Scene1-8
もうコレで何回目だろう?ダメージソースの関係で僕かリィーナが攻撃を仕掛け、弾かれた所にジョーが最大火力のフルチャージ<ファイアボルト>を決めて続けている。最初は中身が機械なら、<ライトニングボルト>の方が有効なんじゃないか?と試していた。けれど上手く間接部分に着弾させないと効いている様子が無く、単純な火力の問題で<ファイアボルト>に切り替えている。
MPが切れないよう、適度な間を挟んで攻撃している為、そろそろ集中力が危うい。それでも、ゴーレムのHPバーを7割近く削ることには成功している。
「残り3割、このままなら何とか倒せそうだな。」
「でもさ、ボスって大体HPが減った時には行動パターンに変化が出来ない?」
「リィーナ正解みたい、今からお披露目みたいですよ?」
腕を振るい攻撃か魔法を弾く事しかしなかったゴーレムが、動きを止めている。その周囲に光が集まり・・・魔力をチャージしてる?でも何処に――、疑問に思っているとゴーレムの両腕が外れて地面に落ちる。そこから出てきたのは・・・筒?
あ、何か嫌なこと思いついちゃった。
「ねえ2人とも、アレってひょっとして――。」
「みなまで言うなカナタ。多分、その予想当たってるからな。」
両腕の筒に光が収束し、なにやらエネルギーの溜まるような音も聞こえてくる。左腕を僕とリィーナの方へ、右腕をジョーの方へと向けてチャージを続ける。動いたらそれに合わせて腕を動かしている、これってやっぱりアレだよね?
ゴーレムの周りから光が消えた瞬間、その両腕から黄色のビームが発射された。とっさに横に跳んだのは良いけど、まだ撃ち続けてるんですけど。
「あっぶな、あっぶなー!?何アレ、ゴーレムがビーム撃つとかふざけてない!?」
某TRPGだと普通だったんだけどなー、いや、普通のゴーレムはビーム撃たないか。
さすがに撃っている時に射線の変更は出来ないのか、同じ場所にビームを撃ち続けているゴーレム。ジョーがここぞとばかりに魔法を撃ち込み、残りは1割ほどに。
「・・・?何かHPの減りがさっきより早くありません?」
「推測だけど、さっきの防御用の魔力も攻撃に使ってるんじゃないか?その分魔法の通りが良くなってるとか。」
「じゃあ、次に同じ攻撃をしてきたら3人で一斉攻撃だね。」
ビームを放ち終えたゴーレムはクールタイムなんて気にせず、再びチャージを始める。ここまではさっきと同じなんだけど、違うのは両腕の砲塔が合わさって一つになり、より巨大になっていること。どうやら漏斗の様な形らしく、腕との接続部と砲口とのサイズが全然違うよ!?
ゴーレムの横幅と同じくらいの砲口をこちらに向け、チャージを続けるゴーレム。まずい、流石にあのサイズとなると避けきれるか判らない。これは、マズイ?
「ジョー!」
「わかってら、予定変更!撃たれる前にあいつを潰すぞ!」
「りょーかい!」「おっけー!」
といっても、僕はあまりダメージソースにはなりそうに無いかな。ひたすら間接部目掛けて<ライトニングボルト>を連射している。
「動かないなら全力で良いよね、手数の多さなら負けないよ!」
リィーナがゴーレムに物凄い勢いで突撃していく。脚が光っているところを見ると、魔力を回して脚力を限界まで強化しているようだ。更に走りながら<魔力操作>で何重にも長剣に魔力の膜を形成していく。その膜が放つ色は水色。
「これが今の私の全力、名づけて<連撃12氷閃>!」
名前からして、途切れることなくあの学校で使った技を放つ事だろう。ゴーレムまで3mの距離でリィーナはジャンプし、高さを砲口にあわせる。そして青く輝く剣閃が一度に2つ、合計12個が吸い込まれるように砲口にぶつかり、2,3秒後に砲口を砕いて内側から氷が隆起してきた。
「うわっ、えぐい・・・。」
生き物相手じゃなくて良かった・・・。
砲口が砕けたのが原因なのか、バランスを崩して仰向けに倒れこむゴーレム。大きく削ったけど、まだ足りない!
