では違うのかえ?」

「ええ。」

一般的にモサ(猛者)と言えば、ホオジロザメの事を指すが、山口県の瀬戸内では、小さいサメをモサと呼んでいた。

「サメという割には、癖がまったくありませんね?」

将人は、サメと聞いてアンモニア臭を思い浮かべたが、このフライには、まったく臭みはなかった。

「そうですね。恥ずかしながら、私も食べたのは今日が初めてでして。」

一行は、大満足で昼食を終えた。


「まだ日は高いし、観光でもして時間を潰すかの。」

そう提案したのは日照様だった。

「夜まで待つという事ですか?」

将人が聞いた。

「いや、逢魔時でよかろう。」

「なるほど。」

日照様の提案に将人は納得した。

逢魔時とは、暮れ六つとも言われ、18時を意味していた。


「では、せっかくですからモサを見に行きますか?」

「さっきのフライですか?」

杏子が聞いた。

「ええ、触る事もできますよ。」

「えええー・・・。」

見てみたいとは思ったが、杏子は触りたいとは思わなかった。

「ほう。」

しかし、日照様は興味深そうに頷いた。

触る気満々である。


周防大島にある「なぎさ水族館」は、水族館という名はついているものの規模は小さい。

館内の広さといえば、田舎によくある民俗資料館と変わらない。

館内には、タッチングプールというものがあり、色んな魚やタコに触る事が出来る。

「おおー、猛者が居ったぞ!」

タッチングプールではしゃぐ日照様が、モサを発見した。

そんなに素早くないので、子供でも捕まえる事が出来るのだが、杏子の抵抗があり、日照様の動きは鈍い。

「ええい、杏子。邪魔をするでない。」

「日照様、私が。」

そう言って、咲が難なくモサを捕まえた。

「どっからどう見てもサメですね。」

咲は、モサを持ち上げて見回した。

「ほんにのう。」

そう言って、モサを触る手は震えていた。


「楽しんでもらえてよかったです。」

タッチングプールに入ってない市谷は、2人の女性が、はしゃぐのを見て、将人に言った。


観光を堪能した一行は、18時前には、大島大橋の付け根にある海岸へと移動していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