Scene1-7
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「走れ!」
不意に僕たちを隠した陰に数秒動きが止まってしまう。けど現状を把握したジョーが叫んだことで、僕も慌てて身体を動かす。前へ、兎に角距離を稼がないと!
今もっている全力で脚を回し、広場と森の境目で急反転して影の正体に視線を向ける。
「で、でかっ!?」
「うっ、ゴーレム?物理攻撃の天敵じゃないの!?」
でかい。そうとしか言いようの無い巨躯をもった存在が、僕たちのほうに顔と思わしき部分を向けて立っている。そう、ただ立っているだけでこの大きさだ。周りの木々がその巨躯の半分程度しかない、と言えば大きさが想像できると思う。材料は石材、じゃない!?アレは――。
「気をつけて!アイツ鉄で作られてる!」
「なっ、こんな近場でか!?」
クローズド時代のゴーレムと言うと、情報を聞く限りでは【ケレンの遺跡】のボスとしてストーンゴーレムが。この【ビギニア】の西にある第2の町のダンジョンでアイアンゴーレムの2種類が確認されていた。FLOにおいては<識別>スキルによって敵の名前を判別できるけど、敵のレベルは一切確認できない。<識別>によって見えるのは敵の名前と種族、それにHPバーだけ。自分より強いのか弱いのか簡単には判らない作りになっていて、怖そうな見た目に反して実は、と言うパターンも幾つか合ったと掲示板に載っていた。
つまりこのゴーレムは、この近辺にいるようなレベルの敵じゃ無いわけで。
「もしかしてユニークモブかも!」
「もしくはボスだな。」
ユニークモブはこの世界に1匹しか存在しない、と言う設定のモンスターの事。ゲーム的にはFLOはもう少し優しくなっていて、1アカウントに対して1回しか戦えない敵の事をユニークモブとしている。それに対してボスは文字通り、そのエリアかダンジョンのボスモンスター。こっちは1日経てば復活するので、何回でも再討伐する事が出来る。勿論、その能力やAIはボスの称号にふさわしいレベルで高いんだけど。
『シ・ン、ニュ、ウ・ャ・・・』
「しゃ、しゃべった!?」
「ゴーレムが共通語を!?」
アイアンゴーレムの目が青く光り、僕たち3人をじっと見つめる。まるで何かを確かめているみたいに・・・ん?侵入者って事は、それを確認する何かがあるって事?
『認可外・マナ、ヲ検知。』
このゴーレム、普通じゃない!ある程度複雑な命令をこなしているのは不思議じゃない、作り手によって性能は変化するって設定だから。でもそれはマスターが居る時の話。今のところ周囲に誰か人が居る感じはしないし、<気配察知>にも引っかかっていない。それなのにこのゴーレムは単独行動で言葉を話し、尚且つ僕たちの魔力を任意で確認している。
『侵入者ハ、排除。マスターノ家、マモル!』
「問答無用か!不本意だが散らばれ!」
ゴーレムが拳を振り上げると同時にジョーが叫び、僕たちが3方向に思いっきり跳んだ瞬間、ゴーレムの豪腕が地面に突き刺さった。って、突き刺さるどころか周りが陥没してる!?
「そっか、この辺りの凹みはこいつの足跡と、攻撃の痕跡だったんだ!」
「納得してる場合じゃないよカナたん!?足元に飛び込むから、援護お願い!」
「鉄ならこっちだ、<ファイアボルト>フルチャージだ、受け取れっ!」
ジョーのかざした杖の先端に赤い光が集まり、炎の塊が出来上がる。塊は更に周囲から赤い光を集め続けて、大きさが直径100センチ位にまでなった所で光が消え、ゴーレム目掛けて飛翔する。それを目で確認し、リィーナがゴーレム目掛けて走り出す。火球がぶつかる瞬間にあわせるため、速さを調整しながらリィーナがジャンプ攻撃を繰り出す――。
「「「嘘だろ(でしょ)!?」」」
<ファイアボルト>はゴーレムに直撃、はしたがその拳で弾かれ四散してしまった。
「打ち消された、ゴーレムなのに<解除>持ちなのか!?」
いや、違う!良く見ればゴーレムの拳が少し赤くなっている、つまり熱が伝わっているって事だ。あれは<解除>したんじゃなく、力技でかき消された!