「ならこれでどうよ?<擬似ファイアボール>!」
ゴーレムが体勢を戻す前に、ジョーの杖から放たれた炎の塊が爆発と轟音を響かせながら直撃する。今のゴーレムは拳の部品が無いから、魔法への対抗手段が存在しない。更に姿勢制御と言う複雑な作業中だったため、防御に魔力も避けなかったはず。
『グ、オォォ』
煙の中から出てきたゴーレムのHPは残り数ドット。よし、これならもう1度ジョーの攻撃で倒せる筈。
「ジョー、とどめの一撃、を・・・。」
最大火力のジョーにとどめを刺して貰おうと目を向けると、そこには四つん這いになって地面に崩れ落ちるジョーの姿が。
「もしかしなくてもさっきの一撃に全MP使いましたね!?」
「d」
サムズアップじゃないよ!ああ、もう!
「自爆でもされたら困るんで、とどめ行きます!」
内部で歯車が外れたのか、起き上がろうとして出来ないでいるゴーレム目掛け僕は走る。適当に魔法を撃っても当たるけど、多分弾かれる。今握っている短剣じゃあ攻撃力が低すぎて倒せないかもしれない。だったらどうするか、答えは簡単。
「直接、流せば関係ないよね!」
その場で一番近かった右足の間接部に短剣を突き刺し、そこを基点に<ライトニングボルト>をゴーレムの体内へ流すように発動させる。1回の発動じゃ時間が短すぎるから、MPバー半分位を使って20秒程電撃を与え続ける。
MPが半分をきったので魔法をキャンセルし、短剣を間接から引き抜く。良く刺さったなあ、と思って見ると、短剣の刃が完全にボロボロになっている。歯車なんかが噛み合っている様な場所に突き刺せばこうなるよね、これはもう駄目かな。
「そういえば、戦闘中は全然喋らなかったですね、このゴーレム。」
「戦闘力を強めにしたせいで、難しかったんじゃない?ほら、拳の魔法弾くやつ。」
「演算能力が足りなかったんですかねー?」
「げほっげほっ・・・あ゛ー、しかし、コレでやっとあの家が調査できるな。」
そうだった。家を調べる前にゴーレムが出てきたせいで、この辺りは外しか調べれていない。けどその前にゴーレムのドロップ品を確認しておかないと。
「魔導機ゴーレムの歯車、核って・・・なんだろう、聞いた事ない種類だけど。」
「やっぱ確認されてないボス系だったのか?それと、これは鍵か?」
「あ、私のドロップ品にも鍵があるよ。PT人数分出る報酬用ドロップなのかも。」
念のためにHPとMPの回復を待って入った家の中は、凄く散らかっていました。汚部屋って程じゃないけど、床のいたるところに歯車や分厚い本が落ちてるし、家の中にも草が生えてるし。
「流石に荒れてるなー、これじゃ読める本があるかも判らないか。」
ジョーの言うとおりだ。本棚の本も風化が進んでいて少しでも触ると頁が崩れてしまう。マスターって言ってたし、この家の人が外のゴーレムを造ったと思うんだけど、これじゃあどうやってゴーレムを造ったのかはわかりそうにないかな。
「ねえー2人ともー。ちょっとこっちに来てくれなーい?」
読める本は無いか物色していると、奥の部屋を捜索していたリィーナの呼ぶ声がする。声のする方へ歩いていくと一番奥の部屋に辿り着いた。ベッドがおいてあることを考えて、此処が家の主の部屋だったんだろう。ベッドに遺骨があるなんて事はなかったけど、生きては居ないんだろうな。
「これ、怪しくない?」
リィーナの指す机の上に、トランクケース位のカバンが3つ並べられている。おあつらえ向きに施錠まで付いて。これがこの場所の報酬なんだろうか。遺跡と言うよりは、墓所って言った方が近いのかもしれない。
どうするべきかと考えていると、ジョーがおもむろにカバンに近づき、何かを手に取った。あれは、手帳、かな。大きさ的にそんな感じのものだと思うけど。一通り読み終わったのか、こちらに投げ渡したそれをキャッチすると、やはりそれは手帳だった。
「リィーナの言っていた通り、どうやらこれがお宝みたいだな。」