「違います、ゴーレムに微小だけどダメージは入りました。アレは<解除>じゃありません!」
「<解除>じゃない、なら<耐魔力>持ちか?ええい、どっちにしろゴーレムが持っていいスキルじゃねーだろ!」
この世界のゴーレムには核があり、そこに魔力を一旦溜めてから全身へ巡らせ、その魔力で稼動していると言う設定になっている。そしてこの魔力操作はデリケートなので、膨大な別の魔力や攻性魔法何かには弱い筈なんだけど。
「火が駄目なんじゃないの?<魔力操作>、<アイスウェイブ>!」
リィーナがロングソードの刀身に魔力を纏わせ、氷属性の衝撃波を放つ。武器系統の基本的な属性遠距離攻撃技で、威力はプレイヤー毎に異なる。今のはかなりの速度で剣を振るっていたから、あたればそれなりのダメージにはなる筈。
が、またしても―。
「って事は、属性耐性じゃないって事ね。魔法に対しての耐性かー、無理じゃない?」
ゴーレムの攻撃を避け、距離をとって着地しながらポツリと呟く。中身が空洞もしくは鉱物の塊の為、非常に物理ダメージが通りにくいゴーレムに、更に魔法ダメージにも耐性を持たせてみました。運営は何を考えてこんなmob作ったのさ!
ってヤバイ、こっちをタゲってる!
「ぐっ、一か八かの<ライトニングボルト>!」
詠唱を終えて雷撃を打ち込むと同時に、ゴーレムに向かって走りだす。魔法の雷が迫るゴーレムは何とか想定通り、その魔法を迎撃するべく腕を振るい、魔法を四散させる。その隙に僕はゴーレムの股の間を潜り抜け、そのまま蹴る力を魔力で強化して攻撃範囲外まで駆け抜ける。
(・・・ん?)
最初はふと違和感を感じただけだった。あのゴーレムの何処かに、何か違和感を感じる。でも感じるだけで何かははっきりわからない。そのまま股を抜ける為にさらに近づいていき―――この距離まで近づいたおかげか、不思議な点に気がつくことが出来た。
(歯車!?)
先ほども説明したように、基本的にこの世界のゴーレムは核があるだけで、他は空洞か逆に鉱石のまま。それなのにこのゴーレムは歯車が、それも間接部から確認する事が出来た。
「ジョー、リィーナ、こいつ中身がある!」
「えっ!こいつ鎧の中に鉱石が詰まってるの!?」
「そうじゃなくって!」
「さっき一瞬青く光った、あれはスキルじゃなくて魔法に反応したのか?となると、もしかしてこいつ」
「ジョーは絶対今の聞いてないですよね!?」
「おう、良くわかるな。流石俺の相棒。で、何だって?」
「今から説明しますよ!」
ジョーとリィーナに再度、あのゴーレムは鎧の空洞タイプだけど中身が詰まっている。その中身は良くわからないけど、少なくとも間接からは歯車が見えた事を伝えた。
「俺もさっき見ていて思ったんだけどな、アイツ魔法を拳でしか防いでいない。もしかしたら、拳でしかこっちの魔法を防げないのかもしれないんじゃないか?」
「こっちは手詰まりですし、試す価値はありますよね。」
「だね、このままって言うのは無理だろうし、その作戦異議なし。」
その前に、この作戦が通るのかどうかを確認しないといけない。
「って事で、省エネ<ライトニングボルト>!」
まず前方からジョーが魔法攻撃、これは当然ゴーレムがその拳で攻撃を防ぐので、そこをすかさず―。
「私が攻撃っと、<アイスウェイブ>!」
背後に回りこんだリィーナが至近距離から攻撃を仕掛ける。遠距離じゃないのは反応して防がれる可能性考慮し、反応される前に攻撃が当たる距離でと言うことになった。
その実験の結果は――。
「っ!目に見えてバーが削れた!」
「やっぱりそうか。出力の問題か総量の問題かはしらないが、アイツが魔法を防げるのは拳だけ。」
「よーっし、後はこっちとむこうの根気比べだよ!」
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